2022/10/11 のログ
■ロイス > 街を歩いていると、小柄な背を見つけた。
その背には、豪奢な杖が固定されている。
おまけに、衣服も豪奢ではないが、この辺りの人間が着るには生地が上等すぎる。
「(こんな所に……随分似つかわしくない格好の子だな)」
衣服もさることながら、杖が目立つ。
普通、貧民地区の人間はそんな物を表に出して出歩かない。
盗まれる可能性があるし、仮に腕に自信があったとしても要らぬトラブルに巻き込まれる可能性があるからだ。
「(だからこそ、誘拐犯とかではないな。誘拐犯だとしたら、もっと周囲に溶け込める衣服を着ている筈。しかも、あれは旅装に近い……旅人の類か)」
そこまで考えて、男は声をかける事にした。
「ねえ、君。ちょっといいかな」
無用の警戒心を抱かれぬよう、両手を開いて何も持っていない事を示す。
表情は不自然ではない程度に笑んで、なるべくマントの中に手を入れないように気を付けつつ。
「この辺りで起きている、行方不明事件を調べてるんだけど。
何か、変わった人やものを見ていたら、教えてくれないかな?」
■アイバーニア > (根本的にとんでもなく魔術に自信があるので。常に警戒網を敷いている状態であれば、逆に気持ちは油断しまくっている。その立ち振舞いは非常に警戒心が薄く見えるし事実そのとおりだ)
「……?………」
(声を賭けられて持っていた本を胸に抱きつつ、ジトっと訝しげな視線を向ける。理由はそもそも目が悪いからだけど)
「情報が少なすぎて何とも言えないけど……いまちょうど怪しい人を観たかも」
(そう言って、今声をかけてきた男を指差す。)
■ロイス > 怪しい人と指差し付きで言われた男は、苦笑いを返す。
一応、精一杯怪しまれないように気を付けてはいたものの、
「……確かに、客観的に見て今一番怪しいのは俺だね」
否めない。
急に声をかけられて機嫌が悪そう(少なくとも男はそう解釈した)なのも相まって、これは失敗したか、と思うが。
しかし、逆に言えば怪しいと面と向かって言われる程度には、警戒されていないという事でもある。
「ええと、じゃあ改めて自己紹介をしよう。俺の名前は、ロイス。
冒険者ギルド兼酒場の『白の夕食亭』から依頼を受けてきた冒険者だ」
これ、依頼書ね、と言って見せた依頼書には、確かに捺印付きで、この辺りで発生した失踪事件の調査の依頼がある。
依頼主は王都の評議会からであり、一定の信頼性はあるだろう。
「君の名は……と言いたい処だけど、さっきも言った通り、今の所、こっちの方が怪しい。
だから、信用できなければ、名乗らなくていい。
……まあ、調査に協力してくれると有難いのは確かだけど」
何せ、貧民地区の人間は、自分のことで手一杯の人間が多い。
周囲を見渡して、怪しい人間に気付ける余裕のある人間はそうはいない。
その意味では、アイバーニアは、有力な情報源になりうる存在であった。
……最も、「それを言うと何だかプレッシャーになりそうだなあ」と思い、直接言いはしなかったが。
■アイバーニア > 「………アイバーニア……」
(あっさりと名乗りながら、依頼書を出されると、一歩前に出て顔を近づけてじぃっとそれを確認する。メガネは家に置いてきてしまったので今持っている本を図書館に借りに行ったときも難儀したのだ。警戒は自動でされているせいで当人には警戒心はない、簡単に距離を詰めて)
「家に戻れば、人相と名前がわかれば個人を探す魔法と材料はあるけど……肉眼で見たこと無い人は精度が落ちるんだよね……君は魔法とか使える?君が直接見たことある人なら……で、私の家は○○って辺りなんだけど君は道知ってる?実は迷っててさ……」
(恥を忍んで道に迷ったことを伝える。平民地区あたりまで戻れば場所がわかるのだけど、案内してくれたら手伝ってあげられるという交換条件を出して)
■ロイス > 「あいばーにあ……?って、ああ、そうか。アイバーニアっていうのか、うん」
名前を教えるのがさりげなさ過ぎて、一瞬それが人名だと認識できなかった。
警戒されていると思い込んでいた彼にとっては、寝耳に水。
そんな彼女はどうやら、相当目が悪いらしく、差し出した依頼書を顔を近づけて見ている。
しかし、自分で怪しい人と言っている人に、一歩とはいえ近づいてくるというのも中々不思議な話である。
「(独特なペースの持ち主だなあ……)」
そう思いつつ話を聞けば、どうやら彼女は迷子であったらしい。
確かに、貧民地区は王都の中でも割と迷いやすい。
幸い、彼女が口にした区画は、男が知っている場所だった。
「いや、魔法は使えないな。あんまり才能が……いや、そんな事より、それなら早く此処を出よう。
此処は、女の子が一人で出歩く場所じゃないよ」
一時、事件現場から離れるのに引っ掛かりを覚えないではないが、こんな所に女の子を放置したら、何が起こるか分かったものではない。
実際は、何かしようとした人間の方にこそ、"何が起こるか分かったものではない"のだが、残念ながら彼女をただの女の子としてしか認識していない彼にとっては、彼女は守るべき対象であった。
「行こう。大丈夫、いざとなったら俺が守る」
などと、力強く断言して見せた。
実際には的外れな言であるが、さりとて本気であるのは間違いなかった。
■アイバーニア > 「使えなくても多少でも君に魔力があれば私が手伝えば……女の…子?」
(一瞬首をかしげる。それから、あぁそうだなこのロイスと名乗った男は人間だとそれなりに大人な年齢なのだなと、人間の年齢が一律で若者な女は思うのだ)
「ん~……じゃ……とりあえず案内してくれる?どこまで手伝えるかやってみないとわからないけど……お茶くらいは出すよ」
(力強い断言に、守ってもらわなくてもいいとも思ったけれど、なんとなく可愛らしいなと思ってしまい初めて表情らしいものを出して微笑んで。それでは案内してくれと逆方向にあるき出すのだ)
■ロイス > 女の子、という所で首を傾げる少女に、男は一瞬違和感を得た。
鈍いが、しかし勘が働く方ではあるのだ。
故に、男は正解に近い推測を思いつくことができた。
ただ……
「(ああ、そうか。一応15歳で成人だもんな。子、って扱われるのは違和感出るか。
俺からすると18でもまだ子供だけど、それって年齢重ねた価値観だもんなあ)」
想定している年齢が小さすぎて、結局勘違いは継続していたが。
結果、お互いがお互いを年下だと認識している妙なペアが生まれた訳だが、しかし男は気づかない。
「うん、それじゃあ行こう。こっちだ。迷子にならないようにね」
そう言って、彼女の前を歩いていく男。
内心、初めて見る微笑みに、ようやくある程度気を許してくれたかと安堵しつつ。
……尤も、その数秒後には、彼女が逆方向に歩き出していることに気づき「うわあ、待ってこっちこっち!」と叫ぶことになるのだが。
ともあれ、一時、不思議な緑髪の少女アイバーニアのエスコートを引き受ける事になるのだった。
■アイバーニア > 【部屋移動】
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からロイスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からアイバーニアさんが去りました。