2015/10/12 のログ
レイアード > 「……エルレストベーネ……」

(目の前の少女がようやく回答してみせた、彼女の名。魔族である事を明言されるも、別段驚くつもりはない。魔族からしてみれば、どういう訳か人間はしばしば好奇の対象となる事を過去の日々から理解している。…もっとも、彼自身はと言えばそんな事にあまり執着はない)

「フン、吐き気のする話だ。…説教はそれだけか? 略奪なんかしなければ生きていけないヤツの事情など、お前は知るまい」

(冷気を纏う剣を振るい、少女を淡々とした目つきで見据えながら、男は少女の告げた「奪われること」と言う言葉に対し、眉を顰める)

「……随分と回りくどい言い方をするな。…だが、させはしないぞ…。…どこからともなく現れた魔族の女に人間の言葉を借りて説教されようと、俺の気持ちは揺るぐものか。……女、後悔するなよ!!」

(手綱を引き、冷気を纏う剣を振るって華麗に真後ろへ跳び退けば、距離を取った後勢いを付けてみるみる纏う冷気を強めた剣を高々と振り上げ、馬ごと高く跳躍して少女を斬り伏せようと)

エルレストベーネ > ……問いには答えてもらえると、そう解釈していいのね?

説教?
私は私の聞きたいことを聞いているだけ
つまり……貴方から答えを奪っていいと、そう理解したわ?

奪うことを貴方が気持ち良いというのなら是非もなし

(ゆらり

大上段からの切り込みに対し、その馬は奇妙な動きを見せる
まるでスライドするように存在が揺れ、ブレたのだ

この馬は吸血馬であり、普通の馬ではない
故に剣の動きから逸れるように流れ、距離を十分に開けて悠然と剣を抜く

水晶の透き通った剣である
改めて考えれば、女の出で立ちは特製の誂えであり、売ったとしても行商の荷よりも高く売れるだろう)

そも、略奪側でなく護衛側で対価を得ることも出来るはず
その剣の腕が売りものでならないほど錆び付いているわけでもないとするなら……奪わないと生きられない理由は何?

(少女には本当にその理由がわからない
明らかに手段を尽くしていないにもかかわらず、腕のあるものが奪わねば生きられないという
その理屈はおかしい

改めて馬を向けると、正面から馬を向かわせつつ馬の動きを利用して相手の左側から横薙ぎに斬りつける
その動きは、美しく、速い
戦いのさなかであっても目を奪われかねないほど)

レイアード > 「口の減らない女め…。…耳障りだ…!」

(己の業に溢れた生き方に、彼女の言葉はこれでもかと言う程干渉を繰り返す。誰も咎める者などいなかった、誰も知ろうとする者は居なかった。…人間なら「悪は滅ぶべき」として断罪すれば済む彼の事情に、少女は何を目当てにしてか、探りを入れる有様だ)

「何…!」

(まるで幻であったかのように、己の一太刀を馬ごとかわす少女。魔族ゆえ、相手の手の内はそうそう読めたものではない。だが、少女の華美な装備を見れば、その焦りも、「奪う」といった願望によって潰える)

「…く…!?」

(予想外に相手は素早く、腕の立つ騎士だ。己の利き手と反対側から切り込みを浴びせようとしている。……調練された軍馬の手綱を引き、前脚を大きく持ち上げた状態で青年の馬はその場でターンし、間に合おうものなら己の利き手に握った剣を、少女の剣が迫る方向へと打ち合わせようとするが、一歩遅れ、水晶の剣に浅く斬りつけられる)

「……っ……図に乗るなよ魔の眷属……!」

(そのまま距離が開けば、冷気を纏った剣をその場で横に薙ぎ、過ぎ去る少女へ冷気の衝撃波が襲う。…衝撃波を飛ばして、間髪入れずに男は追撃を開始すべく、少女めがけて突進する)

エルレストベーネ > ……随分と拘りのあるようね?
それとも、また何か別の理由でも?

(耳障りこの上ないだろう
魔族とはいえ、騎士が、その信を問うているのだから)

図に?
己が出来ることを己が為すのみ

(少女は人形であり、道具であり、芸術品である
故に、その剣には迷いがない

冷気の衝撃波をその剣で切り飛ばせば、その隙にと切り込んでくる青年の剣がありえない方向からの剣で綺麗に流されていく
少女の腕から別の水晶の刃が一瞬突き出し、その青年の剣を流したのだ

返す刃はまるでお手本のような切り返し
その動きに巻き込まれれば青年の一挙一投足もまた、美しい舞へと変えられていくだろう
否が応でも剣術の基本の型に嵌めこまれていくかのよう)

レイアード > 「こっちの台詞だ……」

(魔族にしては、やけに手ごわい。少女のペースに巻き込まれぬよう、細心の注意を払うも、どうも正攻法が効いている気がしない。間髪入れずに放った追撃が、己の認識できないタイミングであしらわれる様に、青年は不意に剣を握ったまま、静止して少女を見遣る)

「……それが、俺を邪魔立てする事 か。…気に入らんな」

(冷気を纏う剣を握りしめたまま、違和感の抜けない少女を注意深く眺める…が、人間の目に魔族の異能が見抜けようものか。理性で、危険な相手である事を自覚し始める)

エルレストベーネ > 邪魔立て?
貴方がやったように、貴方がそれが良いというから貴方の流儀で奪っているだけでしょう

必要なことは既に話したはずよ?
私は貴方から答えを取り立てるだけ

(少女はその存在自体が魔族のマジックアイテムのようなものである
人を超えるものが相手であればともかく、人に対峙するのであれば魔族として魔族らしく魔族のように、そしてそれ以上に美しく舞うことが出来る
そのすべての動きは流れるように、長い銀糸の髪を靡かせ……曲乗りのように馬から横から大きくはみ出し
大横薙ぎに下段から中段へと切り上げる

下手な受け方をするならば、馬にざっくりと入るだろうが、さて)

レイアード > (いわゆる「因果応報」とでも言うべき状況なのだろうか。魔族が人間相手にする行為としては、別段何の疑念も沸かない。結果的に青年は、読めない少女の行動原理を「横取り」と言う形で認識するに至る)

「そういう事か…。だが、お前如きに生きる術を黙って奪われはせん…!」

(相手は遥かに格上。相手の手の内がまるで読めず、青年は追いつめられた様子。攻勢に出る少女と、相打ち覚悟で迎え撃つ体制を取り…)

「……!!」

(青年がまたがる軍馬が、盛大に悲鳴を上げる。青年はいよいよ追い込まれるが、相手が間近に対面するタイミングを逃さず、冷気を纏った剣を一思いに薙いで、少女を凍て付かせよう。肉を切らせて骨を断つ…目の前の魔族に対応しうる、苦肉の判断だった)

エルレストベーネ > (驚いたことに、少女は馬にしがみつくことにこだわらず、簡単に飛び降りざまに
青年の剣の届かないほどに低く地面すれすれに回転し、そのまま切り抜ける

その一瞬、、瞳と瞳を合わせ、邂逅する
少女の瞳は紅玉の鏡である、故に青年がなにか思いがあればそれを自ら見ることになるだろう

そして、少女の馬は吸血馬である
故にその曲芸のような舞の終わりに霧のように現れれば、少女はこともなげに再び跨る

おそらくは最初から計算された動きであり、その普通有り得ない軌道から繰り出された剣も
大胆な舞も、そこから馬に戻るところまでも含め、一つの技藝であった)

ここらでやめておきますか?
それとも、まだ続けますか?

……どちらでもお好きな方を

(まるでダンスの相手を探しているかのような態度
少女は、青年の情念を羨ましく、そして面白そうに……正確には「良いもの」として感じていた)

レイアード > 「くそ…分からん…。…何故だ…?敵わん…」

(男は、一行に太刀打ちできない様に焦燥感どころか、生命の危機を感じている。軍馬は傷負い、次は自分が深手を負う。己が数ある人間のうちの1人に過ぎない事を思い知らされる戦力差には、流石の彼も保身を選ぶ)

「……くそ…エルレストベーネ…忘れはしないぞ…。…お前に阻まれようと、まだ飢え死ぬワケではない…」

(そう言うと、血を流す軍馬を旋回させ、冷気を放つ剣を向けながら、情けなくとぼとぼ撤退していく。これほどの手練、恐らくは国のお抱えの騎士ですら苦戦を余儀なくされる事だろう。…その美貌を焼き付けながらも、執念深い目で少女を見据え、平野の向こうへと逃げ去って行く)

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からレイアードさんが去りました。
エルレストベーネ > ……ん?
答えがまだなのだけれど?

(不利を悟ったのか、彼が馬を返して、逃げ去る様をそのまま見送った

生きるため、と彼はそう言った
だが、生きるためであるなら他にも方法があるはずである

だから、奪うことは良いことだと言った彼が逃げてしまえば追う気は起こらない

逃げるということは、良いことではないと判断したものがする行動だからだ
つまり、彼は嘘を言っていたことになるため、いずれ問い詰める必要がある
とはいえあの様子だと、いきなり話したりはしないだろう

……それに、彼のあの熱は、欲しい
どういった内容かは知らないが、あの瞳には昏い情念がこもっている

その内容も問い詰めたかったし、理解したかった

だが、ある意味ではあまり心配してはいない
あの眼で私を射抜いてくるのなら、そのうちまた出会うことになるだろう
それだけの理由を彼は持っているはずだ
逃げたとはいえ「忘れない」と彼は言ったのだから)

……報告だけ入れておきましょう

(荷には興味が無い
街の衛兵に報告だけ入れておけばあとは彼らがやってくれるだろう
傷を照らし合わせれば水晶の剣で斬ったものではないこともわかるし、問題はない
彼女も吸血馬の向きを返すと、そのまま街へと去っていった)

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からエルレストベーネさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にカレンさんが現れました。
カレン > (時は夕刻。街道沿いの小川で水を浴びている。
 仕事は王族と貴族の護衛。名前は聞かされていない。
 誰を護衛するかは近衛兵が知っていればいいことだ。
 自分たちは危険から彼ら/彼女らを守るだけ。
 部下たちは日が沈む前に遠くでキャンプを設営している。
 鎧や愛剣は川辺に置いてある)

ふう…一息つける…

(チャプチャプと水で遊びながら、大きく息を吐く。
 こちらからキャンプは見えるがあちらからは見えないだろう。
 誰かが近づいてきてもそれはそれ、危険人物ではないだろう。
 もしかしたら闇にまぎれて野党が襲ってくるかもしれないが)

カレン > (流れてくる水で自慢の髪を洗う。
 この髪が陣頭にあると戦意が上がるとも言われていると聞く。
 先祖代々伝わる自慢の髪である。
 髪を洗い終わると顔、続いて肩から腕に移っていく。)

さて…

(胸を丹念に洗う。
 鎧に納めるには大きいが、それ以外にも役立つ時がある。
 手で水をすくって優しく撫でる)

ん…

(冷たい水の中だというのに、その先端は次第に硬さを増してきていた)
 

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にシドさんが現れました。
シド > 西から差す鈍い茜色が幾つも設置されたテントを照らしていく。街道沿いにと張り巡らす野営の準備も落ち着き、見張りに備えて眠るもの、或いは
明かりを備えて火をくべるもの、皆が役目を担いて卒なく動く中、依頼をした貴族のみが暇そうに辺りを散策していた。
日が暮れれば寒いといえど、昼間の強気日差しに汗ばむ髪は何度もうなじに張り付く。それが鬱陶しいとばかり葡萄色の双眸眇めながら小川へと辿り着く。
その河岸に腰を下ろして透明度ある水をじっと眺めるに、体を清めたい気持ちに……掌で掬い上げその顔を洗いながら後頭部に結んだ銀髪を解いていこうと。

「おや…… 先客がいたのか。」

白布で顔を拭いながら仰ぐ先に、女性の裸体と思しき見目に視線を向ける。

カレン > はぁ…っ…
(乳房を弄りながら身体を火照らせていたところ、かけられる声。
 一瞬で「騎士」の表情に戻り、声の方向へ向き直る。
 気配からして騎士仲間…いや、貴族だろうか?
 顔や服装を見れば仲間では無いようだった)

これは…お名前は存じ上げませんが、我らに護衛を命じられた方でしょうか。
我が名はカレン。貴族の端に名を連ねるクラフト家の娘です。
お見知り置きを。
(胸の先端を左腕で隠しつつ、右腕を使って礼をする。
 下腹部は、見ようと思えば見れるだろう。
 無防備である)

シド > 熱っぽい吐息が響き渡る。差し込む夕陽がすべてを鈍色に染める中では火照りは見えぬものの。その音色が夜に向けて鳴きゆく鳥声よりも耳に張り付く。
なにをしてたんだか……そう笑う唇はすぐに柔らかな弧を描いて秘めていく。

シドニウス・アルケイオス。今回、君に警護を依頼したものです。。出歩くと迷惑になると思っていたが、汗を洗い流したくてね。
ここまで来たところ、偶然鉢合わせた訳だ。覗きに来たわけではないとご理解頂きたい。

隠されるその肢体には目を向けぬ。眸の輝きはこのようなときでも凛然とした佇まいに眦を下げて大仰に会釈をした。
やがて、微笑みを浮かばせながら小川にと足を進めていく。差し込む夕日に解いた銀の髪波を揺らしながら、相手の方へと。

同じ貴族なのにまだ護衛をしているなんて殊勝なことだ。どこか怪我でも? ……さきほど、随分と妙な声が立てられた。

カレン > アルケイオス様…ですね。
昼間の馬車の中はさぞお暑かったでしょう。
わたくしはお気になさらず、お体を清めてくださいませ。

(あくまで騎士の立場で接する。
 銀髪の美青年、その表情には下卑たところがない。
 助かったといったところか)

私は生来貴族には向かない性格でして…こうして剣を振るっているというわけです。
いえ、怪我ではなく…水のあまりの心地よさに息が漏れただけです。

(火照った顔が暗がりで見えるだろうか)

あの…私は服を着ても?

(あくまで貴族と兵士の会話である。
 邪魔になっては不味いと思い、先に水から上がろうとする)

シド > 「行軍してる君たちに比べたら快適な馬車旅だったよ。ああ、清めさせてもらう……が肌寒く感じるな。この季節の夕暮れは。」

懐かしい……こうして理不尽な出来事でも決して貴族に逆らわずにいる。目の前の相手に過去の自分の姿が重なるのに、意図した緩慢な瞬きが出てしまう。
青年が今見据えるのは過去――だからこそ相手の眸には下卑たところが映らなかったかもしれない。
戸惑う相手に無防備を明らかにするように、腕を広げて見せてゆく。その眸に、確かに火照る顔が見える頃には、酷くゆっくりと伸ばす掌が
自ら上がろうとするその腕を掴もうとして。

「いや、私こそ邪魔するつもりはない。だったら2人で浴びればよくないかな?」

凛、と耳朶飾る銀細工を笑うように揺らして小首を傾げた

カレン > そのお言葉、私と部下が働いた甲斐があるというものです。
水の中は思ったより冷たくありませんよ。

(同じ貴族でもカレンは家督を継いでいない。
 だから騎士なのである。だから何をされようと逆らえない)
(腕を掴まれれば、一瞬緊張するが、すぐに脱力し)

ええ、構いませんが…アルケイオス様に妙な噂が立つのでは?
女騎士とともに水浴びなど…醜聞好きのものからすれば格好のネタではありませんか?

(豊満な裸体は相手に完全に晒されている。
 特に抵抗するつもりではなく、相手を案じての言葉である。
 自分がここにいることは部下は知らないが、相手はどうだろうか)

シド > 「なるほど……鍛えてるんだな。少しでも実戦から身を離せばすぐにでも体はひ弱になってしまう。私のようにな。」

硬直する肢体にじ、と葡萄色の眸を重ねゆく。力はそれ以上込めようとはしない。そして力が抜けてゆくのに緩やかにその細腕をなぞりゆく。
細いながらも鍛えられたその肉体、肌を愛でるというよりその内なる筋肉に指を這わせてゆき。視線は豊満な肢体から腕にと注視が集まる。
が、続く言葉には微かに眸を瞠って。

「いってくれる……だが、それは君次第じゃないかな?口裏さえ合わせてくれれば…… 何も恐れることはない。」

そして反対の掌がそのたわわな乳房に触れる。無骨な掌がその固まりをいびつに歪ませ、飛び出している桜色の突起を指腹で押し込めてゆきながら。

「思い出したよカレン……君、俺と同じ騎士団にいたな。」

耳元にと唇を寄せて熱っぽく囁いた。

カレン > 実戦に御身を投じていたことが?

(はて、なにか引っかかる。
 腕をなぞられれば、その感触に胸が熱くなってくる)

そうであれば…私はアルケイオス様に合わせますが…
ん!?っくぅ…!?

(先程まで自ら刺激していた突起。
 そこを押し込められれば反発するように固くなっていく)

えっ…シドニウス、シド…

(繋がった。どこかで見た顔だと思ったのだが…
 それは社交の場ではなく戦場あるいは訓練場。
 武勲を立てて成り上がったと聞いたが、確かにその名を持つ男は騎士だった)

…お背中をお流ししましょうか?

(相手の正体を知ってもなお、貴族と騎士の口調で続ける。
 胸は嬲られるたびに鼓動を早くしていきながら)

シド > 「そう。お前は夕涼みに体を清めていた……が、不意に野党に襲われた時にアルケイオス家に助けられた。感動のあまり衣服も纏わず抱きしめてしまった
 ――こういえば良い。そうすれば……自慰まがいのことをしていたこと、黙っておこう。カレン。久しぶりだな。」

既知たる者と分かりて警戒心を解くその者に大きく頷く。衣服を纏ったままであるが、身を寄り添わせ、女手で慰めていた突起は男の二対の指に弄ばれる。

「嬉しいね。そいうこといってくれて。それならもう少し茂みのある方に行こうか。流石に知人に見られては言い訳がたたん。
 ――お前もそうだろう?恥ずかしいはずだ。」

低く囁きながらその腰に腕を回して身を移そうとする。相手がついてくれば、の話だが。

カレン > じ、自慰まがい…

(一気に身体が緊張する。
 騎士上がりの貴族が色を好むなど自然なことなのに、気づけなかった。
 気づいても逆らえなかっただろうが)

…口裏を合わせるのに苦労しそうですが、よいでしょう。

(半ば諦めつつ、されるがまま茂みの方へ移るだろう――)

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からカレンさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からシドさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にヘレボルスさんが現れました。
ヘレボルス > (街道沿いに広がる、鬱蒼とした林の奥。
 乱世とあっては心和やかに観る人もない湖のほとりに、重なり合う人影)

「――でェ!?
 どーーなんですかってエ訊いてんだよ!
 お前が言ってた! 『金と』! 『女に』! 『がめつい豚』の――
 『傭兵に』!抱かれる気分はってェ!?」

(低い女声が、男の喉から発せられたかのように荒々しく響く。ぐしゅん、と鼻を啜る音)

「残念でェーーしたア!!
 ごめんねェ良いトコの出じゃなくてエ……ッヴェッホ!
 (鼻を啜る音)――ッあーーーほらまァたア! 休んでイイたァ言ってねーぞォ!」

(頭に被った、仕立てのよい三角帽子を揺らしながら、ヘレボルスが叫ぶ。
 ジュストコール一枚着たきり、内側に裸身を晒したその前に――女がひとり。
 下着を泥に汚すまま四つん這いを強いられた、見るからに貴族と知れる妙齢の女。
 もはや声を上げる余裕もなく、虚ろな眼差しのままにその身を貫かれている。

 その手足は――肘と膝の先から切り落とされて、まるで湖畔の泥濘に身を沈めているかのように見えた。
 切られて間もない四肢の痛みに堪えかねて、女が地面に身を接触するごと、ヘレボルスは高らかに笑ってその肌を平手で張った)

(ばちん。肉を打つ音)
(ばちん。ヘレボルスの手のひらから、紫電が爆ぜる音)

(雷光に女の身体が痙攣するごと、ヘレボルスは喉が裂けるほどの勢いで笑った。
 その頭はぐらぐらと胡乱に揺れて、眼差しは定まらずふらつく。
 大声のあまりに嗄れた鼻声とその目つきは、貧民地区に横行する薬物の中毒症状のそれだった)

「アッハハハ――踊れ踊れ! 豚女ァ!」

(高笑い。肉を打つ音、乾いた肉の擦れる音。

 やがて――どぽん、と。
 湖に、二人分が転げ落ちる高らかな水音)

ヘレボルス > (――それからどれほどの時間が経ったか知れないが、
 ヘレボルスの上半身は湖畔にぐったりと倒れ臥していた。
 水に浸かったままの下肢は冷え切って、ほとぼりもすっかり醒めている)

「…………、あれェ……」

(頭痛に目を醒ます。
 頭のてっぺんから水にすっかり濡れていることからして、丸ごと水に落ちたらしい)

「……僕、何でここに居るんだっけかァ……」

(ぐしゅん。鼻を啜る音。
 鼻の奥に粘液の詰まった不快感があって、顰め面で頭を振る)

「あァ……確かサロンで『焚いて』、それから宿屋で……」

(口の端から涎を垂らしたような感覚があって、唇を拭う。
 湖の濁った水と、自分の唾液――そしてヘレボルスのものではない、誰かの精液)

「……………………、」

(ざぶん、と音を立てて湖から這い上がる。
 その腰には、股座を押し広げられた感覚と、精を吐き出した徒労感とが残っている。
 浸かっていた湖を振り返ると、泥や水草に混じってひとりの女の沈んでいるのが見えた)

「…………、何でこうなったんだっけ?」

(全く記憶がなかった。自分の今現在の様相について、判ることはただひとつ。
 自分が纏っていた帽子と上衣が、雇い主からの借り物であるということだけだ。
 『上流階級の人間に化けて女を騙す』、ただそれだけの無為な遊びのための)

「やべえやべえ」

(水面に漂う三角帽子に向かって長剣を伸ばし、鞘の先端で掬い取る。
 かぴかぴのくたくたに汚れきったその表面を目にしたとて、悪びれる様子はひとつもない。

 まるで入水自殺し損ねた若者が、今しがた死の淵から這い上がったかのような光景であった)

ヘレボルス > (ずぶ濡れの髪を解いて絞り、裸足のままぺたぺたと歩きながら汚れたジュストコールを脱ぐ。
 全裸で木立の中に辿り着くと、脱ぎ散らかされた男女の衣服が、木陰でてんでばらばらに丸まっていた。
 半日前の自分が何を仕出かしたやら、真っ直ぐ立っていることさえ億劫だった。
 片手に帽子とジュストコールとを掴んだまま、もう片側の指先で額を掻く。
 既に狂乱の熱は過ぎ去って久しく、長く水に浸かったあとの倦怠だけが全身を覆っていた。

 それは、湖畔に現れる美しい妖精――の姿には程遠い。
 ひたすら情交に疲れきった、男とも女ともつかない若者が、眠気に堪えながら突っ立っているに過ぎない)

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にノイギーアさんが現れました。
ノイギーア > 魔法少女の真似事であるかのような、森の色に融け合う深緑のローブととんがり帽子に体をすっぽりと包んだ少女が一人、狂騒の跡に向かって歩いてくる。
ぼんやりと外を眺めたまま湖畔を歩く。やけに道々が散らかって居る事には意も介さないようだったが……杖を抱きかかえたまま、ふと足を止めて木立の方を見ると――水浸しの若者が立っている。全裸で立っている。

(二日連続とは)
二日連続で露出狂に出会うとはどのような吉兆のしるしか。
そのような事を考えながら、ぼんやりとした顔でヘレボルスを見た。

ヘレボルス > 徐に振り向く。
濡れた髪が右側に偏って垂れ、湯浴みを済ませたばかりの女のようだった。
上半身と下半身が、右半身と左半身が、それぞれ男とも女ともつかずちぐはぐの身体。
目の下に薄らと隈を浮かせた半眼が、じっと少女を見る。腕の陰に乳房の丸み。

「……ごきげんよう。ここ、君んち?」
草むらの中に傾いで突っ立ったまま、唇を力なく緩めて笑う。半身を大樹の幹に預け、寄りかかる。
少女を見つめる虹彩が、小さく左右にふらふらと揺れていた。

ノイギーア > (半陰陽か)
暫し無言のままヘレボルスの全身像を景色の様に眺める。その瞳の輝きに一瞬目を留め、魔の者である気配を感じれば内心で溜息をつく。
昨日遭遇した吸血姫のように規格外の相手では無い事が救いではあるが。

「……ごきげんよ。いいえ、おつかい」
見た目通りの声とそこらの村娘のようなぶっきらぼうさで返答をする。ぼんやりと辺りをゆるりと見回しながら、湖に沈む女の肉体に目を留めると、小鳥でも見つけたように「あら」と小さく漏らしてもう一度ゆっくりとヘレボルスの方を見た。
「あなた、服が無いのかしら」
女の事は景色の一つであったかのように、何の言及もしなかった。

ヘレボルス > 少女の声を聞き取るのに合わせて、エルフめいた耳の先が小さく揺れる。久しく人の声を忘れていた、とでも言いたげに。
自らの身体を見る視線の動きにも、感情は波ひとつ立てなかった。

「遣いか。ばあさんにパイでも届けに行くのか?」
服の在り処を問われて、ふら、と一歩出る。
茂みの中へ無造作に手を突っ込むと、いかにも貴族のボンボンらしいフリルのついたシャツと――水に沈んだ女のものと一目で知れる、ぼろぼろのドレスが引き抜かれる。
どうやらその奥にも、下着や靴やらが放り捨ててあるらしかった。

「あるよ。服。水浴びがしたくて……脱いじゃったんだけど、……」
何とも不躾なことに、半陰陽の尻を突き出す形で草むらに頭を突っ込んで服を取り出す。
千鳥足でふらつきながら、シャツにふらふらと腕を通しはじめる。

「お前よ。独り歩きはオオカミに喰われちまうぜ。少なくとも僕は……オオカミじゃあないが」

ノイギーア > 「魔法使いのおばあさんにりんごを届けに行くのよ」
もっとも、自分の事だが。言葉は冗談めかしても、可愛らしさが籠っているわけではない。湖面よりも静かな、それこそ少女自身が年経た何かのようにゆるりゆるりと返す。

何かしらの情事、惨事が伺える衣類などを見てもゆったりとした瞬きは変わらなかったが、服の一部が貴族のモノである事を認めれば、不躾な姿勢に向かって――
「やっかい事をおいていかないようにいたしてね」
『ゴミはゴミ箱に』程度の軽い声を掛ける。

「おおかみならまだかわいいものですが、通り道に官憲がたむろするのは好きませんから」
不器用に着替えるヘレボルスの様態を見て、その症状の原因を推察しつつぼんやりと返事をした。

ヘレボルス > 「は。リンゴね。碌なモンじゃねえ。知恵と回春と不和の果実――まるきり魔女と、その孫か。見上げた孝行だ」
吐き捨てて笑う。

少女からの軽やかな諌めの言葉には、正常な反応の三倍ほど可笑しげにくつくつと肩を揺らした。
「僕なんかがひとつ厄介ごとを増やしたところで……マグメールの官憲が動くかよ。あいつら袖の下の銭勘定に忙しいんだ」

鼻水を啜る。鼻の下を掻きながら、濡れて重たげな白金の髪を背中へ退かす。
よろめきながらどうにかこうにかボトムに脚を通し、肩にジュストコールを羽織る。
両手にそれぞれ三角帽子と丈の長いブーツとを携えて、ようやく表へ出てくる。

ふらり、よた、ぺたり。裸足の足音。
少女と向き合った痩躯は冷ややかに濡れそぼっているが、秋風にも取り立てて寒がる様子はない。
寛げたシャツの胸元から、肋骨の凹凸が透けたデコルテが覗いている。

「オオカミを手懐けでもするのか、お前は? 獣がクチ聞いたようなすまし顔しやがって」
笑う。嘲るでもなく、それが平素の口調らしい。
若者が口を開くと、ある種の植物を焚いた後の、煙たい匂いがする――幻覚植物の高揚と陶酔、その残り香。

ノイギーア > ぼんやりとした表情に、ようやく少しばかりの笑顔が入る。
「おいしいとも。」
少しばかり咬み合わない返答をして、過剰に笑う姿に世を憂いた溜息をほんの深い呼吸程度に吐いた。

「ま、それもそうね。よっぽどの相手でもないなら、なぁんにも起こらないし……そのうちこんな辺鄙なところに構ってもいられなくなる」
帝都の事を思いつつ相手の"動き"を見ていた。口調に、身のこなし、そしてこの匂い。
漂う香りの懐かしさに鼻元に指を当てる仕草を取った。

魔の物には享楽的なモノが多いとしても、程々に年若い相手だろうか――などと、衣服の下に見えるものを注視しながら分析する。

「オオカミはね、"かんたん"にできているから」
事もなし、といった雰囲気。
「それより 水でもはらいましょうか?」
濡れそぼった帽子類に向かって少女はやわらかな、小さい指を向ける。

ヘレボルス > 少女の応答と、その顔にわずかに浮かんだ笑みに、にやりと非対称の笑い。
ここが明晰夢であることを掴み取った子どものような、浮ついた表情だった。

「マグメールはもう、長くないぜ。更地になるのも時間の問題だ。お前の婆さんも、ここいら一帯焼け野原とあっちゃ隠居は出来まい」

言葉の息継ぎに、はあ、と息を吐いたままの弛んだ頬。
手の力が緩んでブーツの片方がすとんと地面に落ちても、意にも介さないらしい。

「オオカミが、簡単、か。その様子じゃあ、人間のことも『難しくない』とか言い出しそうだな。……」
少女の指の動きにつられて、視線がよろめいて落ちる。
夢の中で聞いた言葉のようにしばし黙してから、無言で首肯する。
やがて少女に背を向けた格好でその場にすとんと座り込んだ。

「……髪を。結ってほしい」
懐を探る。濡れた肌のままに着込んだ衣服も、また湿り気を帯びている。
一本の革紐をずるりと取り出して、後ろ手に少女へ差し出す。