2020/09/16 のログ
エレイ > その後、宿で何があったのかは当人たちだけが知るところで──
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からエレイさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル >  ――うらぶれたこの付近は、女一人で歩く場所ではなかった。けれども道行くその女は、どこか危機感の薄い態。ある程度知った場所なのか迷うでもなく、喧騒を避けるようにスラムの繁華街から外れ、人通りの少ない抜け道を使って進んでいたが、その足取りはどことなく重く。
 ついには溜息を吐き出してふと自分の掌を見やり。

「…………なんで、急に使えなくなっちゃったんだろ……」

 ぽつり、と呟く声には力がない。それというのもここ数日、魔力が枯渇している訳でもないのに回復魔法が使えなくなってしまったのだった。何が原因なのかはっきりとせずに、浮かない顔で貧民地区の訳ありだが腕のいいとされるもぐりのヒーラーを訪ねたが――『時にはそういうこともある』と今一つ参考にならぬ回答をもらっただけ。はー、とまた嘆息を零して、何となく天を仰いだ、その時――

「……悲鳴……?」

 付近で響いた絹を裂くような叫び声。ここいらでは、珍しくないというか馴染んだものだが……、たっ、と反射的に声の発生源へ向かって駆け出した。
 ――そこには、

ティアフェル > 「予想、通り……!」

 駆けつけた現場には、二人がかりで一人の女性に襲い掛かっている暴漢。一人は腕を押さえつけて、もう一人は馬乗りになって暴れる華奢な身体を抑え込んでいた。
 んなこったろうと思った、と余りに予想通りで額を抑えながら。

「ねえ! それ、合意の上?!」

 そういう主旨のアレならば、止めるのも野暮。服をびりびりに破り去られて、瞳には恐怖の色をありありと滲ませる自分と同年代に見える女性はとても、男達を受け入れるつもりはなさそうに見えたが、念のための最終確認。
 女性側が肯定すれば、「これはまた失礼」と立ち去るのが礼儀だ。
 しかしながら、「違う!助けて!!」悲痛な声のこの答えもまた想定内と云えた。ので。

「だろーね! ほんじゃま、エレガントにツッコミ入れまーす!」

 女性側がホンイキのNOならばやるしかない。暴漢は体格の良い二名だったが、すちゃ、と構えたスタッフ――殴打武器じゃないやつ――で殴り掛かった。
 戦いのゴングのひとつでも鳴ってそうな勢い。一気に混戦状態へと雪崩れ込んだ――

ティアフェル >  気分が落ち込みがちだったので、起爆剤代わりとばかりに無鉄砲な特攻カマしたが――、

「―――ッ…!」

 ガッ……、鈍い音を立ててナックルを嵌めた男の拳で吹っ飛ばされ壁に叩きつけられる、特攻5分後。馬乗りになっていた方はどうにか沈めたが、女性を押さえつけていた方が予想以上に戦闘能力高かった。

「いーから、逃げて! わたしは大丈夫!……多分……」

 怯えて竦んでいた女性に、ここで居残っていられても困るのだと喝を飛ばして逃がし、体勢を立て直して対峙する。リーチの短さを埋めるようにスタッフを男の脇腹に振り抜いた――までは良かったが。

「!?」

 先に沈めたと思ったもう一人が完全に落ちてはおらず、足首をつかんで引き倒してきて、ガンッと後頭部から倒れ込み一瞬脳震盪に目が眩んでしまう。
 刹那に形成逆転を極めて、下卑た笑いを弾かせながら組み伏せてくるのは分かり切った筋書き。
 
「ここで、キャー! イヤアァー!!」

 って叫んでみる。だって女の子ですもの。乙女の大ピンチにかわいらしさは取り繕っときたい。
 わたしも乙女としてそうすべきですよね?でも暴漢喜び勇むヤツですよねそれ。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > 少女を組み伏せた男の後ろから、更に声が響く。
それは、この場にはそぐわぬ、緊張感のない声で。

「おーい、ちょっと待った。
そこの二人組、ちょーっと待ってもらっていいかい?」

それは、ティアフェルの知り合いの剣闘士だ。
だが、少し格好が違う。何時もは、媚薬注入器を腰のホルスターに差し込んでいるのに、今日に限ってはその代わりにダガーを持っている。
何だてめえと振り返る男二人。だが、その次に、それは絶叫に変わった。
組み伏せた男の脹脛に、ダガーが深々と突き刺さっていたのだ。

「面倒は嫌いなんでね。
文字通り単刀直入に言うけど――その子は俺の恩人みたいな子なんだ。だから、出来れば離してあげてくれないかな」

にっこりと笑う男だが、その雰囲気はとても穏やかではない。
暴漢達は逃げるのか、それともこのまま戦うのか、どちらにせよ制圧できると確信している者の目だった。

ティアフェル > 「タスケテー。イヤー」

 取り敢えず、そんな声を棒で読んでみる。完全に投げ遣りだったが、それもこれも恐怖故かと暴漢共は暢気に勘違いしてくれたらしく、とてもお喜びだ。上着の留め具を外され隙が出来て来たなーと思ったところで。

「………ぉ?」

 思いがけぬ横槍。アラ王子様のご登場かしら?と楽天的に捉えていると、男たちは対照的にテンプレ科白をカマして凄みかけたが、すぐに血しぶきと絶叫が舞い上がり。
 そして助けに入ってくれたのが通りすがりの剣闘士・闘技場では悪役でお馴染みお友達のクレスさんだったので。
 ここはわたしもいっちょ姫的な科白を云おうと考えた。

「きゃああぁー、クレスさんー! カーッコイーイ!」
 
 あんまり姫じゃなかった。ただのミーハーだな、と自分でも思いながら黄色い声を張り上げた。なんだか最近こういう小芝居に慣れてきたのもあるが本気も混ざったのでそれなりにリアルな感じの声援となりました。

 しかし、ここで簡単に獲物を手放すのも惜しい――と臨戦態勢に入りかけた暴漢(二名)が、クレス、という名前に引っ掛かり。さらに薄暗く、点滅する街灯に照らされた姿に気づくと。げえ、と呻くような声が上がった。「ダイラスの剣闘士のクレス・ローベルグ!?」相手が悪すぎることはその目立つ様相でバッチリ分かって。クソ、と悪態をつくと「チキショウ!覚えてろ!」なんてテンプレを投げつけて、一方は負傷した脛を庇いつつ、一方は仲間に目もくれず――速やかに撤収! あっと云う間にズラかっていった。

クレス・ローベルク > ティアフェルの歓声には、ふ、とばかりに微笑んで髪をかき上げてみせる。
まあ、何せ剣闘士。小芝居染みていようが、歓声を挙げられれば応えない訳にはいかない。
だが、正にその直後、二人の暴漢が逃げを打ったのに、少しばかり落胆し。

「――ちゃ。しまった、適度に煽って、技の練習台になって貰うつもりだったのに」

逃げ出した二人の背を追うべきか、それとも今しがた助けたティアフェルを優先すべきかと少しだけ迷い――結局はティアフェルの方に向き直った。
仏心などではなく、単に女の子と話す機会を逃したくないというだけである。

「やあ、ティア。まさか、こんな短い期間に二回も襲われてる所に遭遇するとは思わなかったけど――」

と、やや引き笑いで話す男。
何か、考えてみればこの娘と会う時は、大体何か切羽詰まってるシーンが多い気がする。
お互い、もう少し穏やかなシチュエーションで話せんもんなのかと運命の数奇に思いを馳せたくもなるが、

「それにしても、こんな所一人で来るような場所じゃないでしょ。
冒険者仕事なら、せめてペアを組んで来たほうが良かったんじゃない?」

と、別に責めるでもなく、寧ろ不思議そうに首を傾げて言う男。
極論、治安が悪いのは貧民地区全体とはいえ、流石にこの辺りは治安が悪すぎる。
そんな所に一人で来た事に、若干の不思議を覚えて聞いてみたのだ。

ティアフェル > 「おー」

 歓声に対するリアクションの小慣れてること。王子か、と内心ツッコミながら素直に感心する。

 そして、ラスボスみたいなん来た!と襲われる前に逃げようと立場逆転して脱兎する野郎×2。確かに出で立ちと云い実力と云い、貧民区で見たらボス降臨みたいな感じで。本人も練習台と不穏なことを呟くので一層そんな風。

「やー、ラスボ……もといクレスさん。とんだ夜ね。いやあ…わたしのよーに愛らしく儚げな乙女は野郎どもがほっといてくれないのよー」

 おほほ。と口元に手を翳し短く高笑いしながらのたまいて。よっこいしょ、と上半身を起こし。

「王子様? お手を貸して下さるかしら?」

 取ってつけたように気取ってまず倒れてる女子には手を差しださなきゃ、などと要求し右手を述べた。華麗に助け起こしてみせよ、と無駄なミッションの押し付け。そんなことをしながら、女が一人で歩くような通りでないことは百も承知だったが案の定突っ込まれて。

「んー。ちょい野暮用でね。今日は仕事じゃないの。私用だから。途中までは大丈夫だったんだけどねー。襲われてる子を見てちゃちゃ入れたらこっちが獲物になっちゃったっていう。あは」

 じゃじゃ馬通り越して暴れ馬。そんな感じの女。不思議そうに傾く首と同じ方向でわざとこてん、と首を傾けて笑った。