2015/10/22 のログ
■エルレストベーネ > (そのために特に理由もなく、どこにでも行きどこでも彷徨う
特に、なにか知っていそうならなおのこと良い
相手の素性などどうでもいい
知っているかどうかのが大事だからだ
必要なら奪いとり、奪い取られ、抱くし、抱かれる
一人で歩くのもそのためだ
何か一家言あるような奴が関わってきやすいのだから
とはいえ、単に体目当てでそれ以外使い道がないような奴の選別は行う必要がある
そういったクズに用はないし、時間の無駄だ
ただ、少女は生物より美しすぎる芸術品であるがゆえに、余計な警戒も生んでいるが故
案外に関わりを持ってくるものが少ないことは悩みどころではあったが)
■エルレストベーネ > ……ん、こんなものかしら?
(何もなければないでさして問題はない
よくあることだ
何かそれで焦るようなことでもあればまた違うのだろうが
残念ながらそういったこともない
人形はその状況すら楽しんでしまう
嫌だ、と思う事自体ほとんど無いのだ
あったとして条件的に困る、とかそういったものである
この辺は賊もいるし何が起こっても不思議ではなかったが
目立ちすぎる女で一人、というのは逆に警戒されているのかもしれないが
それはそれとしてどうというわけでもない
もっとも、魔族として身を隠すでもなくむしろ見せつける辺りがそうさせるのかもしれない)
■エルレストベーネ > ……この辺りまでか
(それほど遠出まではする気はない
となるとこの辺で引き返すべきだ
もともと当てがあるわけでもない
特に場所に理由があるわけでもないのだ
知っていそうな人がいそうな場所へ行き、知っていそうな人に答えを聞く
それだけだ
逆に言えば、帰り道でも誰かに会うかもしれないしそうでないかもしれない
そもそも人がいるから答えを持ってそうな人がいるかどうかもわからない
人ではなく魔族が知っているかもしれないし、力がないものが知っているかもしれない)
■エルレストベーネ > (だからといって森がなにか応えるわけではない
運が良ければ賊や迷い人や旅人や逃亡者がいるだけだ
相応に近くて遠い場所であるから、身を隠すにも程よく、街道筋もあって
あとは運次第だ)
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」に◻◻◻さんが現れました。
■◻◻◻ > 「…………?」
夜闇に呑み込まれた暗い暗い森のなか。
その中に僅かに浮かぶ小さな明かりに引き寄せられる様に現れたそれは、木々の隙間から
じぃ……とその様子を見つめていた。
それは、興味の視線であり……同時に、餌を見つめる、餓鬼の視線でもあった。
■エルレストベーネ > ……?
(視線を感じる
正確には感じるというより、意図的な視線を受ければ反応するようにできている
愛でる対象物であるべき人形が視線に気がつかないなどあるべきではないからだ
故に、気がついてはいるが、気が付かないふりをしたまま馬を歩かせる
出てこないのであればそもそも相手にする必要もない、そう言う相手だ)
■◻◻◻ > 「…………」
ブカブカのマントと長く伸びた髪を……先だってのやり取りで壊れた体は縮んでしまい、残った部分がより集まった体は小さくてアンバランスだ……引きずりながら、見失わない様にそれに追いすがる。
そう……あのとき、確かに熱を得ることは出来た。
だが……小さなからだでは、それは直ぐに冷めてしまい……それに呼応するように、ソレの意識は再び飢えに蝕ばまれる様になってきていた。
だから……あの影。
良く分からない動く何かと、それにくっついているもうひとつ。
あれがもっているものが、目の前にちらつかされた餌が、
失った筈の熱となって意識を駆け巡っていた。
「…………る、ぐ」
……飢えに押されたか。状況に飽いたか。
隠れながら様子をうかがっていたそれは、進む向きを変えると……
そのまま、歩みを進める馬の正面へと回り込んだ
■エルレストベーネ > ……魔物のたぐいですか
邪魔するなら斬って落としますが?
(少女はそれ自体がマジックアイテムであり魔法の武器でもある
となれば、怯む理由がない
そもそも怯むという感覚はないのだが
ともあれ、目の前にただ立つだけであれば、邪魔である
話せないのであれば答えも知る由がない)
■◻◻◻ > 「……」
言葉に僅かに反応し
「……?」
しかし、キッテオトサレルということの意味が分からない。
以前聞いた言葉と同じ音が使われている様に思うのに、
その中にある何かは全く違うように感じる。
僅かな疑問は火花の様に弾け、しかしそのささやかさ故に無視された。
故に……とる行動は1つ。
道を塞いだまま、その小さな両手を掲げると、ぺたん、と軽い音を立てて地面に張り付ける。
瞬間……冷気の迸る僅かな硬音を道連れに、
吸熱によって凍てつかされた大地が、白い色彩となって人形の操る馬を目掛けて殺到した
■エルレストベーネ > ……!?
(吸血馬故に、足が固められようと煙に変わる
もっとも、この相手は面倒そうだ
馬を降り、その少女らしきものと相対する
少女の鎧も服も少女の創りだすアイテムであり性質を同じくする一部だ
氷に影響されないわけではないが捉えられることなく降り立つ)
氷……か
あの者も冷気だったが
(先日出会った騎士崩れのような彼を思い出す、がここまでではない
一瞬でここまでするとなると相応の力はあると見ていい
カンテラを置き、剣を構える)
■◻◻◻ > 「…………?」
目の前で起きた現象に、僅かに首をかしげる。
止まればいいと思って狙いはしたが……それでなくてもわかりづらかった大きなものが、
今は影も形も感じられなくなってしまった。暖かさもなければ、何もない。
消えずに残ったもう1つは、固まらずに、そしてそのままその場にいる様だ。
こちらに何かを向けている…………何だろうか?
「い、き……?」
疑念に呼応するかの様に、冷気に犯された白はピタリとその侵食を止める。
そのまま、小柄な影は僅かに動きを止めていたが……
何を思ったか、そのまま、目の前の少女目掛けて一直線に駆け出してきた。
何の捻りも工夫も見られない、文字通り突っ込んでくるだけの単純な軌道。
切り払うことも、回避することも容易だろう
■エルレストベーネ > (基本的に人形の剣技は受けることを良しとしない
止まる動きは美しくないからだ
向かってくるのであればいなすように回避しつつ剣を振るいながら距離を取るだろう)
何を求めているのかは知りませんが
そうしたことであれば容赦はしませんよ?
(敵であれば切り捨てても構わないだろう
その魔法の水晶の刃は敵であれば誰であろうと傷つけるかもしれない)
■◻◻◻ > 突進を回避しながら振るわれた、美しき人形の放つ華麗なる剣技。
魔法の水晶で出来たその刃は、突っ込んできた小柄な影に、
何の抵抗もなく食い込み……そのまま、何の抵抗も感じさせずに走り抜けた。
斬り飛ばされた一部が冷ややかな夜の大気に跳ね……
残った体は、勢いのままに前進して、そのまま地面に倒れこんだ。
軽い音を立ててゴロゴロと地面を転がり……そのまま動きを止める。
そのとき……小さな体が、カンテラを巻き込む様にしていたことに、
もしかしたら気づけるかもしれない
■エルレストベーネ > ……ん?
明かりを奪う気か?
あまり私には意味が無いぞ
(人形に昼も夜もあまり関係はない
そもそも暗殺対応もできるのだ
夜目を利かなくすることはあるが、必要があるならどこでも見ることは出来る
しかし……妙な手応えではある
適度に切りはしたが、切りすぎてもいないはずだ
ゆっくりと剣を構え直す)
■◻◻◻ > 「……っ」
ぎこちない動きで、影は僅かに身を起こす。
夜を見通すことが出来るならば……切り裂かれたボロボロのマント。
その裂け目から覗く肌が……そして、斬り飛ばされた体の一部、その断面が黒い液状になっていることに気付けるだろう。
斬り飛ばされた一部、水の様な断面が僅かに震え……
瞬間、その場でドロリととろけると、流れる水のように小さな影へと戻っていく。
影自体は、その現象を意に介した様子はなく……
威嚇するような視線を向けつつ、巻き込んだカンテラをぐいぐいとひっぱり、中の火種をとりだそうとするだろう。
■エルレストベーネ > ……んぅ?
(そこで様子がおかしいことに気づく
先ほどの攻撃に対しあまりにも行動が幼く拙い
通常であればカンテラを割るなり何なりするのだろうが、それをしないのだ
むしろ困っているようですらある)
……コレは、こうするものよ
(近づくと、カンテラの蓋を開けてやって、炎を晒してやる)
■◻◻◻ > 「!」
自然に近づいてきた動作に驚きと警戒を見せるが……
しかしカンテラの蓋が開かれ、中の炎が晒されたことで、
警戒の意識が僅かに緩まった。
そのまま、近くにいる少女のことを気にするような……
敵意や警戒の気配が薄れていることは分かるだろう……
仕草をしつつ、晒された炎をじい……と見つめる。
もしも、その目を見たならば……その中に困惑と歓喜、
そしてその下に黒々と渦巻く、ぬぐいがたい飢えの感情を垣間見ることが出来るかもしれない。
■エルレストベーネ > ……どうしたの
欲しいんじゃなくて?
まあ、燃やしたままのほうがいつまでも明るいけれどね
(中の物を取り出したがっていたはずだ
それとも、このままのほうがいいのだろうか?
いずれかは分からないが、このままのほうが一瞬で消えたりはしない
……と、そういう事は言う
少なくとも火は燃えている以上熱を出し続けるのだから
何にしても好きにさせてやってみる)
■◻◻◻ > 「……ぃ……ぁ」
水が波打つ様な、こぽん、こぽんという響きが、
微かに聞こえる声に似た音に混じる。
このまま燃えていても、確かに欲しいものは……熱は得られる。
だが、それを得てしまえば、これは無くなり……そして、また飢えることになる。
それは、影にとっては耐えがたいことだった。
このままにしておいたならば、消えることはない……その言葉に、
瞳に僅かな理解の色をにじませた。
飢えがわずかながら緩和されたことでおとなしくなったのか、
問答無用で襲いかかってきた時に比べれば、動きが緩慢に見えるだろうか
■エルレストベーネ > ん……となると
薪を集める必要があるわね、コレは
(氷も熱を奪っったものなのだろう
そう思うと、コレではおそらく足りない
コレは、吸血馬はなしだな、と思い、馬だけを走らせて帰す
昼間まではずっとこのままだろう、動く訳にもいかない
そして吸血馬は昼間は使えない、徒歩で帰ることになるだろう
仕方ないのでとりあえずカンテラを放置し、適当に柴を集めに行く)
じゃあしばらくそこで待ってなさい
もう少しマシにしてあげるから
(言うと明かりも持たずに森へ入っていった)
■◻◻◻ > 「…………?」
森へとわけいっていく姿を見送りつつ……
カンテラをじっとみつめながら、ただ、佇む。
言葉を理解することはあまり出来ていない。
だが、その中にある意思はおぼろげに理解していた。
だからこそ、ただただ、静かにその場で火を見つめていた
■エルレストベーネ > おまたせ
(小一時間ほどして戻ってくると、集めてきた柴を適当に組むと
カンテラの火を移し、そこに火をつける
とりあえずコレでしばらくは持つだろう
とはいえ朝まで持つものでもない
火をつければまた森に戻る必要がある
特にそこまでしないといけない理由もなかったが、この子にも自身にもおそらくこの方が安全だろう
別段やることも目当てもない以上、敵でないのなら付き合っても構わない
それに、アレだけのやり取りでわざわざ待っているほど律儀なのだ
余程火がほしいのだろう)
じゃ、追加取ってくるわね?
(そう言うと再び森のなかに入っていった)
■◻◻◻ > 「……!!」
テキパキとした動きで火が起こされ、
それによって熱が増したことに歓喜しているのが、
その気配から分かるかもしれない。
再び森の中へと向かう姿をじぃ……と見つめながら、
燃え上がる日を抱え込もうとする様に、間近に体を据える。
そのまま視線を火に向けながら……僅かに、擬態した手足を動かす。
一見すれば意味が無いようにもみえるが……そのなかには、
何かの意思が、微かに含まれていた。
それが形を為すのは、何時かの先であるだろうが……
■エルレストベーネ > ……やっぱりこれで合ってるようね?
なら、追加持ってくるから
(また森に入ればコレのための木を集めに行くのがわかるだろうか
もう少し大きいもので火力と時間を維持する必要がある
故に相応に大きなものを集めて戻ると、薪として火にくべる
コレで朝まで持つだろう
朝になれば太陽のが温かい
問題はないだろう)
■◻◻◻ > 「…………」
繰り返される動きの中から、何が何を起こしているのかを理解していく。
真似をするように、火の中に薪をくべる仕草をしつつ……
暖かな火の熱に満足を感じ、その目の光が穏やかなものになっていくのが分かるだろうか。
おそらくは、このまま大人しく過ごしているだろう
■エルレストベーネ > ……
(特にここまでしてやる理由はない、が、満足しているようだ
ならそれでいいだろう、たまたまだ
優しく頭をなでてやる)
■◻◻◻ > 「…………」
撫でたならば、人の髪に似たしっとりとした手触りに……
水面に手を触れるような僅かな柔らかさを感じられるだろう。
温かさ故か、それともしてくれたことを覚えているのか。
警戒した様子はなく、されるままにじっとしている。
こぽん、こぽんという穏やかな水音が、微かに響くだろうか
■エルレストベーネ > ……水系の魔物なのかしら?
にしては熱を欲するのも珍しいわね
(焚き火がぱちぱちと音をたてている
その熱が暖かい
この子はきっと、どうも物事をよくわかっていないのだろう
カンテラの火を取ろうと思っていながら、壊さなかったり
そういうところで変にムキにならない、というのも珍しい
もしかすると、まだ自分でもよくわかっていないのかもしれない)
ねえ……名前はあるの?
(頭をなで、優しく抱き寄せるように聞いた)
■◻◻◻ > 「…………」
抱き寄せられるままに、ただ僅かな意思の光を瞳に宿す。
熱を喰らう為か……その表面に伝う熱の流れが、僅かに分かるかもしれない。
問いかけにも、ただ、瞳を見返すばかり。
あるいは……その意味と中身を理解するには、
今はまだ足りないなにかが多いのだろうか。
■エルレストベーネ > ……そう、名前はまだ、無いのね?
(どうやら、意味もわからないのだろう
言葉も話せるかどうかも怪しい
優しく抱き寄せつつ、自身の熱も軽くくれてやる
襲ったり襲われたりをする可能性有がある以上、一度でもこういう経験をしておくとだいぶ違うだろう
奪うのでなければ分けてくれる相手はいるからだ
可能性があれば行動は変わる
少々思案したが、名前をくれてやってもいいだろう
理解できればの話だが
まあ、ダメならダメで構わない、別に困ることでもない)
なら、貴女の名前は
【ラーラ】
ら・ぁ・ら、ラーラよ
(理解するかどうかはわからなかったが、ジェスチャーなどを交え、繰り返し教えてみた)
■◻◻◻ > 「……ら……ら……らら……」
繰り返される声と音に、微かな反応を示す。
熱が伝えられるという行為に僅かな意識を受けつつ……
小さな音で、静かに繰り返していた。
名前。
それを理解するには、残念ながらまだ至らないようであったが……
しかし、自分が何者であるか。それを意識する変化が、
その中で芽生えたのかもしれない。
■エルレストベーネ > ……まあ、一音なら発音できるでしょうし
ね、ラーラ?
私は【エル】
あなたは【ラーラ】
(名前を呼び、それが自身を示す符号だとわからせるよう、ことあるごとに呼ぶ
何度か繰り返せば、よくわからないなりに自分のことをそう呼ぶのだということくらいはわかるだろうか
もっとも名前、としての本来の意味はまだ理解していないようだったが
少なくとも今は呼称だけでも十分だ)
■◻◻◻ > 「…………ら、ら。え……る」
曖昧ながら、しかし何かを認識するかの様に、静かに音を繰り返す。
おうむ返しではあるが……
しかし、認識が始まる芽生えが、確かにあった
■エルレストベーネ > ……ん、今はそれでいいわ
そのうち必要になるから
(よく出来たとばかりに可愛いと抱きしめ、優しくなでてやる
そこでとりあえず思いついたように
薪を一本とって、火のついたまま与えてみる)
とりあえず食べちゃってもいいわ?
火が消えたらまた戻せばいいもの
(焚き火に当たっていれば消えないが、それはそれとして御馳走も欲しいだろう
そういうものだ)
■◻◻◻ > 「!」
体に伝わる振動と手の動き。それを静かに受けながら、
近づけられた薪に……そこで熱を放つ火に手を伸ばす。
そのまま、薪に手を触れると…
瞬き程の間もなく、火がかききえるだろう。
僅かに、薪がひんやりしているのを感じられるかもしれない
■エルレストベーネ > ふふ……見事なものね?
(その薪を火に戻すと、多少は弱まるが、強めに焚いた火の勢いは強い
問題なくまた薪に火がつく
嬉しそうなのを見れば何度か繰り返すだろう)
■◻◻◻ > 「……♪」
そのまま、火が消えるまでの間、静かに火を喰らい続けるだろうか
■エルレストベーネ > (そのまま朝までそのようなことを繰り返しているだろうか
日が昇れば、太陽は焚き火より余程暖かいだろう
根本的に熱量がぜんぜん違うのだから
満足そうにひなたぼっこをする彼女を見ながら別れるのだった)
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」から◻◻◻さんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からエルレストベーネさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にティネさんが現れました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にチェシャさんが現れました。
■ティネ > 街道脇にある、コスモスの群生地。陽は落ちかけている。
ティネはそのうちの揺れる花の一つの上に座って、コスモスとコスモスの間を飛び回るてんとう虫をぼうっと眺めていた。
絵になる光景と言えなくもないが、そんなに安定しているわけでもないので座り心地はよくない。
最近どうにも記憶が曖昧である。
わりと重要な案件が頭からすっぽりと抜け落ちてしまっているような気がするので
なんとなく危機感を覚えているが、特に約束事をするようなこともないので
別に大丈夫なんじゃないかとも漠然と考えている。
ようするにのんきしていた。
■チェシャ > 街道を猫がとことこと駆け足の速さで進んでいく。
ベルベットに似た毛並みの夜色の猫は往来する人や馬車を避け、道の端っこや時には草原を抜けていく。
ちょうどコスモスの群生地に差し掛かった時、ティネが乗ったコスモスの花にぶつかってその花弁を大いに揺らした。
猫は何かがいたことに気づいておらず、予想外の大きさの虫か何かにぶつかったのかと思って少し目を丸く見開き驚いた。
■ティネ > のんきしていたので特に猫の接近には対処できなかった。
「ウワーッ!」
勢い良く揺れてティネの小さな身体は跳ね飛ばされ、
コスモスの根本、柔らかい土や草の上をバウンドして猫の目の前あたりに落ちてくる。
「ってて……」
大した怪我はないが、衝撃で動けない。
猫と目が合う。
「こ、こんにちは……」
言葉が通じることを期待したわけではないが、片手を挙げて挨拶してみる。
そういえばこの間言葉が通じる猫と会話した覚えがあるなあとか思いつつ。
猫は人間のように表情が読めない。次にどう出てくるかわからない。
ねずみよりも非力なティネにとって、寝ていない猫は結構おそろしい。
■チェシャ > 花から転げ落ちてくる人の形をしたものに一瞬猫が姿勢を低くして警戒したが、
その生き物と目が合うと、ふんっと鼻を鳴らした。
「なんだ……シー≪妖精≫?ファー『妖精』?
どっちだっていいが、なんだってこんなところにいるんだ」
ティネが口をきいたことに怪訝そうな視線を投げながらこちらも口を開く。
その声音は年若い少年の澄んだものだった。
前足でその背の羽をちょちょっとつつこうとする。
■ティネ > 「わ、しゃべった。案外しゃべる猫って多いんだね……」
さすがに二回目ともなると驚きは薄い。驚かないわけでもないが。
「妖精……ああ、まあ、妖精だけど。
別にひとがどこでたそがれてたって勝手じゃあない。
森の奥にでも隠れ潜んでたほうがよかった?
あたっ、ちょっ……やめっ」
羽根をつつかれれば、つつかれたほうとは反対側へと転がる。
■チェシャ > 「馬鹿、しゃべる猫がそうそういてたまるか。
大概ミレー族が呪いでごまかしてるに決まってるだろ」
こんなところでぼんやりしている妖精なのだから頭がさぞ弱いのだろうと思っていたが
どうやら本当に知恵が足りないらしい。
「僕が知ったこっちゃないが、こんな人目に付く場所をうろついていたら
珍しいものを狙った薄汚い商人や好きものの貴族に見つかってとっつかまって虫かごに雑に突っ込まれるんじゃないか?
知ったことじゃないけどな」
またしてもふんと慇懃に鼻を鳴らす。あっちへころころこっちへころころ転がる妖精に
思わず猫としての習性が刺激されまくるが、こんなところで羽虫を相手に道草を食うわけにはいかない。
ぶるぶると四足を踏ん張って身をふると、その体の輪郭が大きくゆがむ。
そこには怜悧な目元をした従者然とした少年が猫のように這いつくばっていた。
すっと立ち上がると、片手でティネの羽をつまみあげて顔のあたりに持ち上げる。
「端的に言って邪魔だ。おとなしく森にでも潜んでろ」
つんけんした態度でそう忠告する。
■ティネ > 「えっそうなの、知らなかった……そんなの……」
手で口元を覆う。しゃべる猫ってちょっと素敵よね……フフ……
って思ってた子供心を返して欲しい。
こうして妖精がいるんだからしゃべる猫だってそうそういたっていいのではないか?
自分はまがい物だが。
「うっ、それは……だけど今は捕まってないし!
それに……」
猫の弁はまったく正論なので言い返せない。
記憶の上では捕まってないのだが、単に忘れているだけの可能性が高い。
ティネなりに人の通りかかる場所ばかりうろついているのには一応の理由はあるのだが。
転がされながら言いよどんでいると、ふいに猫が人間の少年の姿へと変わる。
猫が人間に化けた! というわけではなくてさっきの言葉からすると
おそらくそちらが本来の姿なのであろう。
「はーなーしーてー! はーなーしーてー!」
羽根をつままれた体勢で手足を振り回してギャンギャン騒ぐ。
この持たれ方はひどく屈辱的だ。
それになんで出会ったばかりの少年にここまで言われなければいけないのか?
怒りと恥ずかしさで涙がにじむ。
「森は……やだ。
だって……森にはボクとおしゃべりしてくれる相手がいないもん。
こうして見つけてもらわないと……」
随分情けないことを言っていることに気づき、つままれたまま声と表情がしぼんだ。
■チェシャ > 「なんだよ、ミレー族を見たことないどころか魔術の類もしらないのか。
妖精のくせして……なんか鈍いやつだな、お前」
呆れて半眼のまま、ティネを見つめる。
どうも先ほどからこの物言いといい世間に疎いところといい、
妖精にしては違和感がある。
自分の知る妖精はもっと騒がしく常に悪戯できる相手を探している小賢しい生き物だ。
だというのに目の前の相手は一言でいうならどんくさい。
もっと妖精の呪いとか振りかざしてもいいものなのに……。
離せと喚かれればうっとおしいので羽根を離す。代わりに逆の掌を上に向けてそこにぽすんと乗せた。
「喚くな、うるさい。品がないやつは嫌いだ。
森がいやってお前の出自はそこじゃないのか?
大都会にあこがれておのぼり気分でやってきたのか?
残念だが、お前の話に付き合う暇人なんか王都にゃいないぜ。諦めな」
しぼんでゆく相手の声に少し言い過ぎたかと思うが、とはいえ自分はこういう言い方しかできない。これでも親切な言い方をしているつもりだ