2023/06/18 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城/執務室」にエリシエールさんが現れました。
■エリシエール > 王城の穏やかで、それでいて一日にどれだけの人数が暗躍・失脚しているのかも分からぬ物騒な日常。
高級感あふれる荘厳な執務室のデスクに備えられた純白の大きな椅子に座して分厚い書類を脇に
粛々と執務に励む王女の姿と一人の臣下。
「……こちらは差し戻しを」
女が時計の針が刻一刻と進む音を耳にしながら、涼しい顔で進めるのは民衆の生活に関する各種の承認業務。
出生時の届け出や婚姻・転籍などの申請書類を一定の階級にある者が承認を行わねばならない。
夫婦の誓いを立てた者達のサインが記された出生届や、これから家庭を築くであろう者達の婚姻届を、
微笑ましく見つめながら自筆のサインを承認者欄へ記載するだけの流れ作業。
だが、一方で書類に不備があったり素性に疑いのある者や不自然さを残す内容は精査が必要だ。
魔族も大勢内通している事情もあり、このような何気ない部分から静かに魔の手は迫るものだ。
疑義の生じたものについては否認の付箋紙を張りつけ、一方へ固める。
それなりの数を処理したところで、臣下にはそれぞれ配布先の異なる書類を丁寧な所作でまとめて手渡しした。
「……しかし、堅苦しい場所です」
臣下が離席し、一人になると椅子にもたれかかり、退屈そうにシャンデリアを眺める。
この間は全裸で徘徊しているところをうっかり臣下に捕まってしまい、王女の身でありながら半ば懲罰・監禁の
意味合いも兼ねて堅苦しい執務室に軟禁された格好でもある。
現在の仕事は、子の誕生や夫婦の婚姻などめでたい報せに関する処理が大半なので、モチベーションは
決して低くはないのだが流石に数時間も荘厳な一室に拘束されると王女とて人間だ。
辟易するのも仕方なく。
きゅい と椅子を回転させ、窓の方向を見つめると晴れやかな空に照らされた美しい王都の街並みが映る。
……自らが時に素裸で徘徊し、幾度も正体不明の裸の女が彷徨っていると騒がせたあの街並みが。
■エリシエール > 王宮の腐敗は直接的に政治に関与せずともあらゆる部分から臭い立つ。
無数にいる王位継承権を持つ者達は政争や汚職・謀略に明け暮れ、運営を担うべき人間が
果たすべき責務を放り投げ欲の赴くがままに過ごしている。
この女もまた、王族の位にありながら血生臭い政争には静観を決め込んでおり、
血に込められた責を十全に果たしているとは言えない。
だが、こうして自らの権限が必要な仕事においては培った才能を惜しみなく発揮し、
真っ当な働きを行う点はマシとも言えるだろう。
…………奇々怪々とも呼べる異常な悪趣味を除けば。
「私の事は、野鳥がさえずり自由に飛んでいる……そう思ってくださればよいというのに。
まあ、王族が一糸まとわぬ姿で城内を徘徊している様を良しとしない気風は、それだけまだ
この王宮が正気を保っている証左とも言えましょう」
■エリシエール > デスクの上に置かれた洋菓子の一つを掴み、音を立てず静かに咀嚼してしばしリラックスタイム。
王都の総人口を考えれば、徹夜など意味がないのでキリのよい数をこなせば今日は自室に戻る予定だ。
しばし、椅子にもたれかかり瞳を閉じて日光を浴びて仮眠をとれば、デスクへ向き直り業務再開。
書類の配布に向かった臣下が荘厳な装飾の扉をノックし、部屋に入ってくれば労いの言葉をかける。
臣下から報告と、新たな書類を受ければふぅ とため息をつきながら机上へ置き、羽ペンを握った手を
上品に動かし続ける。
手元にあるリストと、書類に記名された者の名を照らし合わせながら選別を続け、この場で
裁定を下せないものについては下位の処理者に確認事項を記載した付箋紙を張り差し戻す。
手が追い付かないのか、そもそもまともに仕事をしていないのかは下位の承認者の筆跡から何となく
察しがつく。
「このような記載漏れを最終処理まで回してくるとは、呆れました。
部門単位で機能していない可能性が大きいでしょう。先月の監査結果を疑わざるを得ません。
恐らくは監査部門にも派閥の息がかかっているのでしょうね……」
書類の不備がやたらと多い。
新任の文官が犯すようなミスなんてまだ可愛らしいもので、怠慢としか思えぬ内容が散見される。
「差し戻しはしばし保留してください。最悪、破棄どころか我々を消しに来る可能性もありますから。
軍部への命令書を取りに行ってもらえますか?」
臣下の危険を慮り、一度疑わしい者を洗うべく待ったをかける。
ヴァエルフィード王家であれば中小の貴族程度であれば力業も不可能ではないのだが、そのような
手口を良しとせず、また派手に動くことで政敵の兄が過敏に反応する恐れがある。
臣下はすんなりと返事し、部屋を後にしようとする。
「……この部屋、少し暑いので脱いでもよろしいですか?」
『なりません』
「左様ですか」
いつものやり取り。諦めた表情で臣下を見送り、今後について思案する。
ご案内:「王都マグメール 王城/執務室」にピーターさんが現れました。
■ピーター > 臣下が部屋を去り、王女が思案に耽る執務室の窓の一つが静かに開かれる。
そこから中へと侵入してきたのは、燕尾服に身を包んだ金髪碧眼の男。
本来王城の内部に居るはずの無い肩書の男ではあったが、度重なる博打の負けが込み、素寒貧となったので最後の賭けに出た。
曰く『お城から高く売れそうなもんすこし頂戴して日銭を稼ごう作戦』
来賓を装い城門を潜った後は、気配遮断に類する魔術を使い人目に付かなそうな壁を登り、こうして目星を付けた部屋へと潜り込んだという経緯である。
「さて、これくらい立派な部屋なら調度品の一つや二つ無くなってもバレやしな……い」
思い付きで実行したにしてはすんなりと成功しそうな作戦にほくそ笑みながら物音を立てない様に室内へと足を踏み入れる。
しかしここで作戦は早くも頓挫。忍び込んだ部屋には人が居た。
それに気付けば蛇に睨まれた蛙の如くに直ちに身動きを止め、彼女が気付いているいないに関わらず、そーっとそーっと後退りを始める。
ひとまず窓から外へ逃げれば容易には追って来れまい、ほくそ笑んだ表情を凍り付かせたまま、だらだらと脂汗を垂らしながら懸命にこの後の算段を立て始めて。
■エリシエール > それからというものの、女は承認処理を一旦中断して前任者に関する記録を辿り始める。
突然の退任や失踪であれば、派閥によって闇に葬られた可能性さえ浮上する。
その場合、本来の持ち場ではないが自身が受け持っているこのポジションも
既に危険な可能性がある。
何とか手を打たねば…… そんな矢先に思いもよらぬ事態が訪れる。
「おやおや。窓の立て付けが悪くなりましたか」
それなりに整備はされている執務室なのだが、不意に開かれた窓にくるりと椅子ごと振り向いて。
つり目気味の、気品ある青の双眸が不躾な来客を感情の読めぬ笑みを浮かべたまま無言で迎える。
魔術の心得があるならば、この女が熟練の魔術師でさえもまれに見る程の異様に膨大な魔力を持つ事も
自然と分かるかもしれない。青年を襲う無言の圧は、あっという間に青年自身を汗でびしょ濡れにすることだろう。
「ふふふ……窓からご来賓とは、随分と愉快な礼儀作法を学んでいらっしゃるのですね」
凍り付いた青年には、本来ならただちに衛兵を呼んで摘まみだし、袋叩きにしているであろうはずが
何故か余裕の笑み。
椅子から静かに立ち上がり、青年に数歩歩み寄れば、静かに手を掴んで。
「卿のご用件を伺いましょうか?執務の最中ではありますが、わざわざ”窓から”お越しになるのですから、
それはもう……とても”重大な”ご用件がおありなのでしょう?ふふふ……」
桃色の長髪をなびかせる儀礼服の女は、着衣でありながらも豊満に実った乳房と尻のボディラインを
惜しみなく曝しており、また青年を見つめる瞳は余裕と、どこか狂気さえ感じる真意の読めない穏やかな笑み。
青年が逃げられなければ、あっという間に神々しい美貌の王女が青年の頬に手を添えるだろう。
■ピーター > やっぱりこういうリスキーな博打は入念な準備が要るものか。
内心で自分の浅慮に悪態を吐きつつ、じりじりと窓枠との距離を詰めようとしていたが。
王女がこちらに気付いたところでピタリと後退も止める。もしかしたらワンチャン見逃して貰えるかもしれない、そんな甘い考えが脳裏を過ぎる。
そして直後に、彼女が侵入者に対し悲鳴を上げ、衛兵を呼ぶようであれば直ちに全力疾走して逃げようとも考える。
どちらに転んでもこの後の行動は彼女次第と、対面した王女を額に汗を浮かべたまま窺っている。
「これは……どうも御無礼を。
まさか人が居るなんて思ってなかったのと……碌に学も得られなかった育ちなもんで」
彼女からの言葉に返答しつつ、底知れない気配と重圧に足がすくむのを自覚する。
一歩、また一歩と彼女が近づくたびに、自身の身に圧し掛かる重圧が増すようで一切の身動きが取れなくなったまま。
「いえ……恐れ多くも用件と呼べるものは……。
ただ少しだけ興味が湧きまして。こんな豪奢な建物の内はどの様になってるのかと」
気が付けば面前に迫っていた美貌に対し、得体の知れないものを前にしたように息が詰まる。
頬に手の感触を感じながらも、視線は一点、王女の青の双眸へと向けられて。
目を逸らせばどうなることか、と瞳術を用いる事すら忘れ子ウサギの様にただ警戒のあまりに身を竦ませ続けている。
■エリシエール > 女の頭の中では、大胆な手口で己を暗殺しに来た刺客である可能性も覚悟していた。
だが、やってきた社交服姿の青年は及び腰どころか此方の存在を察知するや逆に青ざめている始末。
恐らく暗殺の線は薄いだろう。なれば、盗人か。人攫いか。或いは機密情報でも盗みに訪れた使いか。
向こうが完全に硬直している事もあって、王女は精神的優位を得て理性を働かせながらも笑みを浮かべて
青年がまず何者かを探ろうと。
「それは不幸な事でございましたね。窓から立ち入ってよいのは……せいぜい小鳥ぐらいというものでしょう。
後学に是非とも覚えておいてくださいませ」
青年の間近に迫り、開いた窓を風の魔法で動かし、カシャン と小さな金属音を立てて今度こそ施錠。
侵入者でありながらも青年にとっては、猛獣の飼われるケージの中に放り込まれ喰われるのを待つ生餌の如き絶望的状況か。
肝心の要件を聞けば、まるで要領を得ない胡散臭さも甚だしい”単なる興味本位”なる言葉。
確かにその程度の理由で城内に立ち入るのは困難を極めるだろう。
「ふふふ。御覧の通りです……卿にとっては、つまらぬものばかり……過ぎたものしかありませんよ。
ですが……」
青年の顔つきをじっと眺める。光沢が美しい金髪、宝石のような碧眼。
なるほど、とてもよく整った青年だ。
くすり と歯を見せて微笑む女は、邪悪な欲望を募らせて汗だくの青年の耳元にそっと顔を寄せ
「そんなに、ご興味がおありと申されるなら……仮にも王家の血を引く者として、民の声には応えるべきもの。
丁度、私も退屈しておりました故……”御付き合い”いただけるなら、目を瞑って差し上げましょう」
そういうと、青年の眼前で、儀礼服の上着を上品な所作で脱ぎ去り、青年の手を自らの胸元へと引き寄せ。
「……卿も感じておられる通り。この部屋は少々暑いものでして。
さあ、脱がせてくださいませ?」
神々しい女の笑顔は、青年をまるで獲物を前に牙を剥く猛獣の如き迫力さえ感じさせつつ。
「……それとも、”扉”からお帰りになられますか?……尤も、卿の不法侵入に現行の王宮の法は
どのような厳罰が下るのかはわかりませんが……。…………ふふふ、選ぶ権利は差し上げましょう」
そっと、青年の手を己の胸部へと持っていき、暗に誘うような声調で。
従うならよし、拒むなら勝手に捕まり処されるがよいと言わんばかりの圧を放つ。
■ピーター > 後天的な妖精という身の上である以上、魔力には人間よりも感応性が高い。
この場では見つかった事に対する焦燥よりも、
王女の内に湛えられた膨大な魔力量と漏れ出でる圧力に中てられて端正な貌を蒼褪めさせていた。
余裕ぶりながらも静かにこちらの正体を推測する王女に対し畏怖の念を抱きながらも
どうにかこの場を脱する術を懸命に模索していたピーターだったが、背後で窓の鍵が掛かる音が聞こえ逃げ場を失った事を察する。
「は、……肝に銘じておきます」
背後を振り返る事も出来ず、ただ王女の一挙手一投足に気を配る。
余裕の内に隙も見受けられど、この重圧の中で思うように動けるかは怪しい状況では蜘蛛の糸よりも細過ぎて断念。
とてもじゃないが逃げられる状況ではない、これならば衛兵に取り囲まれてる方が逃げようがあるといっそ護送の隙をつく方へと切り替えようとしていれば。
「いえ、内装も調度品も住人も、外観に違わないものばかりと見受けられますが……
“御付き合い”……ですか?」
彼女の言葉に対し口を開くたびに喉の奥まで乾くかの様な錯覚に囚われるほどの緊張感。
耳元で囁かれる声も獰猛な獣の唸りにも聞こえ、汗は引く気配を見せない。
突然の提案に戸惑いを隠せない男の前で、儀礼服の上着を脱ぎ始める王女、訝しむ暇もなく再び手を取られ
神々しくも恐ろしい笑顔を向けられれば、それから逃れるように男の視線は手元――彼女の胸元へと向く。
「……か、畏まりました……」
もはや不法侵入として捕らえられるよりも、彼女の言葉に背く方に身の危険すら覚えて
促されるまま、窮屈そうに張り詰めたシャツのボタンを微かに震える指で外し始める。
そのあまりの異様な状況に、青年の姿を保つ集中さえ途絶えて。
ピーターの姿は、本来のものである10歳ほどの容姿へと戻って行ってしまっていた。
■エリシエール > 【移動いたします】
ご案内:「王都マグメール 王城/執務室」からエリシエールさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城/執務室」からピーターさんが去りました。