2017/02/25 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にシャロンさんが現れました。
シャロン > 冬の街道。透き通った空の下、少女は歩いていた。
整備された街道は、靴底を当てる度に小気味良い音を立てる。
かつり、こつり。なんだか鳴らすだけで楽しくなってくるのは、蹄の音に似ているからか。
非番であれば、このまま町まで、音を楽しむのもよいのかも。などと考えつつ、歩みを進める。

今の少女の役割は、街道沿いの見回りだった。
最近は何かと物騒で、村が焼かれた、などという話も聞く始末。
彼方、九頭竜山麓のあの村は平気だろうけど、用心を重ねておくに越したことはない。
或いは己の村に関係はなくとも、治安維持の為には誰かがやらなければならない仕事のはずだから。
比較的、荒事に慣れた少女は、二つ返事で見回りを許諾し、こうしてやってきた次第だった。

「……しかし、こう、風が強いだけで長閑ですね」

問題がないのは、素晴らしいこと。己の享楽を事件に求めてはいけない。
そう思いながらも、しかし閑散とした冬の街道には、花の一つも咲いていない。
枯れ木と砂ぼこりと青空と。酷く退屈な道を進む足は、心なしか早いものだった。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にマリアベルさんが現れました。
マリアベル > 「――やれやれ、仕事ばかり増えますね」

お嬢様の言いつけ。
例の九頭竜山脈に巣食う、組織の調査である。

どうも、面白い玩具を見つけたらしいが、相手は何者なのか。
それを調べると、面白い事が分かった。
最近ミレー族の奴隷が品薄になっている原因。どうも、この組織が絡んでいるようである。

「ミレー族の買い上げ、そして――近頃続く、奴隷たちの脱走の手引き」

どうも、この組織が怪しい。
事はフェルザ家が出資する奴隷商人にも関わる事だ。
調査し、もしもこの組織が奴隷の大量脱走に関わっているなら……

「――潰しておくに越した事はありませんね」

物騒な事を言いながら、街道を九頭竜山脈の方へと向かう。
その姿は見回りをしていればすぐ見つけられるだろう。

シャロン > 先より僅かに日が傾いた時の事。彼方に何やら動くものを捉えた。
一見した様子だと黒髪をたなびかせる女性――だが、如何せん雰囲気が剣呑に見える。
身のこなしにも隙はなく、一介の冒険者ではないのだろうという想像が容易についた。

「……ふむ、どうしたものでしょうかね」

この街道は冒険者でなくても、腕に覚えがあれば誰もが単身で行き交える道だ。
ならば、彼女のようなものが通ったとしても、何ら不思議ではない。
呼びかけを行うのも不自然で、しかし見過ごすのも何やら嫌な胸騒ぎがする。
それならば――。思案した結果、少女は気配を殺して、濃緑色のフードを被る。
あくまで己は見回り。彼女が危ない道を進みそうになったら、それを"警告"すればいい。
そっと足元を音無く蹴り、近くの茂みへと伏せ転がった。
様子を見て、彼女が行く先を見定めて、そのまま後を追うつもりで、観察を開始する。
彼女が己の気配を察知するほどの手練れならば、その時はその時だと割り切ることにした。

マリアベル > 「――ふむ」

着けられている。
それも、かなりの手練だ。
気配がほぼ無く、見つけるのも困難だろう。
さて、ただの山賊とも思えない。
となると……

(…………)

わざと、獣道のようなわき道へと入る。
ただの野伏せりか、それとも自分を監視しているのか。
それを確かめる為に。

(――もし例の「チェーンブレーカー」という組織の一員なら好都合なのですが)

シャロン > 彼女の姿は、そのまま獣道へと消えてゆく。
どこかわざとらしい動きだが、しかし現状は釣られざるを得ない。
待ちを選んだ以上、イニシアチブは彼女の手元にあるのだから。

彼女の後を追うようにして、少女もまた獣道へと踏み込んだ。
木々や茂みで死角も多くなるから、と奇襲に気を配りながらの進行だ。
このまま先に進まれると、自分以外の見回りに出くわすかもしれない。
そのような面倒を避けるには――と思案して、嘆息を一つこぼす。
未だ目的が見えていないのに、何を不安がっているのか。

(――正直、怪しいですが、現状は仕方ないですね)

結局、確信できない以上は、こうして後を追うしかない。
少女もまた、一定の間隔を空けつつも、見逃さぬように追随する。

マリアベル > 特にこちらに対し話しかけては来ない。
しかし、一定の間隔で尾行は継続している。
すなわち、こちらを監視しているという事で間違いない。

(――ならば)

話を聞いてみるとしよう。
ただし――

(少し、手荒くなりますが)

次の瞬間、獣道から茂みの中へと飛び込み、戦闘態勢を取る。
さぁ、この暗い獣道の中は、暗殺者にとって絶好の地形。
まずは身を隠しながら彼女へと近づいていき

シャロン > 追い続けるその先、暗い獣道に彼女の色が紛れて見える。
風に消えるような小声で唱えるのは、己の内なる力を開放する一言。

『我が眼は、闇を見通す』

唱えればほんの一瞬だけ目に魔力が宿り、暗視の能力を得る。
やがて目の前、気配がさらにか細く変わるのを確認すると、本能で腰の剣に手を伸ばす。
それは恐らく、長年戦いに身を置いていたから感じられる、一種の勘のようなもの。
一歩踏み込み、強引に加速度を受け流して立ち止まり、体軸を戻し、構えながら。

「……手を出されたら、し返しますよ」

一つ言葉を置いて、相手の意識を誘いながら、少女もまた覚悟を決めた。

マリアベル > 「人の監視をしてその言い草ですか?」

その程度の脅しで怯む可愛げなどない。
この女は『フェルザの番犬』。
狙った獲物は逃がさず、引きちぎるまで噛み砕く。
もっとも、今回の目的は生け捕りだが。

「育ちが悪いですね」

自分の事を棚に上げ。
まずは小手調べ。
服の裾から出した小刀を3本。木々の隙間から正確に投げつける。

シャロン > 「……やはり気づかれていましたか。これは失敬」

彼女がこの程度で怯まない様に、少女もまた穏当に済むとは思っていない。
同時に、己が無傷のまま彼女をどうにかできるはずもない。
相手の実力を分かっているからこそ、他を巻き込まないために追ったのだ。
この展開は、半ば目論見通りといえるだろう。

「ふふ、これでもそれなりなつもりだったのですが――」

刹那、小刀が三本、木の間から的確に、己を射抜かんとする。
その芸当には舌を巻きながら、二本を潜るように避けながら、一本を弾き上げる。
きぃん、と高い金属音が響き、遅れて二つの刺突音。
しかし三本目の小刀が刺さる音はせず、代わりに。

「お返ししておきますよ?」

宙の一本に拍子を合わせ、空いた左手で柄を握り、僅かな気配へと投げ返す。
それは、彼女が本気でないから出来た曲芸の一撃だった。

マリアベル > なかなかの実力だ。
これは本気でかからなければなるまい。

「ご丁寧にどうも」

刀身をそのまま掴み袖にしまうと、今度はさらに距離をつめる。
遠距離がダメならば接近戦だ。
静かに、しかしすばやく木々の中を駆け抜ける。

使うのは千鳥鉄、いわゆる鎖分銅だ。
分銅と鎖は唸りを上げて細い木をなぎ倒し、少女へと迫る。

シャロン > 二度閃いた銀は、しかし赤く汚れることなどない。
投げ返した刃は確かに受け止められ、元ある場所へと戻ったらしい。
対価として、彼女の油断が消えてしまったのは非常に面倒だが――。

「……いえ、お気になさらず」

音は彼方から聞こえたが、気配は想像以上に近い。
脳内で彼女の評価を改めながら、一歩後ろに身を引いて。
微かに混ざる金属の擦過音――それに応じるのは、腰に差していた予備の短刀。
空いた左手を音鳴る線に重ねて、そして。

「っ――面倒なものを用いますねっ!」

そのまま左手に鎖が絡みつく。
ぎちり、と締め付けられる感覚を得ながら、しかし少女もまた無策ではない。
そのまま腕を振るとともに、力を籠めた。この鎖の末端、彼女の手元を横に加速させるように。

マリアベル > 捕えた。
普段ならばここで勝負あり、怪力に任せて引き倒す所だが――

「――やはり只者ではありませんね」

鎖をぎちぎちと引くも、押し倒せない。
この怪力についてこれるとは、彼女もまた、何かのちからを持っているのか。

ぎりぎりと、鎖を引き絞り引き倒そうと。

シャロン > 彼女の一手も、少女の目論見も、どちらも上手くはいかなかった。
彼女の凄まじい力は確かに少女を引き寄せるが、龍の膂力がこれをこらえて。
代わりに、少女が引き振った筈の腕もまた、ぎちりと鎖で捕らえられた。

「お互い様じゃないですか?
 あなたの力もまた、常人ではない」

お互いが鎖を引き絞り、一瞬の隙を狙う状況。
実力伯仲ともなれば、そのまま事態は膠着に縺れ込む。

「――それにしても、珍しい物を使いますね。
 先ほどの小刀といい、戦士や騎士と言うよりは、暗殺者のような手合いですが」

均衡を崩さないように力を調整しながら、問いかけの言葉を投げる。
答えるあらばそれで良し、意識を取られるならそれもまた良し。
あるいはそうでなければ、彼女の実力を認めるまでだった。

マリアベル > 「暗殺者ではありません。ええ、私は執事ですので」

そう、執事。
それがフェルザの猟犬の誇りであった。
もっとも、これで意識を逸らしたりはしない。

仕方ない、少し荒い手だが。

開いている左手を少し動かし、ある指輪を起動する。
それは、雷光の魔法を封じた指輪。
そう、鎖を通じて、電撃の魔法を叩き込むつもりなのである。

「ぐ……」

もっとも、こちらもかなりの反動をくらうのだが。
これで倒せれば儲けものである。

シャロン > 「執事――主がどなたかは知りませんが、仕える立場でしたか。
 これだけの強さがあれば、確かに要人護衛位は余裕でしょうね」

何者かに仕える執事が、この様な九頭竜山麓へ繋がる街道を歩いている。
己の胸騒ぎの正体が、少しずつ定まっていくような気がする。
それが現実だとすれば、事態は予想以上に面倒なことになりそうだ。

とは言え、今はこの場を切り抜けることが最優先。
さらに一つ、軽く引いたその瞬間、彼女の左手がわずかに動く。
それに気づいた瞬間、左手から体へと激痛が駆け抜ける。

「――ぐ、ぅっ!?」

強烈な電流が左手から全身を駆け抜けて、少女を苛む。
目の前の彼女も同じように反動を受けるだろうが、総量はこちらの方が上で。
強烈な痛みを堪えながら、少女もまた、右手を彼女に向けて。

『悪しき者を払う槌よ、成れ――!』

放つのは、魔性を祓う為の衝撃。神の威力を込めた槌の具現だ。
不完全な詠唱故に威力は減衰するが、彼女に魔族の血が流れているならば、それなりの威力を伴うだろう。

マリアベル > 半分とはいえ、魔族の血を引いている女。
流石に神の威力を込めた魔法は効く。

「――――ッ!!」

しかし、歯を食いしばりそれを耐える。
そう、執事の恐るべき点は、その耐久と継続戦闘能力だ。
伊達にあのお嬢様の責めを受けながら生き残っているわけではない。

電流を流したままの鎖をさらに引き。
タイミングがあれば、一気に距離を詰め腹に拳を見舞おうとするだろう。
最後にモノを言うのはグーで殴る事だと言わんばかりに。

シャロン > 神聖魔法の効き目に、彼女の力の正体を悟る。
同時に、強烈な打撃を受けて、なお耐えたその気概には称賛を。
強き者には相応の礼を取るのが、元騎士である少女の思想なのだ。

「これを、耐えますかっ……く、ぅうっ……!」

雷撃の損耗は僅かに自分の方が大きいが、総合的に考えれば誤差だろう。
耐久力も、継戦能力も、膂力も、彼女に比べて劣ってはいない。
そして、どうやらこの一瞬だけは、思考もかみ合った様子。
彼女が鎖を引くその瞬間に、少女もまた彼女へと跳躍を仕掛けていた。
急速に距離が縮まる中、少女は剣を落として、右手を備える。
狙うのは彼女の顎。直接打撃を狙うのは、妨害を受けた時に掠らせる幸運を祈るため。
やがて距離が零になる瞬間、少女は右手を振り抜いた。

マリアベル > まったく、賞賛に値する。
まさか、自分に比するものがこんな片田舎に居るとは。
しかし、こちらも引けない戦い。
そして、顎狙いな事が彼女にそのまま攻撃を続行させる決意をさせた。

「――お嬢様の一撃に比べれば!」

そして、渾身の力を持って振りぬく。
同時に、再び雷撃。
今度は腹に押し当て、直接流し込もうと。

シャロン > 二つの影が重なり、衝撃が交差する。
彼女が捨て身ならば、己の攻撃も確かに当たることだろう。
神聖魔法を見せてなお、その攻撃を受けると決めた胆力には感服し、しかし少女も全力を返す。
かつて聖女と称された、強力な法力を込めた掌底――当たっても死にはしないが、ただでは済まない一撃で。

「っ……見事、ですっ――!あ、ぐぅっ!?」

その代わりとでも言わんばかりに少女の腹部に突き立った拳は、そのままめり込み、背中に衝撃が抜けていく。
内臓を潰され、押し上げられ、電撃に比べれば鈍い痛みと、一瞬遅れて不快感が駆け抜ける。
呼吸に至っては一瞬で根を刈り取られ、かひゅ、とわずかな声が漏れ出るばかりだ。

しかし、彼女の一撃はそれだけに留まらない。
空気を弾く音がして、鮮烈な電流が腹から直接流れ込む。
体が反射的に逃れようと蠢き、しかしめり込んだ拳が逃がしてはくれない。
例え半龍であっても、急所に電撃を流されては無事でいられるわけがない。
意識は途絶えずとも膝をつく事は避けられず、呼吸はなおも止まったままで。

体勢が崩れる一瞬、さながら執念の如く、右手彼女に向け、無詠唱の神槌を放つ。
それは、彼女から距離をとるための一手であると同時に、呼吸を整える一瞬を作る仕手。
凌がれればその時は――無防備な身をさらすしかないだろう。

マリアベル > 「いい加減に――」

顎から頭へと抜ける強力な一撃。
まったく、普通の人間ならば死んでいる。
そして、執事にも恐ろしいほどのダメージをもたらした。

だが――
お嬢様の普段の「お仕置き」を耐えるため、身体に強化術式をこれでもかとかけていたのが幸いし、ギリギリで戦闘は可能だった。

「しなさい――!」

そして、その執念の一撃を受けながら。
彼女の頭を掴み、地に伏せさせるべく叩き付けようと。

シャロン > 最後の一手を受けてなお崩れない――それは、少女が至らなかった事の証明。
神ごと頭を鷲掴みにされて、そのまま大地へと叩き付けられる。
ここが街道の石畳であれば、まず昏倒は避けられなかっただろう。
しかしここは森の中、踏み鳴らされていない箇所の多い柔らかな土の上だ。
ごり、と頭が地面を擦り、嫌な音を立てて――しかし、意識は辛うじて保った。

「……か、はっ……げほっ、か、ふ……」

組み伏せられた状態。流石に手練れだけあって、容易には抜け出せない。
やがて、電撃による麻痺が抜けると、呼吸が復活し、咽込んで。
綺麗な金髪を土に汚しながら、乱れ切った呼吸を繰り返していた。

マリアベル > 「――ふぅ、やれやれ」

ようやくおとなしくなった。
見れば、なかなかに可愛い女性だ。
まずは、この女から情報を聞かなくてはならない。

「ん――」

無言で後ろ手に縛り、拘束する。
まずは動けないように。
そして。

「――しゃべれますか?」

意識の確認だ。

シャロン > 後ろ手を縛る手つきは実に慣れたもので、手首の関節は的確に封じられている。
短剣は分銅鎖が絡みついていて使い物にならず、剣も先ほど落としたから距離がある。
楽に逃げ遂せる、などというチャンスは巡ってきそうになかった。

背面、改めて近くで感じる彼女は、予想以上にしなやかで、美麗だ。
自分より背丈は高く、鍛えられた体をしているのは弱った自分でもわかる。
そのまま、背中越しの問いかけには、首を僅かに縦に動かしながら。

「……どうにか。電撃の魔法のおかげで、たまに舌を噛みそうになりますが」

ダメ元で手首を動かしてみるが、ぎしりと縄がきしむだけ。
むしろ、動けば動くほどきつくなる様な気がして、無駄な抵抗は諦める殊になる。

マリアベル > こちらのダメージも大きい。
とりあえずは、呼吸を整える。
幸い、こちらは継続戦闘も可能。捕虜にしたと考えていいだろう。

「結構です――貴女は、チェーンブレーカーのメンバーですか?」

訪ねながら、少女の服に手をかける。
武器などを隠されていては厄介だし、逃亡阻止にも、尋問の手にもなる。
服を剥ぎ取るのは妥当な選択であろう。

その装備品と一緒に、生まれたままの姿にしようとして。

シャロン > 彼女の問い掛けから、その真意を悟る。感じた胸騒ぎは確かなものであったと。
ならば、ここで取るべき行動は何か―― 一瞬の試案の後、表情は変えることなく。

「……お約束通りではありますが、違うと答えておきましょう。
 どちらにせよ、私の言葉を信じるあなたではないでしょうから」

はい、そうです。などと言った所で、真面目に取り合ってもらえるわけがない。
どちらにせよ、彼女が己を尋問し、根負けした頃に吐き出した言葉が真実になるよりほかはないのだ。
服に掛けられる手。己の体を弄る動きは、同時に服を脱がせる役割も果たす。
やがて、一糸纏わぬ姿にされた少女は、滑々とした白い肌を見せながら。

「――く、しゅっ……こ、この寒空で、服を剥がれるのは、辛いですね」

小さくくしゃみを一つして、寒そうに震えていた。

マリアベル > 「――結構です。物分りが良くて、大変助かります」

あれだけの実力を持った戦士だ。
苦痛にも強いし、並大抵の事では口を割らないだろう。
ならば――

袖から道具を取り出す。
通常、メイドの躾に使うモノだが、このような場合にも有効だろう。

「大丈夫です、寒さなど感じなくなります」

取り出したのは、強力な媚薬入りのローション。
ぬるぬるとするそれを、少女の全身に塗りこみはじめ。

シャロン > 「……お互いに、素直に答えそうじゃないですから」

概ね彼女の想像通りだ。少女は苦痛に強く、例え腕を落とされても問いかけに答えはしない。
それ故か、方向転換も非常に速いものだった。彼女が取り出した何か――それが、少女の背中に落ちる。
まず冷たさが駆け抜けて、やがて塗り広げられると、徐々にじりじりと炙られるような熱を覚える。
恐らくは媚薬だろう。龍の体は、媚薬にもある程度の耐性を持つが、半分混ざった人の血が、発情の熱を帯びてしまう。
緩やかな火照りを覚えながら、予想以上の優しい手付きに、密かな歯噛みをしていた。

「――慣れていますね。苦痛では口を割れないと見て、媚薬で快楽攻めですか。
 ん、くっ……それに、手つきが随分と優しくて……心地よいのが厄介です」

少しずつではあるが、確かに媚薬は少女の体を蝕み、劣情を熱に変えていく。
やがて、冷たい夜気には僅かな湯気すら立ちそうな程の火照りを秘めると、肌は桜色に染まる。
秘所も土が湿ってしまうほどに蜜をこぼしており、発情を隠せなくなりつつあった。

マリアベル > 「私も苦痛では口を割らない自信がありますので――」

淡々と応える執事。
そこに愉しみはなく、ただ義務としてしているが如く。

当然だろう。
彼女にとっての愉しみとは、主より与えられる苦痛のみ。
ならば、別方面から責めるのは至極当たり前だった。

「――随分とはやいですね」

発情するのがはやい、体質だろうか。
ためしにとばかり、少女の股間へ手を伸ばす。
湿った割れ目をなぞり、秘芯を見つけ出しこねくりまわそうと。

シャロン > 「……変な所で似てますね。困ったものです」

淡々とした応えは、何やら芯を感じるもの。
恐らくは彼女にも、信じるべき確固たる物があるのだろう。
組み伏せられ、媚薬に蕩けた少女と同じように。

彼女の予想以上に早く蕩けた少女は、しかし存外に理性的だった。
体質として薬の類は回りやすくて抜けやすいし、何より媚薬にも慣れているのだ。
条件反射のように症状が出るものの、狂乱する領域には達さない。
それは、彼女の手を受け入れても変わらず、むしろ粘膜は喜んで受け入れるといわんばかりに絡みついた。

「ん、ふっ……そう、ですか?そればかりは、体質ですから、ね」

差し込まれた指をしゃぶる様に、ねっとりとした絡みつきを与えつつ、わずかな苦笑いをこぼす。

マリアベル > 「なるほど……」

多少弄ってみてわかるが、この少女は快楽にもなれているらしい。
さて、チェーンブレーカーは身寄りの無い人々のよりどころになっているとは聞いたが。
見かけによらず、なかなか壮絶な人生を歩んでいるのかもしれない。

だが、それで同情するような女でもない。

と、なれば、また趣向を変えよう。
人間は痛みに耐え、快楽に慣れる事は出来ても。
これにばかりは耐えられない。耐えられるようにできてはいない。

「――では、少し残酷にいきましょう」

そうして出したのは、再び粘液。
しかし、これはまるで半固体であるかのようなネバつきを見せる。
そう、これは――山芋の摩り下ろしを使った、拷問用具。
すなわち。

痒みを起こさせるものである。

それを容赦なく割れ目に塗りたくろうと。

シャロン > 「……全く、理解が早くて、決断も早いですね」

軽く己の身を弄っただけで、悦楽に慣れている事も看破される。
少女が悦楽を覚えたのは、騎士の頃に受けた苛めにも似た愛玩からだ。
一方的に与えられる快楽など、少女にとっては攻めの苦しみにはならない。

ならば、と再び、彼女の攻め手が変わる。
これは少し、気合を入れておく必要があるなぁ、などと内心で己を賦活した。
どろりとした粘液――白濁としたそれは、人の精液に近い様相だ。
しかし臭いは、生臭いものではなく、むしろ僅かに食欲をそそるもの。
――お陰で、それがどういうものかを理解してしまうと、嘆息しながら。

「……容赦ないですね。まぁ、この状況じゃ、受け入れるしかない、ですが」

無情にも塗りたくられる粘液。ヌルヌルした何かが入り込み、少しののちにひりひりとした感覚が広がる。
秘所は差し込まれた指を条件反射で咥えてしまうため、粘液を塗り広げるのに苦労はないはずで。
やがて、両手を戒められた少女は少しずつ、得も言われぬ痒さに腿を摺り寄せ、我慢を強いられることになる。
じわり、と熱い汗がこぼれて、肌を伝って落ちていく。

マリアベル > 「それが取り得ですので」

けろりとして言うと、次々と身体に粘液を塗りこんでいく。
割れ目に、乳首に、そして窄まりに。
たっぷりと、痒みを与える。
もちろん、腕は拘束したまま。掻く事は出来ない。

「――あらためて聞きます。あなたはチェーンブレーカーのものですか?」

じっと顔を見つめながら。

シャロン > 「……私もまだまだ甘いですね。私はここまで出来そうにないので」

大切なものを守るにはそれだけの覚悟が必要なのかしら、と後日、自分に問答しようと思う。
塗りたくられる粘液は、秘所の中だけでなく、陰核に、乳首に、そしてひくつく尻穴にと広がった。
彼女が尻穴に触れた瞬間、少女の体にはひくりと震えが走ってしまい、そこが弱点だと教えてしまって。
徐々に痒みが強くなり、もどかしさが理性をかきむしる。呼吸も荒れて、伝う汗の量も増えた。
それでもなお、少女の瞳は力強く、一つの深呼吸の後に、少女は。

「……あなたが名前を教えてくれるなら、その問いに正しく答えましょう」

どうせこのまま拷問で時間を潰されれば、限界を迎えざるを得ない。
ならば、情報を提供する代わりに、相手からの情報を得ようと試みる。
何せ、己が話さなくとも、別の誰かが同じ目に合えば、結果情報は漏れるのだから。

マリアベル > 「――教えてもらえると思っているのですか?」

反応からして、肛門が特に感じるらしい。
なるほど、と首肯しつつ。
足を大きく開かせ、尻を突き出させる。
恥ずかしさとともに弱点を責める事としよう。

「まずは貴女の情報からですよ。貴女は、チェーンブレーカーですか?」

そのまま肛門への指を二本に増やし。
粘液を刷り込み、痒みを喚起するようにしながら、ねっとり穿りまわし

シャロン > 「ん、くぅっ――えぇ、思ってますよ……?
 生憎と、私は自死を恐れない性質ですからね」

話をするには口を開けておく必要があり、口が開くなら舌を噛める。
戦場に出ると決めてから、こうなる事も予想している。そして、覚悟も決まっている。

仰向けのまま、足を左右に大きく開かされながらも、少女は彼女を見つめていた。
羞恥はもちろんあるが、それに浸るわけにはいかない。無駄でも足掻くべき時なのだ。

尻穴に指を突き立てられると、慣れた肉穴に様に解れて開き、奥の真っ赤な粘膜を露わにする。
指を二本易々と飲み込み、かき回されれば自然と水っぽい粘着質な音が響いた。
そして当然、弱点を責め立てられれば、いやでも甘い声は隠せない。

「ん、くっ……は、ぐっ――ぅんっ♪んぁ、ぅっ……んんっ♪」

冷たい空気が入り込み、粘膜の熱さがより鮮明になる。
山芋によって爛れた、真っ赤な腸壁は、何よりも脆弱になっていた。

マリアベル > なるほど、覚悟は出来ているらしい。
戦士というよりも、むしろ兵士、もしくは誇りある騎士に近いのかもしれない

「――いいでしょう。私の名前はマリア、です。
 さぁ、貴女の所属を教えてくださいね」

本名ではあるが、全てではない。
少しずつ、こちらが譲歩しているように見せかけ、情報を引き出す。

指を使い、こね回し、たっぷり解す。
そして一度指を抜き、先ほどのローションを窄まりへあてがう。
直接腸内に注ぎ込み、中を浣腸のように洗浄してしまおうと。
もちろん、それで痒みは取れないだろう

シャロン > 「……本名、ではないかもしれませんが、それを確認する術はなし。
 ならば、私は信じますよ。私は、甘ちゃんで人を信じやすい性質ですし」

自分から言い出したのだ。彼女の誠意を無碍にするのは、礼を失する。
こほん、と咳ばらいをすると、視線を合わせつつ。

「――確かに私は、チェーンブレイカーです。貴方の読み通りです。
 わざわざそれを聞きたがるってことは……面倒事が多そうです」

少女もまた、彼女の誠意に応じるように、言葉を紡ぐ。
ここまでは想定済み。誰が捕まっても同じ情報になるのだから。

ゆっくりと解された肉穴。その入り口に、瓶の口が宛がわれる。
硬質で冷たい感触があり、次いで僅かに腰を持ち上げられると、中の粘液が自重で奥に入り込んだ。
徐々に冷たい液体が腹の奥に広がって、圧迫感が増していく。
そして、粘膜と媚薬がふれあい、痒みがより鮮烈に変わって。

「ふ、ぁ、ぁあっ……く、ぅっ――ぅ、んんっ♪ん、んぅうっ♪」

かつて、騎士だった頃に散々教え込まれた浣腸の悦楽は、少女の性的快楽の根幹を作り上げているもので。
それ故に反応も著しく、懸命に隠したはずの声はくぐもりながらも蕩けきった、雌の色香を帯びていた。

マリアベル > 「――結構です。では次です。
 貴女たちチェーンブレーカーは、ミレーの奴隷脱走に関わっていますか?」

チェーンブレーカーと、案外あっさりと吐いた。
そこまで強固な組織ではないのか、それとも彼女が他の誰かを庇っているのか。
いずれにしろ、掌中に居るのならば問題ない。

「ここ最近、奴隷商人や貴族のもとからの、ミレーの奴隷脱走が増えています。
 あなた達チェーンブレーカーの手引きで、匿っているのはこの先の九頭竜山脈、あなたたちのネグラですか?」

たっぷり浣腸をいれたら、再び指をねじ込む。
まるで馴染ませるように、そしてかき混ぜるように。
じゅぶじゅぶと卑猥な水音が立つようにしながら、たっぷりこねまわし。

シャロン > 「……んー、ぁー……これは、ちょっと困りましたね」

少女は確かにチェーンブレイカーだが、どちらかと言えば武力解決しかないときに投げ込まれる人員だ。
ましてや少女は、高邁な理想や誰かの信念に感服して行動しているわけではないから、活動の詳細は知らないのである。
それは、少女が誰かに捕まった時に、情報を話せないようにする、ということで、自分から言い出した話。
その結果、少女はいま、詳しく知らない事情に関する質問に、しかし答えなければならない立場となった。
思案し、その上で告げるのは、少女が組み立てた客観的な事実―― 一応、嘘は、ついていない。

「……詳しくはわかってませんが、我々が奴隷解放を称して、戦端を開いたことはないです。
 ですから、私が知っている情報だけでは、ノーと答えるしか、ありません。すみません、です」

痒さがじりじりと腹の中をくすぐるのを感じながら、徐々に脂汗が増える。
注がれたら、出したくなってしまうのは至極当然の帰結なのだから。

「ん、ぁっ……それ、は……そもそも、逃がす方が、悪いと思うの、ですが。貴女なら、逃がさないでしょう?
 その上で、言うなら……害を及ぼさない限り、来る者を拒まないのが、我々、です。それは、調べればわかってしまう事実です。
 ですから、結果的に、匿っている可能性があるのは、否定はできないかと、思います」

そもそも、運よく何らかの事情で逃げてきたミレー族がもともと貴族のものでれば、匿ったという事実はできてしまう。
ならば、そこを否定しても何れは分かってしまう事実であるし、そもそもが推論である。信憑性があるかは、信じる側の彼女次第だった。

「ん、ひぁっ、ぅ、ぁっ――は、ぅっ♪ぁ、うぁ、ぁああっ♪
 貴女の、主人は……我々と、ん、くぅっ……事を構える、おつもり、ですか?」

たまにかき回されると、痒みが悦楽に代わってひどく心地よい。
指を咥え込んで離さない貪欲な穴は、根元まで欲しいと言わんばかりに吸い付いて。
ひくひく、と震えながら、少女は強くなる痒みと戦い、与えられる悦楽に悶えることとなる。
その中でも、一つでも多く問いかけようと、少女は思考を回し続けていた。

マリアベル > 「――なるほど。統一意思として、階級闘争を仕掛ける気は無い、と」

ふむ、と少し考える。
この少女の言う事に嘘はあるまい。
つまり、チェーンブレーカーはそこまで統制の取れた組織ではなく、多少なりとも『ゆるい』組織であるという事だ。
個々の事情を斟酌し、受け皿になっているという事だろう。

今の所は。

(しかし、その存在がミレーの逃亡に一定の方向性を与え、希望を持たせている事も事実、という事ですね)

逃亡奴隷を匿っているなら、それ自体罪である。
もっとも、表向きは第九師団のあの竜直轄領となっている。主といえども、手出しには手順が必要になるだろう。

「――いいえ。事を構える、ではなく、『もう事を構えている』です」

そう、主が興味を持ったのならば。それが始まりの合図なのだ。

肛門の収縮から、出したがっているのが分かる。
更なる快楽を与えるため、尻を突き出させ、そして指をゆっくり抜く。
さて、いつまで耐えられるだろう?

シャロン > 「……一筋縄な、殴り合いでは、解決できませんからね……ん、くっ……。
 それこそ、内紛とでも言うべき、惨憺たる様です。漁夫の利、なんて言葉もあります、から。
 なにより……は、ぐぅ……我々を殲滅、しても、メリットだけでは、ないですよ?」

無論、理詰めで応じるならばこのような状況になってはいないだろう。
ならば、少女から言えることはただの私見に他ならない。何せ、旗振り役は他にいるのだ。
少女の役割はただ戦い、ただ守ること。その結果などは、最初から気にしていないのである。

「――その言い方ですと、貴方の主は、白を黒と言える方、らしいですね。
 相当の権力者……でなければ、わざわざちょっかいをかけようなんて思いませんものね。
 あるいは、あらゆる物を楽しもうとする、刹那的な快楽主義者か、ですが……く、ふぅっ……」

言葉を重ねれば重ねるほどに、時間が経過し、少女の腹が鳴動する。
ただでさえ一糸纏わぬ姿で冷やされている上に、粘液を大量に注がれているのだ。
最早、一刻の猶予もないほどに、少女は追い詰められている。表情などは蒼白気味で、震えが止まらないほどだ。
それでもなお果断に問いかけると、やがて、指を抜かれた穴は戦慄き、意思とは無関係に粘液が噴出した。
やがて、それははしたない水音とともに奔流に代わり、透明な排泄を彼女の前で露わにしてしまう。
その悦楽は、散々叩き込まれているからこそ過敏に反応してしまうもので。

「へひゅっ、ぅ、ぁ、ぁあっ♪かゆいの、こすれてっ♪んぃ、い、ぃぅ、ぁ、ぁああぅ♪」

やがて、注がれた分を出し切ると、放屁に似た音をこぼしながら、緩んだ穴が花開く。
今回は偶々、ローションだけを吐き出したが、腹はきゅるきゅると蠢いていて。
排泄を主眼に置いて執拗に攻め立てられてしまえば、これ以上の粗相――女性ならばさらしたくないものををさらしてしまうことも必定だった。

マリアベル > 「生憎、我が主はメリットを求めません。求めるのはただひとつ、己が満たされる事だけです」

そして、何で満たされるかなど、主しか分からない。
主の事を理解できる者など居ない。
何故なら、主が望むままに振舞う事こそ、この執事の全てなのだから。

「さて、では最後の質問です」

言いながら、容赦なく少女の腹を手で押し込む。
そう――禁断の、排泄の快楽。それで情報を引き出そうとしているのだ。
念入りに山芋を塗りこんだ肛門から排泄を行えば、恐ろしい快楽が頭を染めるだろう。

「あなた達チェーンブレーカーの戦力、武器に関して、知る限りの情報を吐きなさい」

シャロン > 「……それは、面倒事が増しますね―― 一番、厄介なタイプです」

ある程度の権力の保持者で、なおかつ己が満たされることを第一とする。
そこまでならばそれなりに多くいるが、一共同体に喧嘩を吹っ掛けるレベルとなると、流石に絞られてくる。
軍を、兵を、率いなければ、喧嘩はできないのだ。それはつまり、一団を率いるだけの財力や権力を持つことの証明。
そこまで思考して、少女は一瞬だけ心底めんどくさそうな顔をする。それは恐らく、素なのだろう。
彼女の主は理解できないが、なんとなく彼女自身は理解できる気がする。こうして敵対しているのに似通っているのだ。

「う、くっ……意地悪、ですね……私が、この恥辱を受け慣れてると知っていて、餌にしようとしてきます」

少女の体は執拗に開発されており、排泄ですら絶頂を覚えられる。
それ故に、今更彼女に排泄を見られたとしても、羞恥が増えるだけで立ち直れないほどではない。
しかし、同時に今の少女の生殺与奪は彼女にある。ならば、彼女の問いには。

「……武器については、私は剣や法術で戦えたから、他の物を見てもいないです。一応、訓練していたのを見て、銃があるのは知ってますが。
 ん、ふぅっ……く、ひぁっ♪――戦、力は……とりあえず、私の周りだと……私より強い人も、それなりに、いますよ?」

頭の中で警鐘が鳴るような錯覚がして、腹痛が徐々に降りてくる。
とどめを刺されれば、あとはここではしたなく、惨めに粗相をさらすしかない。
それ故、少女は可能な限りを答えると、後は彼女の決定に任せることにした。

マリアベル > 「――なるほど」

戦力は思った以上。
そして、ミレーの隠れ家になっている。
これで目的の情報の入手は完了した。
あとは――

「――では、ご褒美です。どうぞ、はしたない姿を晒しなさい」

思いっきり少女の腹を押し込む。
この場で排泄させ、羞恥を刻み込む。
そう、その必要が、この執事にはあったのだ。
それは――

「ひりだしなさい、下賎の者らしく、犬のように」

シャロン > 「……ご希望に、添えたようで、何よりです」

苦笑し、そして腹部への圧迫に目を見開く。
同時に、もはや締まりなど殆ど無いほどにほぐれ切った穴から、どろどろとした不浄が零れ落ちた。
やがてそれは、徐々に量を増して、土の上に積り、広がっていく。

「うぁ、ぉ、ぁ、ぁああっ♪く、ひぅっ、ぅ、んんっ♪ん、うぅううぅっ♪」

広がった泥濘は、相応の臭気を伴い、それが汚穢であることを周知する。
そして少女は、汗に塗れて、法悦の喘ぎを零し、やがて事後の余韻に陥る。
この程度で屈服する少女ではないが、敗者としては相応の姿かもしれない。
そう思うと、少女の被虐欲求が湧き出して、体が震え、甘い痺れが駆け抜けた。

マリアベル > 「――さて」

情報は入手完了。これで、相手が明確に『敵』だと分かった。
そして、少女に羞恥と、屈辱を刻みこんだ。
これで、あとひとつ。

――敵の首魁への、伝言をしなくてはいけない。

「いいですか、チェーンブレーカーの主、アーヴァインという男に、これを見せなさい」

そう言うと、執事は少女の下腹部に指を這わせ始める。

それは、淫紋。
通常は快楽を与える印を刻むものだが、今回は文章を刻む。
期限は、男がこれを見るまで。
そう。

主、シャーロットからの、宣戦布告文書である。

『下賎の犬が、人間に逆らう事の無意味を知れ』

「見せなければ、これは消えません。貴女は夜毎に身体を火照らせ、やがて歩く事もままならなくなるでしょう」

もっとも、所詮執事の刻んだものである。
神官が本気を出せば、解呪はたやすいだろう。

シャロン > 「ん、くっ――ふ、ぁ……♪」

絶頂後の放心は、流石に消すことができない。
それ故か、腹部に刻み込まれるものを、ただ見つめるしかなかった。
彼女に誤算があるとすれば、一つは、少女が普通のチェーンブレイカーとは別の扱いを受けていること。
そしてもう一つは、既により強力な淫紋をその身に宿していたことだろう。
しかし、その文章は装飾として確かに少女へと刻まれて、肌の上に残り続ける。

「……まぁ、手配はしましょう。期待に沿えるかは私の手の上ではないので、保障出来ませんが……。
 それに、面白がられて立てなくなるまで放っておかれる可能性も……ありますねぇ、多分に……」

とは言え、彼女の伝言は確かに受け取った。ならば、どうにか動いてはみようと思う。
ともあれ、今日ここで口にすべきなのは――。

「……それでは、これは個人的に、私からマリアさんへ。
 ――私はシャロン。シャロン・アルコット。名を聞いて名乗らずは、礼を失するので。
 それと、今回は負けましたが次は負けません。勝ったら……仕返ししますのでそのつもりで」

などと告げて、後ろを向いて縄を示す。
貴女なら、騙し討ちなどせずに切ってくれるでしょう?という信頼を込めての仕草だった。

マリアベル > 「なるほど、シャロン。
 では、伝言を頼みます」

小刀を取り出すと、縄を切る。
それ以上は、自力で帰って伝えてもらうとしよう。
――何せ、お互い敵同士だ。

「それでは失礼しますよ。
 ですが――はやめに手を引く事を、オススメしておきましょう」

それは、執事の最大限の気遣いであった。

そして、援軍が来ても厄介である。
目的を果たした執事は、風のようにその場を去った。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からマリアベルさんが去りました。
シャロン > 手が自由になれば、感触を確かめ、彼女を見送る。
どうせ追っても、本気で駆けられれば追いつけない。
ならば、身を清め、残された服を纏い直し、剣を佩く。
そしてもう一度、彼女の去った方角に視線を向け、呟く。

「……ん、お気遣いはありがたいですが、手を引くというのも中々無理があるのですよ。
 何せ私は、旦那様の物ですから、旦那様の赴くままに。そう決めているのです。
 とはいえ、えぇ、次は負けません。負けませんとも……!」

小さな音は風に掻き消え、少女以外には聞こえない。
やがて、周囲の空間を法術で清めると、守るべき場所へと駆けてゆく。
その後、伝言が正確に伝わったかどうかは、全て最愛の旦那様次第だ。
何せ、気に食わなければその力で、すべて食い破ってしまうのだから――。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からシャロンさんが去りました。