2016/06/15 のログ
■クルツ > 「ただのクルツでいいっての!」
あくまでもおっとりとしたアビーに、苛立つ気力も萎えてきて。
「んー…?ああそうかガキンチョどもにね。……待てよ、アンタ一人で?」
場違いな少女が貧民地区に来ている理由が分かって一瞬納得しかけるが、こうして少し話しているだけでもかなり育ちがいいという事が見て取れる。
そんな少女が一人で出歩いて貧民地区まで施しに来る、というのはクルツの感覚からすると酷く不自然に感じたのだが。
「もしかして誰か、お付きとか護衛とか一緒だった?やっべぇこれじゃあオレが攫ったみたいじゃねぇかよ……!」
■アビー > 「それじゃあ、クルツ。私のことは、アビーでいいですよ。」
何がうれしいのか、2,3度クルツクルツと繰り返してみて。
「…? はい。私一人ですよ? 付き人は…つけたほうがいいって強く勧められたんですけど、せっかくの寮生活ですので…。
ああ、何もそんなに心配しなくても。家の者はいませんよ。私は今家を離れて修道院の寮で暮らしているんです。」
慌てるクルツの様子にくすっと笑って、大丈夫と諭しながら頭を撫でてみて。
さながら、年下の子供にするように。
「………なんですかその目は。変、ですか?」
■クルツ > 「へ?あ、ああ、そっかそれならいいんだけどよ……」
危惧していた誘拐の冤罪という事態にはなりそうになくて一安心、と思いかけたところで肝心の問題が。
「……やっぱ一人でのこのここんなとこまで!ああもう次からは付き人でも何でもつけてもらえよな!ってかむしろもう来んな!」
生きている世界が違うという事はよく分かったが、この調子だとそう遠くない内に何か起きてしまいそうだ。
そこまで気にかけてやる義理など本来全くないのではあるが、ワイルドぶってこんな口調と態度なだけで根は割りと善人な少年なのでつい放っておけないという気持ちになってしまうのが困りものであった。
「……とりあえず、さっきも言ったけどオレはもうガキじゃあねえんだからそういうのやめてくれねえ?」
色々と思案している間に何故か撫でられていた。
何ていうか、小さな子供をあやしているような空気である。
払いのけるのも何だかこちらが悪者っぽいなと思うと、とりあえずその手を引っ込めるようにと言い。
■アビー > クルツが手を払いのける代わりに、言葉で払いのけられてしまった。もう来るな、という言葉に思わず手を引っ込めてしまい、困ったように視線を泳がせて。
「……え、あ。ごめんなさい。その、私のような者がこういうところを歩いていると迷惑…ですか?」
思わぬ言葉に、ダメージを負ってしまった様子。泣くようなことはしなかったけれど、わずかに声は震えていて。
自分が正しいと思ってやっている行動をこのように批判されるとは思ってもみなかったらしい。
もし、自分の行動が良くないものなら…そう思うと、なんだかとっても悲しくなってくる。
■クルツ > 「えっ、あ……、いやそのな、アビーとオレらみたいなのは住む世界が違うんだよ。そこは分かるよな?」
鈍感そうで頭の中お花畑で、何を言っても動じなさそうだと勝手に思い込んでいたが今の扱いは思いの外ショックだったようだ。
別に泣かせる気はないのでこれは大変気まずい。
今度は少し落ち着いて、言葉を選んだ。
■アビー > 「…はい。私はそれに、強いショックを覚えて、それでここに来るようになりました…。」
世間知らずもいいところだが、考えも、行動も甘いを通り越して浅はかだと笑ってしまうような単純な理由だ。
クルツに背中を向けて、顔を見られないようにしてそう告げる。
そのまま黙り込んでしまって、時折すする音だけが聞こえる。
■クルツ > 知らず知らずアビーの事を軽んじてしまっていたが、ただのお花畑ではなく彼女なりに考えがあっての行動だということは何となく分かった。
だからといってこんな事を続けていては誰にとってもろくな事にならない。
「ええとだなぁ……、とりあえず貧乏人に恵んでくれるってのは悪いとは言わねえんだけどさ、なんていうかやり方?ってのがまずいんだよ。うん」
かなり消沈してしまっているようだ。
背をそむけて、恐らく泣いているのだろうか。
わざわざそれを暴くほどデリカシーがない人間ではないので、また言葉を選びながら続ける。
「アビーって結構良い家の出なんだろ?だったら事情を話して手伝ってもらうとかさ、せめて護衛の一人もつけねえとのこのこ一人で出向いてたら危ないんだって」
■アビー > クルツの言葉にこく、こくと頷くばかり。
きっと、自分が危ない目に逢ってないのが幸運なのだろう。彼の言っていることはきっと正しい。
それ故に悔しく、浅はかな自分を思い知らされているようだ。もしかしたら、彼もそういう思いをして今のようになったのだろうか。
そんなことを考えながら、ふり向いてクルツの手を握る。
「…今日は、もう帰ります。最初に言ったように、連れて行ってもらえると助かるのだけれど…。」
わずかに腫れぼったい目でそう告げて、立ち上がって。
■クルツ > 「あ、ああ。そりゃあな。とりあえず安全なトコまでな……」
落ち込ませてしまった事に若干罪悪感もあり、とにかく彼女を安全なところまで連れて行く事は約束する。
しかしこんな事をまだ続けるつもりならそこまでは面倒は見きれない。
「何ていうか、関係ないのに首突っ込んで悪かったな……」
アビーの手を取ると歩幅を合わせて一緒に歩きながら、ささやかな謝罪。
■アビー > 「…ありがとう。また今度、何かきちんとお礼させてください。そうだ、寮に招待しますね。…といっても、修道院の来賓などではなく単純に私の部屋に、お友達として…なのですけれど…。」
一緒に歩いていると、つい先ほど泣きはらしていたのが嘘であるかのように、明るく振る舞っている。
弱みは見せたくないのだろうか。
ほどなく、貧民街を抜ける。クルツは、どこまでついてきてくれるだろうか。
■クルツ > 「へへっ、かたっ苦しいマナーとか分からなくてもいいなら行ってもいいけどよ」
どうせ今日は暫く暇なのだ。
乗りかかった船だし彼女が拒否するまでついていってあげるつもり。
そしてアビーに合わせてクルツも明るく振る舞う。
■アビー > 「それじゃあ、今から来ますか?お茶くらい、ご馳走しますよ。お茶の作法は…別に、楽しく過ごせればそのようなものはあまり重要ではありません。大丈夫です。」
引っ張ってもらっていた手を、いつの間にか今度はこちらが引っ張っていて。
新しい友人でも得た気分なのだろうか。
二人は、何事もなく貧民街を後にして――。
■クルツ > 「おっし、そういう事なら行ってみっかな」
それで持ち直してくれるのなら安いものだ。
とはいえ、住む世界が違うと言った舌の根も乾かぬうちに部屋に招かれるというのもどうかとは思うのだが。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からクルツさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からアビーさんが去りました。