2015/10/28 のログ
■アイ > シイニエの言葉にニコニコと、元気な孫を眺める婆のような微笑み。
「そうか、嬢はシエニィか。ばばはの、アイじゃよ。藍色と同じ意味の、アイじゃ。
人間にも、魔族を捕まえれるような輩が少なからず居るでな。
充分、気をつけるんじゃよ。」
軽く手を振ると、アイの白い肌はスイと夜の闇に溶け込んで見えなくなってしまった。
■シエニィ > 「はぁい、アイね~。よろしく~!
捕まるのは勘弁だし、殺されるのはもーっと勘弁だけど、まぁニィは逃げ足にも自信あるから。
それにニィは別にそんなに悪いこともしてないしー、捕まえられる謂れもないハズ!
まぁ、王都にはあまり近づかないようにするよー。アイも気をつけてね~」
ふわりと消えゆく少女に、シエニィは四肢をぱたぱたと振って見送った。
「……んー、久々に他の魔族に会ったかもー? なかなか不思議な感じの子だったかもー?」
口の中に残った先走り液から、アイさんの味を見出そうと舌を転がすも、あまりうまく行かない。
唇を尖らせてコクリと嚥下すると、中空でバック転し、シエニィもその場を離れた。
「ちんぽ~ ちんぽ~ 旅で疲れた汗だくちんぽ~♪
……あ、こういう歌うたってるからちんぽ売りって勘違いされたのかな? にひひ……」
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からシエニィさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からアイさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にルーキさんが現れました。
■ルーキ > 「―――やれやれ」
剣を収める。道端の草むらより飛び掛ってきた盗賊やらを切り伏せた所。
死体の首ねっこを引っつかみ、適当に放り投げておく。
物好きな魔物が持っていってくれるだろうとの適当な期待。
「どんな立場であれ、物騒なことは変わらんな」
オッドアイの少女はそう呟き、再び歩き出す。
向かう先はヤルダバオートの方角。とんと其方は訪れたことがなかったからであるが。
■ルーキ > 「道に迷ってしまうのも困り者だが……」
生憎と、王都から外れれば其処は未だ慣れよりも戸惑いが先に来る。
道に迷って立ち往生――ということだって有り得る。
正直なところを言えば、方向感覚は決して良くはない。
それもまた遠出の醍醐味、と言ってしまえば楽だが。
一旦立ち止まり、道脇の巨木に立ち寄る。
幹の傍らに立ち、辺りを見渡してみた。特に誰の姿も無い。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にキスカさんが現れました。
■キスカ > 断末魔の悲鳴が聞こえた気がして、その現場へと駆けつける。
事切れたばかりの骸。躊躇なく斬り込まれた致命の傷には剣客の技量を感じた。
湯気が立つほどに暖かい血の臭気を振り払い、痕跡をたどり追いかけていく。
「――――ルーキ!!」
どこか所在無げにたたずむ姿。緑色の髪。
それだけじゃない。あたりには、力ある魔性の気配が。
見慣れた顔をみつけても、神経がじりじりと焦れつくような感覚は消えず。
刀身が大きく湾曲した山刀を逆手に抜き、背中を向けて死角のカバーに入る。
「油断大敵だよ! まだ何かいる。すぐ近くに、たぶん…よくないものが」
■ルーキ > 先程の盗賊の悲鳴を脳内で反芻したところ、かかる声に顔を上げる。
カバーに入った彼女の背を見遣り、瞬いた。
「………キスカ?」
すっかり見慣れた顔、聞き慣れた声を耳にして口元が緩む。
が、よくないものと聞かされれば思わず辺りを見渡した。
「…そうか? わたしは何も感じないが―――」
呟き向き直るその瞳が、以前とは異なることに気づくだろうか。
左は真紅、右は薄紅。
瞬く度に点滅し、怪訝そうな眼差しが彼女を見据える。
■キスカ > よからぬもの、と言ってみたけれど、その正体はわからない。
ざらざらと危険を告げるシグナルだけが鳴り響いたまま。
獣の耳をそばだて、五感の知覚レベルを最大限鋭敏にして違和感の源を探し求める。
彼女に合流してからのわずか数瞬。どこかにおかしいところはなかったか?
その魔性は、今もどこかで息をひそめてこちらの様子を伺っているはず。
ぴり、と粟立った肌に針刺すような痛みが走る。
弾かれたように顔をあげた。
愚にもつかない冗談みたいな可能性。……可能性のひとつ。
彼女と共有してきた記憶のすべてが否定するもの。
背中に視線を感じれば、シグナルは耳を聾するばかりに高鳴っていく。
山刀を握りこんだ手のひらに冷たい汗がにじみ始める。
「―――あのさ、ルーキ。ヘンなこと聞くかもだけど、最近…なにかあった?」
■ルーキ > 彼女の感じている「よからぬもの」が自分だということに、数瞬遅れて気がついた。
冗談みたいな可能性は、ただ背を見つめて佇んでいる。
「――最近、か。……あったね」
問われれば、むき出しの白い――彼女にも劣らぬ程に白い肌を、腕を擦りながら応える。
「簡単に言ってしまえば。……わたしはもう、人間じゃないってことだ」
■キスカ > 「そっ、かぁ……」
その答えはひどく遠い場所から聞こえるみたいで、視界が墨を落としたみたいに黒ずんでいく。
「だったら何になったのさ? それって―――」
山刀を握りこむ。肉厚の刃は手の中で重たく、鈍い光を放っている。
もう人間じゃない。
ルーキの言う通り、発散される存在感は怪物のものに近い。
底の見えない断崖絶壁を前にしているような得体の知れなさにゾクゾクと震え慄く。
「殺せるかな?」
白い靄のような残像を残して小柄な姿が掻き消える。それもわずかに一瞬のこと。
全身の筋力をひとつなぎのバネに変えて、春風を斬るような静けさに満ちた袈裟斬りを叩きこむ。
■ルーキ > 「―――人形」
端的に告げる。今の自分を表すに最良であろう言葉。
剣を抜く動作は無く、ただ佇むのみ。
瞬間、彼女の姿が掻き消えた。
小柄とはいえ、己とそう身長も変わらない。
その全筋力が乗った袈裟懸けの一撃を、腕で受け止めた。
正確には腕から突き出た隠し刃で。
「……殺す心算か?わたしを」
静かな口調で問いを発す。
それは今迄の会話と何ら変わることのない。
■キスカ > 「あっ、は―――なにそれ!? やだやだ! 人形なんか大ッ嫌い!!」
「きれいな人形は嫌い。どんなに欲しくたって遠くから見ていることしかできなくて」
「……私には、絶対に手の届かないものがあるって教えてくれたから」
「でもほら、お下がりの人形もちょっとイマイチだし?」
腕を飛ばして臓腑を断ち、そのままばっさりと抜けていくはずの斬撃が止まる。
「そのはずだったんだけど…よく考えたらさ、私に君は殺せないんだ」
「だって、お人形さんなら《壊す》のはず」
他愛もない世間話の続きみたいに、親愛の情すら込めて微笑む。
「人形は好きじゃないけど、ルーキの人形なら好きになれるかも」
「だからさ、遊んでよルーキ! それがお人形さんの仕事でしょ?」
無骨なくろがねが噛み合い、隠し刃を圧し折ろうと力をこめる。
■ルーキ > 「おやおや。早くも嫌われてしまったかな」
「……わたしも言ってしまえば、人形は好きじゃなくてね。…あぁ、この身体は別だな?」
斬撃を止める。きりきり、と噛み合う刃。
此方も力を篭め、暫し拮抗する。
「……なるほど。それじゃ、わたしを壊すか?」
「―――…」
親愛の微笑を見返す瞳が細くなる。
隠し刃が折れるより先に横に払い除け、剣を抜き、追撃の刃を振るう。
「いいよ。遊ぼう。そしてわたしを……わたしという人形を好きになれば良い」
「わたしだって、キスカが好きだよ」
戯れるような口調は、どこか楽しげに。
■キスカ > 「やった! 相思相愛だね!!」
剣が牙なきヒトの牙ならば、山刀はさしずめ剣虎の牙のようなもの。
リーチにかける分、肉厚の刃は鉄の暴威を味合わせるに余りある重量を持つ。
刀身で受けて、斜めに斬り払うと同時に火花が爆ぜる。
「人形遊びってさ、私はじめてなんだけど何からすればいいのかな?」
「おままごと? お医者さんごっことか? 腹話術?」
「んーっと…じゃあルーキちゃんおなか出してみよっか??」
片手剣の間合いのさらに内側。
ルーキのふところに肉薄して、はらわたを根こそぎもぎ取るような横薙ぎの一閃を振るう。
「人形ってどこが弱いのかな。つぎ目とかあるの? 見てみたいなー」
好きの反対は無関心。殺意の反対も大体同じく。好奇心に目を輝かせてオッドアイを見上げる。
■ルーキ > 「……ふふ、そうだな」
剣虎の牙。刃を打ち合わせる度に火花が散り、その重量が伝わる。
剣が斬り払われると同時、もう片方の剣も抜放つ。
「……おなかって、今か?」
「わたしに訊くな。人形遊びなんてしたこともない」
更に内側に肉薄するならば、一歩後方に退き、空いた剣で一閃を受け止める。
「こらこら。そう急かすな」
「これが終わったら、身体でも何でもじっくり触らせてやるからさ。いいだろう?」
■キスカ > 「こないだより反応がよくなってる気がする! もしかして全部見えてる?」
見抜かれている、という感じがあった。
ときどき意図的に殺気を散らし、風に舞う鴻毛のように軽やかな無色透明の刃を叩き込む。
並みの剣士なら下手に合わせようとして錯乱する一手だ。
「へー、私のお人形さんになってくれるんだ? 太っ腹だねー!」
……それだけじゃ壊せる気がしない。
そもそも人形って言葉通りなのかとか、材質は何かとかわからないことだらけで。
ただひとつわかるのは、ルーキの中身はまるっきり変わってないということだけだった。
「―――今ここで壊れちゃってもぜんぜん平気。大丈夫だよ」
「私も約束。ちゃんと大事にしてあげるからさっ!」
弾かれて飛び退り、追撃の牽制に七本の投げナイフを続けざまに投擲する。
その中に煙玉を忍ばせて放つ。衝撃を受けて破裂すれば半径8メートルは白い闇に包まれるはずだ。
■ルーキ > 「あぁ。この間に比べれば、十分よく見えるようになったよ」
嘘を言っても仕方が無い。人形の視野は広く、反応は並の人間とは比べ物にならぬ程。
剣戟からは、彼女を深く傷つける心算は無いという甘さももしかしたら伝わるかもしれず。
「そうか?キスカと遊ぶのは楽しいし、わたしとしては全然構わないぞ」
ウィン・ウィンの関係と主張する。
触れればわかるが、皮膚の質感は人間のそれと明らかに異なった。
水晶の皮膚、オリハルコンの骨。己が主と同様、水晶の騎士。
「―――わたしが壊れたら、キスカが持ち帰ってくれるのか?…ってな」
「ありがとう、嬉しいよ」
「そうそう、力も強くなったぞ。……試してみるか」
投げナイフは、仕込み刃を飛ばすことで全て叩き落す。
中に潜んだ煙玉が破裂し、白い闇が辺りを覆った。
一、二歩程後退し、辺りを見渡してみる。