2019/12/10 のログ
■リシェ > (距離を埋める為には、角度が必要だった。くんと顎を持ち上げて、精一杯、上を向く。
それでも、背丈の差を埋めきれないのなら、後は、踵を浮かせるくらいしか。なさそうなものの。
幸い、その前に。彼女の方からも、頭を下げてくれた。
ただし、空白が埋まる事を…果たして、安堵として、受け取って良いのかは。何とも怪しい。
何せ、寄せられる顔と顔、覗き込まれる瞳と瞳、その距離が詰められていく間に。滑るように変化していく、彼女の口元は。確かに…笑っていたのだから。
それも。社交的な微笑みでも、親愛めいた笑顔でもなく。いわば、喰らい付く捕食者を思わせる笑みが。)
「は……ぃ。お久し、ぶり、です。ぁの、わたし…」
(勿論。覚えていない訳がない。その上で、こうして再会出来たのなら、話したい事なども有った。
例えば…彼女によって、初めて、大っぴらに城から連れ出された、あの日を切欠に。
少しずつでも、外へと連れて行って貰える、そんな事が増えだした、だとか。
だが、言葉を紡ぐ為に、開いた筈の唇は。更に詰まる相対距離が、零になってしまった、その瞬間。)
「…っ、っ…!? …………!!」
(…完全に。奪われ、堰き止められてしまう。
頭を掴まれ、唇を、貪られて。
言葉を発する為、薄開きだった唇は、呆気なくこじ開けられて。ぬらりと這い込む温かな舌。
直ぐ様舌先を囚われるか、それとも、口中を掻き回されるのか、はたまた、続け様に唾液すら送り込まれるのか…
何れにしても。その口付けは、最初から濃密で。キス、などという、甘く幼い言葉は、とても当て嵌まらない。いっそ、行為その物にも等しい程。
だから。瞬間強張った指先から、力が奪われていく。彼女の手の中、首から上の身藻掻きも、そう長くは続かない。
…だって、求められているのだから。「何をしてもいい」、それを赦しているのは、少女自身も同様なのだから。)
■レイン・レジネス > 舌を絡めて縛り付けるような口付けは暫し、誰の目にも止まらぬままで続いた。
享楽の宴席では珍しくも無い光景だったから。或いは、痩躯の背に隠れる程に少女が小柄だったから。
頬の裏や、歯や、舌や。味で愉しませる訳でもない部位を、女の舌は這い回り堪能し──
抵抗は無い。知っている。〝そういう少女だ、だから良い〟と、無抵抗の舌を吸う。
やがて、頭部を抑える両手に感じる力が抜けて、完全に少女がなすがままになったころ、ようやく唇は離れて行き、
「……おいで、リシェ。まだ少しは果物やお酒も残ってる。
退屈な宴だけど、流石にお城だね。そういうものの質は良い……」
少女の腰を抱いて身に引き寄せ、女は歩き始めた。
久しく城に上がる機会も無く、必然、顔を合わせる事も無かった少女だ。
即座に床に組み伏せて嬲り者にするのも愉しかろうが──言葉を交わすのも、それもまた楽しいものだろう。
そんな気まぐれのような理由でしかなかったが。八方から嬌声の響く宴の中を、女は、先ほどまで自分が座していた席まで舞い戻るのだ。
隣席は……類は友を呼ぶと言おうか、似た性質の者で寄り集まる事が多いからか。
何処かの貴族の令嬢が、城の侍女と交わりに耽っていた。恋仲であるのか、初々しい睦言を交わしながら。
反対側では、此方は複数人での乱交。誰の手足が誰に触れているのか、一目では判別が難しい程の。
その中間で女は、空のグラス二つに手ずから果実酒を注ぎ、手元へと引き寄せた。
「召し上がれ。……こういう風な機会、あまり無かっただろう?」
■リシェ > (ましてや、ただ深いだけでなく。知り尽くしているかのように、口中を余す所なく、舐り尽くされてしまうような口付けだから。
長い長いそれが、漸く、彼女からの許しのように、退かれる頃には。すっかり、腰砕けにすらされてしまう。
ふつんと、二つの唇の合間に、引かれた唾液の糸が途切れ。完全に、口付けが終わった、そう感じた途端。
壁へと擦れながら、背中がずり落ちそうになる。滑らかな壁面には、当然、掴まれる場所など無く…
頭から腰へ。速やかに移された、彼女の手と腕で、抱き止められていなかったなら。そのまま、へたり込んでしまっていた事だろう。
支えられたと。そう、思うからだろうか。安堵のような吐息が漏れる。
…これから、喰われる身だというのに。今自身を抱いているのは、紛れもない、捕食者であり…それこそ、抵抗出来る筈もない、今宵の支配者なのに。)
「そ…ぅ。ですね。…はい、そうです。…ありがとう、ござい……ます。レジネスさま。」
(確かに。残り物でしかないかもしれないが、それでも、市井とは質の違う飲食物が。未だ、幾らかは在る。
其方に手を付けられるのなら、付けておいた方が良いかもしれない…何につれ、この先、体力を使う事になるだろうからと。
極々自然に判断したとも言えるし…それが当然だと、諦めをつけている、とも言える思考。
歩き始めた、最初の一歩か二歩だけは。いまいち足元が覚束無いまま、蹌踉めくようになってしまったものの。
直ぐに、支え直されて。此方からも、重心の預け方を見出して。するする、爛れた宴の隙間を、二人してすり抜けるように。
そうして辿り着く先も。案の定、乱れ合う者達の中。
耳にする此方が、気恥ずかしくなるような、甘い睦言と。肌身を羽根で擽り合うような、初心な触れ合いを重ねる、お嬢様達。
もう一方は…何と言えば良いのか。集まりすぎて、絡まりすぎて、人数も性別すらも曖昧だ。流石に、城の中、皆貴族で、人間ではあろうけど。
右も左も、それぞれに違った意味で、妙に直視し辛い中。それ等に構わず、彼女から差し出されるグラス。
少女も…ちら、と周囲を確認こそするものの。きっと、当たり前の光景なのだ、と言わんばかり。
口付けを与えられた時と比べれば、余程平気な様子をみせて。受け取ったグラスに、口を着けていく。)
「いただきます…はい…それも、同じく、そうです。…お注ぎしたり、する事は。多いのですけれど。
普通に、頂ける機会は、なかなか……そういえば。前にも、レジネスさまには。飲み物…いただき、ました。」
(あれは、クスリで。その後、色々な目に遭ったのだけど。思い出したように、もう少し、頬を染めて。)
■レイン・レジネス > 正当な、法で定められた税で。或いは法も何もない略奪者からの上納金で──富んだ国庫か、或いは一部の大商人か。
そういう〝出資者〟の提供で、この城の宴は賄われている。食も酒も上等の品だ。
この宴の場に座すという特権を、女は何も疑う事なく享受している。民が、平等が、という〝人道的な〟言葉など吐かない。
当然の権利として受け取った、美酒という無慈悲の塊を。自分の手でグラスに注いで渡すという行為は、はて、優しさと言えるのか。
……何れにせよ。出会い頭の口付けに比べれば随分と穏やかに、女は言う。
「前にも……あぁ、そうだった。あれに比べればこのお酒は、軽いものだろう。
けど、美味しいのはこちらだと思うよ。……こっちは、飲む人を愉しませる為に作られているから」
体を蕩かす媚毒は、飲ませる側を愉しませる為のものだ。それよりは随分美味であろうと。
少女がグラスに口をつけ、中身を喉へ落として行く様を、暫く女は眺めていた。
その後には少しばかりの食事を──とは言え手に取るのは果物であったり、或いは食後にと用意された菓子の類いであったり。
何れも甘く、腹を膨らませるというよりは、食そのものを娯楽とする物ばかり。
周囲の光景や音こそ奇妙なれど、暫しは穏やかに飲食し言葉を交わすだけの時間──
「……それにしても、リシェ。君はやっぱり、こういう場に呼ばれるんだねぇ」
──周囲を見渡しながら、ふと、女が言う。
「なんの為に呼ばれたのかな。……給仕の為じゃあないだろう。歌ったり、踊ったり、そういう事でもない。
暫く此方には顔を出せてなかったが。君の役割は……相変わらず、でいいのかな?」
■リシェ > (そして少女も、いわば「飼われている」身、ではあるものの。
道具の、品質を維持する為には。矢張り、何だかんだで、この城に相応しく。質の良い…餌を与えられている訳で。
餌の出所が、やっと触れ始めたばかりである、外の世界。其処から搾り取られている物である、という事を。何処まで、自覚出来ているやら。
無慈悲と、無自覚と。どちらの方が、よりタチが悪いのかは、判別しかねる。
いずれにせよ、矢張り、この城こそが、世界の大半である少女は。差し出す事が、当然であるのと同様に、受け取る事もまた、拒みはせずに。
つぃと、果実由来の甘味に、目眩のしそうな酒気を伴う、グラスの中身を。喉へと運ぶ。)
「………、っ…は…。それは…そう、だと。わたしも、思います。
…飲む為と、飲ませる為と、では。真逆ですし…良く効くお薬程、口に苦いと、言うのでしょう…?」
(こてん。首を傾げてみせながら。確かこれは、シェンヤンか何処か、其方の諺だっただろうか。
もっとも、あの時のクスリは。決して苦くは無かった訳で…効きはどうあれ、良からぬクスリだったから、なのかもしれない。
そういった事ばかり、思い出していると。なかなか、落ち着く事が、出来なさそうだが。
幸い其処から先は。暫く、飲食にリソースが傾けられて。
流石に、メインとなるような料理達は、粗方、食べ尽くされているのだが。寧ろその分。デザートやら菓子やらが、手つかずで残っている。
品質というか、肉質というか。其処にばかり気を使われると、過度な甘味は、なかなか味合わせて貰えないもの。
お陰でついつい。焼き菓子に、氷砂糖に、干した果実に…と手が伸びる。
甘い嬌声、高い絶叫、鼻に付く淫臭。それ等を、暫くの間だけは。完全に、他人事にして。)
「…?…それは………仕方がないと思います。…そろそろ、公主様達も、大半は嫁ぎ先が決められた、と思いますし…」
(そんな手を、止めたのは。矢張り、彼女の仕草や言葉、それ等に対して応える為。
もう一杯、二杯、程度グラスを重ね、しっとりと紅を帯びた頬に。片手を宛がいながら、頷きを返す。)
「今さっき、お呼ばれした、ばかりでした。……そうですね、食事も終わって、今のようになってから…です。
それこそ、お酌くらいは、時々、いたしますけれど…相変わらずの、方。それが、本来の役目。それだけが、わたしのおしごと。…ご存じでしょう?レジネスさまでしたら。」
■レイン・レジネス > 甘味を楽しみ、酒を楽しむ。そうしている間にも周囲の熱は増し続ける。
誰か潰れてしまったのなら、代えの誰かが連れて来られる。人が入れ替わりながら酷化を続ける行為の数々。
それに当てられたか──或いは酒が回ったのもあるだろう──日光を厭う女の白い肌もまた、ほんのりと赤く染まり始める。
空になったグラスをテーブルに置いて、身を寄せた。
「公主なんてもう言い訳さ。……引き金みたいなものだよ、こうやって快楽に狂う為の。
歓迎の宴と称して享楽に耽る愉しみを知ってしまった以上、誰も、もう止めようなんて言い出せない。
いつかこの国が滅びるまで、連日連夜、この騒ぎは続くさ──」
周りの誰も聞いていないからと、軽口のように言う。やがて滅びは訪れるだろうと。
それはきっと、余りに多くの者が抱いている確信であろう。……遠ざけんとする者は少ないだろうが。
少なくともこの女は、退廃を厭う者では無い。寧ろ唇が描く弧は、語る言葉を自ら楽しんでいるようでもあり──
単純に、少女との語らいの一時を楽しんでいるようでもある。
けれども、言葉は十分に楽しんだから──座したままに身を寄せた。
両肩に手を置き、床に敷かれた厚手の絨毯の上、石の硬さや冷たさを伝える事の無い仮初めの寝床へと、少女を横たえる。
そうして、言うのだ。
「……勿論知ってるさ。だけど少しくらい妬かせてくれたっていいじゃないか。
私だって、お気に入りの玩具を誰かに取られたくないなんて、そう思う時もあるんだ。
それが君の仕事だって知っていてもね……」
上体を被せる。再び、上から下へと向けられる視線──菓子と果実酒で甘くなった唇を一度、軽く落として振れさせて。
その唇が降りて行く、頬に触れ、首筋に触れ、喉に触れ──少女の肌を吸い、赤い痣を残しながら。
横たえた体の下に手が潜り、開かれた背の素肌に触れる。まだ体温を確かめるだけの軽い接触──些かくすぐったい程の。
それでも、その内に、ほんの軽い接触だとしても続けていれば、喚起するのは他者と肌を重ねる事の熱と、いつかの記憶。
〝役目〟を果たさせる為、女は囁く。
「いつか、外へ連れていったね。……あの時は楽しかった?」
連れだし、館へ留めた。そうして一夜、思うがままに〝使った〟、その時の事を問いながら。
背へ触れたままの手。もう片手は少女の脚へ──腿を滑り、付け根へ、その間へ。纏う衣服は一つも脱がさぬままに、少女の芯へ指が触れる。
■リシェ > (一度火が点いてしまえば、そうそう簡単に消える事はない、というのは。
何も人体に限った事ではなく、場所や空間その物、行われている事柄自体、などについても変わらない。
やがては、酒を汲み菓子を摘む、そんな二人の方が、寧ろこの場に於いては、異端なのではないか…という程に。広間の全てが焼け爛れていく。
恥じらいと戸惑いを残していた、お隣のお嬢様と従者の二人も。気付けばより大胆に、互いを求め合い声を上げて。
もう片方の集団はといえば、中核に居た誰かが、とうとう力尽きたのだろう。一旦塊が解れて、また別の絡まりを見せている。
実際、使いすぎて、使われすぎて、限界となってしまう者達も。増え始める頃合い。
その都度連れ込まれる、新たな餌。少女も、当然、その中の一人だった筈。
幸か不幸か、組んずほぐれつの只中に、放り込まれてしまうその前に…一人の女に、捕まった訳なのだけど。)
「其処は…そうですね、確かに、否定いたしません。何にでも、名目は、要り用ですから。
けれど…それを言いますと。…公主様関係なく、もっともっと前から。皆様、ご存じだったと…思います、けれど。」
(それは、享楽に耽る事でもあり。それが更なる頽廃と、廃退に繋がるだろう事でもあり…自覚していて尚、止まらないという事でもあり。
ただ。諦めているか、受け容れているか、気にしていないか…そんな些細な違いしか。彼等彼女等、そして自身と彼女にも。無いのだろう。
ほんの少し。数瞬の崩壊の後、直ぐ様雪だるま式に膨れ上がっていく、誰が誰を貪っているやら、誰がどれだけ犯されているやら、解らない肉塊に。
冷めた目を向けたものの。彼女へと振り返る頃には、もう、酒気を湛えて爛れた瞳。
苦笑のような、困ったような、仄かな笑みを浮かべた唇が。ぁ、と微かな声を上げたのは…そろそろ、座興は終わりだ、とばかりに。
彼女の手が伸ばされ、床へと下ろされたからだった。
横たえられて。覆い被さられて。先とは高さも角度も違う、だが矢張り…触れる程の間近で。重なる瞳。)
「……そういう事を仰る時。…レジネスさまは……とても、とても意地悪で。…けれど、優しくもして、下さいます。
ですから…わたしは、困るのです。…どうして良いのか。わからなくなって、しまいます、から。
……どきどきとして。胸が痛くて、目眩がして。…わたしが、わたしで、なくなりそう……に。なってしまう…」
(玩弄される娼姫たる事、公共めいた道具である事、それを。…言ってしまえば活かされている理由を、否定される事に。
心穏やかで居られないのは、当然かもしれないが。其処に熱を、快楽を…悦びを伴うから。
肯定されながら否定される。否定されるのに肯定もされる。何とも矛盾まみれで、けれど、拒む事など出来なくて。
…今宵もまた。そうやって、身体も心も、掻き乱されてしまうのだろうと。考えてしまえば…ぞくぞく、する。
僅かに背中を浮かせ、這い込む指先を受け容れて。その分近付かされる距離は、啄むような口付けを、ほんの少し長引かせた。
やがて離れてしまう、彼女の唇が。頬に、喉に、その先に…落ちていけばいく程に。
酒気の熱を、肌からも、刷り込まれる如く。口付けの下で、反り上がる肌に、熱ばかりが増していく。
色帯びて。熱帯びて。身動ぐ腰から臀部へ、腿へ…其処で逆行。ドレスを揺らして這い込む指先が、当然の如く、その場所に触れたなら。
きっと彼女の耳元で。柔く揺らぐ吐息を零す。)
「 ……、…っ。…ん…初めてでした。……もっと、余裕が有ればと。辺りを見渡せたならと、今でも。
けれど…とても。………とても、驚いて。そして…とても、嬉しかったと。 ……思って、います…」
■レイン・レジネス > くく、と喉奥で笑う声。困る、と抗議される事が心地よい──困らせている間は、その思考は自分のものだ。
そんな幼い独占欲を抱きながら、耳に掛かる吐息の音を聞く。
「どうして良いか分からない──とは言うけれど。君は絶対に、心の最後の一線を明け渡そうとはしない。
教えられたんじゃないんだろうね。本能か、そう生まれついてしまっただけか……。
身体は誰の手にも預けるのに、君はどうしても──」
どうしても、誰のものにもならない。
誰にも抱かれる玩具としての立場は一方で、誰に専有されるでもない事を示す。
自由意志でこそ無いのだろうが、それはある種の独立であり、だからこそ好ましい──欲しいと思う。
見目も声も、身体も、愛玩物としては素晴らしい。けれども最も少女の価値を高めているのは、その有様なのだと、女は思う。
……思うばかりで、何になるものでもない。
く、とまた笑って言葉を句切り、喉笛に軽く歯を当てた。
柔肌を朱に染める行程は、快楽の大小で言うならば然程のものでも無いと言うのに、無性に心地よい時間で、
いっそ夜が明けるまで触れるだけの口付けを繰り返しても良いとさえ心を迷わせたりもする。
けれども、腰を揺らし、息を濡らす少女の熱を間近で浴びている。平静のままではいられまい。
指先が探り当てたその場所へ、爪が掠める程度の弱い接触が幾度か。そうして声音の変化を聞く。
それから少しずつ──指の腹を当て、圧を掛けて、揺らして。戯れのような触れ方から、愛撫と呼べるものへと。
重ねた肌が熱を帯びる。きっと芯は、末端の指先よりもずっと温かい。
そこを、まだ内へは押し入らぬままに外側から、解し、火を入れて蕩かす、まるで隣で行われている恋人同士の交わりのような──
「……また、外へ出てみようか。あの時のように、辱めたり苦しめたり、そういうのじゃなくて。
特に何をする訳じゃなくても、街を歩いたり眺めたり……別に難しいことじゃないから、さ」
ふふっ──と、笑声が一つ挟まって。
「もちろんその後は……こういう事、するんだけど」
背に触れていた手が引き抜かれ──酒精の甘さが残る舌で指先を濡らす。
甘く変わった指が、もう片手を追って、ドレスの裾の内側へ。
先んじた手が秘裂を緩く撫で摩りながら、後の手は少し上。小さな肉芽へと伸ばされた。
其処には少しだけ意地悪く、最初から強く触れた。そうしたらこの少女はどんな風に鳴いてくれるのだろうと期待しながら。
きゅう、と指先に摘まんで押し潰しながら、少女の身体の、熱の度合いを探りもして。
唾液を塗り広げるように、ちゅくちゅくと秘めやかな水音を鳴らしながら、小さな振れ幅で秘芽を扱き立てた。
■リシェ > 「そういう…生き方、なのかもしれませんし…そんな生き物、なのかも、しれません。
…判らないので、どうにも…いえ、解った所で。どうにか出来るとは、限りません…けれど。
いいえ、そもそも…生きていると。言えますか?わたしは…」
(飼われて、使われて、それは。生かされているだけに過ぎないのだから。
自分で決めた事でない、というのは。誰かの物にならない、という一点だけでなく。その他多くに当て嵌まる。
だから、きっと。こんな風に、好意的に接されるのも。価値が有ると思われるのも。本来なら、違うのではないか。
自我を確立しきれないからこその、自分自身という存在に対する、肯定する事の出来無い感情。
それが、彼女に答える声を、揺らしたかと思えば。
きっとそれ以上に、更なる揺らぎをもたらすのは。彼女に与えられる快さ…其処になら、縋る事の出来る、生かされる理由。
仄かな笑い声に、耳下を擽られて。それだけで、ぞくりとした感触を、抱いてしまう所へ。
更に付け足されていくのは、新たな口付けや。堪えようのない指遣い。
直ぐ下の戸口、きっとこれも当たり前のように、彼女を受け容れるのであろう、雌の入口には。未だ触れて貰えないまま。
代わりに嬲られるのは、鋭敏な、神経の塊めいた場所。
尖り頭を擡げる芽を、執拗と言って良い程に、転がされて。潰されて。その場所が籠もらせる熱は、酒量による物…を。容易に上回っていく。
甘やかな刺激に、くんと喉を反り上がらせれば。押し当てられてくる唇へ、歯先へ。
自ら喉笛を差し出して、喰らわれにいく…そんな、無防備な様。)
「は……っ、ぁ…良い…ですね、とても… …んっぁ、く…
……あれが切欠で、少しずつ……少しずつです、けれど、わたし…知りたく、なった。…行きたくなったんです、外に…」
(確かに。あの時の外出は、とてもとても、余裕など無かったけれど。
それでも、貴重な時間だった。色々な意味で、切欠になって。今は小さな…けれど、無視出来ない変化を、少女に生んだ。
益体も無く、知りたい、という感情は。
つい今し方、生きているという事実をすら、肯定しかねた少女が。僅かばかりとはいえ、主張してみせる、意思だから。
…少し、眉を寄せる。別段、おかしな事を言ったつもりはないのに、彼女に笑われて。
……寄せ方が深くなる。そんな彼女の笑い声が。自分の言葉に向けられたのではなく、彼女自身の、次の台詞に繋がる物だったから。
………深まりは、尚強くなる…挿し入れられる手が、二つに増えて。内腿を掠めていった、指先の濡れた質感に。ぞくりと肌が総毛立つせいで。
ますます裾を持ち上げ、歪めて、二つの手が。すっかり下肢を占有してしまえば。)
「っひあ、っひゃっ…ぅ……!?
んぁ、…今度も…何を、されてしまうのかと。…想像出来ません、出来……ない分、余計に……
っは、あっ、…ぁ、ひぁ…ぁ………!!」
(あの時、彼女の屋敷で与えられたのは。全く未知の…空恐ろしい程の、快楽。
一瞬でも、思い浮かべてしまったなら。その瞬間を、見計らったかのように与えられた、更なる愛撫は。強すぎる程の快感になる。
漸く触れられた秘裂は、もう、しっとりとした湿度を帯びて。彼女の事を待ち侘びている。
先の刺激に、ぷっくりと充血した肉芽は、もう…二度目の。そして強すぎる指遣いに、とても堪えられる筈が無く。
堪らず、背の次は、腰が浮き上がる。絨毛から浮いて、小刻みに揺れ続ける。
濡らされて、扱かれて、剥き出しになる肉芽は。剰りにも、快楽に対して、無防備だったから。)
■レイン・レジネス > 自ら歯に晒される喉笛や、甘い声や、揺れる身体や。酒より余程早く頭を酔わせる、少女の全て。
目眩がする程の情欲に駆られて、両手の指は少女の其処を執拗に嬲る事となる。
唇は喉元に。だからその場所を目で見る事は無いが──腰が浮いて揺れているのは、視界の端に見えている。
手から逃げるのではなく、寧ろ押し付けるように、捧げるように動く身体は、長く調教を繰り返されたが故か。
そう思うとまた少し独占欲が首をもたげて来て、囁く声をも意地悪く変える。
「そう、それじゃ……私を楽しませてくれたら、ご褒美に連れ出してあげる。
私がやる事なら、誰にも文句は言わせない。二日だって三日だって、外を歩かせてあげるから──
だから君は、その声で、その言葉で……私をもっと昂ぶらせて、欲しいな……」
褒美として示す物さえ、結局は自分の楽しみに繋がるものではあるし。
褒美など示さずとも彼女はきっと、従順に喘ぎ鳴いて自分を喜ばせてくれると知ってはいるが。
それでも、要求して応じられる行程そのものを楽しむ為に女は要求する。
そうしながら──手指は動きを止めない。
指先を濡らす物が唾液ばかりでなく、少女自身の零す蜜までも混ざるようになって尚、両手は執拗に少女の其処を嬲る。
何をされるのか。怯え期待する少女の、だが或いは抱いているかも知れない予想を裏切るように──
珍しい事など、何もなかった。
身体の外側。秘唇を撫で擽り、陰核部を指先で扱く、ただそれだけを。だが、幾度かの交わりで知った勘所を刺すように繰り返す、それだけだった。
剥き出しの肉芽を指の腹が幾度も、幾度も、幾度も。充血し膨らんで、身体へ伝える快楽の度合いが増せば、指の速度もその分だけ増して。
或いはきゅうっと指の力を強めて膨らみを押し潰したり、引っ張ったりと攻め手を変えては見るが。
それ以上の事は無い。執拗に、的確に、少女の芯を指で弄ぶ。
秘裂の内までには押し入らずに、膣口の周囲をくるくると撫で回しながら、奥から滲み出す蜜を指先に纏って、くちゅ、くちゅと粘膜部へ塗り広げて。
その間に少女が、どれ程に身体を震わせようと──或いは果てて見せようとも、女は手を止めない。
達するのならばそれこそ降りてくる前に、もう一度、二度、三度と。蛇のように、しつこく。
ただの愛撫は長く続いて、少女の腰の下の絨毯が少しばかり色を変えた頃。
「床に這って、腰を上げて。……いつかしたように、犬猫みたいに、ね?」
何処かの宗教ではその姿勢での交わりを、獣の姿勢と蔑んで、罪とまで認定した事があるという。
冗談のような話だが、成る程──その姿は確かに、人よりは獣に近いのだろう。
腰を突き上げて下腹部を晒す姿勢。快楽を乞う姿。それを少女に命じながら──女は手を止めた訳ではなかった。
陰核を嬲り続けた指先が滑る。秘所からまた少し下。姿勢を入れ替えたのなら上の、もう一つの少女の〝使える場所〟に。
長時間の愛撫で濡れそぼった指は、二本束ねて押し当てられ、その穴へ割入らんとするだろう。
■リシェ > (目眩。此方はもう、実際に、それを味わっている。
丹念に、執拗に、彼女の指は止まらない。幾度も、幾度でも、肉芽を嬲り続ける。
浮き上がり、押し付けられていく腰は。本能的に求める仕草。同時に、従順に差し出す調教結果。
欲しくなってしまうのは、自然と人工、どちらでもあるのだろうが…だからこそ、相乗して、より強く。
止まらない刺激と。矢張り、意地の悪い彼女の声とに。次第に瞳は潤みを増して。)
「は…っ、ぅ……其処はお…仰られ…ずともです、けれど……っひっぅ、っぁ、ぁ…っぁぅ…!?
も…っ、止め、…と…め、られなっ…っぁひ、ぃぁ…っぁ、っ………!!
そん、なっす…ぐ、直ぐにっ、い、イっ、 ぁ、ぁ、っ、…っぁ、っ、ぃぁ、あ、 っぁぁぁっっ……!?」
(褒美の有る無し関係なく。受け容れる事は、確定済み。但し…今回は。返事すら、侭成らなくなりそうな程。彼女の行為は、容赦が無かった。
膨らみ、剥かれて、紅く色付いた肉芽への、徹底的な蹂躙が。長々と続く。
それこそ、その一点だけで、快感が膨らみきって、弾けて…絶頂するまで、追い上げられて尚。
淡い淡い、掠めるような刺激だけを、繰り返されて。狂おしい程に餓え、秘裂がひくつき、どろどろの蜜を滴らせて尚。
腫れ上がる程、潰される。引き延ばされる。抓られて、扱かれて、転がされては濡らされて。
漸く陰唇だけでなく、膣口にも触れられたかと思えば…矢張り、その先には進まないまま。
熱く熱く、焦れて解れて、口を開き、垂れ流しの蜜を零す、その場所は。引き続き、肉突起への責めに利用されるばかり。
与えられる行為その物は。過去、彼女に行われた物とは、似ても似付かない、一般的な…人間的な行為でしかないが。
それでも。蓄積と反復の過剰さは、充分に、非現実的。
あまりにも足りない、もどかしい、ようでいて。それでも、快感自体は過剰な程、詰め込まれる、矛盾に。翻弄される知覚や認識。
浮いた腰が戻らない、高まりきった性感が収まらない…達するまでに到った、絶頂感から。帰ってくる事が、許されない。
存分に喘ぎ鳴かされる喉が、強まる嬌声で、内から震えて。彼女の歯先を押し返す。
開きっぱなしの唇が、戦慄く度に、端から唾液を垂れ流す。
きゅっと細められ、また見開かれ、を繰り返す瞳が。もう堪えきれずに、幾つも涙の滴を、溢れさせてしまう頃…ようやく。彼女の手が止まる。
その頃には。両脚から下半身、尻肉に到るまで、蕩けた蜜に塗れきり。
大きく捲り上げられただけでなく、堪らず握り込んで、すっかり縒れてしまったドレスも。
とうとう、力無く落下してしまう尻に、敷いた形の絨毯すらも、しとどに濡れた在り様を見せて。
…濃い、濃い雌の臭いにまみれて、荒く呼吸を繰り返す、中。ぼんやりとした知覚に、彼女の言葉が降り注いで…)
「っぅぁ…ぅ、は…ぃ、レジネス…さま、…もぅ……わたし、もう…っっや、ぅ゛…!?
待っ、其処、違…ぁ……我慢……してるの、其処じゃ、な…ぃのにっ…」
(命じられるまま、獣の姿勢に。手を、肘を着き、腰を上げて…途端。再度指が触れたのは。
あまつさえ、あれ程焦らされていた挿入を、ようやく行われたのは。…待ち焦がれる場所ではない、もう一つの肉孔だった。
其方で交わるという行為も。当の宗教では、背徳だと歌われて。悪魔の方を崇める者達に、好まれているという。
勿論、少女が、悲鳴じみて声を引き攣らせたのは。禁忌や背徳だと考えるから、ではなく。
あれ程に擽られ、触れられて、そこから先をお預けされた、本来の場所が。更に置き去りになるからと……
此処を、彼女に求められたなら、どんな目に遭うかを。それこそ今まで、繰り返し。散々刷り込まれてきたからか。)
■レイン・レジネス > どれ程の時間を、ただ一点への責めに用いたのだろう。
身体を反らし泣き喘ぐ少女の姿は全く、望んだ通りの媚態だ。
ただ受け入れるばかりかより多くを望んで腰を浮かせ、愛液を溢れさせて、幾度も絶頂に達して。
けれども〝中〟にまでその快楽の手が及ばないのは──焦らしているというつもりは無かったのだ。
一点、鋭敏な箇所を、休む間も与えられずに責められ続ける少女の姿を長く見ていたかった。女の思惑はその程度の事だったのだが──
聞き慣れぬ言葉を聞いて、些か大きく目が開いた。
「……我慢、かぁ」
思い返せば確かに──快楽を我慢させるような事は無かった筈だ。過剰な程に注いで、与えて、狂わせて。そういう交わりだったから。
だからそんな風に、少女の口から更なる行為を、許容ではなく願うような台詞など聞いた覚えも無い。
心地よい驚きだった。獣の姿勢に変わる少女を見下ろしながら、ぞくぞくと震えにも似た愉悦が背筋を這う。
腰を掲げられて晒された箇所は、熱く蕩けて、解れきっていた。
絶頂の余韻にわななきながら、粘度の高い蜜を溢れさせて──俯せになればそのまま、絨毯の上に滴って。
軽く膣口の周りを撫で回すばかりだった愛撫にも、すっかり口を開いて、その奥への侵略を求める淫らな身体。
けれども指を宛がう先は、それとは異なる不浄の穴。人差し指と中指と、最も自由に動く指二つを束ねて、少女自身の蜜を纏った指が挿入される。
背徳の限りを尽くされただろう少女の身体。此処もまた、自分のみならず、多くの者に暴かれた箇所だと知るから──
優しくはない。軽く曲げた指の背、関節部で肉輪と腸壁を抉るように、外側への圧を掛けながらの抽挿が始まり。
「……ああ、リシェ。そんな風に私を喜ばせてくれたら……次に言う台詞は決まってるだろう?
〝何処に欲しいのかおねだりしてごらん〟ってさ……ふふ、古典的だけど一番楽しいよねぇ、こういうの……」
問わずとも、何処に欲しいのかなど分かっているというのに。敢えて望む芯には、強い快楽は与えず。
せいぜいが指を宛がい、軽く動かしてみるだけ。熱くほてった其処を外気に晒すように、ぐにぐにと柔肉を押し広げる。
この指が奥まで入り込めば──待ち焦がれた通りのものが突き刺されば、どれ程の快楽が訪れるのか。
そう期待をさせはすれども、与えず。与えられるのは後孔を穿ち広げる、より過酷な責め苦ばかり。
抽挿を繰り返す内に指がまた一本──薬指が添えられて挿入される。直径と圧が増し、内壁への摩擦が増す。
そして、その圧は程なく、ただの指ではあり得ぬ程の奥までへ届き始めるだろう。
女の身体の特異性。指の先が触手へと変じ、絡み合いながら腸内を遡上する。
先までの単純な往復運動に、複数の軟体生物が絡み合う螺旋運動が、複雑な収縮と延長が相まって、不規則に腸壁を掻き回す。
……我慢しているなどと、口を滑らせたから。お預けにしている分だけ、此方は容赦無く、ぐちゃぐちゃと。
ご案内:「王都マグメール 王城2【イベント開催中】」からレイン・レジネスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城2【イベント開催中】」からリシェさんが去りました。