2018/10/09 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城」にイヴリールさんが現れました。
■イヴリール > いつものようにお付きの侍女に少しだけ、と断って
王城の自室…鳥籠から外へと足を踏み出す
中庭にでも行ってみようかな
そんなことを考えつつ回廊を歩けば、なんだか赤い顔をした綺麗な人とすれ違った
…慌てていたようだったけれど、何か急いでいたのだろうか
もしかしたら具合が悪かったのかもしれない、声をかけてあげたほうが良かっただろうか…
そんなちょっとした勇気が相変わらず持てず、小さく溜息をついて少女は王城の中を宛もなくて歩いていた
■イヴリール >
月明かりが窓から差込み、美しく回廊を照らす
陽の落ちた、こんな時間の散歩が許されるのも王城の警備があってこそだ
…もちろん、良い顔はされないけれど
警備している兵士にすれ違うと労うように小さく一礼し、通り過ぎる
彼らはいつ眠っているのかな…
取り留めもないことを考えながら、そうだとテラスへと向かっていく
小さく吹き込む風が長い金糸の髪とドレスを撫ぜてゆく
心なしか、その風に少し薄寒さを感じながら……
「…気持ちいい」
テラスから見下ろす夜の城下は、綺麗だった
様々な灯りが見え、あの灯りの元には、人がいる
こんな時間でもちらほらと城下町には賑わいの火が見えた
──こうやって、眠れない夜が増えた気がする
……いろいろな人と出会い、いろいろなことがあって、考えることが増えたからかもしれない
ご案内:「王都マグメール 王城」にクレス・ローベルクさんが現れました。
■クレス・ローベルク > 「寒くなってきたな……」
黒髪の燕尾服を着た男が一人、王城の回廊を歩く。
とある縁で知り合った王族の頼みで、その息子に剣を教えたあとのこと。
自分の部屋に戻る前に、昼に見つけた綺麗なテラスで、折角だからワインでも飲もうかと、ボトルとグラスを持ってテラスに歩いていく。すると、目にしたのはドレスを着た小さな女の子の姿。
「おや……?先客か」
格好からすると、何処かの家のお嬢さんだろうか。
別に無視しても良いが、しかし、
「(まあ、こんな可愛い子と、知り合いにならないって手はないよねえ。いいとこのお嬢さんならコネも出来るし)」
そんな下心と共に、彼は少女へと近づいた。
取り敢えずボトルとグラスは、出来るだけ目立たないように後ろ手に隠し、
「こんばんは、お嬢さん。僕はクレス・ローベルクという者です。此処で休憩しようと思ったら、どうやら先にそちらが使っていたようで……。もしよかったら、ご一緒させていただいても?」
と声をかける。
■イヴリール >
「……?」
声をかけられ、こんな時間に…?と不思議そうにそちらへと顔を向けて
「こんばんわ、クレスさん。…はい…少々夜風に当たりにきただけですけれど、構いませんよ」
ふとすれば風の音に紛れてしまいそうなほど小さな声
か弱い、という表現がそのまま当てはまりそうな少女だった
「…私はイヴリール…と申します」
王家の名を語るのは、最近は少し心苦しい
城の中のことをそれなりに知る人間なら、その名だけで何者かということは知られているかもしれないけれど…
■クレス・ローベルク > 「有り難い。仕事が終わって直ぐこちらに来たもので、大分疲れていたのですよ。丁度、お嬢さんぐらいの男の子に、剣を教えていまして」
と安心したように笑って、イヴリールの対面の席に座る。
これは嘘ではない。お手本のために剣を振ったり、変な癖がつかないように真剣に見る必要がある。そういう意味では、心身は疲弊していた。
だから、座る際も、ふぅ、と脱力した息をつきながら腰掛け、イヴリールと話をする。
「イヴリール……ああ、あのカルネテル王家の……。まあそれはさておき」
クレスは彼女が不義の子であるという事を、あっさり無視する。
これはクレスの気遣いでもあり、同時に彼が彼女の背景に全く興味が無いことへの証左であった。ぶっちゃけ、彼は疲れていて、女の子と話したかっただけで、国がどうとか、政治がどうとかは、今の頭で考えたくなかった。
勿論――彼女が話したがるならば、それは彼女を知る貴重な機会として、話に付き合うのだろうが。
「折角こうして知り合ったわけですし、少しお話をお聞かせ願えませんか?この歳頃のお嬢さんの話を聞くのは、中々機会がなくて……。まあ、不躾にこちらから聞くのもなんですし、何か話したい事でもあれば、になりますが」
どうでしょう?と聞いてみる。
■イヴリール >
「そうなのですか。剣を嗜まれるのですね」
細身に見えるが、人に教えるというのは大変なこと
きっと腕の立つ剣士なのだろうなあ、なんて想像を巡らせる
カルネテル王家の…と言葉が耳に届けば僅かにその身体をびくっと身震いさせる
……我ながら情けないほどに、その名にはコンプレックスがある
「…お話、ですか…?
ええと…そう、ですね……」
話を振られれば少々困ったような表情を見せる
自分ことや自分のことでのお話、何か…人に話せることがあっただろうか…
鳥籠からたまに出される程度の少女にはそれを探さなければならないほど、
自分やその周囲で語れることがないようで、申し訳なさそうに視線を落としている
■クレス・ローベルク > 「はい。剣と言っても、流石に此処にいらっしゃる様な方は戦場に出る訳ではないので、護身術兼遊び、みたいなものですが。身体を動かすのが好きなお子さんですから……イヴリール嬢は、趣味などおありですか?」
引っ込み思案な様なので、取り敢えずそうやって話題を振ってみる。
しかし、やがて困ったような表情で視線を落とされると、しまったという様な表情になる。
考えられる事ではあった。そもそも、普通の貴族の娘であっても、そうそう外に出られる機会は少ない。話題そのものが欠乏しているのだ。増して、それが彼女のような子であれば――!
「(いかん、気まずい。というか話してる子に気遣わせるとか格好悪い大人にも程が有るぞ自分!えーと、とにかく何か話さないと――!)」
失策に気付いて、視線を左右にさまよわせる。
そして、下を俯こうとして……ふと、自分が腰に挿している剣に停まった。
これだ!?と、何故かクレスはクエスチョンマーク付きで天啓を得て、
「そうだ、イヴリール嬢も、どうでしょう?流石に今直ぐに剣などは教えられませんが、女性用の護身術ならば、幾らか教えることができます。流石に城の中で物騒な事は中々起きないでしょうが、身体を適度に動かすためのストレッチとしても有効なので……!」
何か無理矢理こちらの得意分野にこの子を引きずり込んでいる気がしなくはないが、しかし多少でも興味を引ければそれで良い。表面上は完璧な笑みで、しかし内心は祈るような必死さで、イヴリールに提案してみる。
■イヴリール >
趣味…
しいていえば、部屋で本を読むこと…
そして、昼間に外出できたならば、此処から望遠鏡で街の様子を見ること…だったが
前者は他にすることがなくしているだけ、後者はなんだかのぞき見をしているようで恥ずかしかった
「…え、護身術…ですか? 私に、できるでしょうか…」
思わぬ申し出だったのか、少しだけ目を丸くしてそう応える
抱きしめれば軽く折れてしまいそうな華奢な肢体
どう考えてもそういった領域からはかけ離れている様にも思え、
それを自分でも理解しているため、少しばかり驚いた反応を見せて
「剣は…重くはないのでしょうか」
うーん、と小首を傾げながら、その腰に帯剣されたそれを眺めて
■クレス・ローベルク > 「っ!、はい、勿論ですとも」
一瞬、あまりの緊張で「勿論ですとも!」と大きな声をあげそうになってそれを必死に自制する。
此処で怖がらせては水の泡だ。
「そもそも、護身術というのは、身を護る術。誰が誰から身を護るかと言われれば、それは弱い人が、強い人から。そして、弱い人の大半は、剣なんか持ち歩きません。持ち歩いて精々、ナイフぐらいでしょう」
故に、剣など必要ないのです――
と、何だか説得力がある様な無いような事を言い、
「だから、例えば悪漢に襲われたとき、助けが来るまでの、或いは逃げるためのほんの数十秒を稼ぐ。それが護身術なのです。具体的な事を知りたいのでしたら――幾つか実践をいたしますが」
どうでしょう、と聞いてみる
■イヴリール >
「ナイフ…」
そういえば刃物は手にしたことがなかったな、なんて思いながら…
「私にでもできることでしたら、是非に…」
と、小さく笑って言葉を返す
お城の中から出れない姫
悪漢に襲われることなどあろうはずもない、が…
お城の外へ馳せる想いは日に日に募るばかり
…いずれその夢が現実となったときには、もしかしたら必要になるのかもしれない
■クレス・ローベルク > 「是非に」という言葉を聞いた瞬間、クレスは安堵の余り腰が抜けるかと思った。何せ、我ながら説明が怪しすぎる。これでやる気になってくれるこの子は本当に素直で良い子なのだろうが、同時に心配にもなってくる。
「(まー、だからこそしっかり教えてあげないとなあ)」
「では……そうですね。簡単な護身術として、手首を掴まれた時の対処法をば。例えば町中――イヴリール嬢ならば王城の庭園辺りを散歩する際、悪漢や刺客に手を、まあこう掴まれるわけですね?」
そう言って、自分の右手で、自分の左手を掴んで見せる。
がっしりと握り込んで、そう簡単には振りほどけないよと上下に振った後、
「さて、この状況、イヴリール嬢ならどうします?」
■イヴリール >
「手首を…えっと……」
強く握れば折れてしまいそうなほどに細い、その手首をすっと差し出す
握り込まれればそれだけで普通には振り切れないということがよくわかる
「んっ…やっ、んんっ…!」
振りほどこうと引っ張ってみる
えいえいと難度か引っ張るもそこにかかる力は僅かなものでしかない
本当に最低限しか筋肉がついていないのだなと分かる程度には非力であった
「…た、ただ引っ張るだけではダメみたいです」
■クレス・ローベルク > 彼女が差し出してきた手を、強く握る。
ちょっと痛いぐらいかもしれないが、しかしそれぐらいでなければ意味がない。
「(しかし、本当に非力だなこの子……。)」
この子体調維持とか大丈夫なのか、とますます心配になる。
とはいえ、非力なのはある意味では有り難い。
それだけこちらの教える技術の必要性が増すという事でもあるのだから。
「まあ、イヴリール嬢はやや特殊例ですが……普通の女性、若しくは農作業などで鍛えられた女性でも、これを振りほどくのは難しいでしょう」
だからと言って、
「振りほどくのではなく、離して貰うのです。例えば、僕の親指を左手で握ってみてください。掴んでいる親指の付け根から、人差し指を潜り込ませれば、後は握られている手首と親指の間に隙間が空くので簡単に親指を握り込めます。ちょっと失礼」
こんな風に、とイヴリールの左手を取って、実際にやらせてみる。
やや自分の手のひらと手首の間に指が挟まれて、やや痛いだろうが、そこは我慢してもらうしか無い。
大体、これから痛い思いをするのは寧ろ自分だ。
「では、いっせーのせ、でこの親指を思いっきり手の平側に押し込んでみましょう。ちょっと撚るようにして。腕の力を使って思いっきり、ね。いっせーの、せ!」
彼がやらせているのは要するに、親指の可動域の外側に、無理矢理親指を動かす行為だ。幾らイヴリールが非力だからといって、親指一本に対し手と、それから腕全体の力で対抗すれば、無理矢理親指を捻じ曲げることは容易いはずだ。
……問題は、それはつまりクレスの親指が犠牲になるということなのだが、まあ彼女の力では親指を破壊はできまい。それは我慢することにした。
■イヴリール >
「っい、た……こ、こうっ…!」
教えられた通りに、その親優美を握りしめてぐいっと押し込んでみる
少女はちょっと必死そうに見えた
なので、持てる力の全てを込めてそれを行ったのだが…
一般的な同じ年齢の女性と比べれば明らかに非力で、
それでもなんとか教わった通りにぐいぐいと押し込むことぐらいはできるようだった
「んっ…!」
きゅっと唇を噛み、眉を顰めて、儚い渾身の力を込めていた
■クレス・ローベルク > 「あいたたた!」
親指が押し込まれると同時、クレスが悲鳴をあげた。
振りほどかれたのは寧ろイヴリールの手の方。瞬間的にイヴリールの手を弾いた後に、親指の調子を確かめるように上下左右に動かした後、笑顔を作った。
「とまあ、こんな感じです。こういう小技を幾つも覚えれば、まあ、大体の状況に対して時間稼ぎができるとそういう技術なのですが――少しでも興味を持っていただければ、幸いです」
と少し自信なさげな笑みで。
実際、自信はなかった。これがイヴリールにとって面白い物なのかは、彼女の感性でしか無いからだ。
■イヴリール >
「きゃ…っだ、大丈夫ですか…!?」
痛がるクレスの声に、慌てる様子を見せる
強くやりすぎてしまっただろうか…などと思うものの、笑顔を見て胸を撫で下ろす
「…よかった、お怪我をさせてしまったかと……。
そうですね…そうなったときに私の力でもできることがある、とわかったのはとても有意義です」
向けられた自信のあまり感じられない笑顔には、ふんわりとした穏やかな笑みを返した
「でも、すごいものですね、護身術…私なんかの力でもあんなに…」
■クレス・ローベルク > 「はは、流石にイヴリール嬢のお力で、どうこうなるほど軟でもありませんよ。これはあくまで護身術。敵を倒す技術ではないのですから」
と笑う。そして、有意義だと言ってもらえると、ほっとした表情を浮かべる。
「(良い子でよかったよ、本当に……)」
聞いた噂だと、酷い境遇ではないにせよ、生き辛い境遇の子だ。
こういう技を覚えて何になる、といじけた事を言っても良い。
そうしないのが、彼女の美徳なのだろうと思う。
何にせよ、これで大人としての体面は保たれた。これで帰っても良いが――折角なので、駄目元で。コネ作りをしてみることにした。
「イヴリール嬢が宜しければ、定期的にこういう技をお教えしますよ。本当はお金を取るんですが――イヴリール嬢の様な魅力的な方とひとときを過ごせる。それで十分元は取れますし、ね」
実際、此処でイヴリールとコネが取れれば、王城にも入りやすくなり、色々と便利になる。何より彼女を鍛えるのは、やりがいという意味でも、下心という意味でも、楽しそうだ。流石に手を出すのは慎重になった方が良いだろうが、本格的な練習になれば、体に触るぐらいは許されるだろうし。
そういう打算と、それからほんの少しの親切心。とはいえ、あくまで駄目元。さてどうなるかは彼女次第だ。
■イヴリール >
「定期的に、ですか…。その、私はお部屋から出られることがあまりないのですが…それでも…?」
タイミングが合えば…という形になってしまう
しかしこうやってできたせっかくの縁である
少しずつでも、自分の世界を広げていかなければ……
「魅力的、だなんて…」
照れたように俯き、その視線を逸らす
そういったことを言われ慣れていないわけではないのだろうが、
こうやってただ二人しかいない場でまっすぐに言葉を向けラエルのは少々照れくさかったようで
体のいい世辞であるかもしれないが、それはそれとして、である
■クレス・ローベルク > 「勿論です。イヴリール嬢にも都合というものがありましょう。僕も基本的にはダイラスにいて、王都に居るのは休日だけですし……そうですね。王都に来た時に出来るだけ王城に寄ることにして、それでタイミングが良ければ、という事にしましょう。」
王城に定期的に通うことになるが、それだけの価値はある。
イヴリールにとっての他人がそうであるように、貴族社会からはみ出てしまったクレスにとって、彼女のような存在は色々な意味で貴重だ。
うん、いい出会いだったと思って少女を見る。
「あれ?」
すると、何故か視線を反らしている。
はて、と思う。何か悪いことでも言っただろうかと。
クレスにとっては、当たり前の事を当たり前に言っただけだったので、理解が少し遅れ――そして今更になって理解が追いついた。
「ああ、成程。これは失礼しました。確かに口説き文句と誤解されかねない発言でしたものね――」
ふむ、とクレスは心の中で思う。
どうやら、満更ではないらしい。勿論、具体的な行為をするのは時期尚早だが、言葉でならもう少し踏み込めるか、と。
「ですが、出来れば僕としては、誤解ではなく、真意と取って欲しいと、そういう欲が無いわけでもないのですが。どうでしょう?」
■イヴリール >
ダイラス…港町だったか、とても賑やかな場所なのだろうなあなんて、思ってみたりもしつつ
また出会えればそういったお話も聞くことができるかもしれないと…
「っ…い、いえ…あまり、そういったことを言われるのは、気恥ずかしいもので…」
赤面症の類もあるのか、視線を反らしたままにたどたどと言葉が続く
「……………。
い、いけませんよ、ふ、不埒です……」
しばらく意味がわからなかったのかきょとんとしていたが、それに気づきやはり慌てた様子でわたわたとそんなことを宣う
──免疫とでも言おうものか、純潔な身ではないものの、まだまだその精神面は少女じみているようで…
■クレス・ローベルク > 「ほう……」
意外でもないが、やはり初心なんだなあ、と微笑ましさすら感じる。
とはいえ、本格的に口説くには時間が足りないし、何よりこういうのはゆっくり進めていくのが楽しみでもある。
――なので、最後にイタズラだけして帰る事にした。
「不埒?いえいえ、不埒というのはですね」
そう言うと、奇しくも先程やった様に、右手で彼女の手を掴み、そして反対側の手で彼女の顔をホールド。そして、机越しに、顔を近づける。
「不埒というのは、こういう事を指すのですよ……?」
そう言うと、ゆっくり顔を近づけて唇を奪う――寸前で、彼女の額にデコピンするだろうが。
■イヴリール >
「っ──!?」
手首を掴まれる、引き寄せられ…頬に、その手が触れた
こういう時はどうするのだったか、さっき習ったばかり──
まぁ、そんなにすぐ教えられた通りのことが出来るわけもなく
「……!」
思わず、その眼を閉じてしまう
どうしてとっさに突き飛ばしたり、そういうことができないのかな、と
自分自身の僅かに残った冷静な心がそう呟く
ぺちん
でも訪れたのは、おでこにちょっとした刺激が走った───
「え…? あ…っ、なっ…な、な……」
呆気にとられる半分、驚き半分でその口をぱくぱくと開閉するもまともな言葉が出てくるまでには時間がかかってしまった
「か…からかったのですね…、そ、その…無礼、です、よ……」
いまいち震えた小さなその声に威厳は感じられないものお、ぷるぷると子鹿のように震えながらそう言葉を向けるのだった
■クレス・ローベルク > 額を指で叩いた後、暫くの間、クレスは真顔だった。
いや、正確に言うと口の端が微妙に歪んでおり、それは単純に笑みを堪えていただけだったのだが。
しかし、無礼ですよ、と可愛らしく、しかし何処か王族らしく言うその姿に、遂に堤防が決壊して。
「くふ、くふふ!ごめん。じゃなくてごめんなさい。いや、慌てふためいてるのが可愛くって、つい意地悪しちゃって。でも、さっき教えた事はできないにしても、大声をあげたり、そういう事をしないと駄目ですよ。それが護身術の第一歩……ふふっ。ご、ごめん、待って、結構ツボに入った……!」
と何やら教訓めいた事を言っているが、何せ笑いをこらえながらなので全く有り難みがない。威厳がないと言えば今のクレスこそ正にそれだった。そのまま暫く笑っていたが、やがて顔をあげると
「じゃあ、僕はそろそろこれで。さっきの技は、ちゃんと練習しておいてくださいね。次はそうだな――急に唇を奪われそうになった時の対処法でもやりましょうか。夜も更けてきていますし、イヴリール嬢も気をつけて……ふふっ」
最後に思い出し笑いしつつ、持ってきたボトルとグラスを手に、クレスは去っていった――
■イヴリール >
「…わ、笑わないでください……っ…もう」
別に怒るというほどでもないが、気恥ずかしさは増してゆくばかりである
もっとも、少女は感情を発露して誰かに怒ったことなど一度もないのだったが
笑いを堪えきれない様子のクレスへと非難な言葉、
しかし相手は気にする様子もなく、今しがた起こったシチェーションの対応策を教えようなどと宣い…
「っ…そんなことしようとする人、滅多といません…!! た、たぶん…」
少しむっすりとした様子でそう言葉を返す
──気づけば月も雲に隠れかけ、ほんのりと身体も肌寒い
「く、クレスさんこそ…あまりイタズラは、その…よろしくありませんからね…!お気をつけて…っ」
その背に向けてもう一度非難混じりの別れを言いつつ、はぁと溜息
自分も寝室へと戻らなければ……──戻ったところで眠れるだろうか
「余計に目が冴えてしまいました……」
とぼとぼと小さな足取りで少女もまたテラスから去ってゆくのだった
ご案内:「王都マグメール 王城」からイヴリールさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」からクレス・ローベルクさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城 私室」にマリナさんが現れました。
■マリナ > 窓辺で文芸書を読む鳥籠の中の少女。
白いネグリジェはうっすらと肢体の輪郭を透かしている。
ショーツは穿いているけれどブラは身に着けておらず、
突き出る形の乳房に引っ張られ、生地は胸元からカーテンのように垂れている。
今日は一日徒然とした日だった。
昨日の外出が響いたこともあり、静かに過ごしていた。
もう少し刺激があればと思うことはあるけれど、従兄の翼下に移って以降は
肉交を強いられるばかりなのでまどろむような日も悪くないのかもしれない。
ただ、体力は余ってしまうのか夜更かし気味。
ようやくあくびが出て、本を閉じると天蓋付きのベッドへと上がる。
近頃寒いので厚めの掛布団をしっかりと鎖骨の下まで掛けて。
「……おやすみなさい」
その言葉を合図に室内を照らしていた明かりが揺らめき、フッと消える。
王城に、もしくは少女の私室に何事もなければ、退屈な一日は終わろうとしていた。
ご案内:「王都マグメール 王城 私室」にヴィクトールさんが現れました。
■ヴィクトール > 彼女が穏やかな一日を過ごしている最中、この男はその従兄弟に呼び出されていた。
大体は自身の兄絡みであり、馬鹿のフリをしながら、適当に併せて流すことが多い。
酒の場で普段のように馬鹿を演じていれば、是非楽しんでもらいたい女がいると告げられ、蝋封のされた封筒と共に教えられたのは、少女が今眠らんとする私室への道程だった。
(「で、ここに来たら封を開けろって言ってたな」)
夜も更けた頃合い、周囲に気遣って血沼の戦地ですら気配を殺す歩みは、少女には気付けないだろう。
音もなく私室の前に立ったところで、指示通りに封を開く。
訝しげに眉を顰めながら中から取り出したのは、一本の鍵。
開けろということか、そう心の中で呟きながら鍵穴へそれを差し込み、ぐるりと回す。
金属のパーツが擦れあい、小気味いい解錠音が響くと、蝶番の悲鳴を響かせながら扉は開かれていく。
扉の隙間から差し込む月光を背に、顔の隠れたシルエットが私室へと差し込んでいく。
それなりの背丈に、引き締まった戦士の体付きに、黒尽くめの格好が徐々に現れると、背中には斜めに掛けられたクレイモアが僅かに覗ける。
明かりの消えた室内で、すぐに少女の姿は見つからず、数歩中へと踏み込み、ドアが閉ざされると共に腰のランタンを手に取り、明かりを灯す。
ぼんやりとしたオレンジ色の中に浮かび上がる。
顰めっ面の悪人顔をした、深夜の訪問者が。
■マリナ > 乳母日傘の温室育ちな王族の娘。
軍場など本の中の物語より遠い場所にあると思っている少女の意識が、ゆっくりと重くなっていく頃だった。
―――鍵の開く音。
沈み込んでいく心地を無理矢理引っ張り上げられるように、目蓋が開く。
天蓋に向けていた顔を扉へと向ければ、そこに何者かの影があった。
「…………?」
思わず お兄様 と唇を開きそうになり、言葉を押しとどめた。
狡猾だが努力を嫌う従兄とは体躯が違う。
誰かわからない。わからないけれど、鍵を持っているということは従兄の許可を得た誰かなのだろう。
それがわかっているからか、マイペースな性格故か、影が室内に入ってくるまでは声も上げず。
様子を窺っていれば、仄かな明かりで男の眉目が浮かび上がった。
「…………ご……ごめんなさい……」
彼からしてみれば明かりの消えた室内で突如聞こえる、消え詫ぶような声。
お互い様なホラーかもしれないけれど、とにかく臆病な少女は謝らねばならない気がした。
―――暗闇の中、可視化された成人男性の顰めっ面が、余程恐ろしかったようである。
■ヴィクトール > ランタンの明かりが照らし出すのは、娼婦が居るにしては随分と豪勢な室内。
派手というよりは上品といった印象を受ける調度品が多く、ベッドも天幕付きと、まるで姫君の寝床といったところか。
まさか、実際に王族の娘だとは思いもしなかったが。
明かりを右に左にと差し向けて、室内を確かめる度に、筋の折り重なった太い腕も、太い首の上の精悍な顔立ちもよく見える筈。
そして、消え入りそうな声にピクリと眉が跳ねると、ゆっくりとそちらへ眉間にシワを寄せた顔が振り返る。
のしのしとそちらへと近づいていくも、天幕を捲る手付きは悪漢とは異なり静かなもので、レースを掬うように優しく広げていった。
「……ぁ、んだこりゃ…あの野郎、本当にここであってんだろうな……こんな可愛いのがいるたぁな」
そこに居たのは、絵本の中から抜け出してきたかのような、大人しそうな幼い姫君といった姿。
色の薄い柔らかな金糸に、碧眼の垂れ目に色の薄い顔立ち。
布団に隠れた身体は見えないが、細身であろうと育ちが良かろうと、どちらでも楽しめそうな、綺麗な整いの顔。
ジト目になりながら、褒め言葉を交えつつ愚痴るものの、その内容から兄に言われてきたのだと察し付くだろうか?
怯えた様子に小さく溜息をこぼせば、傍らのサイドボードへランタンを置き、天幕越しに溢れる明かりは柔らかに輪郭をぼかして、不気味さを薄れさせる。
「わりぃな、脅かした。テオドロってやつにここにいいのが居るって言われてきたんだけどよ。アンタでいいのか?」
剣を傍らに立てかけると、ベッドの端にゆっくりと腰を下ろす。
ぎしりとその重みに深く沈む衝撃を感じさせながら、無骨な男の掌がゆっくりと伸びていく。
野良猫に触れるように、脅かさぬようにゆっくりと。
手が届いたなら、問いかけながらに金糸へと重ねていき、子供をあやすようにゆっくりと撫でていくだろう。
相変わらず、人相の悪い顔がニヤっと笑っているが。
■マリナ > 身丈や外貌だけでなく、まるで戦場帰りのような身形もあっての印象だったのかもしれない。
何もしていないのだけれど、咄嗟に叱られると身構えた予想は外れ、彼の振る舞いは穏やか。
口調に関してはイメージ通りとも言えるものの。
怯えた声を出してしまった自分に気を遣ってくれているのだろう、一つ一つの挙措。
うっかり客人をもてなすような表情ではなかったけれど、次第に少女の貌も柔らかくなってくる。
事情は大抵把握できた。
というより、元々ここを訪れる者は従兄と下女、そして従兄から鍵を預かった男性しかいない。
鍵を預かったということは、この体は彼が満足するまで彼のものとなる。
だからというワケではないのだけれど、触れようと伸びてくる手に臆する気配はない。
近付けば思ったより若い男性だった。
好色で歳の離れた男の相手を強いられることが多い少女には、少し珍しく思えてしまうくらい。
貌に似合わぬ――と思っては失礼なのだろうけれど、優しげな手付きは父性を滲ませ、厭う感情は生まれず。
むしろ何だか恥ずかしくなり申し訳なくなり、眉が下がる。
「マリナです。……ごめんなさい。きちんとご挨拶もせずに」
髪を撫でる男の掌に少女の手が重なり、ゆっくり起き上がる。
掛けていた布団が腹部まで折れるように垂れ、おぼろげな明かりに胸元が浮かぶ。
揺らめく灯火に合わせ、ネグリジェから透ける乳房の膨らんだ稜線が。
「お兄様をよろしくお願い致します」
それは従兄から与えられ、用意している台詞。
凛と放ったつもりであったけれど、やはり未だ気恥ずかしさが勝るようで
口にした後に視線を落とし、暗い部屋で頬を染めた。
■ヴィクトール > 顔が怖い、悪人面、笑うと明らかに企み笑み。
そのクセがさつだのと、住処では年下の少女にこれでもかとお叱りを受け続けた結果が、こうして実を結んだ。
触れれば壊れてしまいそうな儚さを感じる少女の顔が、愛らしい表情に変わっていけば、いい顔だと思いながら表情が緩む。
指先に感じる金糸の感触も、自身とは異なり、ふわふわと心地よく指を滑り、恥ずかしそうに眉尻が下がる姿に薄っすらと欲を唆られていく。
年甲斐もなく少女を踏みにじる老獪とは異なり、貪りたいと思う半面、もっともっと可愛らしい顔が見たいと庇護欲のような物を擽られる。
「マリナか、俺はヴィクトールだ。気にすんな、礼儀知らずにお姫様の寝床に踏み込んだのは俺……」
何度も頭をなでていくと、その身体が起き上がっていき布団が滑り落ちていく。
そして顕になったのは、薄明かりでもはっきりと分かる熟れた白い双房のライン。
それも、明かりに今にも透けてしまいそうなギリギリのラインという、色合いとは裏腹に卑猥で言葉を失う。
恥じらいながら、兄へのコネを強請る彼女に少しだけ胸が締め付けられていく。
自分以外にも、こうして身体を開くことがあったのだろうかと。
だが、それを今問うのは野暮だろう。
自分が哀れんで手を出さなければ、その叱責を受けるのは彼女となるのだから。
「……知らねぇよ。俺はアイツに言ったぜ? 俺におべっか使っても、兄貴に取り入れるかなんて、保証しねぇって」
乱暴な口調で紡ぐのは、彼女へ向けた絶望か。
身を乗り出して迫りながら耳元へ囁やけば、その顔も影となって表情が隠れていく。
しかし、言葉と行動は真逆となって両肩に掌を押し当てると、ぐっとベッドへ押し付けるようにして押し倒し、覆いかぶさっていった。
顔の半分だけが、ゆらゆらと照らされていくも、そこには変わらぬ悪人面の微笑みがある。
つぅっと顎のラインをなぞると、顔を近づけながら唇を開いていく。
「でも、いい女に恥掻かせるほど、甲斐性なしでもねぇ。奴の事は忘れて、楽しめよ。楽しめるようにやるからよ」
吐息が唇に掛かるような距離で囁き、金色がじっと碧眼の奥底まで覗き込むように、強く見つめていた。
力強く、獣のような鋭い欲の視線を向けながら、唇を奪う。
薄紅色の唇を楽しむように、数秒ほど重ねれば、息継ぎに唇を離し、幾度も重ね合わせながら、唇を啄んでいく。
そこを広げようとしつつも、舌先で合間をなぞりあげ、徐々に徐々に奥へ押し込もうと突っつくのだ。
水音を交えていくキスは、赦されたなら直ぐに舌を絡め取るだろう。
少女の口内を、男の太い舌がゆっくりとゆっくりと侵略して舌の上をなぞるように。
その合間も、片手はネグリジェの上から無遠慮に乳房を捕まえる。
まずは感触を楽しむようにぎゅっと包み込み、幾度も指を沈めると、今度は指先が触れるか触れないかの境界線をなぞり、ゆっくりと頭頂部へ登っていく。
広がっていた指の合間を窄めていき、最後には先端を摘むように狭まって……わざと触れない。
房の輪郭をなぞり、先端に向かって螺旋を描くように爪先で擽っていきながらも、キスは幾度も重なっていく。