2018/08/15 のログ
芙慈子 > ――――やがて視線の先から靴音が響き、王国軍人が訪れる。
今までそういった類の人間とは接した経験がなく、興味を示した少女は緩やかに笑った。

行われたのは尋問か、拷問か。それともそれ以外のなにかであったか。
全ては地下にて秘匿とされ、明らかなことは翌朝には牢には誰の姿もなかったということ。

ご案内:「王都マグメール 王城/地下牢」から芙慈子さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城2」にロゼさんが現れました。
ロゼ > ―――その夜はまあ、酷いものだった。
数々の武勇を持つ将軍の所望だと人づてに聞き、この晩直々に求められた。彼の家業はワインと葡萄果樹のなりわいでも有名である。女は大の果樹好きで、また葡萄は格別に嗜好のそれであった。
葡萄が好きだと言うたったそれだけの理由で男をかいなに抱くことにした女は、つい数時間前の自分達の”ありさま”を思い出しては、ただただ苦笑するしかなかった。

王城に点在する大理石で造られたバルコニーテラスの一つ。鳥たちがかよわす朝のさえずりと緑の木漏れ日に愛された其処は、絹のようなカーテンを捲った先にある。
バルコニーのてすりから周囲の装飾さえ大理石で拵えてあるのだという。
冷たい手触りのそこに両腕を置き、やや前のめりに凭れかかる形で頬杖をついた。
寝乱れたブロンドが手摺のそこここに散れる。

ロゼ > 征服欲や嗜虐欲というものがどういったカタチで、どういった方向に発露し、どういった作用を齎すのかは男達の肥えた嗜好によりけりだと、いくつもの閨で随分と昔に知り得ていた筈。
それこそこの大理の小さな石を指で愛でる代わりにと詰められたことだってある。今さら多種の風変わりで奇妙な性癖に目を丸くし驚くほど性愛に無知な自分ではない―――なかったつもりでいた。

「 ―――― はーぁ。 せっかく好きだったのに。 」

ずるずると手摺に垂れていく額がやがてこつりとくっついた。皮膚に伝わる冷たさが未だ起き抜け然とした頭にややばかり心地良い。
将軍の伽は最初はとてもロマンティシズムに満ちたもので、女が好きだと言った葡萄の房を華奢な硝子の果樹籠にめいっぱい載せ、甘ったるい言葉とともに、剣を握るだけが能である筈の節くれ立つ指先でわたしの唇に葡萄のつぶを運んでくれた。
寝台に転がされてからも、馬鹿みたいに繰り返される愛すべき賛辞と求愛でいくらもを濡らされた。

だがしかしそのあとである。
自らが間引きや水やりの世話さえするというあの葡萄の房を用いられ、ぷつとちぎった大粒のそれらを、先ほどのように上の唇に食べさせるでなく彼が発露したその性のかたちとは―――。

―――すすればまだ葡萄の汁の味がするのではないか。
普段はささやかに酸味のあるそこも、今ならきっと熟れた葡萄の薫りがするはず。

ご案内:「王都マグメール 王城2」にコルガナさんが現れました。
コルガナ > バルコニーテラスに続く通路で幾つもの足音が聞こえる。最低でも4つ
一つは足取りは比較的ゆっくりしており、そのほかは軍人の歩き方と堅いブーツの音が響く。
通路から姿が見えるのは遠くで、3人の黒い軍服を着た男達を伴い彼らが手渡す書類を
確認しながら歩いている男がいる。

『都市内での鍛冶稼働率は2割ほど上がっている状態です』
「10日続くようなら鉱石の出荷は武器製造の依頼を優先するように」
『はい』

続くもう一人の軍服が小さなリストを手渡すと、男は万年筆で何かを書き込み
軍服達に分けて手渡した。彼らは一つ敬礼で返すと踵を返して外に向かい
バルコニーテラスから見える外で馬車2台と待機していた数人の兵士たちにリストを
静かに見せ、隊長各とおぼしき男が指揮を執ると、馬車は都市の方へを向かって行った。

都市内の流通管理に関する書類を脇に抱えるとバルコニーテラスに男もゆっくりと
向かい、銀製の紙巻き煙草入れから一本の煙草を取り出すと斜口にくわえ、火打ち石で着火…

しようとしたところで、憂鬱そうにする容姿の整った女性が目に入り、暫くの沈黙の後
咥えていた煙草を煙草入れに戻し、そのまま午前中の王城の様子を静かに眺めていた。

「………」

ロゼ > 俯くと自分のブロンドと大理石の柵で視界の殆どがふさがれたが、その隙間より見えるいくつかがある。
蹄の鳴らす馬――荷馬車と、鎧をめかし込んだ男たちの姿だ。朝からご苦労なことである。薄紫色のまなこが去っていく馬車の背をぼうと見つめること暫し。

―――かちり。

小気味良く響くあれは石と石をぶつけた音か。そういえばあの男も葉巻に火をつける時に使っていた。
一度寝転がると中々起きないと朝の弱さをはにかんでいた癖、なんだもう目が覚めたのかとか、朝起きて傍らに転がっていない自分を探すほど律儀で情愛深い一面を持ち合わせていたのかとか、種種の思考を織り交ぜてゆっくりと頭を持ち上げた。
まだ駄賃の金貨を貰っていないし、葡萄のそれを除けば彼の床はまんざらでもなかった。もちろん、葡萄のひとつぶひとつぶに及第分の加点を掻っ攫われてしまったけれど。

「 …―――― なあに、もう葡萄はおなかいっぱいよ。 」

とは、あの男だと信じて疑わず後方へ振り返りながらの戯れ言だ。
まつ毛と目蓋の重量で重たい瞳を持ち上げながら、はたと視界に写したシルエットに空を弾く瞬きを数度。
見当をつけていた男とは違うが、この男は知っている。

「 あら大公様だったの、 ごきげんよう。 」

位の高いお方に相対するは寝起き然の抜けた格好だが、女は全く気にしなかった。まるで久しぶりの友人にでも会った時のよう、軽々しい口調は不躾の非難を免れないだろうか。

コルガナ > 挨拶の声が聞こえる。遠く王城から見える景色を眺めていた男はゆっくりと
彼女の方に目線を向けた。細く切れ長な三白眼ではあるが、物静かな様相を呈している。

「…………………グランデの侯爵家」

男は僅かに襟を直した。貴族連中とは異なり何の飾り気も無く地味だがかなり整えられ洗練された黒い政治家らしい衣服を身に纏っている。対する相手の女性は寝起き姿特有の僅かな衣服の乱れは残っていたが、この時間でも寝起き姿で王城内をやり取りしている姿は決して珍しくはない。それよりもふと【葡萄】と呟いていた事だけが僅かに気になった。特段込み入った話をする義理はお互い無いのかもしれないが、男は早朝の仕事の提出後、議会や部下からの結果を待っている状態であり、ココで話さないとしても、では何をするのかと言われれば特にする事も無かった。

「ごきげんよう…確かに甘い香りがしているなとは思ったが…その様子では随分葡萄を召したようですな」

随分と食べた割には、何だか少しうんざりしたような表情をしている非常に顔の良い女性。
元より葡萄が好きでなかったかもしくは、趣味でない【食べ方】をしたかのどちらかだろうと
とはいえ彼女自身にも彼女なりにこの業界での生き方があるハズである。
態々話題を口にはしなかった。

物憂げな美しい女性は対人する位に見合う対応ではなかったが、雰囲気や僅かな立ち居振る舞いを
見る限り、決して無礼という訳では今の所なさそうでありコレもまた男は気にしない。
再び、タバコを取り出し、しなやかな指が葉巻ではなく紙巻きたばこを挟む

「………一服、宜しいかな?」

ロゼ > 控え目だが決して品を損ねない。身に纏うものの上質さから身分を推量るのは無礼といって甚だしいが、そういった観点から人のくらいを量るのは最早爵位ある家者の癖だ。
振り返るついでに身を返してバルコニーへ背。寝着に羽織、おまけに髪は乱れている。そんな格好で淑女が織りなす辞儀に変えたのは、軽く膝を折っての目礼。
”彼” この大公様にまつわる噂のひとつふたつは、どれも身の毛のよだつ話でいっぱいであった。女とて数度社交を跨いだ身であり、琴線に触れてはならない人物のいくらかは心得ていた。

「 もうお腹いっぱいだわ。 食べ過ぎって良くないのね、もう見たくもないくらい。」

どの腹に収めたかは、幾ら女とは言えこの御方の耳に通さんとするほど無粋で無遠慮ではない。
普段とは違って化粧気の無い顔を苦くほころばせ、そつと背もたれに背中を預ける。
どうやら紙巻きの煙草を拵えているらしい。手慣れた手つきで葉を巻く様子を静かに眺め、紳士然と気遣いの問いかけににこやかに頷いた。


「 ええ、――――――――― ひとくち頂けるなら。」


こともあろうに大公様の所有物をせびる口ぶりは、相変わらず悠々として穏やかに。
相手が一服する条件に差し出した一口は、確かに「一口」と言った。一本ではない。
男の黒いうわさを耳にしていながら物怖じせぬこの振る舞いは、愚かと果敢で紙一重であろう。

コルガナ > 男は彼女の立ち居振る舞いを見た。そして経歴もまた男も、彼女の噂を挟むのと同じぐらい知り得ていた。
卑しいとされる仕事にありながら礼儀があり、清濁巧みに織り交ぜる人物に写る。
自分の仕事と生きる有り方に自信をもって振舞える素振りに、男はやや好感を持ったのか
切れ長の三白眼が少し開き、物静かな様子に僅かな穏やかさを示した。

「富裕地区の肉塊にもそうして体調の変化に気付くだけの教養が欲しい物ですな」

位に反した、やや乱暴な皮肉を彼女以外の何処かに飛ばしながら
着火した紫煙を胸に吸い込み、ゆっくりと上に吐き出した。続く彼女の言葉には
煙草を取ろうと胸元に手を当てたが、やや意味合いが違うように感じた。

「……………」
一口、と言った。男は不思議そうに彼女を一瞬だけ見たが、特に面食らった様子も無く
冷静に自らが吸っていた煙草を燃え先を自らの掌の方に向けながら
何となく彼女に差し出した

ロゼ > 静謐を体現するこの男でも冗句は言うのか。聊か刺激の強い皮肉も女の腹を擽って笑みを零させるだけで、何ら不愉快なものにはなり得ない。というか酷く同感した。ふっと笑みを噴き零しながら肩をすくめて見せる。

「 大公様は、そういった”お肉”を捌くのがとても御上手だと聞いたわ。 」

噂を拾い上げて返す女の口調は彼のそれをまねて柔らかい。小首を傾げて是を求める仕草の終わり、――ふう、と空に吐き出されたアジサイ色の煙を此方もまた浅く吸い込んだ。
上等である――それもその筈か。彼が懐に手を遣るのを止めて、女の悪戯の断片に触れ得たらしく煙草を指先に持ち直した仕草を見るに、―――耳を塞ぎたくなるほど凄惨な噂の火元へどうしてか近寄りたくなった。

一歩二歩とヒールを鳴らして、近づけば彼の上背を十分に体感できる懐の位置にまで。
しなやかな指節に挟まれた煙草の先に、金髪を耳に掛けながら背を追って唇を寄せた。
男が先に口を付けたのを全く気にせずに唇で食み、ほんの浅く息を吸う。たちまち鼻に抜ける甘くも苦くも感じる紫煙は口腔に捉えたまま、ちう、と尊いお人の指節に唇を添えて一口分の礼とした。
下賤と取られても詮無い。いやしい女だと彼に捌かれる肉の一つになったとしても文句は言えない。だが、そうならない気まぐれの確証があった。
まだ顔は上げず、やや俯いて彼に掛からぬように紫煙を吐く。

「 ―――ごちそうさま。 」

コルガナ > 「あぁ、特に豚肉に関しては造詣が無い事はありません………【傲慢な豚】なんかは特に」

男は珍しく口角を僅かに上げ、微笑んだ。身分は関係ない、胸張って生きる豪胆な人間は嫌いではなかった。
指先には思わぬ唇の柔らかさが伝わると、穏やかな表情のまま僅かにソレを噛み締めるように見える
そう言った様子で男は僅かにその目をさらに細めた。

「ただ、どういう訳でしょうな…たまたま残忍な事故に巻き込まれるのです、私の部下が近くにいる所で」

男の醸し出す雰囲気は暑い夏の午前中にも関わらず、ひんやりと冷え渡るようだった。
ただし、決して良くない感情をくすぶらせている訳でもなく。物事の知識に対して旺盛で
礼儀をわきまえ、豚小屋の中で転がる肉塊を幾度も冷ややかな目で眺める目の前の女性には
自らが捌いた(と、噂される)腐肉とは違い親近感を感じ、その男の機嫌は決して悪いものではなかった。

彼女の噴く滑らかな支援を小さな三白眼が僅かに目で追うと、一口の紫煙の礼に
男は目を一瞬閉じ、頭を僅かに下げる

「舌に適ったようで幸いですな」

ロゼ > 肥えた豚は美味いものだが、捌いた包丁は洗いづらい肉脂でねばつき汚れることだろう。
指に触れて数拍の間を置き女は顔を持ち上げた。背を起こして大公を見仰ぎ顔を傾ぐ。気のせいだろうか、いつ眺めても間一文字であった唇の端が、柔らかく上がっている気がする。
ともあれ、口で触れるなど無礼だと切り捨てられなかったのは幸いである。

「 ―――いつだったか、あたしと寝た男が馬車で挽肉になったと聞いたわ。 」

残忍な事故と言えば、先週のこと。時にゲテ物を喰いたくなる時がある。父の代より贔屓だった貴族だったということもあって、普段の上質な味覚を穢してまで呼ばれた娼館で相手をした。
その帰りの事だという、挽き殺されたのは。従者と一緒だったというから死に別れの道すがらは寂しくなかったろうが兎角、それが純然な事故であろうが、誰かのおもわくの果てであろうが、女はふと気になることがあった。

「 ―――あたしも”ああ”なるかしら。 」

とは、あの不運な事故とこの男の何がしかを直感的に結びつけた女の、一抹の憂慮である。
目当ての豚でとどまれば良いが、豚の足跡のついた小屋さえ焼き払ってしまいそうな残忍さの断片をほんの少し嗅ぎ取って、切れ長の眦で男の輪郭を撫ぜた。

コルガナ > 「……………………………」

男は表情は変わらないが、無言で彼女の方を見ていた。彼女の唇が重なった煙草の吸い口を迷う事無く
咥えれば胸に吸い込み、僅かに開いた口から紫煙が昇るのに任せて頭上に煙が昇っていった。
どういう出来事だったかと目を少し上げ、人差し指を上唇に乗せるようにして思い出すようなそぶりを見せる。

「あぁ、先に起きた不幸ですな。私が知っているのは新しい馬車の為の調達と馬の怪我に治療費がかかったという事だけです。」

疑惑に対して、非常にソレらしいともいえる政治家らしい返答だった。
それも普段と比べて非常に分かりやすい物であり、それは好感を持ち気に入った相手への
彼なりの気の赦し方だった。男の吸っている煙草はかなりの長さまで灰が燃えているというのに
非常にもろい煙草の灰は男が吸う煙草からは全く落ちていなかった。
そして、吸い口近くまで、十分に吸いきると、内側に銀紙を貼り付けた袋の中に煙草の吸殻を捨て
再び懐にしまい込んだ。

「さぁ、幸も不幸も神のお召しぼしですからな…まぁ私はあまり神を信じてはいないが」
男は一つ笑いかけると、懐中時計を確認する

「時間も良い所なので私はコレにて仕事に戻る事にします。良き所でまたお会いできると良いですな」

ロゼ > 纏う空気ばかりが穏やかな、酸味のある遣り取り。じりと痺れるような緊迫とアイロニカルな構図を好いた女の嗜好が静かに鬩いでいた。
それが演技張りのものであれ、どうであれ、端整な口元に指を乗せる仕草だけ切り取れば―――愛い男そのものであるのに。

「 死んじゃったからまだお金頂いてないのよ。 …でもまあ、”それ”で。 」

それ、とは一口頂いた煙草のことだ。並みの代物ではない。何しろ大公が先に口を付けたものだ。彼は笑ってくれるだろうか。
器用に煙草を吸い遂げるのを瞬きもせず見つめた。不思議で、ゆかしい気持ちにさせる男だ。しまわれていく吸い殻の行方は追わず、いつの間にか固くしていたらしい肩から力を抜き、まだ紫煙の薫りがする吐息を吐き零してはにかむ。

「 あら、あたしは信じるわ。 大公様。 」

神を存在を、ではない。敬虔な信心深さは母の腹に置いてきた。
あいにくと自分は時計を持たないから正確な時間は分からないが、日のぬくもりを感じるに恐らくはもう昼頃だろう。
再び控え目に膝を折って礼をなし、あとは娘らしくおもばゆい笑みを浮かべた。

「 心待ちにしておりますわ。 」

コルガナ > 「おや、随分と計りに叶わぬ利を私も授かった物だ…」
このやり取りの間で一番男が分かりやすく笑った。だが一瞬だけ全く笑わない非常に冷たい目で
自らが唇に置いていた人差し指を見ていた。察してやり取りするこの会話の中で
自分が代替わりを払うとは、【ソレ】が自分に関わりがあるのを相手もきちんと察している
という事が分かるからだ。

礼を向け、可愛らしい笑みが向けられれば、男も歳より熟した
落ち着いた笑顔を向けて一つ頷き

「それでは、またどこかで」
彼女に背を向けて通路の方へ向かい歩いていくと、柱の傍で最初に見た黒い軍服達が待機していた
男は軍服の男達を伴い、仕事の書類と手帳を歩きながらだとうのにせわしなくやり取りしながら
王城の奥へを消えて行った

ロゼ > 異性のくちびるなどがこの男の食指を動かしうるものではないと、なんとなく分かっていた。彼はもっぱら奸計と謀の円卓でまつりごとの匙を振うを良しと人なのだと。
だからこそ可笑しかったのだ。彼に、彼のはかりごとの仕業だと言外に言及する形で命知らずに戯れた自分が、とても。

「 どうか良き日を、大公様。 」

女は、だがしかしただの女である。柱の陰に従者が控えていることを知らない。ただ、去りゆく男の背を恭しく見守るだけであった。
――――足音が遠のいて暫く。ふっと体の力を抜いてすぐ近くの壁に凭れかかった。体中に籠っていた吐息を大仰に吐き出し、ふくよかな胸のふくらみに手のひらを当て、そっと首筋をなぞり上げる。
大丈夫だ、まだ首は繋がっている。

「 …―――― あたしもばかね。   …だって、 」

死地は時折甘く狂おしく匂い立つ。馬鹿と自分を嗤いつつも、些かも反省していないような唇ですぐに良いわけの前置を置き、絹の天幕を捲って通路へ躍り出た。
ふと振り返ると日差しは間南を下りつつあったが、気にはしない。


” いいおとこだったんだもの。 ”

女がこのバルコニーで残した最後の独白がそれである。

ご案内:「王都マグメール 王城2」からロゼさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城2」からコルガナさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城 晩餐会」にルフェリアさんが現れました。
ルフェリア > 「はー、最悪」

晩餐会でうんざりしたように呟くルフェリア。

先日、さる公爵家の令嬢を、そうとは知らずにプールの地下倶楽部で思いっきり陵辱した事が父・グラッドストン大公にバレた。
大公は烈火の如く怒り、お小言をくらったというわけだ。

「ったく、あのクズ親父とっとと死ねばいいのに……」

ムダに健康な父を罵りつつ、ルフェリアは晩餐会に目を配る。
自分と同じような腐敗貴族ばかりの晩餐会。
目を見張るような馳走と、歓談の声。それに下品な嬌声や水音。まったく、王宮の腐敗を凝縮したような場所だ。

「ま、そういう場所なんだから仕方が無いよね」

ルフェリア > そもそも彼がこんな悪行を続けていられるのは何故か。
全ては父であり、貴族院に対し多大な影響力を持つ父・グラッドストン大公が、彼の悪事を隠蔽しているからだ。

他に子の無い大公にとって、ルフェリアは王位継承争奪戦の大事な切り札だ。ここで無くすわけにはいかない。
そしてこの男は、それを理解し、利用し、思うが侭に振る舞っているというわけだ。

「あーあ、にしても退屈。もっと嬲り甲斐のある子はいないのかなー」

娼婦なんぞ嬲っても殺しても、もう何も面白くない。
どうせクズだし、金さえ出せば何処でも股を開く連中だ。そんな奴らを嬲るのはもう飽きた。
彼が求めるのは、先日のあの少女のような――

「はぁぁ、またバフートで適当なのでも見繕うかなぁ」

ルフェリア > 結局良い獲物にめぐり合えず、不機嫌なまま帰宅。
ご案内:「王都マグメール 王城 晩餐会」からルフェリアさんが去りました。