2018/03/26 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にジェルヴェさんが現れました。
■ジェルヴェ > (この時期にしては妙に肌寒い。それが例えこのような時分だとしても、男の頬を撫でる風は冷え冷えとしていた。
話が違う、と嘆きたくなるような、もう春を迎えた筈のある日の夜。空の酒瓶がぎっしり詰まった木箱を戸口から外へ運ぶ途中で、漏れかけた欠伸を奥歯で噛み殺す。
――散々飲み食い騒ぎ散らかした客が帰路に着けば、店は嘘のように静かで、平穏だった。静寂に安堵し寄りかかれば忽ち眠気に襲われそうになる程度には安らぎを感じるが、まだ気が早い。荒れた卓の片付けをして、軽い掃除をして、それからあとは)
「……あっ、帳簿だ。マジか」
(ざっと考えただけでも二、三。仕事は連なるように後に控えていた。路地裏を覆う吸い込まれそうな夜闇へ、げんなりした呟きも一緒に取り込んで貰う。ついでに溜息もおまけした。)
■ジェルヴェ > (歩みを踏み出す度、両手に持った木箱の中で空瓶同士がぶつかり合い音を立てる。がちゃがちゃと騒がしく音を鳴らしながら店の玄関から少し離れて、古ぼけた外壁の傍に荷を置いた。同じように壁に寄せられた空き瓶の箱が、他にいくつか暗い陰となって密集している。開け放たれた戸口から漏れて路地を照らす明かりは届ききらず、物陰の向こう側は一層の暗がりを湛えていた。
――そんな中から。もしくは路地の奥から、ぎらりと光る二つの眼が突然現れる。小さく丸く、その視線は丁度箱を地面に下ろしに身を屈めた男に注がれていた。
驚く間もなしに、正体はすぐ割れる。甲高く短い声で、その眼はこちらに語りかけて来た。にゃあ、と、出会い頭の挨拶のように。)
■ジェルヴェ > (それからぬっと物陰から姿を見せて、猫はもう一度鳴き声を響かせた。雑然と並べた木箱の縁に体を擦りつけながら、ゆっくりと地面を踏んでこちらへと近寄ってくる。何となく地べたへ下ろしたはずの箱から手を離さず屈んだまま固まっていると、猫は今しがた運んだその木箱にも頭と胴を擦り寄せて、こちらを警戒する素振りの一切を見せず更に鳴く。よくよく聞けば、ひどく甘えた調子の音色だった。)
「えー…?なに、腹減ってんの?」
(身動きを取らずにいたら、とうとう足元まで距離を詰められた。そこでやっと彼、または彼女の全貌を薄暗がりの中で確認できる。
野良猫にしては小奇麗な毛並みで、けれど首輪は着いていない。随分人馴れしている様子だが、この辺りでは見かけない毛色だった。白や黒や茶、それらが混ざったブチ柄の野良猫ならよくゴミ捨て場などで決闘を繰り広げているが、その中にこのグレー一色の猫が混ざって喧嘩していたような記憶はない。
ついにはその場で寝転がり腹を見せてうねり出す懐こさに困惑しつつ、まんまと呼びかけに足止めを食らう。木箱から手を離し膝を曲げ、中腰を解きその場にしゃがみ込んで)
■ジェルヴェ > 「なんもないよ、食い物。賄いくらいだよ。そして俺のメシだよ」
(姿勢を低くしてみても、猫に逃げる様子はない。相変わらず仰向けに伸びて、背中でも痒いのかうねうねと地べたに寝転がっている。上から覗き込み語りかけても当然明確な答えは返ってこないが、ひょっとすると向こうの意思を汲み取れていないのはこちら側だけで、猫は男の言葉を理解したのかも知れない。
次いで、何となくそんな気がした。うねうねごろごろ寝転がらせていた体躯をひっくり返して起き上がった猫が、すぐさま足元に胴体を寄せてくるのを、目の当たりにして)
「…あー。あー、ヤメテ。毛ェ付くから」
(――媚びられている。自分の食事を、当てにされている。愛らしい鳴き声と共に擦り寄られながら、避けることも追いやることも出来ずにそう感じた。)
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にリタさんが現れました。
■リタ > 仕込みの途中で気がついた。ワインが足りない。店を早めに切り上げて市場に…開いている訳がない。
困り果てた店員は近くのライバル店を走り回る。色良い返事を貰えぬまま、辿り着いたのがココ。
「あの~、すみません…このお店の方です?」
猫と戯れている男性に声をかける店員。その目線は猫に釘付けで、顔はちょっとにやけていた。
■ジェルヴェ > (散々地面の上で転がり倒れた後だから、例え体毛が抜けて生地に付着せずとも土埃くらいは貰うだろう。パンツの裾は多分もうだめだ、擦り寄られた瞬間にそう諦めて、浅く眉を寄せ困惑めいた顔に笑みを混ぜ、余計に動き辛くなった状況に追い込まれた事を自覚する。
――確か、サラダのトッピング用に蒸した鶏肉が残っていた筈だ。完全に誘惑に負け、餌付けにまで思考が傾きかけた、時)
「……、…いやー」
(不意に飛んできた遠慮がちな人の声で、はっと我に返る事に成功。じゃれ付いて戯れていた訳ではないが、猫に夢中で近付く人の足音にも気付けなかった。猫に話しかけていたのを見られていたかも知れない。だとしたら割合恥だが、振り向いた先に見た女性は馴染みの客ではないので、深く考えないようにして)
「さすがに猫は店やらねーんじゃないかな。酒注げないと思うよ」
(ともかく顔を上げ振り向いても交わらない視線は、明らかにこの猫に原因があった。揶揄混じりに笑い、わざと的を外した答えを綴る。)
■リタ > 「あ…あ~…あああ~…」
猫の行動を見ていた店員は、それが男性へとまとわりつき、男性の服を汚していくのを見ながら気の毒そうな声をあげる。
それでも顔の可愛さに負けているのだろう、顔は笑顔のまま。
と、男性が自分に声をかけてきた。ちょっとウィットの効いた切り返しに思わず噴出してしまって。
「アハハ、そうですよね。でも、人間の言葉が解るネコちゃんなら寂しさ、紛わせてくれそう。」
猫との語らいが店員にも届いて居たのだろう。
今の状況からして、その声はこの猫に向けられたものに違いない。
ちょっとおどけた口調でその男性へ。そして続けざま、本来の目的を告げ始める。
「えっと…この表通りを挟んでちょっとのトコにあるバーの者なんですけど、
え~っと…良かったらワインを少し、その…分けて頂けたら…なんて」
他の店舗で断られ続けたからか、それとも男性の今の状態が気の毒すぎるからなのか、探り探り声をかける店員。
■ジェルヴェ > 「あー、たしかにこれは絆されるなー。俺今ニャーだけで口説かれかけてたもん」
(男の返した軽口に零れた笑い声から継がれる返答へ、同意がてら改めて足元の動く毛玉を眺めた。
確かにこれほど人馴れした猫が出迎えてくれる店なら、客受けは抜群に良さそうだ。話題に上る当の猫は、もう一人媚を売る相手が現れたのを切っ掛けにしれっと男の足元から纏わり付くのを止め、少し離れてまた仰向けに寝転がり、伸び始める。恐らく、様子見のつもりだろう。女性が友好的な態度を取れば現金に男から鞍替えするに違いない。)
「…ああ、なんだ。お使い?こんな時間に走らされてんの」
(一先ず猫が離れたので、しゃがみ込んでいる理由はなくなった。両手を曲げた膝の上に着いて立ち上がり、体ごと相手の方へと向き直る。おずおずと言った調子で告げられた用件を聞くと、軽い労いもそこそこに踵を返し、開けっ放しでいる店の出入り口へとつま先を向けて)
「いいよ、とりあえず中おいで。どんなの探してんの?」
■リタ > 男性から離れて伸びる猫。明らかに「ちぇ、媚びても何もくれんのか」とも言いたげな猫が、今度は店員をターゲットにしたらしい。
店員は両掌を開いて見せて、纏わりつかれる前に諦めさせる作戦に出た。まだ仕込みが残っているのに毛だらけにされては堪らない。
察した猫は「こいつもくれんのか」的視線を店員に浴びせ、脇に退散、ふてぶてしくも寝そべった。
「一応店主なんですよ、これでも。ソコの「マスカレード」ってとこです。
仕込み途中でワイン無いのに気づいて…あ、風味付けなんで、安いので構わないです」
男性の優しい言葉に、いい人そうで良かった、と安堵の溜息。男性が店の中に入れば、遠慮がちに着いていく。
途中ふと見ると、店の名を知らせる看板が消えているのに気づいた。
「お邪魔します…このお店、名前無いんですか?」
そんな事を聞きながら、店の中をしっかりチェック。見れば自分の店と同じくらいの規模。
しかし調度品、特に見事なシャンデリアは自分の店には無い。
店員の感想は、大人の雰囲気抜群の良いお店だった。…それらが綺麗なら。
■ジェルヴェ > (やって来た女性だけ招き入れるつもりだったが、猫まで一緒に店の中へくっ付いて来たらどうしようかと思っていた。無邪気――に見えるよう愛嬌を振りまかれた直後、無碍に追い出すことはきっと出来ないから。
しかし心配を他所に、猫は移動する人間の後へ続こうとはしなかった。途中で振り返り後方の猫と、応対する人物を見て、そのまま店の中に入ってゆく。)
「うそ、マスターさん?ごめん、若いから給仕の子かと思った」
(使いっぱしりと、安直に称したのは失言だった。まっすぐカウンターに向かう最中、肩越しに振り返って弁解付きではありつつもすぐに詫びを入れておく。
向かった先は、カウンター後方、壁面の棚に並べられた酒瓶の前。其々ラベルの方向はちぐはぐで雑多にずらりと詰められているが、それでも種類毎には大まかに纏められている。自分が判ればいい、そんな思考の典型的な配置だった。)
「あー、マスカレード。看板だけ知ってる。うちは…、うん。無いかな。決めんの面倒臭くてなー」
(カウンター席の一番端には未だ下げていない空の皿と、グラスが数人分残されている。同業者の眼がチェックに走っているとも知らず、或いは全く気にした様子もなく。カウンターに入ると、目当ての酒瓶を探して棚前で指先を左から右へ、宙へ滑らせていって)
「赤でいい?あ、何本あれば足りる?」
■リタ > 振り返り詫びてくれる男性。両手を振りいえいえと笑顔で返事を返し。
そのままお店のカウンターへ手を這わせる。あ、ウチと同じ大きさだ、テーブルも同じ位。そんな事を考えながら、
視線をせわしなく動かして店の中を観察して回る。
「雇われなんでお気になさらず。やってる事は給仕とほぼ同じですしね~。」
そして視線は並べられた酒瓶に。自店舗の約二倍の量のそれは、お酒を中心に売っているお店だという事が解る。
こっそりと行われ続けるライバル店の視察は怠らない。
「こんな雰囲気なら、名前無くても良さそう…。ホラ、『いつものあそこ、行く?』って感じで行けるお店、素敵だな。
…あ、赤で。二本頂けると嬉しいです。」
ちょっとだけ、台詞めいたオジサン口調を織り混ぜながら男性に返答。
■ジェルヴェ > (常連客の名前やサインが吊り下げられたもの、開封済みのもの、ワインが集められた辺りでいくつか瓶をスルーしたり、手前に並んだものを退かしたり。そうして奥から取り出したのは、未開封でどこの市場にも流通しているような一般的な銘柄のボトルだった。すぐ近くに同じものが並んでいるのを見つけると、もう一本取り出してカウンターへ。
――天井や調度品は知ったことではないが、座席や持ち場周りなら一応の清掃は行っている。ので、棚の奥底から取り出したこのワインボトルも埃を被っている、なんて事態にはなっていないが、念のため近くのクロスで軽く表面を拭いていって)
「素敵かどうかはアレだけど、ありがとう。マスカレードってマスターさん一人でやってんの?」
(店主が給仕も行うとなると、客入りが膨大で人手が足りないか、そもそも規模が少人数で可能な範囲か、そのどちらかだろう。ぼんやりと、先に言った通り見覚えだけはある看板を記憶から引っ張り出してみる。余り大きな敷地、と言う印象はなかったように思うが、何せ記憶の輪郭はふやけたままなので曖昧だった。
ボトルを拭き終え用意を済ますと、調理台の隅にあった紙袋を拾い上げて中身を確認。多分何かを買ったときに貰ったものだ。今は空で、特に汚れてもいないようなので、ワインボトルを入れて持たせる為のものへと昇格させる。)
■リタ > 男性が運んできたワイン二本、それは望み通りの一般的なもので。こういうお店だから、凄いのを出されたらどうしよう、なんて杞憂が吹き飛んだ。
二度程頭を下げ、助かります、ありがとうございます、と返答している間に、それはわざわざ紙袋へと収められていて。
最初にこのお店に来れば良かった、店主様ありがとうと心の中で感謝しながら。
「マスターさん、はちょっと恥ずかしいので…私、リタって言います。」
自分より年上らしい人からそう呼ばれると、少しくすぐったい。丁度良い機会だからと、店員は名乗り、言葉を続ける。
「――一人なんですけど、毎日開けてる訳じゃないですし、店も…このお店よりほんのちょっと狭い位なので。
あそこのテーブルがこの辺りにあって…4席は無理だから3席にして…あ、えっと、お幾らです?」
身振り手振りで内装を説明していく店員。そこで代金の事にはたと気がついた。
■ジェルヴェ > 「リタ。リタちゃんか。あー、えーと」
(告げられた名前をまずは復唱。これで彼女の店の看板、外観まですっかりおぼろげなままではあるが、店名とその店主の名前だけは新しい記憶として刻まれる。会話から休業日があると知り、その後に続いた品代についての問いへ返すはずだった言葉を一度詰まらせた。
同業者であり、ご近所様である。代金を貰うつもりがないのは最初から変わらず、続ける予定でいた言葉だけ短い思惟の後で変更させて)
「じゃあ、今度客として呑みにおいで。そっち行って一杯奢ってもらおうかと思ったけど、忙しいと悪いし。
あ。俺、ジェルヴェともーします」
(丁寧に挙げられる店内の詳細を和やかに笑い聞きながら、紙袋を腕に抱えてカウンターから外へ出る。ついでとばかりに名前をくっ付け告げると、荷物を持ちながら見送るために店の出入り口へと歩を進めていって)
■リタ > 既に袋から相応の額が掌へと移っていた状態。その状態で、男性は支払いの事を口にせず、飲みに来いと言う。
少しばかり困り顔をした店員だったが、この人なら好意に甘えても良いか、と結論付けた様子。
「…はい、絶対来ますね。ジェルヴェさんもウチ、来て下さい。お酒自体は…安物ですけど…料理なら。ジェルヴェさん、ジェルヴェさん、…と。」
教えて貰った名前を復唱しながら、慌てて男性の後を慌着いて行く。ワインを持たせてしまっては申し訳ない、と。
そして店から出れば、ワインの入った紙袋を受け取り男性に謝礼の言葉を伝えると、ついでにふてぶてしく寝ている猫にもバイバイと挨拶。
路地を抜ける所で振り返り、もう一度礼をして…
さあ、これから市場。行かなければ今日もジャガイモメニューだ。
■ジェルヴェ > 「ああ、うん。いいねメシ。開いてんの見たら顔出すよ」
(仕込みに使うワインが無くて、夜分に街を出て歩いて探すような店主が作る料理なら、きっと気持ちが篭った美味なものに違いない。場末の呑んだくれがぽつぽつ集うようなこの店に呼ぶより、やはりそちらをご馳走になるほうが魅力的で、営業中に足を運べる機会を願い、口にした。
出入り口までやってくるとそこで紙袋を彼女へ渡し、暗い路地に出て行く姿を見送る。戸口の縁へ寄りかかって「気ィつけて」と声掛けはしたが、律儀に曲がり角の前で振り返り、少し小さくなった姿で頭を下げるぼやけた陰に小さく笑って返事の代わりに軽く手を振った。
――姿が路地の向こう側へと消えた頃。店内に戻ろうとドアを閉めかけた所で、再びあの鳴き声が聞こえてくる。にゃあ、短いそんな呼びかけに横を見れば、先程の猫がしぶとくその場に居座り、こちらをじっと見詰めている。)
「…鶏肉あるけど、食う?」
(問いかけの後に続いた短い鳴き声で返事を貰った気になって、閉めるはずだったドアを薄く開け放ったまま、カウンターへ戻っていく。隣人へのおすそ分け、そのついでに。その日は随分遅くまで店先に明かりが灯っていた。)
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からジェルヴェさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からリタさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区「公園」」にミケ・ファムトさんが現れました。
■ミケ・ファムト > 久しぶりの非番。
街をランニングして、寮の傍の公園へたどり着く。
「はぁっ はぁっ…」
ここ最近は働いてばかりでまともに走っていなかったので、なまりかけていた体には程よい刺激。
流れる汗も気持ちよく。
公園に駆け込んできた少年は軽く流すように走りそのままストレッチへ。
乱れた呼吸もストレッチをしながら徐々に整えていく。
■ミケ・ファムト > 「さて、もうちょっと…」
走り込むかー等と心の中でつぶやき、夜の街へと消えていった。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区「公園」」からミケ・ファムトさんが去りました。