2020/04/25 のログ
■サチ > ゆっくり水を飲み始めたので、少しは落ち着いたらしい、とほっとして。横目で見ながらもしっかりと、興味があるように足を止めるお客には「いかがですかー?」と笑顔で勧めて。きっちり売り捌いていたり。彼がいても大した支障はない様でマイペースに営業しつつ。
「あー。ごめんなさい。そうですね。男の子ですものねえ」
カッコいい、と言うべきだった。まあ……キメ顔されて小さく吹き出してしまったのだけど。
「私もタダでお相手する程暇ではないのですよ。――じゃあ20年後で。……じゃ、お名前は何と言うんですか? 私はサチ、です」
口を尖らす顔にやはり微笑ましくなりながら目線を向けて尋ね。
■番号215642 > 精一杯の大人びた顔のまま
「かわいくない」
また繰り返した。相手の小さな吹き出しには気がつくことなく、あくまでもその表情は真面目にかっこよさを目指していて。それこそ10年後や20年後であれば、かっこよさも表現できそうだが、まだまだ幼さばかりを目立たせる結果になり。
「20年はさきすぎるよ。5年とかさ」
どちらが金を払う方なのかはもうわからないけれど、とりあえず20年は先過ぎると文句を言えば
「さち、おぼえた。おれは…まぁ、てきとうによんでよ。はらぺこオオカミでいいよ」
名前を名乗らない煮え切らない返事と無理に作っていたキメ顔は急に現れる別の気配にかき消される。
「やばいッ」
『見つけたぞ、215642!』通りを走ってきた男が急に口にする言葉を聞いた瞬間に、持っていたコップと肉の付いていた串を取り落として。
「ごめんまたね」
逃げ出す彼と彼を追いかける男は直ぐに貧民街の通りの奥、見えないところまで行ってしまうだろうか。今晩逃げ切れるかどうかは五分五分の様子。
■サチ > 「はい、そうですね。かっこいい、の間違いです」
大人っぽい顔を作ったままそんな事を言うので、こちらも笑いを堪えて真面目な顔を作って応じた。少々口元が引き攣ったが。
「はい? 25年ですか? それは随分先が長いですねえ……」
彼の声にトボけた女の返答。更に年数が加算された。
「憶えてくれるんですか? じゃあ、今度はそう呼んで下さい……腹ペコ狼は…。ちょっと長い、ですねえ……」
何か呼び方を考えておかなくては、とのんびり首を捻って考え始めたが――それもすぐに一転した。
彼を追って来る足音とそれを察知して急いで逃げ出す手からカップと串が落っこちて転がった。
「あっ………」
追い追われる光景に、言葉を掛ける暇もなく。二人は通りの向こうへ消えていった。
何か番号の様なものを口にしていた事から、ああ、あの子の名前は番号なのだ、とぼんやり認識しながら落ちたカップを拾い、串を捨てて。
「今度はお腹、減ってないといいですね……」
また、と一応言っていたあの子とまた会うかどうか分からないけど。その時は盗み食いなどしなくても良くなっていればいいと願いながら。再び女は残った串焼きを売り切る為に声を張って、通りを行く人々に愛想を振りまく。
「夜食に一本、いかがですかー? 美味しい串焼きですー」
そんな声は遅くまで貧民街の一角に響いていた。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」から番号215642さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からサチさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にキリエさんが現れました。
■キリエ > しくじった。
女の習得――あるいは、使えると言ったほうがいいだろうか、術は極めて強力である。
相手が使う攻撃手段が複雑であればあるほど、強力であればあるほど、介入の余地がある術と言うべきだろうか。
だがそんな術とて無敵ではなく、女も所詮は人の身。
悪魔祓いであるはずなのに、どこでどう間違ったのか情報屋の類と思われたらしい。カタギではない職に囲まれて、やれ銃だ魔術だ矢継ぎ早に放たれては叶わぬ。
逸らしきれずに体に受け止めながらも数人の意識を刈り取れたのはさすがであったが。
「くそっくそっ!」
廃屋。扉を蹴破りながら入っていくと、黒衣を脱ぎ捨てる。
打撲。切創。無数の傷が白い肌に刻み込まれている。
血まみれのシャツも脱ぎ捨てると、手早く腹部に巻きつけて、壁を背に座り込む。
震える手で薬剤の瓶を飲み干し、苦痛が去るのを目を閉じて待った。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にネメシスさんが現れました。
■ネメシス > 女が廃屋へ入り込んだ数分後、お供数名を連れて貧民地区内を見回りをしていたネメシスと、追手の集団がかち合ってしまう。
「あら? 貴方達、今日は何を探しているのかしら?」
遠くから喧騒の音を聴きつけ、わざわざ足を運んだネメシス。
追手の集団はネメシス達の顔を見るなり血相を変える。
「貴方達、後は頼んだわね。」
今日のお供はネメシスの親衛隊。
手練れが多く、只のゴロツキ程度では相手にならない。
「さてと…。」
足跡のように続く血痕を辿り、蹴破られた扉から廃屋へと入り込む。
「誰かそこに居るの?
表の連中ならこっちで対処したわよ?」
ネメシスは単身で廃屋に入り込み、入り口で足を止める。
腰の武器にも手を伸ばしておらず、用心はしつつも警戒心を煽るような行為は控えることにした。
無論、壁の向こうに隠れている相手がこちらの意図に気付くかどうかは定かではない。
■キリエ > いずれの傷も重傷にはなりえない。
偶然、攻撃が臓器を逸れてくれるのだ。女の加護とはそういったものだ。
逸れてくれるだけで、痛いことには代わりが無い。鎮痛剤を飲み干すと、瓶を放り投げて煙草を口に咥える。
「………追っ手か?」
何者かが入り込んでくる。
女は気だるそうな表情にて、侵入者の来たであろう方角に目を向けた。
こっちで対処した。
だが女は、相手の言葉を信用していなかった。返事をせず、代わりに煙草に火を灯して、まずは一服。
それとなくあたりに目をやり、角材を見つけるとそれを握りこんで応戦にそなえる。
■ネメシス > 正直、追手の連中はお供の団員達が捕らえるなりして、どこぞへ引き渡すことだろう。
となれば、ネメシスとしては危険を冒してまで首を突っ込む必要はない。
それでも足を踏み入れたのは、どうしようもない好奇心。
埃の臭いに交じり、煙草の香りが匂ってくる。
酒も煙草もしないネメシスは、この手の匂いに敏感なのであった。
「警戒しているようだから、このまま話すわね。
私は聖バルバロ騎士団のネメシス。
さっき表に居た連中はうちとはあまり仲の良くない連中ね。
うちの団員達が捕まえて、今頃は当局に差し出しに行く頃ね。
被害者であるアナタの証言も聞きたいわ。
困ったことがあるならうちが力になるわよ?」
警戒した空気が漂う中、語り掛けるネメシス。
世情に詳しい物なら、この辺りででかい顔をしている騎士団のメンバーと知れるだろうか。
■キリエ > 「……………騎士か?」
第一印象、騎士。第二は女。第三は不審。
騎士のような格好の女が入ってきた。
女は、煙草を咥え、ぼーっとする頭を軽く振りつつ、相手の出方を伺っていた。
「こんなくそったれな出来事は慣れっこさ………。
その、バルバロ騎士団ってのは聞いたことがある。
力になるってならそうさね、手当てでもしてくれたら嬉しいねえ」
聞いたことはあるが、具体的にどんな組織かまではわからぬ。
故に、相手の出方を伺う意味でも治療をねだってみる。
ぷはーと煙草をやりつつ。
■ネメシス > 「ええ、そうよ。 それも聖騎士。」
こういう自己紹介をするのも随分と久しぶりだ。
胸元に手を宛て、多少得意げな顔で答えて見せる。
「あらら、貴女凄い人生歩んでいるのねえ。
それなら早速だけど手当をしてあげるわね。
そっちに行くけど、いきなり殴りかかったこないでよ?」
声から女性、そして隠れている位置を突き止める。
金属音を響かせ、煙草の香りがする場所まで近づいて。
「ずいぶんやられたのねえ…
まあ、治療はしていくから傷跡を順番に見せて行って頂戴ね。」
シャツまで脱ぎ捨て、傷だらけの白い肌に手を添える。
添えた手が淡く光り輝くと、治癒の加護が発動し、女の傷をじっくりとだが癒していく。
傷や出血により消耗した体力も徐々にだが漲ってくるだろうか。
それらは女の信奉する神とは別の異国の神の御業。
■キリエ > 「聖騎士ね、そうかい。そりゃあずいぶんけったいな御職業で」
自分から聖とつける団体がまともだった試しがないと女は皮肉ったらしい口調でそう言うと、角材を下ろした。
相手が聖ならば、こちらも確かに聖ではあるのだが、まだ名乗りを上げる段階ではないと思っているらしい。相手が名乗ったのには対し、名乗ることは無かった。
鎧を鳴らしながら相手が接近してくれば、これまた気だるそうに肩をすくめる。
「ハジキにナイフに魔術もバンバン飛ばしてくれてな、頭をブチ抜かれなかっただけマシってもんさ」
言われれば順番に傷口を見せていく。
肩、腹部、腕。打撲もあれば、銃創もある。どれも筋肉や腱などを微妙に外しており、致命傷にはつながらないものばかりである。
順番に傷口が癒されていく。
知らぬ術ではあったが、大人しく受け入れることにした。目を閉じて、天を見上げたまま微動だにしない。
「変わった術だ、まあ、この際宗教の違いについては細かいことはいわないさ」
■ネメシス > 「こう見えてもこの辺りでは手広くやってるんだけど、
何かお気に召さなかったかしら?」
近づきながらも、不思議そうに眼を丸くする。
おかしい、今の所は嫌われる要素がないはずだが。
ひょっとして、聖職の類に嫌悪を抱く性質だろうかと想像を働かせる。
「あいつら、どこで手に入れるのか装備だけは一流なのよねえ。
それにしても一人でよく逃げ切れたわね。
急所もちゃんと全部避けているようだし。」
見せられた傷の具合を一つ一つ確かめながら、治癒を施す。
魔術的な相性も良かったのか、女の身体はすぐに傷が消えていき、綺麗な素肌が露になる。
傷の種類から、女の言うように多数の攻撃を一度に受けたようだ。
無事に生きているのが不思議なくらいである。
「術と言うか、神の力ね。
私、こう見えて神に愛されて生まれてきたから。」
こういう話をするのも本当に久しぶりだ。
治癒の合間にふふんと笑みを浮かべ。
「これで一通り治したはずだけど、どうかしら?」
■キリエ > 急所を外したというよりも、そうあるべくしてなったと言うべきか。
相手の腕前のお陰か、女の体質か。すぐに傷は癒えて、白い肌が晒されることになる。
とはいっても上着もシャツも血まみれだ。ああ、高かったのにと、無残な姿を晒しているシャツを見て天を仰ぐ。
「生憎“運”だけには愛されてる性質でね」
などと言い、追求されぬようにとはぐらかす。
それはそうとして、服が無い。血まみれの服を着ていくのも癪だ。はあとため息を吐く。
「神にね、そりゃあ、素晴らしいことで。
いや、問題なしだ。どこの神様か知らんが感謝だな。
………オレはキリエ。ただのキリエだ」
この場に及んで名無しではと名乗りを上げる。
煙草を一本吸い尽くし、二本目に火を移しながら、相手のことを見つめて。
■ネメシス > 上手く急所を避けることができたことについて、疑問を抱く。
追手は団の精鋭に比べると弱いが、それでもこれだけの攻撃を一身に受けて上手く避けるなんて
可能なのだろうかと。
ますます興味をそそられる。
「運…う~~~ん。」
果たして、そんなことがあるのだろうか。
彼女もまた、何らかの才能を持っているのではないだろうか。
「でしょう? だからそのうちこの国の困っている人たちを導いていくつもりよ。
その為の騎士団だから、困ったことがあれば相談に来てね。
早速だけどキリエ、もう少しここに居れるかしら?
団員の一人がそのうち報告に来ると思うから、代わりの服を用意するわね。」
着替えを渡してあげたいが、生憎こちらは重い鎧を纏っている。
紫煙を燻らせるキリエの顔を眺めたまま、外に視線を向ける。
表の顛末を報告に上がった団員達が近づく足音が聞こえてくる。
■キリエ > 傷も癒えて、煙草も吸えている。あとは睡眠と食事だろうか。それは、この場では難しそうであった。
相手がこちらに対し懐疑心を抱いているのはわかっているが、おいそれと答えを言ってやるつもりはない。企業秘密というやつだ。
「困ったこと、ね。まあ、煙草の流通量さえ増やしてくれたらあとは困ってることはねぇや」
などと言ってのけると、煙草を指に挟んで振ってみせる。
相手が外に視線を向けたので、釣られて向ける。どうやら外に大勢いるらしい。普段単独でしか動かぬ女にとっては、とても想像できない世界だった。
「女モンはよしてくれよ、その、ヒラヒラしてる服を着ると死ぬ病にかかってるんだ」
無論、冗談だ。
半分笑いながら言ってのけ、むせたのかケホケホと咳をして、これが薬なのだと言わんばかりに煙草に吸い付く。
■ネメシス > 唸った所で答えは出ないだろうし、仮に答えがあっても見ず知らずに何でもかんでも話して
くれるものではないだろう。 その程度の分別はあったので。
「煙草ねえ…そんなにいいものなの?
欲しいなら安くで譲ってもいいけど。」
大所帯だけに当然喫煙者の数も多い。
組織として纏めて購入しているために種類も数も豊富に貯め込んでいる。
護衛の一人が一礼をしてから報告に近づいてくる。
どうやら、追手は全て当局に引き渡され、根倉の一つも今日中に手入れが入るらしい。
と言っても、明日には別の場所で似た様な連中が出没したりするのだろうが。
ちなみに報告に上がった護衛は女の団員であった。
「それなら、今着ていたような服を持ってこさせるわね。
まあ、私としては貴女で着せ替えごっこを楽しんでも良かったのだけど。」
要望通り、似た様な服を持ってくるように団員に指示を出し。
言われた団員の一人がすぐさま退出し。
10分程度した所だろうか、キリエが来ている服の微妙にデザインが異なる服を持って戻ってくる。
黒服ではあるのだが、下が膝丈のスカートになっていた。
「とりあえず、これでいい?」
■キリエ > 「ま、ま、煙草は煙草でもちと特殊な…………煙草ってのはいいぞ。
吸えば吸うほどあの世が近くなる実感がわくだろ?」
けらけらと笑いながら既に三本目に火をつけ始めている。チェーンスモーカーここにきわまりだった。
護衛の一人がやってくる。部下だろうか。女はその動きを興味深そうに見守っていた。
なるほど、己に鉛弾をくれた連中は仲良くくさい飯を食わされるらしい。これは傑作とにやにやと笑ってみせる、この女、実は聖職なのである。
「頼んだぞ」
着せ替え。なんだか嫌な単語が聞こえてきたけれど、そこは無視してのびのびと寛ぐ。
程なくして部下が持ってきた服は、あろうことかスカートだった。煙草を指に挟み、げっそりとした表情を浮かべる。
「はぁぁぁぁぁ…………あのな、オレがスカート履くようなタマに見えるかい?」
渡された服を指でつまみ、まるでそれが危険物であるかのようにまじまじと見つめて。
■ネメシス > 「要らないわ。 これからやることが多いから、あの世になって行っている場合じゃないもの。」
笑いながら煙草をすう姿はまるで街の不良のようなのだが、
それとは異なる雰囲気をなんとなくだが感じ取っていた。
無論、ただの直感であり根拠になるようなものは無いのだが。
そして、今日のお供はネメシスの親衛隊である。
腕前もそうなのだが、主であるネメシスのことをよくよく理解していた。
そんな団員が買ってくるのだから、それは必然と言うべきか…。
「う~ん、でも彼女が言うには他に似た様な服は無かったそうよ。
貴女の服ってちょっとこの辺りでは珍しいからね。
うちの拠点まで来てくれたら他の服もあるから好きなの選んで帰っていいけど。
とりあえず、ここを出る迄はその服にしない?」
団員の密かな気配りに気付くことなく、キリエを宥め様とするネメシス。
信頼している団員であること、周囲が貧民地区であることからそんなものかと納得していた。
「あ、着替えるならあっちむいておこうか?」
■キリエ > 「スカートを履いて格闘してみろ、どんな面白いことになるかわかるか?
わかんねぇだろうなぁ」
などとぶつぶつ言いつつ、既にシャツには手をかけて着替え始めている。
相手は同性なのだ、今さら怖気付くこともあるまいと。
だが、下半身だけは手が動いてくれなかった。スカートに指をかけてはいるものの、一向に着替えが進まない。スカートを見、相手を見、天を仰ぐ。
おおゴッド。これは試練なのですか、と。
親衛隊がわざわざ買ってきたその服、まさか気を利かせてくれたとは想像もできない。
「………………………………」
長々とした沈黙を挟み、その服を買って持ってきたという女性団員を睨む。
そして、観念したのか衣服を身に着ける。動きによどみは無く、あっという間のことだった。
屈辱のミニスカート。白くしなやかな足が黒衣に映えている。
ふてくされた表情で煙草をすぱすぱと吸う。
「………………これでいいかい、笑うなら笑えや」
■ネメシス > 「あら、格闘術が得意なのね。」
ほうほうと、頷いているネメシス。
格闘術の使い手はあまり見たことが無く、ますます興味をそそられていく。
目の前で着替えが始まると、何も言われなかったのだからと着替えを見上げていた。
格闘技をしているだけあり、無駄な肉の少ない引き締まった体。
それでも、所々で女性らしい丸みも目に見えて。
表情には出さないが、眼福を楽しんでいた。
スカートを手に天を見上げる様子には、そんなに?とばかりに首を傾げる。
睨まれた団員は、にっこりとキリエに笑みを浮かべていた。
自愛に満ちた表情であり、どうやら腹芸が達者なようで。
「う~ん、綺麗な足よね。
ちゃんと凹凸が出ているのがいいわ。
触りたくなるくらい。」
立ち上がると、ミニスカートから伸びた生足を堪能する。
思わず本音が口から洩れる程に。
「まあ、ここを出る迄の間だから。
着いてからなら何でも着れるわよ。
最寄りの拠点なら、真っすぐ歩いて10分くらいかしら。」
■キリエ > 何やらねっとりとした視線をネメシスどころか団員からも感じたが、気のせいであろう。きっと。
ミニスカートの悪魔祓い。なんだかいそうでいない組み合わせが爆誕してしまった。
にこにこと笑いを向けられると、ますます煙草の消費量を増やしてそっぽを向いて、ついでに腕を組む。
どうやら相手は女の装いに抵抗がないようだが、キリエという女は違った。女の装いができないわけではないが、苦手なのであった。
「………見んな」
言葉少なく、相手の顔を見ようともしない。本音だろうが、おべっかだろうか、同じようなものだった。
「なあ、その拠点とやらについても服が無いなんて言わねぇよな。
もしそうなら拠点で担架が十は必要になるからな! なあ!」
嫌な予感しかしない。
女はそのまま相手に詰め寄って、聖職者とは思えぬ眼力で威圧にかかった。
■ネメシス > 団員達も絡みつく様な視線を向けるだろうが、それはあくまで交互にである。
彼女たちは大半がネメシスのお手付きであり、ネメシスが興味を示した相手に
手を出すような真似はしない。
初対面であろうと、煙草の消費具合からおおよその感情の揺らぎが見て取れた。
なので、見るなと言われると謝意を述べてから視線を逸らす。
「そんなことは無いわよ。
と言うか、そんな真似するなら着替えも用意しないでこの場で抑えたほうが早いじゃない?
怒るのは勝手だけど、その辺の理屈くらいはちゃんと考えてよね。」
略奪団同然だった時期もある為、この手の反応は慣れたもの。
詰め寄られても、気にすることなく拠点へ向かわんと、足を動かす。
と言っても、訪問客を連れての移動と言うこともあり、ペースはゆっくりだが。
■キリエ > 「……………む、それは……」
カッとなったはいいものを、着替えを用意してくれるのは相手の組織なのだ。
はあ、と重苦しいため息を吐くと、己の血みどろのシャツを一度は手に取りかけて、頭を掻いてその場に投げ捨てていく。
煙草を燻らせつつ、団員に囲まれるような形で女の後を追いかけていくことだろうか。
「……………いまさらなんだがアンタ、偉い人なのか?」
今更である。
団員の素振りといい、なんといい、間違いなく偉い立場の人間であろう。
教会の鉄砲玉に等しい立場の女からすれば、大きい違いがあることであろう。
■ネメシス > 「落ち着いてくれた?」
団員達も、こういったことはよくある事とばかりに間に入ることもしなかった。
ネメシスもまた、茶色い瞳を細め、笑みを浮かべる。
団員達に周囲を守られながらの移動は貧民地区の住民の視線を集めただろう。
その前の派手な騒動の時点で大いに目立ったことだろうし、既にバタバタと走り回る官憲の姿も見える。
「一応、聖バルバロ騎士団の副団長をしているわ。
でもこの国では特段偉いわけでもないし、気を遣わなくていいわよ。」
わざわざ国は出さないが、この国での貴族階級と言うわけでもなく。
つい先日までは只の武装組織であったこともあり、ネメシスは誰に対しても気さくであった。
そんな彼らの拠点の一つに到着する。
3階建ての大きな木造の建物。
窓は小さく、入り口を含め、いかつい顔つきの団員達が見張りをしていた。
彼らはただの平団員であり、元々チンピラやごろつきであっただけに、キリエの生足をまじまじと見てくるだろう。
そんな彼らの前を通り過ぎれば、一つの部屋に案内する。
そこは入り口入って近くの大きな部屋。
主に女性団員用の服や備品が複数ある棚の中に並べられている。
「どうぞ、好きな服を着て行っていいわよ。
お気に召すのがあるかしら?」
■キリエ > 「はー、副団長ね………下っ端のオレからすれば随分と御偉いさんってわけだ」
副団長。
世相に疎いもとい興味が無い女にとっては、イマイチ偉さの度合いが掴めない。
が、それでも偉いというのは分かった。感嘆の声を上げる。
スカートの裾さえ長ければよかったのにと、裾を気にする素振りをしつつ歩いていく。
「あ? なに見てんだ?」
三階建ての木造の建物に到達した。
案の定団員がジロジロと見つめてくるものだから、キリエという女の堪忍袋がはちきれそうになっていた。
煙草を咥えつつ、拳を鳴らして威嚇する。
「………やっぱこれだな」
そして、大き目の部屋に入った。さしずめ服庫とでも言うべきだろうか。その中から男用の黒服を取り、早速着用する。
己の体を確認しては、にんまりと笑う。
■ネメシス > 「副団長だけど、うちの騎士団じたいが偉いとは程遠いから。
正直、今日捕らえた連中とそれほど違わないわよ。」
元々は似た様なことをしていただけに、あまり褒められると耳が痛い。
今も改心したでもなく、成り行き上、大人しくなったと言うだけで。
「「こっわ。」」
男の団員達はいつも通り、下卑た表情を見せた所、キリエに凄まれる。
彼らは下種ではあるが、経験上相手の強さをそれとなく理解することができた。
なので、拳が鳴った所で視線を逸らした。
「さっきの服も良かったけど、今の格好も似あってるわね。
所で、今日はもう遅いし食事でもどう?
明日の朝、うちの団員に遅らせるわ。」
男物の服に身を包み、笑みを浮かべているキリエに声を掛けるネメシス。
既に夕食の準備を拠点内では始めているのか、仄かに食欲をそそる匂いが届いていた。
■キリエ > 「食事ね、なんだかあれこれ世話になっちまってわりぃな。
言っておくけど金はねぇからな……」
食欲を誘う匂い。
このまま世話になるにしても、タダでいいものなのかと女は考えた。
そして、この後、何かしらの代価の請求があるかもしれないがそれは違う話。
■ネメシス > その後、キリエを交えて夕食となる。
その際、何かしらの対価を要求したかもしれないが…。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からキリエさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からネメシスさんが去りました。