2020/04/09 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にリューノさんが現れました。
リューノ > 「~♪」

夜も更けてきた貧民地区を、どこか楽し気に歩く少年の姿。
時折きょろきょろと辺りを見回しており、何かを探している様子。

探しているのは、困っている人や何か助けが必要そうな人。
どんな形であれ、人に奉仕することが大好きな少年は、今日もその欲求を満たせる相手を探している。

見つけ次第声をかけたり、手助けをするつもりだが、果たして。
悪徳に塗れたこの街では、見つかるのはもしかすると別のものかもしれない。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にゾーイさんが現れました。
ゾーイ > その姿を暗がりから見つめる、二つの光があった。
猫が持つわずかな光でも増幅し、暗がりを見通す輝板と呼ばれる器官。
猫と同等の特徴を持つ光の持ち主は、優れた暗視能力を持っていた。

「へぇ」

に、と口角を吊り上げる。
貧民地区にやってきた目的は知らないし、どうでもいいが、その姿は楽しげで余裕があった。
貧民地区にいる者の多くは余裕がない。自分のことだけで精一杯だからだ。
つまり余裕があるということは、概ね懐にも余裕があるということを意味する。

「グッドイブニーング。キミは誰?」

泥棒(シーフ)であるミレー族の少女は、物陰から姿を現し声をかけた。

リューノ > 「!」

この貧民地区で、ゆったりとした様子で楽し気に歩いていると。
明るい声をかけられ、そちらを向く。

「わ、初めましてー、僕、リューノ!」

上等ともみすぼらしいとも言えないシャツとズボン姿の少年は。
シーフに声をかけられると、ミレー族であることも気にかけず、相手の言葉に応えながら近づいていく。
懐には余裕…というより、何も入っていない。
服は自前で作れるし、お腹は誰かに奉仕すれば膨れる。
だから、シーフの目論見とは違い、少年は特にお金を持ってはいない。

「あなた、何か困ってる?僕、困ってる人を探しているの」

けれど、そうとは感じさせない少年特有の少し高い声で、首を傾げて聞いてみよう。

ゾーイ > 「ボクはゾーイ、よろしくねー! で、困ってる人?」

首を傾げる。困っている人を見つけて、どうしようと言うのか。
相手の特性を把握していない黒猫は、イマイチ状況を把握できていないでいる。

「知ってることは知ってるけど、タダでは教えられないなぁ。何しろボクも困ってるんだよ、お金がなくてね」

周囲をぐるぐる陽気に周るように少年を見渡し、内心で嘆息。
金目のものは見当たらない。

「(ちぇ、まぁ当然のことか)」

貧民地区を出歩くなら、そういったものを持ち歩かないのも心構えの一つだ。
良家の御坊ちゃまなら人攫いにでも切り替えるか、等と思案しつつ話を進める。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にゾーイさんが現れました。
リューノ > 「ゾーイ!よろしくよろしくー!!」

人懐こい笑みで名前を繰り返し。

「お金がないの…、ううーん……お手伝いできることがあればいいんだけど…」

自分にできるのは、ある程度の肉体労働などだけだ。
持ち歩いているお金はなく、全くの素寒貧。
首元やズボンのポケットにも、貨幣が入っているような袋は見当たらない。
更に服も、上等かと言われれば微妙なラインだ。

「僕もねー、お金は持ってないの…うーん、でも困ってる人がいるなら教えてほしいし…」

相手の言葉に、少年は思考の迷路にはまってしまったようだ。
頭を抱えて悩んでいる。

ゾーイ > 「うん? お金がないなら他人にかまけてる余裕なんてないんじゃないの?」

手伝う、というのは自分の仕事が片付いてから行うもの。
しかし、金が全くないのにそれを行うということは。

「あるいは……誰かを手伝うことが『手段』ではなく『目的』なら話は別だけど」

黒猫は右目に手をかざして、左目だけで少年を見た。
上手く言語化できないが、普通の人間とは異なる奇妙な魔力の流れが見える。

「キミ、もしかして人間じゃないとか? なーんてね」

冗談めかして、そんなことを言ってみる。

リューノ > 「余裕って言うか、ええと…」

相手の質問に、正体を明かすと怖がられてしまうかもしれない、と思い。
どう答えようか迷っていると、助け舟が出た。

左目で少年を見るなら、人間ではない、魔族特有の魔力の流れが見える。
内に秘めるのは闇に近い魔力だけれど、とても人を害そうとしているとは思えない。

「あ、怖がらないで、ね?そうなの、僕、魔族で…でも、本当に悪い事してるんじゃなくて…
人を手伝ったり、気持ちよくさせてあげたりして、その時に出るものを食べてるだけなの!」

魔族であることを告げた後に慌ててわたわたと手を振って。
何とか怖がられないようにしようと弁明する

ゾーイ > 「……は?」

それは一瞬の出来事だった。
『魔族』と言う言葉が出た瞬間に、恐ろしく素早く、かつ自然な動作で少年の背後に密着するように位置を取り。
音も立てずに抜き放った短剣の切っ先を、正確に少年の喉元に突きつけようとする。

「動かないで」

先程までとは打って変わってドスの効いた低い声で告げる。
だが、いつでも首を掻き切れる体勢に入れたとしても、まだ実行はしない。
これは相手の反応を見るためのものだ。
これで本気で怯えるようなら、黒猫は少年の弁を信じようと考えていた。

リューノ > 当然、戦闘など行えるはずもない。
誘惑や魅了も使えず、力のある魔族からすれば、恥さらしもいいところの一族だ。
そんな少年に、自然で素早い動作が見切れるはずもなく。

「ぴ…っ」

少年からしてみれば、自分を観察していた相手が、いきなりドスの聞いた声で後ろにいる。そんな状況。
喉元に刃物を突きつけられれば、何とも情けない反応を示して、ぴた、と…話していたままの姿勢で固まってしまう。
恐怖にぷるぷると震えてはいるものの、言われた通り、できるだけ動かないようにしていて。

「~~~~………!」

このまま殺されちゃうのかな…などと思いながら、ぎゅ、と目をつぶり、少年は沙汰を待っている。

ゾーイ > 「ふぅん。演技じゃないね、本物の怯え」

脅迫や強盗の経験も何度もある。
だから怯えの真偽を見極める自信はあった。

「誰かを助けて生きる『いい魔族』だなんて、荒唐無稽な話だけど。信じるよ」

短剣を背後の鞘へと収めて、正面に立って。
そして幼さの残るその顔を、苦笑いしながら見つめた。

「でもねー、魔族に『いい魔族』と『悪い魔族』がいるかどうかは知らないけど、『いい人』と『悪い人』がいることは間違いないって、忘れちゃダメだよ。特にこういった場所ではね」

リューノ > 「あ、う…?」

少年からすれば、何が何やらわからない。
魔族を恨む人からすれば、自分もその一員であることは間違いない。
けれど、目の前に立つ人は苦笑いしながらも短剣を引いてくれて。

ようやく、ほ、と一息。
汗がたらりと、少年の頬を伝う。

「…でも、悪い人でも困ってるなら、助けたいです。
だって僕は、そういうもの、だから…」

怖がっていたけれど、忠告にはもじもじとしながら返して。
根っからの奉仕種族である少年としては、あまり善悪に頓着は無く。
誰かの助けになれれば、それでいいのだと。