2021/04/04 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にエレイさんが現れました。
エレイ > 「──む……」

人気も無ければ灯りもない、月光だけが差し込む寂れた夜の裏通りを、一人のんびりと歩いていた金髪の男は、
脇道から己の前にするりと音もなく躍り出てきた影にふと、足を止めた。

『──ミャーオ』

それは猫だった。暗がりの中でなお黒く、逆に目立つシルエット。
その中で目だけが金色に浮かび上がっていて。

「……なんだ黒ぬこか。よう、見事な黒さだと感心するがどこもおかしくはないな」

などと声をかけつつしゃがみこむと、黒猫は気安く寄ってきて男の突き出した膝に
スリスリと顔や身体を擦りつけて来る。

「……愛想をしたってやるモン特になにもないから無駄だぞ。ってゆーか目ヤニまみれの
汚いツラだなと呆れ顔になる。もうちょっと自分でキレイにすろ」

眉下げてフンス、と鼻を鳴らしつつ猫の顔を見やれば、目頭にこびりつく大きな
目ヤニが確認できて。片手で首根っこを抑えながら、もう片方の手を顔に添え、
親指でぺりぺりと目ヤニを剥がしてやってゆき。

エレイ > 目ヤニを取り終えて開放してやれば、黒猫はその場で顔を拭い始め。その後もしばし、
猫と戯れて時間を過ごしていたらしく──。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からエレイさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にイスラさんが現れました。
イスラ > 「 ――――さすがに。これは想定していなかったよ…」

溜息を吐かざるを得ない。
随分と幼かった頃。即ち、仕える貴族家を追われた母が、単身自分を生み育ててくれていた頃。
この辺りに住んでいた記憶が有った。
偶々近場を通り掛かる機会が有った為。今や生家など残っている筈も無い、そう解っていても。
記憶が確かなら…この辺りだ。そう思える地域までやって来てみた。

待っていたのは突発的な大雨だ。
やむなく、適当な軒先に駆け込んだものの。
この辺りに有る店と言えば、場末の酒場や娼館といった。つまりは一人では入り辛い物ばかり。

かといって。シャツが透け肌の色が窺える程に濡れてしまった、この状態のまま。
雨がやむまでずっと寒空の下…というのも。ぞっとしない。
あわよくば、巻きこんでしまえるような。同じ濡れ鼠が飛び込んではこないかと。
じっと。雨に煙る路地に目を向けていた。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にブレイドさんが現れました。
ブレイド > 大雨の中、泥水を蹴立てる音が響く。
その先には外套に身を包んだ人影。
外套をまとってはいるもののこの大雨、傘も役には立たないほどのそれでは
まとっている外套が多少の撥水性を持っていたとしてもあまり用をなさない。
屋根のせり出した軒先に駆け込むように飛び込んでくる。

「っ、わり、邪魔するぜ」

先客であろう少年に一声だけかければそのまま
雨の届かぬところに立ち尽くし、大きくため息を付いた。

「アンタも雨宿りか?お互いついてねぇな」

先客の少年に笑いながら話しかけつつ
濡れ鼠になった外套の水気を少しでも払おうとしている。
そんなことをしてもあまり効果はないのだが。
先客の少年はみたところ、こんな場所には似合わないような出で立ち。
どこのお坊ちゃんかはしらないが、独りでこんなとこをうろつくなどと…
命が惜しくないのだろうか?

イスラ > 「 ぉ――っと…?
大丈夫、気にしないで良いよ。…誰の物でもないんだから。」

どうやら。濡れ鼠の同志がやって来たようである。
雨脚の隙間から飛び込んで来たのは、すっぽりと外套に身をくるんだ…
背丈や声からすると。同年代の少年である様子。
ひらひらと片手を振ってみせながら。何とはなしに相手の様子を観察していた。
――現状。深いフードに違和感を抱いた訳ではない。この雨なのだから、寧ろ使っていて当然だろうと。
その為相手の素性には、未だ気が付く事も無く。

「 …本当にね。久しぶりに来てみたけれど…もう。覚えている頃の家も人も、全然。
おまけにこの雨……嫌になっちゃうよ。」

思い切り肩を竦めてみせた。
昔居た。そんな言葉を台詞に載せれば。相手の違和感は少しくらい薄れてくれるだろうか?
寧ろこちらが気にするのは。相手と違って上着や外套が無いせいで透ける肌。
淡い、だが確かな胸元の膨らみを。少しばかりだが庇っておこう。

ブレイド > 華奢な見た目で、身なりも上等。
雨で濡れ、透けた服は…男としてもみられたくないものか?
いや、本当に男なのだろうか?中性的な見た目をしているため判別しづらい。
声の質もどちらともとれる。
だが、声の調子や、この状況で男が飛び込んできても冷静なところを見れば
少年だとは思われるが…ともあれ、寒いのか、透けた肌をあまり見られたくないのか
体をかばう様子をみれば、ジロジロ見るのも良くはないだろう。

「ふーん、久しぶりか。アンタこのあたりの出なのか?
それにしちゃ、立派な格好してるじゃねーか。
どっかの貴族の坊っちゃんかと思ったぜ。出戻りにしたってこの辺はアブねぇだろうから
その格好でうろつくのはどうかと思うけどな」

金があるなら護衛くらいつけろよ?
などと、笑ってみせる。
違和感は薄れたが、それでも身なりの良さを思えば
このあたりは危険だ。よくよくみれば、整った顔立ちをしているとも思える。
奴隷商人になど目をつけられたらそれこそ事だろう。

イスラ > 「 …耳が痛いよ、何もかも、キミの言う通りだと思う。
けど……ね。此処に来てみようだなんていうのは、ボクのワガママだから。
着いて来て欲しいなんて言っても。きっと止められちゃうだろうね。」

はは、と。周りの空気が染み込んだような、湿った笑い声が漏れた。
確かに少年の言う通りである、タチの悪い輩に本気で追いかけ回されたなら。間違い無く掴まってしまう。
…厳密に女ではないから大丈夫だ、というのも甘い考えだろう。
正真正銘の男であったとしても。それはそれで、受容が有るのが。奴隷という物なのだという事を。今では逆の立場から良く知っている。

緩く左右に振った首を、今度は軽く傾がせつつ。
再び胸の前で腕を組んだ体勢で。相手の方へと向き直せば。

「 …ご明察。良い所に拾って貰ったけれど、小さい頃は…この辺に居たんだ。
思い出として、残っていそうな物とか。有ったら良かったのにね――

…っと。それは良いよ、うん。
ねぇキミ、もし良ければ…その護衛って奴、頼めないかな。
見た所きっと。そういう事を依頼しても、おかしくない相手だと――思うから。」

片目を瞑りつつ。当たり前、のような軽い口調で問い掛けた。
依頼。その単語を使ってみせるからには。声音と裏腹、きちんと。仕事として頼むつもりではあるのだろう。

「 せめて…そうだね。雨が上がって、帰れるようになるまで。
キミみたいな人が一緒に過ごしてくれるなら――心強い。」

ブレイド > 「だろーな。でも次はせめて外套くらいは用意しとくことをおすすめするぜ」

ここがどういう場所か知っていれば…いや、知らなくとも
風評などを考えれば、貴族の子供がこのあたりに足を運ぶなど
あまりよろしくはないだろう。
悪趣味な店を度々訪れる王侯貴族の男たちすらあまり人目に触れぬようにしているというのに。

少年はこのあたりの出身で、貴族に拾われたようだが
意外なことに聞き分けが良い。
成り上がり、という割には正確の歪みが見られない素直さだ。
そういうところは、いかな貴族であれど好感が持てる。
この国の腐敗具合を知っていればなおさら。

「護衛?まぁそりゃ構わねぇが」

このあたりにいたというだけあって、多少の強かさは持ち合わせているようだ。
偶然に合わせた冒険者に護衛を頼むなんて。
とはいえ、この雨の中だ。二人だからと言っても飛び出していくわけにも行くまい。

「他生の縁ってやつだ。雨が上がって、お屋敷まで送ってきゃいいだろ。
だが…まだ上がりそうにねぇな、雨…」

軒先から覗く空はまだ曇天。雨音も強く、少し身を乗り出したらまた濡れてしまいそうだ。

イスラ > 「 今の季節は難しいよね。
頑張って着込んだら、途端に晴れて昼間は暑いのなんの。
…で、置いてきちゃったら。それはそれでこの始末なんだから。」

だから自分のせいじゃない、お天道様のせいだ。そんな責任逃れ。
…ただ、言っている途中盛大に目を反らしていたので。耳に痛いとは思っているのだろう。
ついでに、くしゃん、と一つ間の悪いくしゃみでもしてしまえば。
ますます見につまされるという物で。

「 出来たら時間を置きたい。――今直ぐもどっても、ね。
こんな濡れ鼠の格好を見つかったら。何処かで何かしでかしていたって、バレバレだから。
まったく…もう少し濡れない内に、屋根の有る所まで来られていたら良かったのに。」

どうやら少年は、依頼として。受け容れてくれるようである。ならば良し、という事で。サクサクと話を進めてしまう。
少年が冒険者であり、こちらが依頼主であるのなら。多少無理を言うのも許されるだろう。
…そして実際、今から帰途に着くのは難しそうだった。
こうやって話をまとめようとする間だけでも。更に雨脚が強まり続け。
少々声を張らなければ、そして肩の触れ合う程の側まで身を寄せなければ。とても会話が続かない程。

「 だから。一宿一飯くらい、どうかな。
…キミみたいな冒険者達と一緒なら。こういう所にも…入れると思うから。」

幼い頃ならいざ知らず。確かに今の格好では。場にそぐわない、良い所の子息扱いしかされないだろう。
だから、彼がやって来る少し前。考えていた通り。
場にそぐう相手を見繕って、軒を借りているこの店――
貧民地区に相応しい、場末の酒場に。入ってしまおうという提案を。
どんな場所でも、空の下よりは屋根が良いし…屋根だけよりは、屋内の方が良いに決まっている。

ブレイド > 「天気のせいで奴隷小屋おくりってなったんじゃお天道さんも大変だな。
坊っちゃんになんかあったからって牢屋おくりにされたらオレたちも困っちまう」

天気のせいにする少年の言葉には笑って冗談めかすように返答する。
きもちはわからないでもないが、貴族の身でこの場に来るのであれば
自衛手段は何かしら必要だ。
身分を隠す格好をするなり、護衛をつけるなり。

そうしている間にも雨はだんだん強くなってくる。
依頼をうけるときくや、少年はあれよあれよと話を運んでいこうとするが
雨音で声も聞こえなくなってきたようで、体を寄せてきた。
…しかしなんだか、近寄られると少しばかりドキリとしてしまう。
なんでかはしらないが。気のせいかと思いつつも、少年の話に耳を傾ける。

「オレは構わねぇが、一晩留守にしててもいいのかよ。アンタ…
坊っちゃんを悪い遊びに誘ったっていわれて牢屋おくりはゴメンだぜ?」

振り返る店は場末の酒場。
それはいいのだが、雨がやみ、服が乾くまでというのであれば
結構な時間を要するだろう。それこそ、日をまたぎかねない。
彼の親になにか言われても、話をつけてくれる約束をしてくれるのであれば
その店の入口に足を運ぶだろうが…。

イスラ > 「 お天道様に裏切られて、お天道様の下から外されるだなんて。ますます恨みが深まりそうだね?
…うん。流石にボクもそれは、ちょっと。だからキミに頼みたいのさ?」

初対面の相手だが。金銭の絡む依頼事であるのなら、返って信用がおけるという物。
次に、此処に来る事が有るのなら。最初から誰かに付き添いを依頼しても良いだろうと。本日の教訓。
もっとも…もう、昔のボロ家も何も残っていない事を確認してしまったから。余程の理由が無ければ来そうにないが。

身を寄せた際。
最初はあまり気にしていなかったのだが。
少年の、僅かな身動ぎや。声の揺らぎ。そういった物に気が付いてしまうと。
遅れてこちらも意識させられてしまいそうになる。
…こんな時。男にも、女にも、意識させられてしまう精神構造は。何とも度し難いものだ。
照れてしまう、とでも言えそうな心情が有った事も。話を手短に済まそうとする一因だったに違いなく。

「 うふふ…?悪い遊びなら、普段の方がやってるから。
…というのはさて置いて。昼間の方が、真面目に働いている人達には隙が出来る――そういう物じゃない?
良いんだよ、あんまり…真っ当な、跡取り息子だとか。そういう風になるのは。端から期待されていないから。」

寧ろ体質的に。どちらかと言えば社交の場では、娘として紹介されているのだが。
流石にその点についてはカミングアウトを避けて置いた。
お陰で誤解を招くとすれば。居所のない妾の子、という風情になるのかもしれない。
正誤はともあれ、面白くない話である事は変わらないので。大丈夫だと言ってしまえば。こちらから、店の入口へ向かってしまおう。

そうして足を踏み入れた酒場は。――いかにも、という所なのだろう。
同じく雨によって足止めを喰らったのだろう。困り顔の一般市民も居れば。早々に酔い潰れた破落戸や。彼のような冒険者等も居る。
ごった返してけたたましく、人々の熱気で蒸されたホールは。実に、酒場、といった風情。
それに嫌な顔をするでもなく。空いている席でもないか、きょろきょろと見回して。

…いささか、前方その他周囲に対して不注意かもしれない。

ブレイド > 謎の胸の高鳴りを悟られたか、気づかれていないか…
こちらとしてもどうしてそうなったか理由がよくわからないため
首を傾げるだけなのだが、気づかれていたらいたで、なんだか気恥ずかしくはある。
そもそも、いくら少年が中性的な顔立ちをしていたとしても
男色の気はないはずなのだから、問い詰められても原因はわからないと言うしかない。

「そりゃあやかりてぇもんだ…。
まぁ、いいか。アンタがそう言うなら従うぜ?
依頼主さんよ」

貧民地区出身であることも考えれば
彼の言う通りそういう類の期待はないだろう。
こんなところにわざわざ昔を懐かしんでやってきていることもおもえば
あまり居心地は良くないのだろうか?貴族のお屋敷は。

彼とともに踏み入れた酒場は、雨のせいで妙に蒸し暑い。
同じく雨に振られて体を濡らした連中が集まっているのだから無理もない。
依頼主の少年はと言えば、周りを見回しつつ歩いていってしまう。
少し注意がすぎる。

「お、おいっ、待てって!
雨宿り先で揉め事起こすのはゴメンだぜ?」

このままでは人にぶつかってしまいそうだというところで
少年の手を引いて、自分の方へと引き寄せる。