2017/07/21 のログ
マティアス > 「此処まで来るまでは、少なからず意思は伴う状況だったようだね」

少なくとも意識を奪ったうえで、荷物の如く運び込まれるような状況ではないようだ。
道中は最低限、生命の保証はされていたという証左か。
だが、問題はここからである。問題の建物を観察しながら、思う。
出来れば時間をかけて、即席の使い魔でも創成して複数の視点を確保し、構造を把握してから挑みたい。

「いいや、エアルナ。或いは、安全に隠れて事を為すに丁度いい場所にも見えるよ」

零す声には感情が薄い。幾つか想定できる可能性のうち、また一つ想定が確定した予感に口元をへの字にして一瞬瞑目する。
人が居る可能性は極めて高い。しかし、見張りの類は見えない。さらに言えば、略取した後の後始末としては杜撰でもある。
「それ」専門の手練れではない、ということだ。彼らのような熟練者に掛かれば、こんな風に足取りも追わせもしない。
示される扉の先を見遣り、腰を曲げてさっと走り込む。

施錠されている扉の様子を確かめ、周囲を見遣る。人の目なし。気配はなし――。

「――……解けよ、隔てる軛。その遮りを開け放て」

さっと発動させる魔術を以て、音もなく解錠させる。いつもならばもう少し迂遠な手段を使うが、そうもいかない。
時間がない。恐らく、想定するに極めてよろしくない状況が進行しつつあると思うべきだ。

エアルナ > 「ですね。…念のために、こちらの見張りを立てましょうか?」

3階建て。相手がどこにいるかは、外からではわかりづらいし、表と裏と出入り口があるなら、
空の召喚獣に、上から警戒させようかと提案をしつつ。
扉が開くのを見やり

「…何か、良くない予感ですか」

女の子。12歳。身なりがよく、かわいい。
たぶん、だまされて連れてこられている。

…あぁ、うん、ろくでもない大人というのは…ろくでもない趣味をもっているものだ、たいがいは。

マティアス > 「そのお気遣いだけで十分だよ。時間がないからね」

とりあえず逃走防止は仕掛けておいた。別途、召喚獣による上空からの視点を確保するのも確かに手だが、時間が惜しい。
まして、狭い場所だと機動性が売りのものでも、存分に飛び交うにはいささか不便があるだろう。
故に、その気遣いだけを有難く受け取っておく。想定し得る事情とは、最悪に近いものへところりころりと転がっている。

「――……例えばの、話だよ? 多少は有能で正義感のある貴族が居たとしようか。
 働きぶりが目障りになった貴族が、例えば可愛がっていた娘を雇った札付きのワルに攫わせて、好きにさせたと仮定する。

 さて、どうなるかな?その哀れな娘はどんな風になりえるか、想像出来るかい?」

事象のピースは転がっている。
聞き込みの中でつまみ食い程度にピックアップした情報が、状況のカケラと合わさって自ずと草木が生えるように育つ。
踏み込む中は今すぐ使っていないのか、薄暗い。否、先ほどは使っていたのだろう。
片付いても居ない乱雑な様子を一瞥し、奥へと踏み込もう。左手は腰の剣に添えて何時でも抜き放てるようにしておく。

――うっすらと聞こえるのは、なんだ? すすり泣く声と、笑い声、と、罵声か?

エアルナ > 「わかりましたーーえ、え?!」

急ぐことが第一。それは状況から察して頷いたが、続く問いかけにははっと目を見張った。

「それって…八つ当たりじゃないですか、筋違いの。
その娘には。災難以外のなにものでもないーー」

災難・災厄・いや、運が悪ければ命まで落とすか。
死んだほうがましなくらい、ひどいめにあうかもしれない。
札付きのワルというのは、人の命を尊重するなどしない。

想像してしまったひどい光景にぐっと詰まりながら、それでも、
とまりはしない。
まだ。まにあうなら、そうはさせない。

聞こえてくる音に耳を澄ませ、状況を知ろうと試みるーー

マティアス > 「だが、別にどうとも思わないのさ。
 それに裏を取ろうとしてもこの時期、このタイミングじゃ難しいよ。
 自分の手を汚さないのはつまるところ、切り捨てが利くからだ。……好き好んで自分の右手をその都度切り落とすなんて、しないだろう?」

多少、胸が空くだけだろう。それだけだ。
ただ、それだけの為に端した金、食い詰め者には十分すぎる金銭を投じて暇潰し程度にやるのだ。
一つことを仕損じれば、有能な貴族もたちまち奴隷や慰み者へと転げ落ちる。
そして、この手の事態になると得てして、間に合わないということが多い。この状況から察するに、今もまた然りか。

――進む。奥へ進む。声がするのは、地上ではない。地下の方だ。

進めば奥の方に地下室へと至る下りの階段を見出すことが出来る。その階段を慎重に、足音を殺して下る。
行き着く先は程なく近づいている。その上で香るのは、生臭い匂いだ。
血臭ではない。だが、腐敗臭でもない。一番適切なのは、そう。自分達も良く分かっているそれだ。精臭である。

「……――」

ほら、ね。そう言わんばかりの顔つきで眉を潜め、中をちらと覗き込もう。
案の定である。見目麗しい筈の少女を乱暴にひん剥き、薄汚れた男達が組み敷いて身体を揺らすという風景。
ただ、溜まった性欲を吐き出すだけの慰み者とする。しかも、商売女ではなく、無垢な少女を攫って犯して殺すだけで金が貰えるという安い商売。
技能は多少はあっても、心が伴わなかった者の辿る末路の一つである。最悪、この己ですらあり得る事象の一つでもある。

エアルナ > 「…実際。手をふるうのもたいがいですけど。
たくらんだ黒幕がいるならーー”地獄へ落ちろ”です」

腐っている。
だが、実際、今のこの国には…そういうどうしようもない。
すくいようもない貴族の名を被ったろくでなしがいるのも、事実だ。
そうでない、まともなもののほうが少ないというのは、実に情けないが。
思わず、古代言語で普段に合わない悪態をついたしまったのも無理はないと思いたい。

そして。階段を下れば、人の気配。
すすり泣く声は、女の子ーー下卑た笑い声は男達。
いや、質の悪い…ケダモノか。

一気に眠らせて、まず少女を助けるーーそれでいいか、と。
指先でまじない文字をつづり、青年に尋ねる。
まだ、音を立てないよう、十分に気を付けながら。

マティアス > 「ははは、全くだね。実に同感だよ」

――つくづく、この国はいい加減滅びてもいいのではないかという気にかられて仕方がない。
だが、そうすると色々と弊害が生じる。切り捨てるべきものと、そうしてはいけないものの選別が難しい。
何より己が現在気儘に生きるためにも、まだ、この国はあってもらった方がいい。
聞こえてしまった悪態については、聞かなかったふりをしよう。何より、ここまで近づくとそうもいかないのだ。

「“……――閉ざせ。塞げ。聞くに堪えぬ楽は絶えよ”」

示される意思に小さく頷けば、口の中で呪を紡ぐ。
起こす微かな魔力は左腰に帯びた剣を少し抜き、刃の秘める威力を以て高めた上で件の地下室へと術として投げ込もう。
消音の術式である。対象が発する大気の振動を一時的に相殺し、音を消す。十分に高めた魔力で発動させれば効果は覿面であろう。

その上で、追加の術を投げかければ制圧はとても容易である。

エアルナ > とはいえ。今、優先すべきはーー国のことではなく。
すぐそこの、まだ救えるはずの少女の救出だ。
ろくでなしどもは、いずれ、その働きにふさわしい報いを受ける
だろうけど…

*眠りの雲よ、おいで、かの者たちを包んでーー*

消音の術が利いたのを見計らい、すべてに眠りをもたらす睡魔を呼び出し。
蛮行の行われている部屋全体へと、導こう。

同じ魔法使いでもない限り、まもなく…一切の声はやみ、代わりに聞こえてくるのは寝息、だ。

マティアス > 何せ、“行為”の真っ最中であったのだ。
一人がとっかかっている最中で、他の男達は順番待ちと休憩中の状況だ。
余程お楽しみだったのだろう。哀れな少女は可憐であった唇と、まろやかな尻にはいずれも白い汚濁がこびり付いている。
嗚呼、血も滲むのは苦痛を与えないように慣らすこともなにもなくだっただろうか。

――知る由もなし。また、今はまだ詳しく診る暇もなし。

故に速やかに手管を凝らす。抵抗の余地もない隙に眠らせてしまえば、面倒はなくて済む。

「……――臭いね、全く。よっほどご無沙汰でもせめて風通しのいい場所で、というのも考えなかったとしたら呆れる他ない」

せめて、匂い消しの香でも焚きたいが、そうもいくまい。
哀れな少女の乳房を枕にでもするように眠りこけた男の頭をひっつかみ、手慣れた風情で引き剥がしては床に転がそう。
背を向けさせれば、取り出した水晶の針を神経の要所に打ち込んで麻痺させる。他の連中も同様だ。

「――彼女の保護を頼むよ。
 最悪、直近の記憶とか封鎖した方がいいのかもしれないけど、僕はどうもそういうのは上手くなくてね」

捕縛の作業の傍らで、彼女の保護を頼もう。一先ずは押さえるべきものを押さえて、報告等を済ませなければならない。
この程度の事で、世の中は何も変わらず、動くまい。されども、依頼は果たす。それが冒険者の端くれの務めであれば。

エアルナ > 「生きているうちにたどりつけたーーそれだけでも、良かったと思いたいです」

あぁ、まったく…ろくでなしのしでかしたろくでもないことは。
あちこち汚され、傷ついた少女をそっと床から抱き上げ、わかりました、と頷いて。

傷をいやし、深い深い眠りにいざなう魔法を使うーー身体もできる限りきれいにして。
そのうえで、家族の待つ家に送り届けよう。
次に目覚めたときは、自分の家のベッドの中だ。

祭りに出た先で熱を出し、寝込んでいたのだと…そう家族から言われれば、傷もないなら、悪い夢を見たのかと思い込めるように。
すこしだけ、暗示もかけてから…

どうか、少女の明日に幸あれと…祈らずにはいられない。
この乱れた国であっても。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からエアルナさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からマティアスさんが去りました。