2017/07/20 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にマティアスさんが現れました。
マティアス > ――全く。此の手の事態はけして珍しいものではないが、いざ関わると中々に骨である。

祭りの日々に皆日頃溜めた蓄えを放り出しているのか、登録しているが閑散としていた冒険者ギルドで或る依頼を請ける。
曰く、人探しである。貴族の末席とはいえ、それなりに身分のある家の娘が祭りに出ていたら帰ってこなくなった、と。
何よりも地味にして、失敗した時の信用問題云々もあり、特にこの時期だと倦厭される依頼を請けて街を彷徨う。
依頼主より聞き込んだ行動範囲、並びに聞き込む手がかりを辿って至るのは――。

「…………流石に、この辺りには居ないとも思いたいのだけどねぇ。全く」

貧民地区の一角である。放棄された住居の数々が並ぶ区画はけして、人の気配がない訳ではない。
そして、それ以外の気配もまた色濃く、活気がある辺りよりも強く滲む。
手がかりとなる事物の一つや二つでも借り受けて、呪術でもかけるべきだったか? ふと、そう思わずにはいられない。
成功率は高いわけではないが、多少は手がかりにはなっただろう。
十字路となった辺りに足を止め、零す息は重い。気候調節の術をかけても自ずと額に滲む汗を拭って。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にエアルナさんが現れました。
エアルナ > 「…その娘さん、いくつでしたっけ?祭りに出かけたなら、この辺はもう外れ、だと思いますけど」

青年の傍らで、いつものように白狼を共にした娘も微妙な表情だ。
その探し人のにおいでもわかるものがあれば、狼に追わせたのだが…外聞をはばかるというのは面倒なもので。

「誰かと会うとしても、もう少しいい場所はありますよね?」

特に今は祭りなのだ、わざわざといってはなんだが。
どうしてこちらに目を付けたのかと、少々不思議そうな顔を師匠でもある青年へと向ける。

マティアス > 「依頼書によると、12歳だそうだね。少なからずもう分別はついていても良い位の歳と思うよ」

如何に左右に背の高い建物が自身そのものが朽ち果てた墓標よろしく、立ち並んでいる中に差し込む光は弱い。
故に眼鏡に施した暗視の術の効果も借りて、懐から取り出す依頼書である紙を見直そう。
人相書きについては、見るかね?と連れる弟子同然かそれ以上の間柄の姿に差し出しつつ、小さく頷いて。

「いかにもその通りだよ。だから、考慮したくない可能性を考慮せざるをえないワケ、だ」

ちらほらと小耳に挟んだ、身なりのいい娘を伴った中年位の男がこの辺りに行き着いた、という証言。それがこの場に至るまでの要因である。
真偽は不明。しかし、多少は見目のいい子供を早めに仕込んで、何がしに仕えるようにするにはちょうどいい時期でもあろう。
人を隠すには森の中。人の溢れる時期で一人二人、消えてしまっても気にするのは、親類友人程度の小さな規模である。

結局見つからなければ――あとは見えない傷以外は誰も気にしなくなる。

ひょいと肩を竦め、歩き出そう。横手の壁に手を付けながら、そろりと歩む。地を見つめる目は険しい。何か、足跡でもないか。

エアルナ > 「12…自分ではもう子供じゃない、と思い始めるころですか。」

そう、多少分別はつく年頃だけに。
ついもう一人前だと錯覚して、知らずに無茶をしかねないころ合いでもある。
青年の差し出す人相書きに目をやれば、みなりのいい、そして十分可愛いというか、きれいな少女だ。
なるほど、と憑きたくもない嘆息もひとつ、

「たしかにーーその手のほうから、目を付けられそうな子ですね。」

ほかでもない、自分も妙な男につけられたこともある。
が、白狼がいたおかげで大事にはいたらなかったが…そのときは。
家人からも、さんざん説教されたものだ、そういうひとさらいについて。

「祭りの時期だと、普通の迷子も大勢出ますから…ヒトさらいがまぎれるには」

わるくない。
もちろん、ひとさらいからしたら、だが、

「ペロ?」

狼がふんふん、と鼻を鳴らし、地面をひっかく。
その先には、しっかりした小さな靴跡と、もう一つ、並んだ足跡。
こちらは大人だろうが、少しくたびれた感じの靴底だ。

マティアス > 世の中何事も魔術で簡単に片がつけられる、とはいかない。
大きいことを為そうと思えば思う程、必要となる準備と手続きは面倒かつ複雑となる。
故に手がかりが少ないとなると、おのずと地味な手段で事を為さざるをえない。

――剣と魔術で華々しく、何でも一刀両断で解決!となること自体が最早稀である。

故に、口の中で小さく呪文を紡いで、幾つかの魔術を続けざまに発動させる。
知覚能力の拡大と統合だ。注意を向けたものをより深く詳しく捉え、得た情報を統合するためのもの。
地を歩むものにとって、大地に必ず残し得るものとなれば、其れは足跡である。
仮に例えば、訓練をしたものでも全くそうでないものを伴う、あるいは担いだとした場合、残す痕跡はいくらか変わるものだ。

「……ほう?」

そうだねと受け答えしつつ、痕跡を求めていれば響く声がある。
成る程、これか。狼型の召喚獣が引っ掻く辺りをじっと見遣れば、確かにある。それらしい痕跡を見出せる。
片膝をついてしゃがみ込み、しばり睨んで恐らくと、察しを付ける。

「……追ってみようか」

そして、零す声は低く、追跡を開始する。慣れたものだ。独りで長くやっていれば心得はおのずと身に付く。

エアルナ > 街中で人の行方を捜すというのは、意外に難しい。
特徴のない人間なら、簡単に人ごみに紛れてしまえるのが大きな町であり、祭りならなおさらだ。

だけど今回は、相手がまだ子供のようなもの。
自分の意志ではなく帰ってこれないとしたら…それは。
なんとかできるものなら、なんとかしたいと思う。
…子供をだます大人に、ろくなものがいないくらいは、知っているし経験もしている。

「…はい、」

狼と青年の見立てが一致したとなれば、かなりの確率で本命。
そう受け取れば、こちらも声を低くして、なるべく音をたてないように追跡についていく。

人さらいで厄介なのは…大概単独犯ではない、ということと。
さらう子供も一度に一人ではない、ということ。
まずこちらが相手を見つけることが、肝心だと心得て。

マティアス > 最悪殺されてる――無論、その可能性も考慮に入れなければならない。
そもそも、なぜ攫うのかという要因自体は如何様にでも考えられる。最悪、こじつけることはいくらでも出来る。
重要なのは攫って、どこにいって、どうした、というコトである。
それを捕まえなければ、どうしようもない。このご時世だ。他人の子供を攫うということ自体がとてもろくでもないが。

「……ん」

見出せるものがあれば、脳内の集中を解いて発動させた魔術のうちいくつかを解除する。
取っ掛かりがあれば、追っていくのはけして難しくはない。体重のかけ方次第で足跡がどうかわるかを思い出す。
砂漠地帯を歩むよりはずっとマシだ。整った足取りではなく、時折抗うような迷うようなものも小さな足跡には目立つ。

暫し、足跡を追跡して至るのは――。

「……多分、あの建物だろうね」

見えたきた建物を指さそう。元は商家のものだったらしい、石造りの三階建ての建物。
元々しっかりと作られたおかげで荒廃ぶりは然程酷いものではない。
腰に帯びた剣の重さを確かめつつ、裏手に回ろう。途中、要所に結界の符を仕込んでおくのは忘れない。

エアルナ > 「……」

ところどころ足跡が乱れているのは、その迷いの証だろうか。
小さな足跡がちょうどその、12歳という年頃を思わせる大きさだけによけい、気がかりになってくる。
足跡の痕跡からすれば、時間がたちすぎてはいない、と思いたいがーー

「…あれなら。悪だくみのアジトには、むいてそうです」

石造りの3階建て。あぁいう建物には、鍵のかかる倉や、地下室もよくある作りだ。
それに、なんというか、ただの廃墟ではない生活感がある。

「間違いなく、誰かいますねーー」

裏に回りながら、台所らしいあたりから、うっすらと煙がたつのに気が付く。
薪をわったような、そんな後もまだ新しそうだ。

中に人がいるなら、炉端くらいつかってもおかしくはない。
見張りはいないか、と気を配りながら…
裏口の扉をゆびさそう。
あそこからは、どうだろうかと。