2019/01/13 のログ
ミリーディア > 「力在る竜は他の存在から離れ暮らす者が多い。
其の力を無駄に振るう事も、利用される事も嫌っているからね。
だが、君には此の場所が在り、共に生きる者達が居る。
儂としては問題を起こしさえしなければ、其れで良いと思っているよ。

正確には今君が持つ力をコントロールする切っ掛けを与えるだけさ。
此れより君達は正式に儂の監視下に入る事と為る。
儂を強く意識して頭の中に言葉を並べれば通じるだろう。
今日みたいに他の者を通さずとも後々の事は互いで決めれる筈だ」

時間が在ると云い難いのは聞いている。
其れを踏まえて行う事と、後の予定合わせ等の事を伝える。

「君がそう感じる為らば儂は君から見てそうなのだろう。
期待しているよ。

成る程、君も色々と大変そうだ。
此方にも関係在る話が挙がった時は先程教えた方法で相談でもし給え。
解る程度の助言は行えるだろう」

流石に研究の報告や助言を行っている時は出来ないが、と付け足し伝える。
少女達の関係性迄は流石に深くは踏み込んで知る事は無い。
美味しい御茶を頂きつつ、云われる迄も無く菓子へと手が伸びる。
菓子に合わせ御茶も在るだけに中々に美味だ。

「此の瞬間が強く幸せを感じられる時間と云えるな」

食を進め乍に素直な感想を述べる。
此の好物を食べている姿だけを見れば、年齢相応の少女に見えるかもしれない。

リス > 「これでも、王国の国民のうち一人として、王国の安寧を願ってますわ。
 騒ぎとか問題を起こす気はありません。
 そんなことしても、儲けにはなりませんしね。
 静かにエッチに暮らしてますわ。

 ええ、判りましたわ、それがもともとの契約、ですものね。
 トゥルネソル商会は監視下に入りますわ。

 …………。」

 強く願って、頭の中で言葉を並べる。

 『ミリーディア様:思考実験……届いてますか、届いてますか。ちきんそてーはうりきれです。』

 とても、とてもしょうもない実験をしてしまう少女だったりしました。

「ええ、ミリーディア様は素敵ですよ。

 かしこまりました、その時は相談させていただきますわ。
 お忙しい時も、了解しました。」

 付け足される言葉に、少女はニッコリと笑って返答してみせる。
 とはいえ、まあ、大丈夫だと思われる。
 既に嫁と迷惑かけないようにどうするべきか方策を相談し合っている。
 あとはそれを煮詰めて形にするのだから。

「ええ、わかりますわ。
 美味しいもの、好きなものを食べる時が、一番心の平穏を感じますわ。
 ケーキと紅茶、というのもいいですわね。」

 ふふ、と笑いながら。
 美味しそうに食べている目の前の少女を眺める。
 話すことは終わり、あとは、しばらくお茶会となるのであろう――――

ミリーディア > 「其れを理解しているからこそ、対話での解決を考えていた。
まあ、君が女性と二人で居る事が多い理由に其れが在ったのは予想の上での事だったんだが…
前にも云った通り、普段は位置情報しか掴んで居なかったのでね。

此れで面倒事が一つ減ったな、ありがたい事だ」

安堵からか深く吐息を一つ吐く。
そして…

『其れで合っている。
此れが監視する為に使っている力の一部を流用した力さ。
……食べ物の話をしてしまうと食べたく為ってくる、不思議なものだ』

実験に付き合いつつも、今夜の夕食の一品が決まった瞬間だった。

「普段から此の外見なのでな、如何とも。
分かった、では其の時にでも」

寝癖の多い銀髪に指を絡め乍、そう言葉を向ける。
そして、そう相談が入る事も無いだろうとも思うが一応と。

「ああ、まったくだ。
美味い菓子に、合わせた飲み物、最高の一時だな」

話し合うべき事は話し合った。
此の後は一人の少女として、二人でのお茶会と為るのであった。

ご案内:「王都マグメール 王城/研究室」からリスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城/研究室」からミリーディアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」にロザリアさんが現れました。
ロザリア >  
王城の外郭
そこに一人の少女の姿が佇む

片手をひたりと城壁にあて、微動だにせずその瞳を閉じていた

「……からくりがわかれば簡単なものだな」

ぽつりとそう呟き、瞳を開く───

パキン、と何かが砕けるような小さい音が鳴った
対魔族用の結界といっても式が理解れば自ずと解も知れる
既にその情報を得て久しいロザリアにとっては鍵のかかっていない錠前を外すに等しい行為

そのまま身体を霧へと変えて、安々と王城内部へと踏み入った

ロザリア >  
深夜の王城の廊下にて、霧から再び少女の姿へと形を変えて、ふわりと絨毯の上に音も立てずに降り立つ

下賤の血も飲み飽きた
以前味わった王族の芳醇なる血は、やはり格別であった
すん、と小さく鼻を鳴らせば、あちこちから匂い立つように香ってくる

「…久しく、生娘の血でも飲めれば良いがな」

足音もなく歩みを進め、その香りを求め選別をはじめる
見た目だけでは決められない、なにせこの人間どもの国では王女ですら、下賤な人間の毒牙にかかるらしい
汚れた牙に穢された血では、ややその味は気品に劣る
そんなことは実に勿体無いというものだ

眼鏡に叶うものがいなければ、適当な貴族の娘でも攫って帰ることにしよう

ロザリア >  
以前は此処も件の第七師団とやらが守り、今少し堅牢な結界が敷かれていたものだが、
あの男、オーギュストがいなくなり腑抜けたか、あの頃のような堅牢さは何も感じない

ふと、城の中に満ちる人間の香、その中に少し違うものを見つける

「…魔族もいる、な」

それは以前からでもあることだが、相変わらずこの王城には自然に魔族が入り込み、生活をしているようだった
解せないのはそれらの多くが国家転覆等の目的ではなく…人間と友好的にするためだと言うこと、あるいは私欲のためだけ、である

───気に入らなかった

ロザリア >  
争えばいい、絶やされることは困るが、人間など劣悪な感情を持つだけのただの血袋
どんなに穏健な人間であろうとその中身には必ず醜悪な本性が潜んでいる
僅かに憎悪を覚え、その眉を顰める
廊下を歩いている内に城内の大鏡の前へと出る
うっかりとした苛立ちが顔に出ていないかと鏡に向き合う、しかしそこには何も映し出されていなかった

「───は、くだらぬ」

静か過ぎる夜は余計なことを考える
それに揺り動かされる心象なぞもう持ち得てはいない筈
ただのエルフの少女であったあの頃とは身も心も別の存在なのだ
そんな問答を無限の時の中で何度しただろうか、飽きないものだと自嘲気味に笑う

ロザリア >  
「……ふむ」

厳かな装飾が施された回廊、一際大きな扉の前でその足を止める
夜通し立ち尽くすのであろう衛兵が二人、翡翠の瞳に見つめられた途端に深い眠りへと誘われ崩れ落ちた

聞き耳を立てれば、部屋の中からは年端も行かぬであろう少女の穏やかな寝息が聞こえる

この警備の状況や、部屋の造りからして王族の娘だろう
芳しく香るその血の香りにもどこか気品を感じる

「それでは、今宵は姫を一人……頂いて帰るとしようか」

閉じたままの扉へ溶けるようにして踏み入り、廊下からその姿を消す

ロザリア >  
──後には静寂が訪れ、翌朝には王城の姫が一人行方知れずになり、
結界の一部が外側から解呪されていた痕跡と、魔族の魔力の残滓だけが残されていた

ご案内:「王都マグメール 王城」からロザリアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」にナインさんが現れました。
ナイン > (以前、さる「大公殿」と遭遇した、城内のラウンジ。
窓辺の椅子に腰掛け…もとい。一席に座り込んだその侭、前方のテーブルに突っ伏していた。)

 ――この、侭。…眠りそうだ…

(居眠りなど。あまりにも、示しが付かない。格好が悪い。隙として大きすぎる。
…何より、他者に。この城に住まう、或いは行き交う、数多の者達に。貴族として、決して見せて良い姿ではないと。
それを思えば、どうにか意識を保とうとするのだが。如何せん疲労の度合いが強すぎた。

――仕事が多かったのだ。勿論肉体労働という訳ではないが、頭の方を使いすぎた。
幾人かの公に出会い、或いは服従、或いは取引、或いは…良からぬ脅迫も。
砦の取り合いからなかなか進まずに居るらしい、再度の侵攻を前に。
少しなりともこの家名を売り込む為に。)

 …金は出せるし、物も…多少、アテが出来はしているが。
 人は……人材は。如何ともし難いな…ぁ…

(零細に落ちぶれたグリューブルムに。戦働きを期待出来るような人物は存在しなかった。
寧ろ血族にそうした傑物が居たのなら、間違いなく其方が当主になっている。
…本当に。自分で良かったのか。もう幾度も繰り返した、意味のない自問を。言葉となる前に飲み込んだ。
もしかすると。今、酷く情けない貌か。そうでなくとも、疲れた貌をしているかもしれないと。
そう思ってしまうと。突っ伏した顔を上げられない。)

ご案内:「王都マグメール 王城」にヴェルムさんが現れました。
ヴェルム > 年を明けてからしばらく立つが、王城内は未だに祝賀ムードが抜け切れていない様子でもある。
ここ最近大きな事件といったものもなく、せいぜい砦が取ったり取られたりなどいつもの調子。
故にいつまでも弛みきったパーティ三昧になってしまうのはどうしようもないことか。

何かと忌み嫌われる十三師団の師団長もまた、軍部のお偉いさんや貴族、王族の面々への挨拶回りに根回しといった、師団を今後も存続させるためのやり取りをしてきたところ。
我らが師団はそれくらいやらないと、あっという間に取り潰しになってしまうかもしれないくらい、上からの圧力には脆いのだ…少なくとも平和な世では。

「冷たくされるのはいつものことだけど、やっぱ頭にくるなぁ」

なんでお前らみたいなのが城にいるんだ、みたいな目を貴族どころか城の兵からも向けられたりするのだ。
城に来る度の出来事なのでいい加減慣れっこではあるものの、こちらとて聖人ではない。
ひとしきり城の中を回り切ったところで、いったん落ち着こうと城内にあるラウンジへ向かうことにした。

「まったく…」

上から何を言われたのか、ラウンジへ訪れた青年の表情はひどく憤ったものだったかもしれない。
だからか、ラウンジに他の人影がいたとしても、あんまり見えていなかったか。
冷たい風でも浴びようと、徐にラウンジの窓をガチャリと大きく開いた。
眠気を一時的に吹き飛ばすような冷えた風が、彼女の方にも吹き込むだろうか。

ナイン >  ……っ…!

(不意に寒気が飛び込んで来た。
丸めた背中を総毛立たせるような身震いに。思わず、飛び起きてしまう。
…がちゃん、と。テーブルに載っていた、空の侭で放置していたティーカップが音を立てれば。
流石に、小柄な躰を見落としたのだろう、その人物も。気が付いてくれると思いたい。)

 ――誰かと思えば。
 先程も、お見かけしたばかりだよ。第十三師団長殿。
 …まぁ、会議室という所では。正直、口を挟めなかったけれど。

(そして、此方も顔を上げたなら。入って来たのが何者なのか、理解する事が出来た。
よもや、窓から不審人物が入り込んで来たのではと。
すわ宝物を狙う盗賊か、誰ぞの首を狙う暗殺者か、などと。普段なら考えたもかもしれないが。
緩やかな眠気との争いに、予期せぬ横槍によっての、無理矢理な休戦協定を結んだばかりの思考は。
未だ、個の状況を取り繕おうと…突っ伏し続けて癖の付いた前髪を梳くだの、僅かに緩んだ衿を正すだの。
そんな事ばかりに終始していた。

――身繕いを終えて、やっと。真っ直ぐに男へと向く瞳。
言葉通り。男が貴族達への面通しを行った際、少女も列席していたものの。
どうしても年功序列の目立つあの場では、発言も侭成らなかったから。
口を聞くのはきっと初めて。…その事実に。男ととは別の意味で、苦々しい物を含む声だった。)

ヴェルム > 窓を開けると冷たい風が入ってきて、沸騰しそうな頭をいい感じに冷やしてくれて…がちゃん?
ふいに聞こえた陶器だろうか、それが転がるような音に、ようやく青年はラウンジ全体に目を向けた。
あっ…という声と共に驚いたような顔をしていただろう、その時は。

「これは…失礼しました、グリューブルム卿。
こんなところにいらっしゃるとは…」

ばたん、と窓を閉めてから彼女に向き直ろう。
彼女の言う通り、二人は先ほどの場にて、顔を合わせている。
彼女がこちらのことを知っているのは当然だが、それは青年の方も同じく。
お上の連中に一つでも失礼があってはならぬと、会議の面々の顔と名前は、きっちり頭に叩き込んでいるのだ。
だからこそ、彼女の顔を見てもすぐにどこの誰だか、名前を発することができた。
まぁ、彼女がいかにも眠りこけ…掛けているような前髪とか襟とか、あと表情をしていたが故に、青年の表情は緊張の面持ちと言うより、苦笑いのそれだったが。

「はい、改めまして、第十三師団師団長をしております、ヴェルム・アーキネクトです」

顔は知っていても、会話するのはこれが初めて。
ならばせっかくなので、改めて自己紹介をすることにした。
何せ十三師団はクセモノキワモノぞろいなため、そうそう関わりたがる者など多くなく。
彼女もそういう認識を持っているのかはわからないが、青年は彼女とは異なり務めて愛想良く声を発した。

ナイン >  ………こほん。此方こそ、失礼。
 入って来られた時に、先に声を掛けても良かった……のだけれど。

(鋭意誤魔化し続行中。男が向き治った瞬間には、丁度。音を立てたカップを、それ以上転がらないよう。
さり気なく――もとい、当人としてはさり気ないつもり、という程度の仕草で。ソーサーの上に押さえ込んでいたかもしれず。
それが終われば、未だ、髪の乱れを気にしつつではあるものの。男を正面に見据え立ち上がった。
片足を引き、ドレスの裾に指を掛け。先のような場ではなかなかに機会も無いだろう、きちんとした礼の仕草。
――少なくとも。あの場に居た、他の者達はどうあれ。少女自身は、男の事を…第十三師団の長を、礼を失するべき相手ではないと。考えて居る証。)

 私も。あぁいった場の繰り返しに、正直を言えば辟易していたもので。
 何時如何なる時も。新参者というのは、肩身が狭くて仕方がない。

(肩を竦めた。何処からどう見ても仔娘然とした、なりたての当主然り。第十三などという、全軍で見れば新しい部類なのだろう師団然り。
そういう意味では、程度はともあれ質として…同じような扱いを受け、同じように憤る、似た者同士なのだ、と。
最初は、半分寝起きを含めた、険の有る物言いとなっていたが。
一旦礼を挟んでみせれば、声音その物は穏便に……あくまでも、出ている声は。即ち表面上は、かもしれないが。)

 貴君もお疲れなら、一休み如何かと。
 …要り用なら、紅茶くらいは用意させますが。

(テーブルの上。それを鳴らせば、控えの部屋から侍女でも出て来るのだろうベルを指さした。
裏を返せば。今は、そうして呼びでもしない限り。男と、少女の二人しか。此処には居ないという事か。)

ヴェルム > 「いえ、こちらこそ周囲をよく見もせずに…。
お互いに、苦労しているようですね」

冷静さを取り繕ってはいるものの、慌てふためいた様子が微妙に見て取れる所作。
それでも女性らしい礼の仕草をしてくれる彼女には、気品と慎ましさを感じられる。
この師団長を前に、礼節を失しない人物はそう多くない。

「ああいった場で生きていくのは、並大抵の苦労ではありません。
卿はよくやっていると思いますよ。
それにあの場で、あの男に軽蔑の視線を向けていただけたのも嬉しかったです」

あくまで今は軍属の身である青年には、王国政界の中で若輩貴族が生きていくことの難しさなど、想像もできない。
それでも今日まで家を保っていることは簡単ではなかったろうからこその賞賛の言葉を。
そして先の会議の場にて、十三師団に属するミレーと魔族の女を、兵士たちの情婦にしてやるのはどうかという、肥え太った貴族の男の言葉に対し、同調し笑っていた同席者の中で、男に対し侮蔑の目を向けていた数少ない人物であったことも、しっかりと見ていた。

「ありがたいですが、せっかくです。
二人だけでいろいろ、お話してみたい」

共に紅茶をと、ありがたい申し出ではあったが、丁重にお断り。
その代わりとしてか、立場は違えど似ているところのある彼女との、周囲や立場を気にしない会話をしてみたいと考え、提案をしてみた。

ナイン >  年明けは、特に。挨拶が増えるのは何処の誰も同じでしょう。
 ――それに。次の戦が近いという話も有るので、浮き足立つ者が多い。

(彼等を抑える側とも、煽る側とも言わないが。…というより、尻馬に乗る側なのだが。
その辺りは、少なくとも今は未だ、おくびにも出さずに頷いた。
断りの言葉を聞けば。それなら、と。取り敢えずは椅子だけを指し示し。共に席へ着く事くらいはしようかと。)

 …あぁ。あの方は…あの方には、同じような事を私自身、以前言われたもので。兵士のか、当人のかという違い程度で。
 もっとも。…失敗した、という気はしていますよ。 本当なら顔に出してやる事など、あの場ではしない方が良い。
 一緒に笑って見せた者達の中にも…半分と迄は言わないものの、それなりの数は。
 上辺だけ同調して、いずれあの方が自らの首を絞めるのを待っている…きっと。

(もっとも。異種族への侮蔑その物も、上辺だけの物だったのは限らないだろう。あくまで、かの人物への本意が何処に有るかというだけで。
だから、同席していた貴族達を、些かなりでもフォローしようとした…故の言葉ではない。
放っておけば、先程の男は、その内に失言からの醜態を晒すなり。色に溺れた結果罠に陥るなりするだろうと。
だから気にするな、という言い草だろうか。
貴族社会の、隙を見せれば出た杭を凹まされる有様を。其処迄論ってみせる癖。
思い出すと亦少々、眉の辺りを顰めてしまう辺り。少女自身も、言うは易しだが行うは未だ未だ、か。)

 それで?…私で良ければ、お話程度、幾らでも。
 彼等について気になる事でもお有りでしたか、師団長殿。

(さて。男が座ってくれたなら、こちらも。後を追って席に戻ろう。
先程のカップを脇に寄せて、真っ直ぐに男を見上げてみせる。
…話、と聞いて。会議の愚痴だか貴族への悪口だかに違いないと、そう決めて掛かっている辺り。
周囲や立場を気にしていないものの、意識はしている、という所。
少なくとも、自分の立場を。あまり崩さずにいようという程度には。)

ヴェルム > 「なるほど、確かにああいった手合いの人物というのは、そう長生きしているのを目にしませんね。
より上を目指すなら野心や欲望は胸の内に隠しておく…卿もそのようにお考えですか?
何か成し遂げたいことがあるのか、それとも生き抜くのに必死なだけか…」

政界に生きるというのは、思ったことを口にしないだけでなく、顔にも出さないことが必要。
彼女の言いたいことを自分なりに噛み砕いてみせれば、では彼女にも国政の中で生きようとする、明白な理由があるのか、知りたくなった。
政治の世界で生きる人間ならば、そういった野心なりなんなりを持っている。
そして目的の地位にたどり着いたとき、その隠された本性を露わにするだろう。
青年は彼女という人物を、少しでも見極めようとしていたのかもしれない。

彼女に促される形で、ラウンジの座席へと腰掛ける。
次いで彼女も座れば、どんな話になるか予想は立てているだろうか。

「そうですね、二人だけですし愚痴や悪口合戦にしてもいいですけど。
せっかくなら実りのある話をしたいと。
先ほど、戦の話がありましたように、王族や貴族連中による資金提供といった形の、騎士団や師団の囲い込みが目立つようになりました。
そういった軍団が戦果を挙げれば、自分が支援をしたのだ…という名声を得られるということで。
ですが残念ながら十三師団はその性質上、そういった支援が得られていない…表向きにはですが」

次の戦が近いという話は、政界のみならず兵の間でも話題になっている。
特にタナールの情勢や第七師団の動きを見据えて、浮足立つ者もいれば早速根回しを始める者もいる。
そういった戦の準備が、水面下で行われ始めているのだ。
だがそういった動きから、十三師団が関わることは滅多にない。
師団の性質上、表立って支援を行う人物などいないからだ。
故に青年の話は、一種の売り込み…十三師団を囲い込んでみないか、というものだった。

ナイン >  あのような者を憂えているのは。何も、軍側の方々だけではない、という事です。
 我等の中にも――おっと失礼。宜しければ、聞かなかった事に。

 …生き延びれば良いと。それだけで手一杯になってしまうのなら、先は無いでしょう。
 生きる為だけでなく。生かす為、も考えるなら。上を目指すに越した事はない。
 師団長という立場に居られるのなら、ご理解はいただけるかと。

(少しばかり目を細めて頷いた。
地位というものは、手段であって、最終的な目的とはなり得ない。無論、其処に拘泥するなど以ての外だ。
野心にしろ欲望にしろも亦。動機であって、それを結果にはなし得ない。
…少なくとも。政であれ戦であれ、互いに何かを背負っているだろうと。ならば上を目指すのは当然だと。
隠しておくべきだ、と此処迄言葉にしておいた癖。つい、本音なのだろう部分を零してしまったのも…
それこそ男が。ミレーや魔族の部下を愚弄された事に憤るような。誰かの存在を、自らの責として背負っている事を。
先の会議と、此処迄の言葉とで。確信出来たから、だろうか。

そうではない輩への対処については…言わぬが花だ。互い、知らぬ方が良い事も有る。)

 愚痴を零せる相手というのは。これで、なかなか貴重でして。
 それこそ、良からぬ誰かの耳に入れば、どんな使われ方をするとも、知れた物ではない。
 …貴君なら大丈夫かと、つい。

 あぁ、それは。その手の話は勿論。……我が家も、既に。
 先の侵攻はうまく行きませんでしたが、重ねて国外の脅威を実感する事となった者も居る。
 第七師団新師団長へのそれには。お手並み拝見という事でしょうか、未だ二の足を踏む者も多そうですが。
 そして第十三師団については――言う迄も有りませんか。先程の手合いを見れば。

(そも。魔族側への侵攻云々、という時に。当の魔族すら籍を置いている軍隊など。
先ず信用をおけるかどうかを危惧する――よりも。その事実を、如何に糾弾するか、何かの為口実と見なすか。という打算を巡らせる者が多いだろう。
存外先程の貴族すら。これで部下への侮蔑に、男が反抗的な態度の一つでも取っていたなら。
揚げ足を取るようにして更なる締め付けを行おうとしていたかもしれず。

だから。確かに魅力的ではあるが。直ぐ様頷く事はしなかった。
テーブルの上へ、男の方へ。僅かに身を乗り出して、顔と顔との距離を詰め。)

 …正直。今のグリューブルムは、往時に比べて…随分と力を失ってしまった。
 そんな家が何処かから、手を回している事を悟られれば。
 財や物資の出所含め、只でさえ痛い腹を突かれるばかりなので…
 素直に頷くというのは、難しい話です。 ――――表向きは、ですが。

(手を回す。表向き。…だから、先ずは。あくまでも裏からならば、と。
その為にこそ近付けた顔と、潜めた声と。
ならばどうだろうと提案に提案を返し。笑むように眼を細めてみせた。)

ヴェルム > 「…ふっ、愚問でしたね。
わずかながらでも卿の心持を知ることができただけで、私は満足ですし。
卿のような考えを持っている人物が少なからずいる。 人々の剣と盾となる我らにとっては励みになります。

ええ、もちろん…我々はただ会議の愚痴を言い合っているだけですから」

正直なところ、青年は師団を存続させることだけで手いっぱいな状態。
もし彼女もまた同じ状態だとしたら、たとえ手を取り合ったとしても共に沈んでいく未来だったか。
だが、彼女は政界の中でもがいているお嬢様ではない、それは彼女の言葉とその端々から感じ取ることができる。
十三師団に必要なのは、師団を利用しようとする欲だ。
彼女がそれを持っていて、さらに信の置ける人物であると確信できれば、手を取り合うこともできるはずだと。

「そうですね、その手の話はこういった場よりも、密会に相応しい場で酒と共に語り合いたいところです。
ハメを外す…とまでは言いませんがストレス解消にはなるかと。

第七師団…前のですが、侵攻の失敗によってどの師団を支援をするべきかどうか、王族貴族間でも慎重になってきています。
まぁ、十三師団は当然蚊帳の外なんですが」

彼女とて気にするところは、十三師団がミレーならともかく、魔族を有している点だろう。
無計画に師団を支援してしまえば、たちどころに糾弾の口実を与えてしまいかねない。
だが、その魔族を有しているからこそ、十三師団の戦闘能力は魅力的にも映るはずだ。
元より使い潰しですぐに消滅すると見込んでいた師団だが、未だこうして師団としての体を守り切っている。
何より、問題行動を起こさないというのも魅力的か。
それ故に、秘密裏に支援をしている人物がいたりもして、その理由は様々だが。

彼女はこちらの売り込みめいた言葉に首を立てには振らなかった。
だがその顔が近づいていき、顔の距離が縮まる。

「ええ、表立って支援を申し立てれば、それだけで互いに無傷では済まないでしょう。
ですから、お互いに傷の付かない方法で…我らも動かせていただきます」

彼女の言葉は、はたから見れば丁重にお断りするようにしか見えなかっただろう。
だが付け足すように発せられた、囁くような言葉に青年もまたにこりと、笑みを浮かべる。
表立ってはできないが、そうではない方法でなら、支援を得られる、ということだ。
無論、師団の戦果を名声として得ることはできなくはなる。
だが裏からの手回しであっても、二人のやり方次第で互いに得られるものがあるはずだ。
そんな彼女の密かな提案に、青年は承諾の意味を込めて、小さくうなずいた。

ナイン >  正直を言えば。…私も其処は同じです。
 どうしても仲間内、貴族同士の付き合いばかりなもので――軍側に関しては、既知など殆ど居りません。
 その上で貴君等に関して聞こえてくるのは、大概が、貴族を疎んじているという事ばかりなので。
 …勿論。そう考えられても、致し方のない輩ばかりが目立っている事も。重々承知しておりますが。

(互い憎み合った侭では、取れる手も取れないだろう。
だが、少なくともこの男は。官と軍の乖離久しい現状でも、こうして。言葉を交え、手を差し伸べてくれた。
世の中この二つさえ出来れば、相互理解の図れる機会は、随分と増える筈なのに。たったそれだけが、どうしてこんなにも難しいのか。
差し出す手が二つ揃えば。それは、手を取り合うという事になる。
だから此方も。そうして男の。第十三師団とその長の、手を取る事にした。
今は未だ、密やかな物にしか。公には出来ない密約にしかならないのだとしても。)

 ――外せる機会が有るのなら、いっそご一緒したい所です、がね。此方としては。
 勿論、逢瀬に相応しい場は、準備いたしましょう。…其方にも、赴かせていただきたいものですが。

(さて。軽く首を傾げながら、真顔に等しい貌で言ってのけたのは。冗談か否か。
無論、逢瀬などという単語には相応しくない…酷く真面目な契約内容か。それとも、剣呑な会話が交わされるか。そういう事を前提として。
男の場所。即ち師団の下へ赴いてみたい、というのは。此方は間違いなく本当の言葉。
互い手を組むというのなら、手の内を知り合う必要も有るのだし…正直。見てみたくはあるのだ。
人、魔、その他諸々が。実際に手を取り合っている場所が、如何なる物であるのかが。)

 彼女にとっても。次の働き次第、という部分は大きいかと。
 当人の思惑が何処に有るのかは別としても。師団一つを、他のやっかみから庇わねばならないのなら。
 一番の方策が、文句を言えない程の功働きである事は。間違いないのだから。

(これまた。矢張り、裏を返せばの物言いだ。
彼女…第七師団だけではない。第十三師団にも。誰にも文句が言えなくなるような、軍功を挙げてみせろと。
そうすれば互い後ろ指を指される事も無くなるだろう。大っぴらに、囲い込みの話も出せるだろう。
何より…有無を言わさず認めざるを得なくなれば。今日のような事も減るだろう。
悪とすら呼ぶに値しない愚物が、ぐうの音も出なくなる事を考えれば。自然、笑みが剣呑な代物となってしまいそうで。
軽く口元に手を宛がい、近付けていたその距離を退いて。立ち上がる。)

 ――そう。互い、遠慮の要らなくなる時が来る事を。願いましょう。
 その為には――随分と。周囲を変えねばならないのでしょうが。
 決して不可能ではない、そう言い切りますよ。私や、貴君等だけではない。存外国を憂える者は多いのです。

 さて。詳しくは後日。然るべき形にて、詰めさせていただければ。

(もう一度礼をしてから。最後に男へと向けた笑みは、きちんと。不穏も何も無い、少女のそれを演じていた筈だ。
既にたった今から、表に対しては隠し通す、そんな素振りを開始しているのだと。
ゆるりと背を向け歩き出す。…何れきちんと場を設ける事になるだろう。少なくとも、戦が本格的な物となる前に。)

ご案内:「王都マグメール 王城」からナインさんが去りました。
ヴェルム > 「確かに、こちらも横の付き合いばかりが多く、貴族の知人友人は乏しいですね。
噂の通り上からの覚えは悪いですが、卿のような方と知り合えたのは幸運だったと思います」

彼女と同じく青年もまた、軍属の友人にはそれなりに恵まれているものの、王族貴族の知人というと…
いや、一人王族に知人と呼べる人物がいるにはいるが、彼もまた立場があり何より多忙の身である以上、こちらと関わるようなことはないだろうが。
確かに王族貴族に対して、影で愚痴ったり誹ったりすることはあれば、それは道理や良識に反する物言いに対してのみ。
彼女のように真摯に国政に取り組もうと考えている人物に対しては、与える印象は大きく異なったはずだ。

「ええ、そういう機会が設けられるよう、こちらも場を…
よろしければ師団の拠点にでもご案内しましょう」

ハメを外す件について冗談かどうかはさておき、少しは期待したいところ。
まぁそういった姿を目にするには、さらなる信頼の獲得が必要といったところか。
彼女がそういった場を設ける、つまり手の内を少しでもさらすつもりがあるのなら、こちらも師団を直に見てもらいたいところ。
今後の提案次第では、師団の拠点へ招待することにもなるだろう。
そこで我らの働きぶりを見て、本当に支援するかどうかの判断をしてくれでもいいのだから。

「彼女も必死でしょう、抱えている負の遺産は大きいでしょうが、彼女ならうまくやれると、思います。
十三師団も、なぁなぁと大人しくしているのも終わりにする頃合いでしょうし。
かといって派手にやりすぎないようにはしましょう」

青年からしても、第七師団の今後の働きには注目したい。
もちろんそれは十三師団も同じ、こちらから売り込みを掛けたのだ。
しっかりとした武功を上げなければ、彼女の期待を裏切ることにもなる。
もちろんやりすぎれば余計な反発を招くような師団ではあったりする。
結局のところ、何事もバランスだ。 しれっと武功を上げて、上の目に留まるようにすればいい。

「ええ、そうなることを願います。
といっても、まずは師団がその実力を見せる必要がありますが。
期待には応えさせていただきます」

事を起こす前に、具体的な話をまとめる必要があるだろう。
後日改めて、という形で彼女が席を立てば、青年もそれに倣い立ち上がり、微笑む彼女を見送ることにしよう。
彼女がラウンジを去ってからしばらくしたのち、青年も時間差でラウンジを後にした。

ご案内:「王都マグメール 王城」からヴェルムさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城 大会議室」にカテリーナさんが現れました。
カテリーナ > 王国軍の軍議において、この日重大な発表が為された。

「カテリーナ・グラッドストンを第三師団長として復帰させる」

どよめく武官達の声は、圧倒的に否定的な色合いが強かった。
カテリーナ・グラッドストン。かつて第三師団長であり、その腐敗貴族そのものである精神性と用兵から、忌み嫌われた人物であった。

「国王陛下の御意のままに」

嘲笑を含んだ声でカテリーナが応える。
国王などという存在しない人物の意思が何を意味するというのか。
ここに自分が復帰したのは、政争を勝ち抜いた結果なのだ。

カテリーナ > 議長の目の前、中央の席に傲然と足を組んで座る彼女の姿は、見る人間が見れば女王とも見間違うものであろう。
その傍に侍るのは、彼女の側近であり第三師団の将校ではない。

「……あの、第三師団の将校たちがこの前事故死したのって」
「しっ!」

どよめく声は、武官達の動揺を示していた。
カテリーナの仕業かどうかは分からないが、ここ最近何人かの第三師団の将校たちが不審な事故死を遂げている。
だが、大貴族達の後援を持つカテリーナに対し、その疑惑を追及する人間などいるはずが無かった。

「あの下品で粗野なオーギュストが無様に死んだという事で、あなたたちもずいぶんと醜態を晒したようね?」

そして第一声がこれである。
武官達は一斉に表情を硬くし、第七師団の関係者などは怒りのあまり斬りかからんばかりに激昂する。

だが、カテリーナは意に介しなどしない。

カテリーナ > カテリーナは席も立たず、声も荒げず告げる。
まるで、王が臣民に諭すような、無機質な声で。

「あなたたち軍部がこの国を統べる正統なる血筋を無視し、己の力ですべてを解決できると思い込んだ結果があの敗戦。
今後は王国軍が誰のものなのか、この国を統べるべき正しき者が誰なのかをきちんと認識し軍務にあたる事。
それを肝に銘じなさい」

傲然と言い放ちながら、カテリーナは武官達を睥睨する。
どいつもこいつも不満と怒りを内在させた顔をしている。
結構だ。どのみち、こいつらに忠誠など期待しない。せいぜい戦場で駒となればいい。

「何か言いたいことがある人間はいる?」

カテリーナ > 「居ないようね」

元より、ここで口答えするような奴は粛清する、という為に放った質問だ。誰も応えるはずもなし。

「それじゃ、これからの戦略だけど」

それから彼女の口から語られたのはとんでもないものだった。
タナールは絶対死守、王国の誇りにかけて守り抜く事。いかなる犠牲を払っても王国の威信を守る事。その為に各師団は兵を供出し可能な限りタナールへと進軍を繰り返す事。

「ま、そこまで変わるわけでもありませんわね。これまで通り、ただし各師団、負担を恐れて崇高な国防の義務を他師団に押し付ける事などないよう、期待しますわ」

他の師団への嫌味たっぷりに言いながら、不遜に笑って見せる。
王国内の貴族からは、未だ魔族への恐れが聞こえる。ここらでその貴族たちへの恩を売っておくのも悪くない。

もちろん、彼女に他師団への指揮権限などない。
要は、脅しているのだ。これ以上のらりくらりとサボるつもりなら、相応の対応を取る、と。
ついでに大嫌いな第七師団へは、とっとと魔族たちに突っ込み今度こそ文字通り全滅してくれとの期待を込めている。

ご案内:「王都マグメール 王城 大会議室」にミリーディアさんが現れました。
ミリーディア > 様々な感情が駆け巡る大会議室。
無造作に扉が開かれれば姿を現わすのは一人の少女。
中の光景を目にし様と平然と端の席に歩み移動すれば椅子に腰を下ろす。

「すまないね、第二師団の二人は何時もの如く国外出回りだ。
気にしないで続けてくれ給え」

誰に云うでもなく言葉を紡ぎ、座った席の隣の者へとこう言葉を続ける。

「で、内容は何かね?面倒なので簡単に纏めて頼むよ」

マイペースを崩さぬ少女。
ある意味、此の場を手繰る相手と変わらぬ立ち位置と見えよう。

カテリーナ > 「あら」

呟きながら見やると、なかなか珍しい人物。
会議などへ出てくるタマではないと思ったが――出てくるならばそれでも良い。
ちらりと見やりながら、言葉を続ける。

「ええ、負担は各師団にしてもらうつもりですわ。
特に王都の守りを重視する第一師団、魔導の研究を主とする第二師団。この両師団からは人材、予算の双方を前線へ。これは前線部隊の総意とも言えるでしょう、ねぇ?」

ちらりと見やれば、顔を伏せる騎士が多数。
現在前線には人材も予算も、まるで足りていない。その点で両師団に融通をしてもらいたい部隊は多い。
ただ、それを面と向かって、ましてや第二師団の古株である彼女に言える人物など居ないだろう。

カテリーナは臆面もなくそれを言ってみせた。
なにやら怪しい研究を続けているようだが、少しは国家に対し還元をしてみせろ、と。

ミリーディア > 「成る程。
第一師団は知らんが、第二師団としては難しい話だね。
何せ、師団長様も副師団長様も出払う程の多忙さだ。
其れに加え、第二師団が関わるのは戦いだけではない。
戦う事に執着し、他が疎かになるのは賢い選択とは云え無さそうだが…如何なのかね?」

彼女の言い分に賛成意見は必ずしも少なくは無いだろう。
魔術師の存在は何処にでも在って損は無いものなのだ。
だが、言葉の通り一点に固着すれば他に影響が起こるのも事実。
此の国の全ての面を眺め続けての意見を述べる。
述べながら、此の目の前の存在に再び楽しみが起こりそうだと考えてはいるも…
口にすれば面倒事が増えそうなので其れは敢えて伏せておいた。
戦いの面を除いての魔術や魔導機械研究の成果は上々で在る事も含めて、である。

カテリーナ > 「ええ、十分に理解していますわ」

彼女の腰にある魔剣とて、魔術を使い解析をしたから使いこなせている。
技術の進歩で遅れれば、必ずや戦争における敗北の要因になる。それは分かっている事だ。

「ですので、第二師団には必ずしも人材、予算の融通をしていただかなくても構いません――が」

そこで一度区切りながらきっぱりと告げる。

「代わりに研究中の技術に関して、特に前線の役に立ちそうなものを開示していただきましょう」

技術を秘匿し、師団の為の政治利用をする事は許さない。
予算と人材を使うならば、相応の還元を前線に対しせよ。
それが、彼女の言い分だ。

「もちろん、一般に開示しろなどと馬鹿な事は言いませんわ。師団長級に対して技術を開示し、前線には極秘裏に配備する事といたしましょう」

その点に関して譲るつもりはない。
現に――

「出来ますわよね――第13師団などというどこぞの犬ッコロにはしているようですし?」

暗に言う。
あの毒を利用した一件で第13師団ごと処断されたくなければ、大人しく技術の一部を軍事利用させろ、と。

ミリーディア > 「はて、此方の研究所での資料は常に提示している筈だが?
勿論、最終的に儂が視て使えると判断したものに限るがね」

彼女へと返す言葉に嘘偽りは無い。
自分の研究所に居る研究員達が関わるものに限るが。
そう、此の言葉の対象はあくまでも研究員のみなのだ。

「おっと、儂はあくまでも選定をしているに過ぎないのを忘れないでくれ給えよ?
何せ研究内容は研究員に依って多種多数なのでね。
御陰様で儂の研究は進めれない始末だ、困ったものだよ」

そう其れも伝えれば、後の言葉に少しばかり思案する様な仕草。

「残念だが、其れに関しては此方の研究所は関わっていないな。
其の手の研究は儂に先ず通せとの決め事を無視して勝手にやった連中が居た様だ。
既に関係者も資料も消えた後らしい、其の件の追及は無理そうだがね?」

肩を竦めてみせながら、そう答えた。
此れに関しては少々真実を歪めているが、関係者も資料も既に消失しているのは事実である。

カテリーナ > 「ええ、資料には目を通していますわ。
――予算と人材の使いっぷりに割りには、それに見合った研究成果が出ていないのではなくて?」

ほとんど言いがかりである。
第二師団の研究もそうだが、そもそも研究というものの成果など、目に見えるものではない場合がほとんどだ。
次の研究の、その次の研究の。連綿と連なる技術を紡いでいくために研究というのは存在する。
だが、この女にとってはそんな事は関係ない。前線は困窮し、明日にも崩壊するかもしれない恐怖と戦っている。その恐怖を利用し、煽り、他師団から何かしらを搾り取ろうとしているだけだ。

「関わっていないかどうかは貴女から聞く事ではありませんわ。
――ま、いいでしょう。よく考えておく事ですね」

資料も関係者も消えているなら好都合、適当にでっち上げれば良いと女は考えていたが。それは最終手段だ。ここで積極的に第二師団と事を構えるつもりはない。
まず目標は第七師団。各師団からの物資を前線に送る流れを作る事など、第七師団を標的としたものをカモフラージュするものに過ぎないのだから。
各師団から人材、予算を徴収するとなれば、もちろん第七師団も対象になる。そして、今最も困窮し、徴収されたら困るのも、第七師団なのだ。

ミリーディア > 「仕方の無い事だが其れが常人の見解と云うものさ。
魔法技術は見る者が見なければ理解も出来ないのだからね。
然し、着実に進歩をしているとだけ儂からは云っておこう」

彼女が此方の事情を気にしない様に、此方も彼女の事情は気にしない。
故に少女は言葉に対しての返答をするだけなのだ。
彼女の考えを理解しているか如何かに関しては謎だが。

「確かに、只、少なくとも理解出来る事も在る。
連中が十三師団を利用した、と云う程度の事だが。
彼等も不遇な事だ、そうは思えないかね?」

敢えて其れを言葉にして彼女へと伝える。
否、正確には此の場に居る者達へと聞かせる為に伝えたのだ。
少なくとも、此の件を捻じ曲げ様とすれば周囲が其れを理解し易くする為に。

カテリーナ > 所詮は技術者とパトロン、永久に理解し合う事が無いのが世の常だ。
それ以上の議論は無意味だと女も理解し、言葉をかける事はない。
必要になれば必要な措置を取る、それで十分だろう――今の所は。

「犬ッコロに理性も品性も求めていませんわ。悪い事をしたなら飼い主ごと『躾』をしてやるし、必要ならば見せしめに吊るす。それだけの事でしょう?」

ティルヒアの反逆者などその程度のものだという侮蔑を隠そうともしない女。貴族意識の塊のような存在であり、そして奇しくも彼女が毛嫌いしていたオーギュストと同じ見解でもあった。

もちろん、場の空気は彼女の意見に否定的だろう。
武官ならば第十三師団が如何に苦心する立場にいるかも、その中で活躍している事も知っているだろうから。むしろ彼女の態度は、彼らへの同情を産むかもしれない。
だが、女は気にしない。そもそもこの場の武官の意見や感情など、何一つ求めていないのだから。

ミリーディア > 理解が早いからの沈黙。
面倒が無くて助かる、そう思ってしまう。

「成る程、君は彼に通じるものが在る様だね。
儂としては解り易くて助かるのだが…
どの様な存在で在れ其れを確りと理解すれば扱い様も見えるもの。
君が一体如何な流れを作り出すのか…今は見させて貰うよ」

彼女の言葉に肯定も否定もしない。
何故なら、彼女が生み出す先も見てみたいと考えてしまっているから。
だから伝える、自分は静観の構えを取る事を。
他の師団の者達には悪いが、代わりに僅かな助力程度は考えておこう。

カテリーナ > よく分からないが、特に今は何をするつもりでもないのだろう。これまで通り。
ならば良い。少なくとも敵対しないのならば。彼女の持つ第二師団の技術も、今は必要ない。必要になれば取りに行くだけだ。まるで倉庫に置いてあるものを取り出すかのように。

「結構ですわ、特に貴女に期待している事はありませんので――」

ずけずけとモノを言いながら、話題を次へと進める。
新たな第三師団の人事――ほとんどを身内で固めてしまっているが――、編成、補給などの確認。
第三師団はすぐさま規模を拡大、現各師団の中では最大規模の兵力と物資を整え、タナールへと進発する事を発表する。

「――戦略的意味は特にありませんわ。デモンストレーションのようなものです」

ミリーディア > ミリーディアと云う存在として、静観をする事は変わらない。
無駄な期待を持たれるよりも、彼女の答えは自分にとっては助かるもので。
此れで暫くは只暇な日々と為る事も無さそうだと考えていた。
彼女の言葉には右手をヒラリと振って応えておく。

来る前の話は簡単な説明で済ませて貰った。
来てからの話は座る席で寛ぎ乍聞かせて貰う。
ミリーディアでは無い存在としては如何したものか。
彼女が発表を終える迄小さな笑みを浮かべ眺めていた。

カテリーナ > ただ彼女が戻ってきた事を知らしめるため。
それだけの為に。
万に匹敵する人数の命を賭け、そして幾人もの命を使い捨てる事を宣言する。
武官達は嫌悪感をもってその言葉を聞きながらも何も答えない。

「――では各自、準備を怠らないように」

そう宣言し、女は立ち上がり部屋を出る。


邪魔な男は居なくなった。さあ、始めよう。
目障りな第七師団を潰し――今度こそ、彼女を手に入れる為に。
その為ならば、幾人の命でも使い捨てる事を厭う事などないのだから。

ご案内:「王都マグメール 王城 大会議室」からカテリーナさんが去りました。
ミリーディア > 宣言し、場から立ち去る相手を眺める様に見送る少女。
其の表情は笑みを浮かべた侭で在った。

「足元の小石は、所詮は只の小石だ。
然し、其れを蹴る事で跳ね返る小石で自身が傷付く事も在る。
当たり所が悪ければ、軽症では済まない場合も在るだろう。
……さて、君は如何なるものだろうね?」

彼女と同じく場を後にする者達が居る中、そう呟き少女も席を立つ。
クスクスと笑い乍、研究所の自室へと戻って行くのであった。

ご案内:「王都マグメール 王城 大会議室」からミリーディアさんが去りました。