2020/06/07 のログ
タマモ > 「………ふむ、まぁ、褒められるのは、誰しも嬉しいものじゃ。
とは言え…むむむ…」

それは、己とて良く分かる。
褒められると伸びるタイプ、と言う訳でもないが。
ともあれ、何とも、この雰囲気は気分が良いものと感じれる。
そうなれば、あれなのだ…また、別の意識が湧いて来るもので。

「うん?…そうと考えた事もなかったが、そうであるやもしれんな?
何事も楽しむのに、自信なくば何も出来んからのぅ」

実際、そう言われてみると、軽く考えてしまう。
なにせ、それが少女の自然な考え方だったからだ。
と、視線が、ふと下がる尻尾を捉える。
何を思うか、その視線が、上を向いて、下を向いて。

「褒められるも良いが、褒める事も、また良いものじゃ」

そこに加え、頭を抱いた時の、その反応。
返す言葉自体は、普通のものなのだが…
…あ、うん、これはそろそろ、あれだ。
そんな考えが、頭の中で擡げられる。

「…塒?…まぁ、本来の塒と言えるのは、自然地帯にあるが…
ここでは、富裕地区の、ある邸宅に出入りしておったりもするな。
とは言え、ここだと言える、そんな場所はないのぅ。
その日その日、適当にやっておるし?
………まぁ、ロゴスならば、良いか」

湧き上がる考えは、その後にしようと。
まずは、少年の問い掛けに答え、少しの思案。
ぽつりと何か呟けば、ぽんっ、と手元に一枚の折り紙。
それを、少年の手へと手渡すように添える。

「お主への、連絡方法は分かった。
で、妾には…これに、文字を書き込めば良い。
手紙じゃな、念じれば、勝手に折られ、妾の元に戻るようにしておいたのじゃ」

これで、互いに連絡は取り合えるだろう。
その旨と、その方法を伝えれば、その手を離す。

ロゴス > 「むむむ?」

何やら思考を巡らしているらしいことはわかったが、その内容まではわからず。
思わずこてんと首を傾げ、耳をくるくると動かした。
その様子が、より一層その意識をくすぐるとも知らず。

「僕もそうだったよ。才能がないから数をこなして、自信を付けたんだ。
 あ、タマモは最初から天才だったのかもだけど。そうだったらごめんね」

頭に手を当てながら苦笑する。
彼は表情の変化はあまり激しくないが、代わりに耳と尻尾が感情に合わせて目まぐるしく動き回る。
今、尻尾はゆーらゆらと左右にゆっくり、大きく振られていて。

「うん、僕もそう思う。……? どうかした、タマモ?」

感情の機微を敏感に感じ取ったのか、疑問符を浮かべる。
が、それはタマモが寄越した手紙への興味と興奮にすぐ上書きされてしまい。

「タマモ、そんなことできるんだー! すごいなぁ、魔力とかあんまり詳しくないって言ってたのに。
 それともアレかな、自然とこういうことが出来るから、あんまり意識してないのかな?」

まだ何も書かれていない白紙の手紙を、裏返したりひっくり返したりしながらしげしげと眺めている。
まるで、新しい玩具を与えられた子供のように、左右で色の異なる瞳を輝かせていた。

タマモ > 「………」

その様子が瞳に入れば、つい、じーっと見詰めてしまう。
よし、もう良いだろう、そんな考えが巡った。

と、続く少年の言葉に、ぴくん、と反応する。
そこに、少女が何を思うのかは…

「それで良い、それが良い。
元から力は無く、元から才が無く、ゆえに努力がそれを生み出す。
そうした存在こそが、真なる自信を持つ事をすべきじゃろう。
元からそれらを持つ者が、それに到る事はない。
………妾は、そう信じておる」

ゆっくりと、語り掛けるように、少女は少年にそう伝えた。
それは、少女もまた、元は力も才も持ってない事を意味する。
…と、そこまで言葉を紡ぎ、少女は深く吐息を吐く。

「あー…まぁ、これは魔術?ではないからのぅ。
それとは違う、何らかの力、そう思うておけば良い」

と、余りにも大雑把過ぎる答え。
それは、少女が説明を面倒がっている、それをありありと見せたものだろう。

そして、まだ白紙の折り紙を手にする少年。
その背に、するりと手を伸ばし、その身を引き寄せる。

「さて、そろそろ、妾もあれでのぅ…
せっかくじゃ、ちと、付き合うて欲しいものじゃが…?」

更に、少年の耳元に唇を寄せ、そう囁く。
その行動に、何を思うかは、少年次第、だろうか。

ロゴス > 「…………?」

少年は笑顔のまま首を傾げ、しばし二人の視線が無言のままに交差する。
とはいえ、似たような感情は少年の方も抱いている。男の子なのだから。

「……うん、そうだね。今も、だけど。
 さっきね、タマモは僕が冒険者なのにミレー族なこと、珍しいって言ったでしょ?
 僕はね、ミレー族全体の地位と名誉を高めたくて、そうしてるんだ。
 もちろん、社会に対して僕一人の力があまりにも微力だってことはわかってるよ。
 それでも、何かせずにはいられないんだ。自分にできる、精一杯のことを」

少女が胸中を伝えたように、少年も語りかけるように想いを告げる。
それは普通に冒険者を名乗るよりも、よほど困難な道のりだろう。
自惚れではなく、己の矮小さを理解した上で、少年はそれに敢えて挑んでいるのだ。

「ふぅん……よくわからないけど、凄いんだね」
(やっぱりタマモの力は、魔力とは違う何かなのかなー?)

霊力、妖力などと呼ばれるそれは魔力とは似て非なるものであるが、説明は非常に難しい。
その部分だけは汲み取れたらしく、疑問には思えどそれを口には出さず、胸中で呟くに留めた。

「……いいの? 異性を誘う意味を知らないほど、僕は子供じゃないよ?」

耳元で囁かれると、顔を赤くしてそう尋ねる。
もし少女がそれに了承するならば、少年はその後に着いていくことだろう。

タマモ > 見詰め合う二人、その思いは、近いものがあるのだろう。
もっとも…その考え方に、微妙な違いはあるのだろうが。

「そうか…妾には、そうしたものは、細かく分からん。
が、その考えを持つ限り、確実な一歩を刻んで行けるじゃろう。
………多分な?」

そう、少女は、いまだこの世界の事は詳しくない。
しかし、種の立場や、状況は、大雑把には理解している。
少年の言葉を聞けば、軽く考え、そんな言葉を添えておいた。
まぁ、そう思うだけで確信がない為か、最後の一言を加えてしまったが。

「そうそう、それで良い。
………うん?…ほほぅ、そうなのか?
しかし、そうであっても、初心は拭えておらんようじゃな?
それならば、それが本当かどうか、しっかりと…試してみようかのぅ」

己が魔力を理解し切れぬように、少年も己の力は理解し切れないものだろう。
分かっているからこそ、それだけで済ませるのだった。

そして、それに続く言葉。
顔を赤くする少年に、にこーっとなぜか満面の笑みを浮かべる少女。
その言葉に、そう答えれば、少女は少年を連れて、どこかに向かうのだ。
それは多分、少年がそんな言葉を紡がずとも、少女がそうした事であろうが。

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