2021/05/19 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にエレイさんが現れました。
■エレイ > ──ある日の夜。
男は人気の少ない夜道を、傍らにいる女性に肩を貸しながらえっちらおっちらと歩いていた。
傍らの女性はだいぶ酒に酔っているようで、殆ど男にぶら下がるようにしながら千鳥足でなんとか歩を進めている。
「……こう激しく酔っ払ってしまってはもつわけもない。とりあえずここに入って休もうず」
ちらりと女性を横目に見遣り、その酔い具合を見て苦笑を漏らす男。
度を越して飲みまくったのか、あるいは極端にアルコールに弱かったのか、それとも何か他の要因か──それはまあさておき。
男は安宿の前で一度足を止めると女性にそう提案し、返事を待たずにその中へと入り込んでいって。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からエレイさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にレジーナさんが現れました。
■レジーナ > 宵闇にも溶けぬ艶やかな漆黒の裾を翻し、滑る様な足捌きで路地を辿る。
能面じみて感情の色を見せない面が、珍しく、僅かばかりの苛立ちを露わにしていた。
「……全く、成り上がりでも、旧家でも。
粋な遊び方も知らない無粋者は、困ったものですね」
独り言ちる女の呼吸は、足早に移動し続けている為、少しばかり乱れている。
けれども足を止めたなら、尾けて来ている連中に捕らえられ、何処かへ引き込まれてしまうだろう。
其れも煩わしい、と小さな溜息を吐いて、ちらりと背後を窺い見る。
目立って動く影らしきものは無い、然し、移動すれば追尾してくる靴音がある。
ひとつ、ふたつならば振り切ろうという気にもなるが―――。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にアノニムさんが現れました。
■アノニム > それは、過去に焼き討ちを受けて半壊した鐘楼付きの礼拝堂の、その鐘楼の屋根の上に居た。佇立した人影にも見えるが、それは人ではない。
人ではないそれは、獲物を探していた。今日が特別というわけではない。それはいつものこと、である。
そして、頭部──と思しき部分──が、向きを変える。獲物に相応しい女を見付けた。
狩猟者は、獲物がすでに別の狩猟者に追われているのを見て取った。
狩猟者の中に、怒りの感情が芽生える。
己の獲物を横取りしようとは如何なる料簡か──とでも意訳できる思考。それは不条理で破綻していたが、行動は迅速である。
その姿がどろりと溶けて黒く濁った蠢く塊になると、それが礼拝堂の壁面の隙間に吸い込まれた。
──やがて。
狩猟者は、女の前方二十歩程度の位置に、地面を経由して現れる。黒い間欠泉のように。瞬きの間に人型をとったため、その様相は魔術による転移の如しでもあった。
■レジーナ > 昼日中から、安酒場で放蕩に耽ろうというのは構わない。
しかし、余興に呼んだ占い師の己にまで、酌を強要するのは頂けなかった。
にっこり微笑んで断った、其の挙げ句が此の始末だ。
そういう訳で、女の意識は完全に、背後に迫る足音に向いていた。
其れ以外の方面にも、警戒だけはすべきだったと気づくのは、
不意に前方へ黒々とした、何か、が現れたのを認めた瞬間。
思わず足が止まる、けれど距離はもう、ほんの僅かで―――――
例えば、相手が人ならざるもの、の類であるならば。
容易に腕を伸ばして捕らえられるであろう、其の程度の距離だった。
そして、明らかに、其の、何か、は、人ではないように見える。
悲鳴を上げる隙はあるだろうか、上げたところで、
此の辺りでは真っ当な助けなど望めまい。
前方の何かと、後方から追ってくる誰か。
――――何れにしても、女の命運は既に、彼らの、彼の、手の内だった。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からアノニムさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からレジーナさんが去りました。