2018/10/09 のログ
レナーテ > こういう時にどう答えればいいのか、どう話せばよいのか。
任せられた仕事の重みに、大人びた顔をするようにはなったが、プライベートに踏み込まれての誘い等、その範疇の外。
何か喋らなければと息を落ち着かせて、改めて彼を見上げれば、その思いが叩き伏せられる。

「……ぇ、あ」

元からそう告げるつもりだったのかも知れないと、察すればぽかんと口が開いた後、先程以上の羞恥に沈む。
早とちりの恥ずかしさに、先程以上に赤く染まりながら、薄っすらと浮かびそうな涙を隠すようにそっぽを向いた。
微笑みながらの冗談じみた言葉も、自身を気遣ってなのかもしれないが、余計に悪いことをしたようで居た堪れない。
何も言えずにいると、きぃっと二人が消えた扉が僅かに開く。

『私らの保護者って、組合長かレナちゃんだし』
『ピラフはいいから、二人で行ってきなよ? たまには可憐な淑女して、息抜きしなきゃねー』

こそっと隙間から顔を覗かせる二人は、楽しげにニンマリと笑いながらこちらを見やる。
何をというより先に、彼へ、よろしくお願いしまーす と元気に告げると扉は閉ざされた。
ぽかんと扉の方を見つめていたものの、クスッと困ったように笑いながら、目元に浮かぶ涙を拭いつつ、彼へと振り返る。

「どうしましょうか?」

二人の悪戯に少し大人びた苦笑いを浮かべつつ、問いかける。
嫌だとも駄目とも言わない、彼が冗談にするかどうかは、彼次第と。

ジュスタン > 驚いたように口を開いた後に顔を背ける少女の様子に失敗したと眉根を下げる。
やはり慣れないジョークなど口にすべきではなかったか……。
こう言った時、遊び慣れている先輩騎士なら上手くフォロー出来るのだろうが、女性とまともに付き合った経験もない身ではどうフォローしたらいいかも分からない。
ただ、冷や汗を掻きつつ少女の横顔を眺めていると不意にドアが開き幼い少女達が顔を覗かせる。

「……あまり大人をからかうものではないよ。」

面白半分焚きつけようとする少女達へと眉間に皺を寄せて見せ嗜めるよう、しかし、優しい口調で呼びかける。
もっともすぐに引っ込んでしまった少女達に聞こえているかどうか……。

「……ふむ、そうですね。」

さて、困った。
振り返った少女の愛らしい表情を眺めながら一つ嘆息を漏らす。
女性と二人きりでの食事など経験はないが、こうなってしまった以上断ってしまえば少女を傷つけることになってしまうだろう。

「では、改めてレナート嬢。
 お詫びにディナーなどいかがでしょうか?
 勿論、私がエスコートさせて頂きますよ。」

苦笑いを浮かべる少女へと、その手を取るよう右手を差し出し優しく微笑む。

レナーテ > 「ごめんなさい、あの娘達には注意しておきますので……」

会話がすれ違い気味になる最中、煽るような言葉をかけて消えていく二人に肝を冷やす。
冗談をいっていい相手ぐらいは分かって口にしているとは思うものの、それでも騎士団の人に言うには中々に綱渡りな発言だろう。
それでも、彼の言葉に安堵し、掌が重なり合う。
少しだけ鼓動が高鳴り、熱が戻っていくとコクリと小さく頷きながら目を細めていく。

「私でよければ……よろしく、お願いします」

緊張に強張った表情が崩れていき、年相応な笑みへと変わっていった。

ジュスタン > 載せられた少女の掌は柔らかく温かいだろう。
小手越しではそれを感じられないのが残念に思う。
思えば最後に女性に触れたのはいつだったか……。
件の先輩騎士に無理矢理連れて行かれた娼館だったか……。

「ん、んんっ。」

思わず思い出してしまった娼婦の柔らかさと目の前の少女を重ねてしまい、慌ててその妄想を振り払うよう咳払いをする。
出会ったばかりの年端もいかない愛らしい少女相手に何を考えているのだ。

「では、都合のいい日を団のほうへと伝えて頂ければ日程を合わさせて頂きます。」

淑女相手に個人的な連絡先を伝えるのも失礼と近衛騎士団へと言付けるよう伝え、名残惜しげに少女の手を離し立ち上がる。

「では、任務がありますので私はこれで。
 何かお困りのことなどありましたら、いつでもご相談に。
 もちろん、彼女たちへのお説教……というのであればいつでもお供させて頂きますが。」

これくらいのジョークは許されるだろう。
困ったような嬉しいような状況を招いてくれた少女達に釘を刺しつつ爽やかな微笑みを残し背中を向ける。
再び任務へと戻った騎士は決して振り返ることなく、真っ直ぐに前を見つめ……ただしピラフの包みを抱えたまま重い足音を残し去っていった。

レナーテ > ペンと銃、どちらも違う意味で手を酷使する仕事だが、手入れの行き届いた掌はしっとりとした肌触りと共に、柔らかに彼へ熱を伝えていく。
男を知り尽くし、魅了する娼婦のような艷やかさは無いが、爪先も綺麗に丸く整えられた手は、根の真面目さがそのまま出ていた。

「……?」

咳払いする様子をきょとんと見つめながら、小首をかしげると前髪が淡く流れていく。
染み込んだシトラスの香りも、娼婦たちの様な甘く濃密な香りと異なり、柑橘の様に甘酸っぱく、直ぐに消えていくもの。
重ねるほどに真逆かもしれないが、それでも浮かべるなら…自身の本性、真面目さの裏に隠れた苛烈さを感じ取ったのかも知れないが。

「はい……では、後ほどお伝えしますね?」

立ち上がる彼を見上げつつ、離れていく掌。
重なっていた小さな手を自身の胸元へ抱き込みながら、重ねた冗談にクスッと微笑む。

「はい、その時は……ふふっ、あまり二人がかりでお説教すると悄気げちゃいますから、やめておきます」

彼の優しさに硬かった口調が少しずつ解けていく。
背中を向ければ、それと と小さく呟いてから笑みを深めながら唇を開く。

「お仕事、頑張ってくださいね?」

ありきたりな労いの言葉と共にその背中を見送ると、金属の足音が消えていく。
ほぅと熱っぽい吐息を溢した後、ニヤニヤと覗き込もうとする少女達の気配に気づけば、勢いよく派出所へと飛び込み、暫しの喧騒が響いただろう。

ご案内:「王都マグメール 王城2」からレナーテさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城2」からジュスタンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城2」にジュスタンさんが現れました。
ジュスタン > 灯切らさぬ王城の中とて城下を見渡すテラスは夜の闇に包まれる。
見下ろせば人々の生活の証が点々と灯っている。
そして、空を見上げれば……。

「美しいな……。」

今にも振って来そうなほどの満天の星空。
深夜の担当への引き継ぎも終わり、最後の見回りとして白銀の騎士はテラスにて星空を見上げていた。
今日も何事もなく一日が終わる。
それが当たり前の幸せというものなのだろうと思う。
故にその当たり前を守る為、身を粉にして働くことこそが騎士の幸せだった。

ご案内:「王都マグメール 王城2」にアシュリーさんが現れました。
アシュリー > 父に連れられて初めて訪れた王城。
国王不在なれど、多くの貴族や王族が王国の未来を作るために日夜政務に励み、そして――

「自らの覇権のために、暗闘を繰り広げる魔窟……なんて思えないくらい綺麗なお城ですわ」

つい先日、正規軍への内定をもらったばかりの新米騎士は、
保護者が同じ派閥の貴族と会合している間にふらりと抜け出して城をうろつき、

「ところでここはどこですの……?」

見事に迷子になって、半べそで星空の下のテラスに迷い込んだのだった。

ジュスタン > 星空を見上げていれば、夜中にも関わらず騒がしい声が聞こえる。
振り返ればそこには眼鏡を掛けた少女の半べそ顔。
どこぞの貴族の子女だろうか、どうやら道に迷ってしまった様子。

「道に迷われましたか、お嬢さん。」

かすかに鎧の金属音をさせつつ振り返り、極力怯えさせないよう涼しげな微笑みを浮かべて見せる。

アシュリー > 「ひぃっごめんなさい曲者ではありませんので何卒処断だけは!!」

流れるような土下座。
王国の中枢でフラフラと彷徨っていれば、間者か何かと間違われて切り捨てられても文句は言えまい。
なので詫びる。すぐ詫びる。
相手が怯えさせないように浮かべてくれた微笑みを見る暇もない、熟練の業による速やかな土下座であった。

ジュスタン > 静止する間もなく熟練の剣士もかくやと言った無駄のない動きで平伏した少女の姿に思わず目が点になる。
一体この少女は何者なのか……。

「ん、失礼。怯えさせてしまったか?
 私は近衛騎士のジュスタン・エンフィールド。
 貴女はどちらのご息女かな?
 貴女が何も悪さをしていないのであれば咎めることはしない。」

少女の傍へと歩み寄り、片膝突いてしゃがんで床に伏した頭を少し困ったような表情を浮かべ見下ろす。

アシュリー > 「こ、近衛騎士さま……」

ちら、と顔を上げて表情を伺う。だ、だいじょうぶかしら。疑われていない?
ゆっくりと頭を上げて、すっと息を吸い

「アシュリー=ロンディニアと申します。今日は父に同道し登城いたしました。
 その、お恥ずかしいお話なのですけれど、好奇心で王城を散策していたら道に迷ってしまって……」

いい歳をした騎士が迷子、というのはいくら無抵抗に土下座出来ても恥ずかしいもの。
頬を染め、目を逸しながら、事情を説明する。

ジュスタン > 一応騎士服を着ているのだから叙勲はされているのだろう。
もっとも……見た所家名による叙勲のようだが。

「なるほど。ロンディニア卿のご息女だったか。
 この城は広く入り組んでいるからな、慣れぬうちは迷ってしまっても仕方ない。」

頬を染めて事情を話す少女の顔をじっと見つめ慰めの言葉を与える。
嘘を言えるような器用さを持ち合わせているようにも見えない、迷子というのは本当のことなのだろう。

「しかし、騎士足る者、王家以外に簡単に平伏する者ではない。
 それにせっかくの愛らしい顔がそのように地に伏せていては台無しだ。」

我ながら気障だなと思いながらも年頃の少女をいつまでも平伏させているわけにもいかない。
少女の眼の前にそっと右手を差し出し、その手を取れば引いて立ち上がらせる。

アシュリー > 「父をご存知ですの……?」

なら、安心だ。
ロンディニアの家名を聞いて露骨に嫌な顔をしない軍人は、大抵いい人だもの。
それに、この方も視線を合わせようとしてくれる。とても優しそうな方だ。
安心感を覚え、迷子も仕方がないと肯定してもらえば、緊張感はふわりと融けた。

「す、すみませんエンフィールド卿。つい反射で身を丸めてしまう癖が……
 …………ふえっ」

手を引かれ、立ち上がって。ぽんやりと心ここにあらず。
だって、こんなにも「騎士然」とした殿方から、愛らしいなんてお世辞を頂いたこと、ないのだから。
師団の先輩騎士は短い付き合いながら、どちらかというと傭兵のようなノリなのだな、と思っているし、
実家の騎士達は幼馴染や兄、おじのようなものだし。
お兄様に至っては意地悪しか言わなかったし。
故に、美丈夫の気障なセリフはすんなりと乙女心に突き刺さった。

「ふ、ふわわっ、もう、お、城内は危ないって本当ですのねっ!」

からかわないでくださいまし、と過剰反応しながら、ぶんぶんと首を振る。

ジュスタン > 「ええ、何かとお世話になっている。
 もっとも貴女のようなご息女がいるとは知らなかったが。」

立ち上がらせた少女の手を取ったまま、緊張が解けた様子の少女を出来るだけ怯えさせないよう微笑みを浮かべ見下ろす。
何せ職務上何かと相手を怖がらせてしまうことも多い、気をつけなければ。

「ん?どうした?
 何か危ない目にでも遭ったのか?」

ぼんやりとした表情で少女が口走った「危ない」という言葉に職業柄過剰に反応してしまう。
少女の手を取ったまま、思わず身を屈めて顔を近付け、真剣な面持ちで真っ直ぐに眼鏡の奥の瞳を見つめる。

アシュリー > 「き、貴卿が危ないのですわ! 不用意に婦女子をときめかせるなど、ええ!
 貴卿の振る舞いは乙女心ジェノサイダーかなにかですわよ!!」

何言ってんだこいつ。
素面なら自分でもそう突っ込んだであろう意味不明な供述をしつつ、
合わせられた視線から目を逸らせなくなる。
整った顔の異性に見つめられれば、男性経験など全くゼロの箱入り娘が沸騰するのは至極明快。
緊張なのかなんなのかよくわからない、顔に血が上る感覚にクラクラして後ろにひっくり返りそうになる。

ジュスタン > 「む……。」

少女の捲し立てる言葉に思わず言葉に詰まる。
これが今の若い女子の王国語なのだろうか。
まだ若いつもりでいたがほとんど理解出来ない。

「す、すまない。
 私が何か……失礼をした……か?」

何か気に障るようなことをしてしまったのだろうか。
倒れそうになる少女の背中に片腕を回し支え、申し訳なさそうに眉根を下げ、じっと見下ろす。

アシュリー > 「紳士ですわ……!」

客観的に見て失礼を連発しているのはどう考えてもわたくしなのに、
この騎士様は心から自らに理由を見出そうとしていらっしゃる。
紳士、そして騎士だ。わたくし自身もこの方のような優しい騎士に憧れたもの。
殿方の腕で支えられながら、その申し訳無さそうな表情にすっと正気が戻ってくる。

「い、いえ。その、殿方にはあまり慣れていなくて。
 近くで目を合わせたり……するのは、恥ずかしい、ですわ」

もじ、と恥じらい正直に告げる。
整った容姿の殿方にあんなに近くで目を見つめられては、恥ずかしいのだと。

ジュスタン > 「紳士たれとは常日頃心掛けてはいるが……。
 そう直接言われるとさすがに照れるな。」

少女の言葉に苦笑を漏らしつつ小手で覆われた指で頬を掻く。
どうやら落ち着いた様子に安堵しつつ立ち上がり、少女の背中から手を離し涼しげな微笑みを向ける。

「む、そうだったのか……、それは済まない。」

人と話す時は目を見て、それが当然と思っていた騎士は困惑しつつも少女の瞳から視線を外す。
しかし、目を見てはいけないとなると一体どこを見て話せばよいのやら……。
困ったように視線が少女の身体のあちこちへと向けられる。

アシュリー > 「分かっていただければよいのです……」

ほ、っと一息。
男性と目を合わせて、というのは斯くも難易度の高いものなのか。
余の伴侶持ちの女性に内心で密かな称賛を送る。
それはそれとして、だ。

「目を見られると恥ずかしいと申しましたが、そんなに身体を見られるのも……」

身体を這い回る視線にきゅ、と無意識に我が身を抱く。
幸いにも服を透かそうとするような気持ちの悪い視線では無いが、それでもなんだか落ち着かない。