2016/10/31 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にセラさんが現れました。
■セラ > もともと治安がよろしくない貧民地区。
そこでも、いかがわしい店が拠点を構えて、柄の悪い連中がうろつくような場所の裏路地。
いかがわしい場所にはいかがわしい情報が集まると、暇潰しを兼ねてたまには足を伸ばしてみれば、見事に絡まれてしまったなとやれやれと首を振る。
「……ふむ。手加減を間違えたか」
絡んできた男たちを鬱陶しいとばかりに、軽く殴り飛ばしたつもりだったが、そのうちの一人がヤバイ具合に痙攣して倒れ伏したまま。
打ち所が悪かったかと、近づいて爪先でつついてみても白目を剥いてビクビクと震えるだけの様子に、殺す気は無かったのだがなと溜息をつき。
「まあ、いいか。死んだところで問題にもなるまい」
貴族とかのお偉いさんなら影響が大きいが、こんなところのチンピラなぞと命を軽視した呟きを漏らし。せっかくだから、使い魔どものエサにするかと冷めたまなざしで眺め。
足元の影から湧き出した異形が倒れる男に食らいつく。
人が食われゆく姿を、ペットへの餌やり気分でそのままのんびりと眺め。
■セラ > 使い魔が食事を終えた後には、残るのは血の匂いを漂わせる赤い染み。
周囲を見渡せば、腰が抜けたのか這いずるように逃げていくばくか距離を稼いではいるものの逃げきれてない男の仲間たち。
「変な噂を流されても面倒だな。喰い尽くせ」
逃げきれていたならともかく、まだ目のつくところにいるとなると始末するとしよう。
そんな風に、軽く命を下せば、同じ姿の無い異形の群れが湧きだし殺到し、血肉の饗宴を繰り広げる。
絡んできたチンピラたちが使い魔の胃の中にすべて消えるのと見届けると、面倒ごとも終わったかとその場に背を向け歩き出す。
日頃の行いの悪さか、チンピラたちを救いに現れるような都合のいい誰かは現れず。この夜、街の人口がほんの数人減る事に。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からセラさんが去りました。
ご案内:「貧民地区 裏路地」にファルケさんが現れました。
■ファルケ > 屋根から屋根へ。宙を跳んだ細い足が、すとん、と密やかに着地した。
月の光に夜色の毛並みをしっとりと輝かせ、一匹の猫が気高く歩いてゆく。
建物の低い貧民街の視界は遠く開けて、夜空に王都の美しい稜線を浮かび上がらせている。
無数の星々が絵具を溶かしたような濃淡を描くのもどこ吹く風、
猫は眼下の小汚い、饐えた臭いが滞留した路地を見下ろしながら歩を進めていた。
その姿は、かの凛としてしなやかなチェシャ=ベルベットのように見えて、どこか異質だ。
まるで雲の上を歩くかのよう、生きた猫が持つべき気配は薄かった。
■ファルケ > ひとりの浮浪者が、夜の冷気に襤褸をきつく巻き付け、路地の隅に丸まっているのが見えた。
猫は一瞥をくれてやっただけで、つんと顔を背けてしまう。
路傍の石ころに、わざわざ歩みを止めることがないのと同じように。
詰まるところ猫は、宝石か、宝石となりうる原石を探していた。
しかし残念ながら、猫は熱心な愛好家でも、フェティッシュの信仰者でもない。
この猫はまったく猫らしく、気まぐれで、次から次へと興味を移すことに躊躇のない、無節操な蒐集家であった。
ご案内:「貧民地区 裏路地」にヴァイルさんが現れました。
■ヴァイル > 屋根の端。
月の光を背に受けた、黒い狼が、風景に穴を穿ってじっと座り込んでいる。
猫の黒に似ているように見え、向こうが星も瞬く夜の黒ならば、
こちらは虚無に輪郭を与えたような、何もかもを認めない黒。
「どうしたコネコ。
こんな夜半に、何を求める」
黒い塊が揺れながら口を聞く。くつくつという魔族の笑い声。
■ファルケ > さまざまなものの頭上を通り過ぎてきた猫が、この晩はじめて足を止めた。
夜の乏しい光を吸い込み照り返す瞳が、ちらちらと揺れて光る。
笑み交じりの問いに、小さく形のよい口が徐に開いた。
「それを聞いて、犬畜生が理解出来るのか?」
チェシャ=ベルベットの声だった。
歳若い少年が、図らずも老いたような抑揚で口を利く。
はん、と鼻を鳴らして、猫が笑ったように見えた。
■ヴァイル > 「わかるはずもないだろうな。
何かを理解ったと思うほどの傲慢さを、おれは持ち合わせていないんだ」
影の狼はうずくまったまま。
言葉を発さなければ、まるでそういったオブジェのようにも錯覚してしまいそう。
双つの紅い光が影の彼方からちらちらと覗く。
「しかしおれに語るのは、野花に打ち明けるよりは、楽しいと思うぜ。
きさまにはどうせ犬畜生以上の話し相手などおるまい。
おれは人の望むところを知りたいのさ」
皮肉げな声色で、実直とも取れる言葉。
■ファルケ > 「殊勝さを装うほどには、小賢しいようだな」
猫は瞬くほどの間を置いたのちには、人の姿に変じていた。
艶めいて柔らかな黒髪、ぴんと立ち上がった二つの耳、そして歳相応に大きなつくりの、年甲斐もなく怜悧な眼差し。
仕立てのよいベストとキュロットに身を包んだ、ミレー族の少年の姿がそこにあった。
「生憎とわたしには、語りを打ち明ける花がひとつある。
その花の他においては、世に在るすべて犬と同じだ」
その顔立ちに、本来のチェシャ=ベルベットが持つ刺々しい陰はなかった。
惑いのない、果てなく冴えた眼差し。
二歩、三歩と狼へ距離を詰める。
不遜で、尊大で、それでいて浮世離れした、魔法使いの足取りだ。
「わたしはありとあるものを知りたい。
空を、風を、雨を、土を、草花を、石を、生き物を。
ありとあるものがそのような形を取り、取るべき形へ移り変わってゆく、そのすべての流れを掌握したい」
狼の前で、ひたりと足を止める。
借り物の双眸が、淡々と相手を見下ろした。
「歪めることも、操ることもなく。
ただ知りたい。それだけのことを」