2016/12/05 のログ
■アデリータ > 貧民街をノコノコと歩く。
手には箒と籠。
籠の中からは、独特の薬草の匂いがするようだ。
「……ここには客がいるけれど儲けは少なくて困るねェ。
捕まるのを覚悟で貴族様あたりに売りつけた方がいいかもだ」
ひひひ と笑いながら路地裏の近くを歩く。
この魔女はどうやら医者の真似事をして賃金を稼いでいるようで。
薬草は魔女の薬なので完全にお手製である。
■リリア > (――ツン、と鼻をつくのは薬の香り。それがどこからともなく届けば、そちらの匂いの方に視線を向ける。見た目的には10に届くか、という程度の容姿の小さな少女。けれども、その気配や表情を見ればただの子供にしては、達観している・・・というか、世界を知っている。そんな 異質さ を感じ取るか。
そのエルフのように尖った耳にも声が届く。それは幼子のように愛らしい声でありながら、その色は成熟し知識を蓄えた大人のような深みを持つ・・・なんとも不思議な声であった。)
・・・不思議な子。
(それが、遠目から見た彼女の第一印象であった。)
■アデリータ > そのまま我が物顔で路地裏を歩く。
道で寝ている男を踏んづけてから おや と声をあげて。
「なんだい、ここはお前さんの寝床かい?
寝床だったら邪魔して悪かったねェ、違うのなら早く帰んな」
言いながら何回か足踏みして踏み付けを続行。
もっとも小さい体躯なのでダメージがあるかどうかも疑わしい。
どうやら男は酔っ払いか何かのようで、かなり騒がしく返事をしている。
内容は要領をさっぱり得ないが。
「ああもう、わかったわかった。
呪い(まじない)してやるからとっととお帰り!!
代金はその財布そのもので許してやるよ」
言いながら籠から瓶を取り出して、その粉を男にかける。
男はいい気分で眠りにつき……そのままフラフラと家路についた。
そして魔女の手元には男のものだった財布が握られている。
「……シケてるねェ。
これじゃあ、今日の夜食も食べられないじゃないかい。
宵越しの銭も少しくらいはもっときゃいいのに」
■リリア > (その押し売り商売の現場を真紅の瞳が見つめる。酔っぱらいで、その辺に転がっていたとはいえ、男を足蹴にした挙句、踏みつけを続行。姿よりも随分と口達者な様子で、暴言を吐きつつもその辺に転がっている男を踏みつける様はどことなく楽しげに見える。
しかし、続く男の言葉は酔っ払い故に意識の混濁でもあるのか、意味をなしておらず、それでいて声だけはでかいので耳障りそのものである。吸血鬼は顔を歪め、指で耳栓をして。)
・・・飲み過ぎで店を叩き出された口ですかね。
(流石に吐きこそしてないものの、道端で眠りこけ訳の分からない言語を口走るその様は明らかな酔っぱらいであり、顔も覗いてみれば真っ赤である。恐らく店で手に負えなくなり、外に叩き出された口であろうが・・・。
そして、その酔っぱらいは少女にすら手に負えなくなったのか、謎の薬を振りかけられて、まるで何かに誘われるようにふらふら、とどこかへたち去っていくだろう。 自分の前をその酔っぱらいが通れば)
・・・さけくさい。
(ぼそり、と苦言を零した。別に酒は嫌いじゃないし、普通に飲みこそするが・・・ここまで濃厚な匂いをさせていると少々きついものがある。耳の次は鼻を抑え、もう一度顔を歪めようか。
そして、もう一度少女の方に顔を向ければ、財布を奪いぶつくさと文句を言うその可愛らしい姿にはに使わない少女の姿)
見た目は随分可愛らしいのにやることはひどいですね、あなた。 あの人、明日から一文無しになるのでは?
■アデリータ > 「宵越しの銭もってないようなヤツは財布とらなくても無一文だよ
日銭稼いで、その日を凌ぐのがここらの普通ってやつさ。
それにここらで寝てたら運が悪けりゃ、朝までに死体に職が変わっちまうよ?」
むしろ命の値段なら安いもんさね と。
財布を籠に放り込みながらリリアに返事をしてそちらに振り向く。
「さっきから見てたのはアンタかい、お嬢ちゃん。
なんだい、薬が欲しいのかい?
気持ちのよくなる薬から寿命が延びた気になる薬まで色々あるよ?」
魔女は ひひひ と笑った。
■リリア > ・・・まぁ、それにつきましては否定いたしませんが。
(見た目が可愛らしかったり、イケメンであれば血を頂いた後保護してもかまわな・・・いや、やっぱりあんまり酒くさいのはごめんかもしれない。まぁ、どっちにしろ食指が動くような見た目ではなかった。彼女が通りがからなかった場合、自分もそういうのは放置しておくので・・・確かに凍え死んでもおかしくはないか。)
寿命については特に困ってないのでいりませんわ。気持ちのよくなる薬・・・というと媚薬ですかね? ・・・ひとつ、見せてもらっても?
(彼女の籠を覗き込むようにしながら彼女にそう告げた。どういうものを扱っているかは知らないけれど、ちょっと見てみるのもありか、と。 面白そうなものがあれば、買ってみるのもいいだろう。)
■アデリータ > 「媚薬もあるが中毒性のある薬も扱ってるよ。
普通に麻酔や傷薬なんかもあるしねェ」
籠の中から瓶を一つ取り出す。
やや桃色がかった半透明の液体が詰められている。
ちなみに籠の中は意外と整然と瓶や薬草が入っている。
財布だけが浮いている感じか。
「これが魔女の媚薬さ。
使うときは薄めて使わないと、惚れちまうかもしれないねェ。
体を変化させるようなモノもあるけれど……そっちはアンタにはいらないかもしれないねェ」
■リリア > ふぅん・・・まぁ、表には出せない薬、って感じですかね・・・。
(中毒性のある麻薬やら媚薬やら。その上どうにもうさんくさい寿命が伸びた気になる薬、と。その上先程の行動を見ると、どうにも表で商売しているようにはとても見えない。裏で商売するにしては・・・随分と見た目が可愛らしいような気がするが。)
ふふ、私は今の身体に自信を持っていますから。身体を変える、なんて願い下げです。
(くすり、と微笑んで自信満々な様子で少女に告げるだろう。今の身体、私の身体こそ至高。変えてしまうなんて、とんでもない、と。少女の自身に対する絶対的な自信が伺えるだろう。)
しかしまぁ、媚薬ですか・・・面白い一品ではあるんですけど、薬を使って虜にする、なんてどうにも負けた気がするんですよね・・・。
(自分の魅力では虜に出来ないから、薬に頼る・・・。それは女として負けたような気がする。そんな薬に頼らないと男一人モノに出来ないのか、と。しかし、奥手の男を獣にさせる発情剤・興奮剤としてなら有りかもしれない。 ふぅん・・・と興味深そうにその薬を眺めるだろう。瓶を開き、匂いを路地裏に開放させたりしつつ・・・。)
■アデリータ > 「どれも魔女の薬だよ。
効果も製法も特別なのさ」
ひひひ と笑いを漏らす。
「そりゃあ結構なことだねェ。
でも世の中はお嬢ちゃんみたいな人ばかりじゃあないのさね。
確かにアタシも見蕩れるほどの肌の艶だけれどねェ。
ああ、羨ましい羨ましい」
子供の姿で言うあたり、リップサービスかもしれないが本心でもあるのだろうか。
「おっと、気をつけるんだよ。
希釈が必要だからねェ、耐性が弱いと匂いだけでもやられてしまうよ?
そいつは金貨一枚さ」
■リリア > ふふ、見惚れたって、惚れたって構いませんが?
(くすくすと楽しげに笑いながらそう告げるのはやはり自信のあらわれか。)
きしゃく?というのはよく分からないですけれど――あなた的にはどうなんです?これ嗅いじゃって、どうにかなってしまいそうに、なってしまうとか・・・?
(す、と彼女の方に瓶の先を向け、その顔を覗き込むようにその真紅の魔眼を向けよう。吸血鬼の魔眼は魅了の魔眼。その目を正面から見てしまったのなら、ゆらゆらと揺れるその媚薬の匂いとその魔眼にあてられて・・・どうにかなってしまいそうになるかもしれない。それは、彼女の耐性次第になるだろうか。その結果がどっちに転ぼうとも まぁ、いいでしょう。 と、きゅっ・・・と蓋を締めて)
折角ですし、一つ頂きますわ。はい、どうぞ。
(と、彼女に金貨を一枚手渡そうか。高級な衣類を纏っているだけに、彼女の目の前の少女は特にお金に困っている様子はなく、羽振りよく金貨一枚さらっ、と渡すだろう。それを渡したならば、では、と吸血鬼はその場を後にした。)
――いつか、また会う日があれば、作った本人に飲ませてみるのも面白いかもしれませんね。
(彼女の姿が見えなくなった頃・・・くすり、と笑ってそんな計画を脳内に作り上げた。それが実行されるか否か・・・それは彼女との縁次第であるが、もしそれが叶うならば、その時は・・・たっぷりと愛を奪い、捧げてあげよう。そんな欲望をひっそりと胸にしまって・・・今宵はその姿を消した。)
■アデリータ > 「おやおや、惚れて欲しいのかい?」
笑って小さな胸を張る。
「薄めて使うのさ。人間相手にゃ強すぎてねェ。
三倍くらいに薄めて、スプーン一杯くらいが一回の使用量さ。
10回くらいは使えると思うねェ」
言いながら、その瞳をしっかりと見つめ返す。
魔女の金色の瞳が魔眼とあった。
「アタシが作った薬だよ、耐性はもってるさね……。
ただ、それがお嬢ちゃんの口説き方かい?」
答えて金貨を受け取る。
「まったく、このアデレータ様にいい度胸のお嬢ちゃんだよ。
少しだけ当てられちまったじゃあないかい。
ひひひ、久しぶりに男でも捜すかねぇ」
ご案内:「王都マグメール 貧民地区路地裏」からリリアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区路地裏」からアデリータさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にシンシアさんが現れました。
■シンシア > 冷たく冷えた空気の夜。吐き出す息は白く
今夜の月は…まだ三日月くらいのせいか、さほど明るくもない
貧民地区の空家や廃墟の屋根の上を
バランスをとりながら器用に歩く、上着のポケットに手を入れて
足元をふらつかせてるのに、体幹がいいのか軽い足取りで瓦礫や屋根を伝いながら…
トンと、脚をついて顔をあげれば…夜空と小さな三日月。
その表情はどこか影を落としたように
廃墟の屋上で脚を止めた
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にアンセルさんが現れました。
■アンセル > ごそごそと廃屋の隙間から這いだし空を見上げれば暗い空。
いつの間に夜になったのかと思い目的もなく足を進める。
元々はこの辺りに来た事があるだけに住人にも気にされることなく軒下や影を選んで歩き。
時折に見かける住人もいるがお互いに不干渉というように。
そうして歩いていれば鼻に知った匂いを感じ足を止め。
その匂いがする方角、おそらくは建物の上の方へと視界を向ける。
■シンシア > もたれ掛かる給水塔
中身は空っぽだけど触れてるところから体が冷えていくような
その場所に座りこむ、給水塔に背中をつけて白いため息を吐き出しながら
くしゃっと前髪あたりを片手で握り
座る膝にそのまま額をつけて
■アンセル > 見上げていれば人の気配はあり動く気配もある。
だがその場から動いていない様子に周囲を見回して。
登るにちょうどいい荷物の山を見つければ助走をつけて駆け上がり建物の上にと駆け上がる。
駆け上がり見回せば屋上の一角の給水塔に知った影を見つけて。
静かな爪のなる音を立て近づいていき。
「何をしている、シンシア。風邪を引くぞ」
そこにいた知った彼女に声をかけて
■シンシア > 乾いた風の音に爪の音か…治安がいいとはいえない場所にいることくらい知ってる
頭をあげないでいると音だけ
何か獣が近づいてる、のぞみを叶えてくれる獣かと思ってたけど
聞こえたのは聞き覚えある声
顔をあげると
月夜の闇に紛れるような黒い狼の彼がいて
「…アンセル」
呟く声は風に消えるように小さくて
■アンセル > 間合いを開けて足を止めて声をかけ彼女の様子を伺い。
顔を上げる仕草をただじっと見つめて。
「こんな治安のよくない場所で何をしている?
危険なことはしないのではなかったのか」
呟くような声で名を呼ばれても答えず。
どうしてこんな場所で何をしているのかと問うように暗い中に静かに響く声で。
■シンシア > 近づくでもない一定の距離で見つめる狼。
かけられる言葉に返す言葉は出ない
答えない声に
返す声も出ない
だから視線から逃げるように、
ため息混じりに
また膝に額をつけて体を小さく丸めて
■アンセル > かけた声に何も返さない彼女をただ見つめる。
ただじっと見つめて一歩だけ踏み出し。
「嫌な事でもあったのか?無理をしすぎて疲れたのか?
それとも…話していた兄と何かあったのか?」
彼女のこんな姿はあまり見たことはなく。
その原因が判らずに思いついたことを口にして丸まった彼女を眺めて。
■シンシア > 聞かれる疑問、当然だろうこと
作り笑いすらできずに表情が作れない
どうして自分の周りの人たちは優しいんだろうと
聞かれてる言葉を理解はできても
膝につけたまま首を振るだけ
■アンセル > 「そうか……」
やはり何も答えずに首を振るだけの姿に肩を落として。
それ以上は言葉が浮かばずに黍を返し。
「シンシアなら大丈夫だと思うがここは治安が悪い。
遅くなる前に…戻るんだぞ」
静かにそれだけを告げれば屋上から下の道へと飛び降り
駆け出すように夜の貧民地区へと消えていく。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からアンセルさんが去りました。
■シンシア > 足音が遠ざかる、顔をあげると黒い狼はいなくなってた
近づきもしなかった彼、それが答えのように感じれば
気も落ちるし塞いでしまう心
風は冷たくて
三日月が浮かぶ空、気配の消えた場所
今、家には帰りたくない気分になってしまえば
立ち上がることもせず
座ったまま給水塔に頭をつけて、三日月と明かりの少ない貧民地区の
黒い世界を眺めていく…考えたり思うことはたくさんあるはずなのに
なにも浮かばなくて
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にノーガルトさんが現れました。
■ノーガルト > 「さて……テントの準備はよし。食料も買い込んだ。あとは…」
『ランタンと予備の明かりだな。傷薬も大量に買い込んでおけ。』
(貧民地区のほうが、平民地区よりも冒険用の消耗品を多く取り扱っている。
そのように宿の主人に聞いたため、早速とばかりに繰り出した。
本来ならば既に宿に帰ってしっかり休んでおくのだが、今回は勝手が違う。
なにせ、向かう場所は危険極まりないダンジョンと名高い場所。
準備はしすぎても困ることはないはずだ。)
『…しかし、どういった心境の変化だ?危険だからキルフリートの調査はしないといったはずだが…。』
「なに、少しいろいろとあってな。」
(その、いろいろの原因は相棒に語ることはなかった。
だが、危険だからと渋っていた場所へ赴くと言い出したノーガルトに、ダインが驚いたのはいうまでもない。
購入した荷物を背負いながら、何と話に月を見上げた。
三日月、まるで笑っているような形をしているその月の麓。
廃墟の屋上が、少し不自然な影を作っていることに、ノーガルトは気づいた。)
「………?」
『…どうした、ノル。』
(ダインが察することが出来ないという事は、魔力を持ちうるものではない。
だが、その不自然な影が、どうにも気になっていた。)
■シンシア > 少し高いとこにいたから、とおりを歩く人の声や足音は
周囲も静かだから聞こえるけど
コチラに気づくのは月を見上げる人くらいか
円柱の給水塔にもたれてる人影
通りで人の声が聞こえた
振り返ることもなく、ぼんやりと…
時々吐き出す無意識のため息は白く溶けて
月を見みるのは貧民区が一番綺麗に見える…誰かがいってたな
と昔を懐かしむように思い出しながら
■ノーガルト > 『……ノル?』
「いや……あそこに人影がな。」
(自殺志願者?にしては飛び降りる気配がない。
どこか、一人でぼんやり考え事をしているように見える。
シルエットだけでは誰かは判別できないし、遠めなので男か女かもわからない。)
「……ダイン、俺はおせっかいか?」
『ついでにトラブルメーカーでもあるな…、十分気をつけろ。後荷物は最悪諦めろ。』
(ため息をつく、ダインの声が聞こえる。
苦笑を零しながら、荷物を抱えなおし廃墟の入り口を潜った。
中も随分と錆びており、中には酒瓶や靴なんかも散乱していた。
一体ここは何の建物だったのかも解らないほどに寂れた建物の中を歩いていく。
一つ、また一つと階段を上り、屋上に続く扉を見つければ、その扉を軽く押した。)
「………。」
(扉は、立て付けが悪かったらしい。
ズシィンと重い音を立てながら、ゆっくりと倒れていく鉄の扉を見ることしか出来ず。
大きな音だ、シンシアにも十分気こるだろう。)
■シンシア > 廃墟の屋上だったから
風にでも物音がするときにしてなかったけど
明らかに錆び付いた鉄の扉の音がすれば、びくっと肩が震える
誰かがきた…それだけはわかる
さすがに振り返り、その音のほうへと見つめる
三日月の明かりは、そこまで明るくもなく
大きな人影が扉から出てくるのがちょうどみえた
■ノーガルト > 『まあ、当然の結果だな。』
「……俺が壊したような言い方は辞めてくれ…。」
(皮肉めいたダインの言葉に、ノーガルトもため息をついた。
決して俺が壊したわけではないと弁解しつつ、外へと繋がるその扉を潜った。
廃墟の屋上に来る物好きも少ないだろう、と荷物は扉の前に置いて。
ただ、あの人影が危害を加えるかもしれないと警戒し、ダインとディンだけは背負ったままだった。
三日月、明るさは乏しく漆黒の闇の向こう、誰かがこっちを見ているという事くらいしかわからない。
そのほうへ、ゆっくりと歩いていきながら。)
「あー……んっん…。よう、いい夜だな?」
(一戦交えるつもりはない、しかし関わろうとしてしまった以上。
以前、とある事情でエルフの親子を助けたことはあったが、あれは押し付けられたのではなく自分から助けた。
そう言われても仕方がない、そう思えるようにもなってきた。)
「こんなところでなにをしているのかは聞かないが…死にたいと思うなら別のところでしてくれると助かる。」
■シンシア > その声には聞き覚えがあり
瞳を凝らすように人影が近づいてくれば
誰かというのははっきりしてくる
やっぱりダメか……と小さく苦笑交じりのため息が落ちる
「満月には少し早いけどね、こんなとこにどうしたの?ノル」
暗がりの大きな人影、その声に誰かの判別はようやくできて
驚きや警戒もすることなく膝をかかえ座ったまま
その膝に頬をつけるようにしては、体を丸めてる
■ノーガルト > 『……ノル、だと?』
(先に驚きの声をあげたのは、ダインだった。
今まで、相棒のことをノルと呼んでいたのは、ダインとディンだけだった。
親しい間柄となったものだけしか、愛想で呼ばせない男を、愛称で呼ばせる存在。
そのことが、ダインにとって衝撃的だったらしい。)
「ああ、なんだシンシアだったか…。いや、買い物を済ませて宿に帰ろうと思ったら、こんな場所に人影が見えたんでな。」
(自分のことを、愛称で呼んでもらえたのは少し嬉しい。
あまり表情には出さないし、こんな暗がりだと声は聞こえても顔はあまり見えない。
ただ、座り込んでいるその姿を見ると、また考え事かと察する。)
「シンシアこそ、こんなところでどうした…というより、どうやってここまで来た?」
(扉は閉まっていた。
あの扉を潜る以外に、ここへとやってくる方法があるのかと、単純に疑問に思った。
まさか飛んでやってきたわけではあるまい、と。)
■シンシア > 「…うん…ちょっと…考え事」
沈んだ声でふいに返してしまった
彼の察した通り、暗いから表情は判別しにくいか
無理に笑顔を少し作りながら、声のトーンも少しあげて返す
「あっちから…屋根づたいに登ってきた」
指をさしたのは眼下の空家とかの屋根と
この近くの廃墟の壁とか屋根とか…
身軽だからバランスもとってたどり着いた、廃墟の屋上
「ちょうどココにきたら、三日月が綺麗でね、お月見をするなら貧民区がいいよ」
ほかに明かりもなく通りにいるよりも、屋根の上なら人にも気づかれにくい
路上にいるよりは…マシのはずで
■ノーガルト > 「………そうか。」
(考え事をしているときの、シンシアの笑顔は解りやすい。
声のトーンもそうだが、暗がりでも雰囲気で何か思いつめているような顔がうかがえる。
今度は一体何を考えているのか、と問いただそうとしたが、彼女はいつも考えを纏められない。
あまりに多すぎる量に、結局何も言えないようで。
だから、ノーガルトもそれ以上は何も聞かなかった。)
「屋根伝いに…?おいおい、ずいぶん身軽だな…。」
(屋根の上は決して歩きやすい場所じゃない。
ノーガルトにはそんな芸当できるはずも無いし、こうして地道に階段を登るしかしない。
廃墟の壁や屋根を伝ってやってきた、という彼女には、素直に驚いた。
見上げれば、確かにこの場所だとぼんやり三日月が見える。
他に何も遮るものがない故に、その月は非常によく見えた。)
「……それで、一人風にうたれながら物思いにふけっていたというわけか。もし、一人でいたいというなら、俺はさっさとお暇するが…。」
■シンシア > 「うん…まあ自分だけのことじゃないから、難しいこと」
一人悩んでも解決できる答えは出ない
自分以外の人も絡んでることだから
「でしょ、けっこう便利なのよ?剣術のときとかもね」
抜刀して飛び込むときは、呼吸さえも止めて入り込むように
集中するときに呼吸の鼓動さえも邪魔に感じるほどで
「どうしょうかな…ね…後ろから、ぎゅってしてもらってもいい?」
考え事の行き着く先は、心細さ
初対面の相手には言えないけど、何度か顔を合わして話もしてる相手なら
頼みごとをしてみる…断られるのも承知で
■ノーガルト > 「……難しいことなら、相談してくれてもいいんじゃないか?」
『……随分と自然だな、ノル。おせっかいのトラブルメーカーが、ついにタラシ能力も身につけたか?』
(茶化してくるダイン。ノーガルトはつい逸れに、「…黙ってろ」と反応してしまう。小声で。
いつものことなので、その反応にも自然さがつき物だが、やはりダインの声が聞こえない以上、シンシアには独り言に聞こえるだろう。)
「…驚いたな、戦えなくはないとは聞いていたが…。」
(ノーガルトは、呼吸を小刻みにすることでリズムを作り、相手の行動を予測するような戦術をとっている。
ゆえに、受けに回り攻めに転じる『攻防一体』を軸にしているので、そこまでの身軽さはない。
ダインやディンの能力を使えば、また別だが。
思っていたよりも、腕の立ちそうなシンシアの技術に、少し考えをあらてめるべきか。
そんなことを考えると、シンシアからの頼みごと。)
「………ああ、構わん。」
(さすがのダインも、この言葉には黙るしかなかった。
後ろから、膝を抱えて座っているシンシアの体に腕を回し、そっと抱き寄せる。
シンシアの細い体を挟むように足の間において、そのまま腕を絡ませるように。
屋上の、誰も見ていないような場所だからこそ出来ること。)
■シンシア > 聞こえた独り言に 小さく笑う
その理由も事情も既に聞いたからこそ
何か言われたのかと、気にはなって
「何言われたのー?」
背中が暖かくなる
大きな人の体の前ですっぽりと包まれるように抱き込まれたら
その人との感触、触れ合いが嬉しくなる
「体幹を鍛えるとバランスもよくなるからね
ノルも一緒に鍛えてみる?地味な筋トレみたいなものだけどね」
表情は見えないだろう、彼が気にしそうな話題をむけながら
腕の中にいる安心感に泣きそうになる。泣いてないけど…
その触れてくれるだけなのに、安心して