2018/07/17 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にツァナさんが現れました。
ツァナ > 「うむ。…うむうむ。」

と、偉そうに頷いて。窓縁に腰掛けた侭、部屋の中を見渡した。
此処はとある廃屋。先日来使わせて貰い、休ませて貰っていた。
おかげで随分調子が戻って来たと思う。
手脚が、体がどれだけ動くか、確かめる為にも。
此処に案内してくれた人物に言った通り、カラダで返す…しっかり、肉体労働。
立つ鳥跡を濁さずという言葉通りに。きちんと部屋を掃除し終えた。
古びた廃屋ではあるが、塵や埃が無くなった分、それなりには綺麗になった筈。
洗って干して、皺一つ無く敷き直した、ベッドのシーツも確認してから。
…ふわりと、背後へ。窓から外へ、貧民街の路地裏へ、降り立とうと。

「ちょっとは、動かないと。ダメだし…?」

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にルシアンさんが現れました。
ルシアン > そんな少女の降り立った路地裏。其処にはほのかな、香ばしいような香りが漂っていて。
漂ってくる香の先を辿れば、それは路地の先。ちょっとした広場になっている空間からのはず。
其処で行われていたのは―――

「はいはい、まだあるからあんまり慌てなくていいから!」

数人の、この辺りの住人らしい姿が集まる先に小さな天幕らしきもの。
香りはそこから。
幾つかの孤児院などが協力しての、炊き出し。浮浪者やはぐれもの達も飯にありつけるとなれば多少の礼儀は出てくるようで。
差し出された器を嬉しそうに受け取っては、何処へともなく消えていく。

「ふぅ…この辺で一段落、か?…ああ、この辺はあとは僕が何とか。皆は、あっちへお願い」

やがて人数も減っていき、落ち着いて来れば軽く汗をぬぐう青年。
一緒に手伝っていた数名の男性にも感謝しつつ、其方は其方で仕事があると立ち去っていく。
後は残り物の始末と、後片付けくらい。まあ一人でも何とかなるだろう。

勿論、まだこれから誰かが来るなら。その人たちへ、配る位の分も残ってはいるのだけども。

ツァナ > 「…?」

(降り立った、所で。鼻を鳴らした。
微かに漂う香りは。路地裏にはそぐわない、しかし、誰にとっても好ましいもの。
振り返った、その向こうから歩いて来る、幾人かの浮浪者達や孤児達。
彼等も、その香りを僅かにだが纏っている。
匂いの元になりそうな物は、特に持っているように見えなかったから。
きっと発生源は胃の中で、口元や手元で。という事は、つまり…

「もしか、して。」

何となく思い至って、方向転換、漂ってくるその方向に歩き出す。
近づくにつれ、匂いは強くなり。更に複数人の、多少マシなみなりの者達とすれ違う頃には、明確に出所を察している。
少し足を早め、やがて、広場に出たところで。

「あ。ぁー…こんな、トコで。……オシゴト…?」

行われているのは、いわゆる炊き出しなのだろうか。
まだ幾人か、この界隈で行き場の無い者達が、集まり、器を手にしている。
殺伐とした界隈ながら、腹が膨れると、それだけで苛立ちが減る場合も有るのだろう。
彼等は皆、機嫌良さそう。
そんな者達の中央、鍋の中身を振る舞う人影に。
ことりと首を傾げながら、歩み寄っていく。
…その人には、見覚えが有ったから。

ルシアン > 据えられていた大鍋から漂うのは、野菜や魚を煮込んだスープの香り。
野菜やハーブは孤児院の自家製、魚は青年が釣ってきたもの。金はかかってないが手間も暇もかかっている。
トマトベースの酸味のある香りが胃袋を擽るものであるはずで。
合わせて出されるパンやサラダなんかも、そう量は多くないが大人の腹を満たすくらいは十分。
器を自分で持ってきて、慈善活動として地域のごみの片づけやどぶ攫い…そんな仕事をした人たちにふるまわれるもの。
どんな時でも、少しでも人らしい生活を。そんな意図のある活動。

「うーん、流石奥様直伝のレシピ…人の集まり方が違うなぁ」

鍋の中を軽くかき混ぜ、残った量を確かめる青年。
お世辞にも立派な材料があるわけではないのに、味は一級品と言っていいくらい。
院を運営する夫妻、その奥様の長年の経験から生まれた味には舌を撒く。

それでも、周りの人たちの数も少しずつ減っていく。今日はこの辺で上がりにしようか。
そう、思っていたのだけど…ふと、目の端に止まった人影が、一つ。

「え…ツァナ?あははっ、こんにちは!」

以前に出会い、見知った姿。嬉しそうに眉を下げれば手招きをしてみて。

「いいタイミングだった。どう?食べて行かないか?」

ツァナ > どうやら。顔が上げられ、手が振られ。彼方も気が付いてくれたらしい。
そうなれば、割と気軽な足取りで、相手の下へ。

「ん。…うん、良い、タイミング。今まで、頑張ってたから、お腹空いたー…」

(そうやって近付くと。正直この香りは。空きっ腹には拷問じみて堪える物。
幾度か訪れた際、水をやる位はしただろう、孤児院の野菜がベースなのだろう。
其処に魚等もプラスされたスープ。これが香りの元に違いない。
その他にも、幾つかの食事が、まだ残っている様子。
結構な人数が、腹を満たす絶好の機会に、訪れたのだろうに。
どうやら相当気合いを入れて準備されてきた、という事なのだろう。
それが美味しくないハズがない、と思う。

「そっちは。毎日、頑張ってる、みたい?
また、何か、お手伝い。有る?――――って、ぁー…」

鍋を挟んで前に立ち。話し始めて…それから、気が付いた。
他の者達が手にしているような、器が。自分の手元には無かった。
どうやって受け取れば良いのかしらん。そう考えて困り顔。

ルシアン > あれ以来、時折、自分の世話になっている孤児院へ顔を出してくれるようになった少女。
丁度お腹でもすかせているんじゃないか、なんて思っていたタイミング。
くすり、とちいさく笑いながら。

「頑張ってた、か…ん…そうだね。もうそろそろ終わりにしようか思ってたところだし、残り物みたいになっちゃうけども」

―――頑張っていた。少女の素性を察してしまうと、其処に素直に頷くことに抵抗はあるのだけど。
日々、この街では不穏な話は幾らもある。何処かの屋敷が燃えた、どこぞの武器商人が刺された、それから―――
―――止めよう。それらは、どれも根拠があるわけでもない。それより、此処でこうして来てくれているだけで有り難いのだし。
軽く首を横に振り、鍋の底の方からもう一度ゆっくりかき混ぜながら。
甘さと酸味の混じった、食欲をそそる香りがまた一面に立ち込めた。

「まあね。何とかやってるよ。うちの子たちも元気。この暑い中なのに、庭で走り回ってる。
 手伝いしてくれるなら、仕事は幾らでもあるよ。あ、でも…うーん」

ふむ、と言葉を続けてて。少女に渡せる器がない事に気付き。
不特定多数に食事を渡す都合で、毎度食器までもっていかれるとさすがに大変なのだからこうしているのだが…。

「んー…ちょっと待ってて。僕が使った奴を洗ってくるから、それで食べて貰っても良い?
 …一応、そんな汚い食べ方はしてないけど…」

傍のテーブルに置いてあった、食べ終わった食器を若干気まずげに指さして。
人の使った食器である。抵抗があると言われれば、また別の方歩を考えるのだけど…。

ツァナ > 「そうそう。借りた部屋、お掃除、して。頑張って、キレイに、してきた。」

そんな詳細まで告げたなら。男は安心してくれるのだろうか。
…残念ながら、こんな場合は、今日限定のようなもので。
それこそ、商人が刺された話などは、正に少女が犯人だから。
不穏な…この界隈の。この王都の。それとは決して無縁になってはいないのだけど。

魚肉や野菜のダシが、たっぷり染み込んでいるのだろう香り。
出来たてではなく、時間を掛け煮込まれていた分、より味は深みを増しているのだろうと。
容易に想像出来て、期待してしまう。
それを目に前に、器がなくてお預け、というのは。なかなかキツい。
どうした物かと考えていれば。

「え。お皿、コレ?あ、じゃぁ、洗う。洗って、くる。」

(そんなに細かい事は気にしなかった。
大体、誰かが使ったから、もう使用不可能、などと言われたら。
環境問題という奴まっしぐらだろう。
ぱたぱた手を振り、器を手に、水の出る場所へ。

「あ、うん。それで、それは。
はたらかざるモノ、食べちゃ、ダメ、だから。
……ぇぇと?何だろう、何か、問題?」

でも、と。彼の言葉は続いた。器についての事なら良いが、孤児院の方に、何か有った…なら、どうしよう。

ルシアン > 「ん、そっか。恩には恩で返す…良い事だよね」

安心したような表情。思うならば不安は幾らでも。だけど、今は違う訳で。
手を伸ばせばぽんぽんっと少女の頭を軽く撫でてあげようと。
親切な誰かが、少女に手を差し伸べてくれたのだろう。そういう人がいるだけでも何処か、ほっとして。

「あ、うん。それじゃそっちの井戸で。流したら持っておいで?」

食器の使いまわしも抵抗は無いらしく一安心。
指さした方にある、ポンプのついた井戸。其処で水を流せば一通り綺麗にはなるはず。
少女が戻ってくれば、とっておきの部分…スープの底の方、味が一番染みた魚や野菜の沈んだ部分を注いであげようと。
…まあ、若干細かい魚や野菜くず的な見た目の切れ端なんか、見た感じはあまりよろしくないのだけど…味も匂いも、空腹にはたまらないはず。

「うーん…ああ、いや。大きな事でもないんだけど。
 旦那様が腰を痛めちゃって寝込んでてさ。畑仕事に子供の世話にボロな建物の修繕にって手が回らないんだ。
 だからその、「猫の手も借りたい」って奴?」

目を細め、ちょっと悪戯っぽく。少女の素性も、きっちり察しているわけで。
どこか遠くの言い回しだけど、この辺でも通じるんだろうか。

ツァナ > 「借りたら、返さないと。
何だかこう…モヤモヤする。納得いかない。えぇっと…シャクゼンとしない?」

無理に難しく言おうとして、明らかに発音が怪しくなった。
ともかく、言いたい事が、伝わってくれたのだろうか。
頭に置かれた手には…困った顔をして、身を退いてしまった。
彼にもいい加減バレているのだろう、とは察しているものの。それでも、耳の有る頭を触られるのは、避けたいワケで。
兎に角先ずは腹拵え。指された井戸場で食器を洗う。
それが済めば取って返して、両手で包んだ器を差し出す。
注いで貰ったスープを、先ずは一口。……思わず。ほぅ、と温かな吐息が零れてしまう。
そんな。温かく、優しい味だった。

「腰。あー…畑で、頑張ってた、から。かな。
それで。……んー…力仕事、は。難しい、けど。それこそお世話とか、こういう、料理のお手伝い、とか。
出来る事なら、手伝う。」

少し飲んでからは。ある人に教わったように、パンをスープに浸して食べていた。
味が染み、柔らかくなり。食べ易いし…何より、美味しい。
頬張っていたモノを呑み込んでから頷いて。
…前とは別物のフードを被る頭が。一度傾げられてから。
人差し指を口元に当て。しぃ、と。

「後。それ、ナイショ。…誰が、聞いてて、バラしちゃうか…ね?」

ルシアン > 「釈然としない、ね。…そう、大事な気持ちだと思うよ。それができない人がどれだけいる事やら…って愚痴っても仕方ないけどさ」

いまいち口の回ってない言葉、丁寧に言い直してみたりしつつ。
撫でようとした手も、するりと抜けられれば…あらら、と思いつつ、そのしぐさが何処か、本当の気まぐれな猫っぽく。
くすくす笑いを堪えようと。でも、そんな様子が何処か楽しくて。

「ゆっくり食べな?まだ少し残りは有るから、お替りしたっていいんだ。
 うん。力仕事の方は、僕らで何とかする。もし手伝ってくれるなら子供たちを見守ってもらったり、料理の手伝いとかかな。
 奥様から料理を教えてもらえば、ツァナもこんなスープくらいは作れるようになるかもね?」

美味しそうに食べる少女を見守りながら。作った側としても、美味しく食べてくれる人を見るのは嬉しい事。
孤児院を運営する老夫妻には少女も顔を合わせた事はあるはず。
貧しくても、食事は美味しい物を。そんな心を持つ人たちである。

「…ん、ごめん」

ちょっとだけ気まずげに、軽くぺろりと舌を出す。
少女の素性を明かして危険にさらすことは、もちろんしたくない。失言だったと反省して。