2017/03/23 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にマティアスさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にエアルナさんが現れました。
マティアス > ――簡単に云うのなら、修行の一言で片が付く。

何のことはない。やっていることと言えば、精々が嫌がらせでもあり、偽善でもある。
街に淀む善くない気配が自ずと流れ込み、凝る場所と言えば誰も見向きもしない見捨てられた場所だ。
其処に至るしかない者たちが邪気の餌食となり、さらにそれを呼び水に更なる邪気を生む。
そんな悪循環を祓うのが修行であり、その邪気を食い物とする者に対する嫌がらせでもある。

「そりゃぁ、うん。
 顔も何も知らないが、のうのうと肥え太る類の苦り切った顔を思うと楽しいじゃないか。ねぇ?」

嘯きつつ、暗く淀んだ雲の下の貧民街区の路地を歩む姿が一つある。
明かりはない。闇を進むに慣れた目と魔法仕込みの道具が揃えば、僅かな光があれば事足りる。
左腰に揺れる剣の柄を左手で抑えつつ、等間隔になるように歩幅を調整して進み、至る十字路の真ん中で足を止めよう。

「この辺りかな? よっ、と」

前後左右を見回し、方角を確かめたうえで袖口から取り出す赤い紙の札を薄汚れた壁の一角に貼り付ける。
先ほどから行っていた作業だ。都合四枚の札を或る区画の四隅に配置する。此れが丁度、四枚目だ。
見るものが見れば、シェンアン辺りでも見られる意匠が墨色の塗料でその札に描かれたものに見えるだろう。

いわば、邪気祓い――魔除けの意匠。

エアルナ > 「それに…この付近の住人達が困っているのは事実ですもの。
 女子供ばかり何名も、いつのまにか姿を消して――なのに人買いとかの気配はない。」

聞けば聞くほど妙ですよね、と白狼を傍らにして。
邪気払いのお札を張り終えた青年のほうへと歩み寄るのは若い娘だ。

「今のところ、素直に外に出てきているあやかしの気配はないようです。住人の気配も、ほとんどないですが」
そう報告しながら、荒れた街並みに溜息を一つ。

マティアス > 「困っているという声を集めるのも難しい場所だけどね。
 けど、少々様子がおかしく見えるのは確かだ。殊にこの時期だと雨風を凌げる場所に居付く筈というのに」

その手の陳情が冒険者ギルドに寄せられた、というワケではない。
日々の生活に困る人間が、どうやって金銭を集めて一々他者に依頼を投げられるというのか。
きっかけは小耳に挟んだ小さな噂話。放置しても誰も文句は言わないし、言いようもない。
精々が人買いが困る程度、だ。だが、人買いが困る程の事案となると少しだが、気にもなる。

「エアルナ嬢、こんな場所とはいえまかりなりとも王都だよ。
 素直によくわかる気配を垂れ流していると、逆に狩られてもおかしくない。
 上位種ならざる下位種でも、君が考えているよりももっと狡猾だよ。安全かつ確実な狩りの方法を考える位には。

 ……さて、ちょっとお手を拝借。嗚呼、プロスペロ氏も抱くか尻尾を掴んでおいてくれたると有難い」

だから、少しばかり世を知らない令嬢に講義の時間だ。
滔々と句を連ね、左手を歩み寄る姿に向かって伸ばそう。
そっと細い手指を掴むことが叶うなら、空いた右手で奇妙な印を結びつつ口の中で幾つかの呪文を紡ぐ。
周囲の存在ごと浮遊し、意のままに移動を実現する魔術の一種だ。速度は遅いが、その分運搬力がある。

ふわり、と浮かんで闇空を目指し、地面に対して放物線を描いて向かう先は放棄された二階建ての住居の屋上。

エアルナ > 「ええ、…春は近くてもまだまだ夜は冷えますし、雨風はつらい季節です。いくら街中でも野宿は避けるでしょう」
それはまったく同感です、と頷く。
問題は、その理由。
戸締りが厳重だから、建物の中に入れない…そんな簡単なことではないくらいは、見当がつくが。

「あぁーー巡回の騎士団ですか?魔族狩りにほぼ特化した方達もいますものね。…はい?」
そういうプロなら、気配に気が付くくらいはそう難しくない。
獲物を捕まえるには、その上手をいかなくてはならないのは、野生動物でも人間でも同じなのだろう。

少しばかり抱き上げるには大きすぎる白狼の、代わりに首輪あたりをつかめば彼の魔法が発動する。
つないだ手を通して感じる魔法の感触。
二人と一匹は、ふわりと二階建ての住居の屋上へと移動するーー