2016/03/10 のログ
■サロメ > 「…散開しよう、定刻にまた此処で」
直衛の部下達に命を下し、散らせる
中にはサロメを気遣うような素振りの者もいたが、内心疑念が払えない者のほうが多いのだろう
いつものような返事ではなく、蟠りのあるような濁った返答と共にバラけていった
「………」
一人になると、暗い思考が湧き出てくる
自分を徹底的に汚し尽くしたあの男の言葉が耳から離れない
この国にもはや救いはない
命を賭けて守る価値すらない
戯言のような言葉がまるで真実であるような
そんな体験を身を持って知ることになってしまった
…あの場にいた下衆な貴族どもが全てこの国の病巣なのだろう
絶望的なのだ。彼らが癌であるというならば、すでにこの国を人に見立てれば全身に転移しているようなものである
■サロメ > 自分が騎士となったのは、家柄の為だった
アクアリアは代々貴族に使える騎士の家系
よって第七師団へと志願した時は周囲を驚かせたものであった
「(…なぜ私はこの国を守っていたのだろう…。こんな、助かる見込みもない腐りきった国を)」
自分を囲んだ下卑た笑い声が頭のなかにこびりついている
連中の玩具になれば第七師団の立場を向上させるという者すらいた
結局騎士としての立場も、連中の掌の上なのだ
「(粛清されるべきではないのか、あんなゴミのような連中こそが…こんな、王国こそが)」
ご案内:「王都マグメール 王城2」に竅さんが現れました。
■竅 > サロメが物思いに耽っていると、何かの気配を感じるだろう。
その気配は恐ろしいものでも、しかし友好的なものでもない。ただそこにあるというだけの、妙な気配。
しかし、その気配があるということだけははっきりしていた。
しかし、周囲には誰もいない。
■サロメ > 「…何者だ」
湧いた気配に慌てることはない
ゆっくりと剣の柄に手を添え、辺りを見回す
視界に影はない
ただ気配だけがそこにある
故に、異常だ
「出てこい、いるのは分かっている」
■竅 > 「………。」
音はなかった。しかし、その気配がある場所は近い。そして、動いている。
その場所は、サロメの真上。
「流石。そして初めまして、だな。第7師団副官、サロメ=D=アクアリア殿。」
その人物は、突如現れた。天井が波紋のように波打ち、その中心から水面を割るように。
目も鼻も口も開いていない、白い仮面。対象的なほどに黒く長い髪。
そして、男とも女とも取れない、奇妙な声。
その人物は、頭だけを出して天井からサロメを見下ろしていた。
■サロメ > 「…私のことをよくご存知のようだが。生憎私はお前のような者は知らない」
構えを乱さぬままに、視線を上へ向けて対峙する
「魔族の類か外法の者か、どの道」
この城にそぐう者ではない、という言葉が出なかった
いっそ、そんな者こそが今やこの腐敗した王城には相応しいのかもしれないと内心で沸き立つももがあったせいだろうか
「………私の立場を知っているなら、見過ごすわけには行かないこともわかるだろう。名も知らぬ侵入者よ」
最後に残った使命感
それのみで剣を抜き放つ
■竅 > 「ああ、ご存知だとも。君はご存じないだろうがね」
そう言って、沈むように頭を天井に埋め…横の壁から染み出すように全身を現す。
黒い服と黒い髪の中に、シミ一つ無い眩しいほどに純白の仮面が目立つ、奇妙な格好をしていた。
「君の立場にそんな義務があるとも思えないが。君がここで私に剣を振るのは何故か?
……何故なのかね?任務か?使命か?愛国心か?それとも、上司への恩かね?」
そう言って、かつんと靴を鳴らし、手を後ろで組む。
「斬りたくば斬りたまえ。私とて何の覚悟もなく君の前に立ったわけではないからね。
君の心に迷いがなければ斬れまいが。」
■サロメ > 「…‥本当によく知っているようだな。答えろ、お前は何者だ」
剣の柄から手は離さずに、改めて眼前で対峙した相手を見据える
「義務はあるさ…将軍閣下から城内の魔族炙り出しの勅命を受けているかからな…」
任務、それは正解だろう
使命、それも間違いない
愛国心、それも、かつては在ったかもしれない
上司への恩、それはない
「(…だから、この剣を迷わせているのは……失望、なのだろうな…)」
■竅 > 「『竅』、と名乗っておこう。」
それだけ伝え、その目も鼻も口も耳も見えない姿で、しかししっかりとサロメの姿を捉える。
「ま、単刀直入に言わせてもらおう。一つだけ、私から提案したいことはそれだけだ。」
「この腐った国に革命を起こす気はないかね?」
そう言った。
間違いなく、恐ろしいことを平然と言ってのけた。
しかし、その言葉は真剣で、無機質だがどこか……『心のわだかまりを解す』ような、不思議な魅力に満ちていた。
■サロメ > ふん、と鼻を鳴らす
名乗れとは言っていないのだが、と内心思いつつ
相手も理解した上でそう答えたのだろう
自らの正体や存在を明かすわけにはいかない、というわけだ
「…まさに悪魔の囁きだな。
その様子では私の身に起こったことも知っているようだ…。
……それで、お前の言う革命とは、何だ?」
?
自らが発した言葉に僅かな驚きを隠せない
聞くまでもなく斬り捨てるべきだろう
なぜか、柄にかけたままの手は凍てついたように動かなかった
■竅 > 「ああ。覗き見は趣味の悪いことだとは思っていたのだが……」
立場上助けに行けなかった私を許してくれ、と心にもあるかどうか分からないことを宣う。
「何か…か。簡単に言えば『貴族制を解体』することだ。
汚物の塊を処理せねば、下水の水は清らかにはならない…だろう?
君だけではない、この国の上層部は腐りきっている。それに虐げられるものも居る。君には人望も、力もある。
君が指揮に立ってくれれば、虐げられた者たちをまとめることも夢物語ではない。君が望む、真の国を作り上げることができる。」
そう言って、かつかつとその場で歩き回り始める。癖なのか、ぐるぐると回るような動きで歩く。
その足取りは柔軟で、体が凍て付いたサロメとはひどく対照的だった。
■サロメ > 「この国は長くこの階級制度の下で続いていた国だ。
その革命を為したところで国の崩壊を招くだけだろう。
ましてやこの国は敵も多い…ゆっくりと、佇む水が淀むように腐敗して死にゆくのが似合いなのかもしれないさ」
その言葉には確かな諦めにも似た感情が篭もる
自身の周囲を周回する男を眼で追いながら、言葉は続き…
「それに、今の私に人望などはない。
かつてはこの身に感じた羨望や賞賛の眼差しも、
今や阿婆擦れや売女を見るようなものになってしまった。
見ていたのならば、よく知っているだろうに」
そう言って自嘲気味に苦笑するのだった
■竅 > 「…重傷だな、実に。革命を起こしてもその先のビジョンが見えないとなれば、ひっくり返すだけ無駄だということか。」
そういって、かつかつと回り続ける。
時折、遠くを見るように空を見上げては、視線を落として再び回り始める。
「…私は、ここで言うのもなんだがかなり長い期間王城にいた。無論、君の活躍も聞いている。
だからこそ、君はここで終わる器ではないと思っている。個人的に、だがね。」
そう言ってサロメの正面に立ち、その顔を見つめる。
「正直に言おう。私は、革命の矢面に立たせるためだけに君を勧誘しているのではない。
君という…サロメという存在を、こんな肥溜めで腐らせてはいけないと感じているからだ。君を必要としているからだ。
阿婆擦れ?売女?結構じゃないか。私は君が欲しい。第7師団副官としてではない、サロメ=D=アクアリアが必要なのだ。」
淡々と、言葉を紡ぐ。
その言葉には感情は篭っていなかったが……不思議と、柔らかい暖かさのようなものに満ちていた。
聞いているだけで、心が柔らかくなるような。流れる川のような爽やかさに満ちていた。
■サロメ > 「口説き文句としては淡白に過ぎるな」
肩を竦める
恐らくは魔族であろう目の前の存在と、こんなにも穏やかに話すことなど今まではなかった
やはり、あのような経験をして自分はどこかおかしくなってしまったのだろうか
「希望や誇り、尊厳…色々なものを奪われたが…まだ私にも僅かに残っているものはある。
この国には、私の父や母も生きているのでな。
家族のことを思えばこそこの国の未来を憂う気持ちもあるが、生憎私は老年の子。父も母も老い先は短い…。
迎えが来るその時までは、捨てようにもまだ捨てられない部分があるようだ」
自身を必要と言うその言葉に言いようのない安堵を感じる
しかしサロメはその経験から知っている
魔族という存在は、そういった籠絡の能力に長けている者もいる
ましてやあんなことがあった直後、今の自分の感情をそのまま信用することはできなかった
地に堕ちようと未だ薄氷の騎士、冷静な判断だけは捨て去っていない
■竅 > 「……はは、フラレてしまったかな?」
かく、と首を傾げる。
その動作も、どこか無機質に見えた。
「そうか…薄氷の騎士とて人の子、親に勝る恩義なし、か。
わかった、そういうことならば私は何も言わない。しかし、君が私を必要とするならば私を呼べ。
その時は違わず、君の力になろう。
そして忘れないでくれ。私は君を求めている。」
そう言って、仮面を取る。
その下には、無表情ながらも美しく整った、男性とも女性とも取れるような中性的な顔があった。
「それと一つ。君は女性的にも美しい、とだけ言っておこうか。」
■サロメ > 「………」
さんざ、雌豚だの淫売だのと貴族達に侮辱の言葉を投げかけた自分を美しいと言う
「一応、その名と言葉は覚えておこう。それで話は終わりだな。
……そして…私には貴様を切り捨てる義務がある」
その露出した整った顔に僅かに面食らうところはあったが、剣の柄を握り直し、見据える
■竅 > 「構わんよ、斬りたまえ。だが先に言っておこう。私は魔族、それも物理攻撃に大きな耐性がある。
今の君の迷いのある剣では、私を絶命させることは叶わない。」
そして、最後にその顔をふわりと歪ませて優しく笑う。
そして、体を大きく広げて呟いた。
「また会えることを祈っているよ、サロメ。」
■サロメ > 「…だから斬らなかった…という理由にはならないな」
ふっ、という呼吸と共に鞘から抜剣したアイスブランドを横薙ぎにその胴目掛けて振るう
自分に向けられた言葉も、優しい笑顔も
魔族の謀略なのだと自身に言い聞かせ放つ太刀筋は、ひどく鈍いものだった
身体が万全でないちうのもあるだろう
しかしやはり、精神が曇りすぎていた
■竅 > 「それはそうだろう。だから私は、『ここで死んであげよう』と言うんだ」
そう言って、アイスブランドの一閃に臆することなくその体を乗り出し…
胴から美しく真っ二つに裂け、その場に崩れ落ちた。
分断された腹は内蔵を覗かせ、赤黒い血を吹き出す。
しかし、その姿の真下に、彼の者の気配はあった。
残されたのは、竅の死骸のみ。
まるでこの先の未来を暗示するかのように、赤黒い血がサロメの足元、純白の床を濡らしていた。
■サロメ > 「!」
いとも容易く、その体は分断された
それはまるで脆い土人形のような手応えをサロメの手に残して
『サロメ様!?』
『一体何が……』
気づけば定刻
散開していた直衛の部下達が異常を察知し足早に戻ってくる
「…結界を抜け、侵入していた魔族を発見した。見ての通りだ」
詳しくは語らず、ただその事実だけを、仲間である部下達に伝える
「(あのような語らい、口にできる筈もない……)」
■竅 > 「(…………。)」
「(…………。)」
「(…………待っているぞ……)」
そして、その気配は虚空へと消えていった。
ご案内:「王都マグメール 王城2」から竅さんが去りました。
■サロメ > その後はただただ慌ただしかった
他に仲間がいないか、城の警護の者も総動員で哨戒が行われ、
見事討ち果たしたサロメは再びその『表面上』の体裁を取り戻す
あくまで表面上である
一度失墜したモノはそう簡単には元には戻らない
下卑た視線に晒される生活は、そう変わりはしないだろう
ご案内:「王都マグメール 王城2」からサロメさんが去りました。