2016/11/16 のログ
クラーラ > 「……」

問いかけに返事はない。
その合間も常人からすれば価値のないガラクタのようにも思える品が出てきたり、扱いに困りそうな珍品が出てきたりと、普遍的な世界に飽きた者達だからこそ求めるような、変わったものが並んでいく。

「……斥候、とか…暗殺者、とか…そういうのじゃないななら、逃げるの大変ね」

窓の外を見てと言葉を続ける合間も、舞台の方へと視線を向けたまま。
外を見れば価値のある品物が姿を見せ始めたせいか、警備が厳重になり、兵士達が歩き回っている。
余程上手く逃げないと、彼等に見つかりかねない状態。
そして再び、舞台に上がった商品に貴族達の歓声が上がる。
妙齢のエルフと、そのエルフによく似た顔立ちをした幼いエルフの二人組だった。
殆どすけていそうな服を纏わされ、手枷と首輪で自由を奪われた二人が、強引に引きずり出されていく。

『本日の目玉商品ですかね、エルフの母娘です! 娘の方はまだ手付かずですし、母親の方もまだ若く、一人しか産んでいないので遊び方は色々。 これは…そうですね、1000ゴルドぐらいからいきましょうか!』

早速掛け声とともに入札が繰り返される、流石にその様子を見ることは出来ず、再び視線を落とした。

ノーガルト > 「……さて、どうかな………?」

(『あの程度の兵士、レベル1で十分だな…』と、ダインが言う。しかし、ノーガルトはその言葉を右から左に流した。真後ろで、此方に話しかけてくるものがいるなら、ダインに言葉を投げるべきではない。)

「大変だと思うなら、助けてくれると嬉しい限りだな。たとえば、あんた専属のボディーガード、とかな。」

(勿論、安全に逃げられるならば逸れに越したことはない。苦笑などしながら、次のオークション品を眺め、そしてまた興味をなくして、柱の影で腕を組む。)

「しかし……貴族の道楽というのはとことん悪趣味だな…一体どこから引っ張ってきているんだ、あの奴隷。」

(オークションの目玉商品と銘打たれた、若い母子が鎖につながれてやってくる。エルフはこの国でも希少価値が高い、しかもスタイルもそこそこいい。)

『……なあ、ノル……』

(再び、ディンが憤りの声をあげる。気持ちは分かるが、ここは抑えて欲しいところだ。肩を竦めながら、軽く黄金に輝く柄を軽くニ回たたいた。)

クラーラ > 「……一つだけ言っとく、貴方が殺しをすると…剣を抜かないと、いけない」

やはりどう見ても忍ぶ動きをする者には見えない。
余裕があるとすれば、正面突破ということだろうか。
流石にそうなれば…王国を守る者として刃を抜かないと、後で酷い文句を言われる。
文句だけで済めばいいが、変なことを求められたら最悪だ。

「…貴方が、ここで何をしようとしてるかによる」

彼の目的次第と呟きながら、母子の商品が引っ張られてくると、視線を落とす。
続く言葉にそうねと、抑揚が一層減った言葉で答える。

「多分……九頭竜山脈のほう、あっちなら…色んな種族が潜んでるから」

エルフも数少ないが、自然に溶け込んで生活していることはよくある。
価格がつり上がっていくと、あっという間に買い主が決まり、下卑た笑みを浮かべた男が舞台の上へ。
物をよく知らぬ娘も、危険であることは分かるのか、今にも泣き出しそうになれば、母親が抱き寄せて落ち着かせようとしている。

『さて、どう楽しむとするか……どうせだ、娘の貫通式でショーでもするか?』

冗談のように語る言葉に、貴族達から冗談でも聞いたような沸き立つ笑い声が響く。
狂っている、それだけを思いながら、無言になってしまう。

ノーガルト > 「安心しろ、殺しをするつもりはない。…俺もお尋ねものになる訳には行かないからな。」

(柱の後ろにいる女が、どんな女なのかはよく見ていなかった。目的はあくまで魔剣、それ以上のものを求めているわけじゃない。さらに言えば、自分に関係のないものを助けようとするような、偽善な男でもない。)

「とある魔剣を探しにきただけだ。目的のものがオークションに掛けられたら、力尽くでも奪うつもりだったが、はずれだったのでな。」

(だから、そろそろ帰ろうかと思っていたところだ。しかし、クラーラに声を掛けられてしまったら、かえろうに帰れない。さすがにここで逃げれば、本気で怪しまれてしまう危険もあるから。)

「あの山脈か…。アレだけ大きければ確かに、エルフの集落くらいありそうだな…。」
『…どこから引きずり出してきたとすれば、確実に全滅したな。どの時代でも、人間の私利私欲というのは見るに耐えん。』

(ダインの言葉に、ノーガルトはただ苦笑するしかなかった。人間であるがゆえに、自分もまた私利私欲で動いていると言われているような気がして。泣き出しそうな娘と、何とか娘を助けようとする母親の姿を見やりつつ。)

「……お前は、帰らないのか?」

(さっきから、俯いたり無言になったり。もしかして、この場にいるのがいやなのだろうか、と予測して。)

クラーラ > 殺しをするつもりはないと聞けば、それならいいと呟いて、少しばかり安堵した。
こんなところで屑を守る戦いをするのは、流石に嫌だ。

「魔剣……ね、私と同じ理由って珍しい。そう、なら……今日の出品はあれだけ、もうないよ」

オークションの内容をある程度聞いていたのもあり、魔剣は一振りという情報通りなら、ここにはもうないはず。
それを伝えるころ、子供のほうがとうとう泣き始めてしまう。
母親が身代わりにと自らを差し出そうとするも、お前ではないと罵りながら、貴族の男が母親の服を引きちぎった。

『流石にそのままじゃ痛いだろうからな、気持ちよくはしてやろう』

媚薬やらローションやらの瓶を従者に運ばせると、震える娘を押さえ込んでいく。
彼の問が聞こえるも、それに答えることなくゆっくりと柱から離れた。

「……ちょっとしたら明かりが消えるから、後は好きにして」

部屋を照らすランプの位置を確かめ、調度品の位置取りを確かめる。
チャンスは一度だけ、ゆっくりと魔力を集めて指先に貯めると、圧縮した紫電に変えて天井の金具に静かにはなった。
同時にそこから一瞬の電光が一気にランプを撃ち抜くと、中の明かりだけを吹き飛ばし、部屋を真っ暗闇に包み込んでいく。

「……じゃあね?」

静かに、それでいて早く室内を駆けると母娘の拘束を切り裂き、バルコニーから二人を汚れた水に満ちたプールへと放り込み、こちらも外へと中を通って消えていく。
母子が無事に逃げ切れたかは、今は分からないことだが…。

ノーガルト > 「……なら、一つ二つ聞きたいことがあるんだが?」

(同じく魔剣を探すもの、というならば確実に情報を掴んでいるはず。幸い、娘が泣き出してくれたおかげで、質問の声は届かないだろう。だったら、さっさと聞いてしまったほうがいい。そう思った矢先の出来事だった。)

「……は?」

(明かりが消えると予告したクラーラに、ノーガルトは素っ頓狂な声をあげる。)

『……!ノル、その女も魔剣の持ち主だ。』

(一瞬貯められた雷の魔力、それを感じ取ったダインが即座に反応した。その刹那、何の音もなく雷が証明を打ち抜き、あたりが漆黒に染まる。)

「あの女も、随分と無茶をするものだな…。というか、助けるなら最後まで面倒を見ろ…!」

(やっていることは正義の味方、だけどそれが少し中途半端というような助け方だ。安全なところに連れて行くわけでもなく、敷地内の汚水が溜まったプールに突き落とすとは。派手な水音と、別れの挨拶が聞こえれば、あからさまに舌打ち。)

「…仕方がないか、ダイン、レベル1だ。」
『…面倒を押し付けられた気がするな。』

(その言葉と同時に、ノーガルトは漆黒の闇に消える。エルフの母子だが、その後黒い外套姿の男に『殺された』という話が、貴族のオークション参加者の間で、まことしやかに囁かれたとか。)

ご案内:「王都マグメール 王城」からクラーラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」からノーガルトさんが去りました。