2018/07/26 のログ
■イヴリール >
しばしの間夜風にあたり、その日は何事もなく再び部屋に戻って就寝するのだった───
ご案内:「王都マグメール 王城 ・夜」からイヴリールさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」にイヴリールさんが現れました。
■イヴリール > カラカラカラ……
王城の正門を潜り、馬車が足を止める
「………」
はぁ、と小さな溜息が漏れる
お城の外へ出るといえば、こうやって馬車でヤルダバオートに赴き、
形ばかりの公務を終え、そしてまた馬車で城へと戻ってくるだけ
華美な装飾の施された豪華な馬車
その幌の中から外の景色を見ることも叶わない
結局外に出るといっても馬車の中と、ヤルダバオートの神殿を見ることができることくらい……
「…少し、お散歩してからお部屋に戻っても良いですか?」
衛兵と、召使いにそう聞いてみる
……いい顔は、されなかった
■イヴリール >
外廊下を歩いていると、庭師であろう、道具を持った人とすれ違った
この間はじめて行くことができた、お城の中庭
あの見事な色とりどりの草木のアートはあの人が作っているんだな、と感嘆する
道具の使い方一つを極めることで、あんなにも人の心を揺り動かす庭園すら作り上げることができる──
生きてゆく上で、人は何かを力として、技術として身につけてゆく
それが生きる力になる、逆説的には力を得ることで生きてゆける
揺り籠から今この時まで何も得ずにいる自分は…生かされているだけな気がした
「……あ、またこんなこと考えてる…」
暗い顔になるからやめろと言われているのに、ついそういうことを考えてしまう
■イヴリール >
そういえば、前に出会った騎士の女の人は言っていたっけ
"貴女が黙っていても状況はよくなりません"
でも、声をあげることでもっと悪くなるかもしれない──
"王女が当たり前の権利を望まれるだけです"
権利…権利ってなんだろう
王位につく資格はあっても器じゃない、そんな王女が持つ権利って
"今の状況は誰が見ても異常です"
でも、そうやって生きることが当たり前だと言われてきた
「……はっ」
また、悪いことを考えている
考えても仕方ないことだとわかっているのに考えてしまう
……学習能力も乏しい?
さすがに気落ちもしてしまうというもので
■イヴリール >
お城の中に、お部屋の中に閉じこもっているから、そういうことを考えてしまうのだと思っていたけど
実際はどこにいたって結局鳥籠の中で、何も変わらない
歩いていると、中庭へと差し掛かる
前に訪れた時はあまり時間もなかったけれど……
美しい花々に、吹き抜けるような開放感
…お城の中でも、此処はやっぱり少し違うな、なんてことを思う
「…このお花ひとつひとつも、人が一生懸命お世話をして作っているものなのね…」
凄いな…と呟く
言い換えてしまえば、こういった、庭の花なんて人が見ることにしか役に立たないもの
王族の貴族の心の安らぎのために、一生懸命、それを生業にした人が作っている
私じゃきっと、花一つすら育てることもできないのに
■イヴリール >
今まで何度も自問自答してきたけれど
自分の持つ力は、王女として生まれた、ということ、ただそれだけだった
そしてそれも、王位を警鐘するにはきっと足り得ない──
「…あの人も、言っていたっけ……」
外の世界は、弱肉強食なのだと
お城の中も…と言ってはいたけれど、外はもっと苛烈なのだろう
私自信がそれがよくわからなかったのは…きっと鳥籠の中に閉じ込められているから
言い換えれば…守られているのだと思った
外廊下から、中庭に踏み出そうとして、躊躇する
…靴に汚れがついたら、きっとまた嫌な顔をされる──
「……お部屋に、もどろう」
ドレスを翻し、中庭を後にし城内の回廊へと歩いてゆく
■イヴリール >
お圧しに戻る途中、ふとさっき思い出したことを考えていた
もう、考え込むのは癖なのだ、そう思うことにした
お城の中も、弱肉強食?
あれはどういう意味だったのだろう
王が空位という状態ではあるにしろ、城内は比較的秩序があるものだと思っていた
衛兵さんとすれ違い、ちいさく会釈を返す
そう、こうやって沢山の衛兵さん達や、王城に駐屯している騎士様達
平和が保たれているこの城内で、ふとすれば暴力的にも聞こえる弱肉強食という言葉は、あまり似合わない気がした
「(それともやっぱり…)」
自分の知らないことが、このお城にもまだ沢山、あるのだろうか
ご案内:「王都マグメール 王城」に紅月さんが現れました。
■紅月 > ーーーからころ、からころ、しゃら…
今日も今日とて一仕事終えてのお散歩。
元々香る仄甘い花のそれに加え、お日様と土、草などの…例えるなら、濃い森の薫りを纏ったままに。
異境よりの旅人は、今日も呑気にふらふらと。
警備の兵とも既に顔見知りなのか
「やっほーお疲れ、精がでるねぇ!」
なんて笑顔で軽く手を振りながら声をかけたりして。
…道の先にいと貴き姫君が居らっしゃるというのに、この紅髪の娘は気付いていないらしい。
兵士が『あっ』という顔をしたのを不思議そうに覗き込んでいる。
■イヴリール >
「……?」
聞き慣れない音と、
普段この回廊を歩いている時には感じることのなかった、漂う香り
なんだろう?と見回して、回廊の先に一人の…その見慣れない姿を見つける
──異国からの使者か何かかもしれない
初めて見るその風貌に、思わずその視線を奪われて、足を止める
■紅月 > 兵士の視線を視線を辿り、振り返れば…
「…うわ凄い可愛い、人形みたい。
持って帰りたい」
思わず地が出た…直後、兵士に拳骨落とされた。
若干プルプル震えながらに、頭頂部を抱えてうずくまる…金属手甲で殴りやがった、超いたい。
その後『王族になんて事言うんだ馬鹿!』と兵士の焦り混じりの説教が続くのだが、そんな事より姫様らしき御嬢さんに興味がある。
うずくまって痛がるふりをしつつ、お姫様に手を振る…ウインクを添えて。
■イヴリール >
「……??」
衛兵に殴られている
異国からの使者…だったらもう少し丁寧に扱われる気がする
「…え、えっと……」
おずおずと手をあげて、手を振る様子にこちらもひらひらと応える
ゆったりとした動きでそちらへと歩いてゆき───
「…あの、大丈夫ですか?すごく、大きな音が…」
手加減などなかったようにすら見えた
怪我とかしていないのだろうか
■紅月 > ドレス姿の令嬢が歩み寄ってくる…うぅん優雅。
心配と困惑が混ざったような表情に見える、が…そりゃあそうか。
きっと、こんな平民然としたやり取りとは無縁なのだろう。
「あっははは~、大丈夫大丈夫!
私冒険者だから頑丈なのよー…っつっても痛いモンは痛いんだけどねコノ野郎」
まだ説教し足りなそうな表情の衛兵の首にサッと腕をまわし絞めにかかる。
兵士がその腕をベシベシ叩きながら『済まんかったーっ!』とか言ってる辺り、それなりの力で仕返しをしているらしい。
パッと腕を放すと、柱に手をあて寄り掛かり若干顔色を悪くしながらゼーハー呼吸を荒らげている衛兵を放置し…お姫様に笑顔で近付く。
その瞳はキラキラと、興味や好奇心を隠しもしない…小さな子供のように、けれど女にしてはだいぶ高いだろう身長で見下ろして。
右手を差し出し。
「私はコウゲツ!
東の果ての地にては、紅の月と書きまする。
ね、ね、なんてお名前?お姫様なの?」
■イヴリール >
「あ、あ、あのっ、お、落ち着いて、喧嘩は…」
大丈夫というだけあって、元気いっぱいに衛兵を締め上げている
その様子にあわあわと慌てるようにして、止めようと言葉を頑張って発していた
程なくして仕返しは終わったようで、こちらに笑顔で近づいて来る
直前の行動もあって、ちょっとびくっとなってしまった
「コウゲツさん…東の果て…やはり異国の方だったのですね」
風貌からそうではないかと思っていたが…
本の中でしか知らない、外の国の人としってほんの少しだけ少し胸が高鳴る
「あ…私は、イヴリール…イヴリール・フォン・カルネテルです…。
はい…一応、その……王女の一人、で……」
自分から王女と名乗ることが少しだけ心苦しく、僅かに言い淀む
■紅月 > 「こんなのケンカの内に入らんよぅ、じゃれあいじゃれあい。
優しい子だねぇ?」
カラカラと笑いながら大の男を締め上げる女の姿は、淑女の目には、さぞ異様な光景に映った事だろう。
…さて。
ほんのりとビクつく御令嬢に「レディにゃイジワルしません」なんて笑って。
「へぇ~…いぶりぃる、イヴ…あっダメだやっぱヴ系発音苦手だわ。
イヴって呼んでいい?私はコウでいいよ!」
ごくごく普通に近所で会ったみたいな調子でニコニコと…西洋の王族というものをよく知らない紅娘は実に気軽に話しかける。
「それにしても、いやぁ凄いなぁ。
絵本の中から出てきたみたい…月光を編んだ髪に、深い泉のような瞳」
中腰になり、視線を合わせてみる…ニコニコ上機嫌、楽しげにほくほくとイヴリールを眺めている。
たがいに似たような事を考えているとは露知らず。
■イヴリール >
「は、はぁ…じゃれあい…でしたか」
心配そうな顔をしていたが、息を荒げつつも反撃をしない衛兵を見ると彼女の言う通りなんだと胸を撫で下ろす
「は、はい…では、コウさんとお呼びします…」
王女としての気位の高さを持ち合わせいないわけではないが、
様をつけられず呼ばれることに余り抵抗もないのか、すんなりとそう言葉を返す
……周りでそれを聞く者の胸中は定かではないが
「コウさんこそ…本の中でしか存じ上げません異国の姿…とても綺麗です。
東の方のお国は、そのような艶やかな装いをお召になられるのですね」
初めて見た着物に、以前女性の騎士が異国から仕入れたといってもらった簪を思い出す
なるほど、こういった服装にはとても似合うものだと思った
■紅月 > 能天気にケラケラ笑う紅娘の周囲…つまり不幸にも偶然通りかかった者らであるが。
…固まっていた。
あまりにも、あまりにも高貴なる城内に似つかわしくない珍妙な光景に理解が追い付かないのだろう、すっかり固まってしまっていた。
『ツッコミ不在とは、かくも恐ろしい物であったか…』とは、先程締め上げられていた兵士の胸中の言である。
「うん?…あぁ、コレ?
これは着物って言ってね…ガウンみたいな形に縫った物を紐で結って着付けてるんだ。
貧富の差によって布の質や細工が違うし、職業によっても着るもの違ったりするけど…女の民族衣装の形はこんな感じ!
…私のは戦闘にも耐えられる、おっそろしく頑丈な織物だけどね?」
触ってみる?…なんて袖を差し出して、背の帯の文庫結びが見えるように半身を下げてみる。
感触としては高価な着物に使う反物の質感である…帯も質感そのものは織物である。
半身を下げたことで髪飾りも見えるだろうか…黒地に金銀糸の編まれた髪紐で、どこか宝石質に見える紅の長髪が高い位置に結われている。
■イヴリール >
「た、戦いにも耐えられるのですか…? 凄いものなのですね…」
わぁ…と感嘆した様子で差し出された袖へと手を伸ばして、その手触りを感じ取る
これまで自分が触れてきたものとは違う質感にただただ驚き、興味を示しているようだった
「サテンともシルクとも違う…とても不思議……。
それに髪飾りも、王国のものとは違っていて……」
初めて触れる異国のもの
こうやって、自分の知らないものが外の世界にはまだまだ沢山あるのだということ改めて思い知る
「異国からの冒険者とは、皆このように艶やかなものなのでしょうか…」
■紅月 > 何この子、リアクションが一々可愛いんだけど。
仔猫とか雛鳥みたいだ、このふわふわキラキラして素直~な感じ。
「んぉ、お目が高い!
こっちは組紐細工っていう工芸細工でね…作り方は織物っぽかったり、ロープっぽかったり…職人さんがね、手作業で一本一本に魂込めて作るんさ。
…あ、未使用のまだあるかも?何色がいっかな…」
見せている袖とは反対の、空いた手を虚空に伸ばせば…空中が揺らぎ、その揺らぎの向こうに腕が消える。
それはもう、ぷっつりと。
何かをゴソゴソと漁っているように二の腕だけが動き…するりと何事もなかったかのように戻ってきた腕には、黒漆塗りに、月と流水と桜の蒔絵の箱が掴まれている。
…中には未使用の髪紐やトンボ玉が詰まっている。
がしかし、開ける前に姫様から不思議な問いが。
冒険者が艶やかとな。
「…いやぁ、それはどうだろう?
私は妖精さん達に力を借りたり魔法の類いに通じてるから、この類いの物にも強化魔法かけたりして頑丈にできるけど。
普通は此処の騎士さんの皮鎧版とか、むしろ布服で危険に挑まなきゃいけなかったり…ピンキリじゃないかなぁ?」
カパッとあけた箱の蓋で、自身の顎をトントンとつつきながら…首を傾げつつアレコレ思い返して話してみる。
はたして、話した内容を姫君が想像できるかは別の話であるが。
■イヴリール >
「異国の技術…本当に、王国のものとは全く違うのですね…凄い」
感嘆の声を漏らしていると、突然虚空に腕を突っ込んでいる
一瞬何が起こったのかと目を丸くしていたが、続く言葉になるほど魔法の類なんだと納得する
こんな魔法もあるものなんだと、再び驚いて
「布服で危険に挑む…ですか? …冒険者さんは、大変なお仕事なのですね…。
──ええと、その箱は…何でしょう…?」
魔法で取り出したのだと思われる、見慣れない箱に小首を傾げて
■紅月 > 「そうだねー、冒険者さんは危険がいっぱい!
…けど、危険を駄賃に面白いモン見れるからな~」
事も無げに、ちょっとお菓子を買ってくるよ~くらいの調子で話す。
事実、冒険者の日常とは『そんなもの』だ。
「えへへー、紅の宝箱!どれか気になる紐ある?
後は、このガラス細工のビーズも対で選んでみてねー?」
むふ…と何か企んだ笑顔を浮かべると、姫君が見やすいように高さを下げつつ、中を触りやすいように少し傾けて。
箱の中には様々な組紐が一本一本簡単に結んで纏めてあり、更に、大箱の2割程度の大きさの小箱の中にはトンボ玉や鈴が入っている。
■イヴリール >
危険だけれど面白いものを見れる
その言葉がチクンと胸を刺した
勇気を出して踏み出さなければ、見れるものも見ることはできない
未だ鳥籠から出るほんの僅かな勇気を持てない自分にとっては…僅かに疎ましかった
彼女が宝箱と呼ぶ、その中を見せてもらえば…
「わぁ…」
目移りするような、色とりどりの組紐
そして美しい、輝く玉などの装飾品
「綺麗…え、選ぶ……?
その、高価なものでは…このような宝石、見たこともありません」
模様の入ったとんぼ玉をまじまじと見つめながら、そんな言葉を返して
■紅月 > 「…ん?
ああ、そりゃあ宝石の中にゃあないわ…これも工芸品、職人さんが手作りする民芸品だよ。
ガラスと、色つきガラスの棒を火で溶かしながら作るんだ。
…そうだなぁ、たぶん鍛冶屋の炉があれば簡単な細工は作れるんじゃないかなぁ?」
にこにこと微笑みつつ説明を…「鍛冶屋わかる?剣とか作ってる職人さんの工房の事ね?」と、注釈を挟みつつに語り。
「大丈夫大丈夫、いざとなったら自分で作るし。
足りないなら…無いなら作ればいいんだよ、作れば。
…まぁ、ゼロからだから道具やら場所やら準備に時間かかりそうだけどねー?
そういうのってさ、踏み出すまでが長いんであって…その後は案外トントンいくモンだから」
トンボ玉をひょいっと手に取り、灯りにかざしてみる…硝子の中に銀箔と花が舞った。
そんな小さく不思議な景色を見ながらに「ただの経験則だけどね」と、クスクスと笑ってみせる。
■イヴリール >
「す、すごい…宝石よりも綺麗……」
トンボ玉の説明をし、灯りに翳して見せてもらう
それはこれまで王女として与えられてきた宝石なんかよりも綺麗に見えた
人の手でこんなものが作れるだなんて…なんとなく、中庭と庭師のことを思い出した
「……踏み出すまでが…ですか」
呟きながら、藍色の組紐をその手にとってみる
こういった独特の上品な色合いは、王国の絹織物ではあまり見たことがなかった
自分も、勇気を出して一歩踏み出せば…色んなものが動き出してくれるのだろうか──
■紅月 > 「ふふっ、宝石よりも!
故郷の職人さんに聞かせてやりたいなぁ…作り手ってね、一生懸命作った自慢の我が子が使い手に愛されるの…何より嬉しいんだ」
ククッと、今度はヤンチャな少年みたいに笑って…まだ幼い頃に工房に入り込んでは見付かって拳骨落とされた頑固親父を思い出す。
あの職人の拳は、さっきの鉄の手甲よりよほど痛かったなぁ…なんて、余計な事もついでに思い出して、ついつい後頭部をさすりながらに。
「そうだよー、踏み出すまで、さね。
どんなに興味があってもさ、切っ掛けがないとなかなか…ね。
例えばほら、今日イヴと会ったから…私今、硝子細工やりたくて仕方ないもん。
ギルドに頼み込んでみるかなぁ…うへぇ『まぁた妙な事始めやがって!』って叱られそう」
ギルド長の真似を挟みつつ、実はしょっちゅう珍妙な事をやらかしていると暴露しながらに。
…踏み出すまでが長いのは、案外誰でも一緒なんだと笑い飛ばそう。
「…それね、藍色。
タデって植物から作られる染料で染めるの。
こっちで分かりやすく言うと、インディゴより前に使われてた古風で伝統的な染め方だね。
そうやって染めるだけで消臭効果とか、雑菌が増えにくくなったり…虫食いも避けられるの。
人間の知恵、可能性…努力の底力ってすっごいんだから」
心の底からそう思っているのだろう…穏やかに、けれど力強く言い切る。
藍色の飾り紐を持つ手に、今さっき覗いていたトンボ玉を乗せ、対の玉も乗せる。
「それ、今日からイヴのね!
紐に通して結べば留め玉になるし、チェーンやレザーに通せばチョーカーやブレスレットになる。
紐自体も頑丈だから、有事の時にも便利よん?」
今日の記念だと、愉快げに笑って。
■イヴリール >
ころころとよく変わる表情に、釣られてこちらも僅かに頬が緩む
こんなに愉しげに会話をする人がいるなんて、やっぱり外の世界は楽しいところなのだ
「切欠…」
いくつも、切欠を逃してきた気がする
自分に自信がなくて、勇気がでなくて、怖くて
もし一歩踏み出すことが出来たら、自分もこの人のように色んな表情を出せるようになるのだろうか──
「アイイロ…とても綺麗で、落ち着いた色ですね……頂いてしまって宜しいのですか…?」
一つ一つが職人さんの手作りとあらば、高価なものなのでは‥と
それでも、今日の記念と言われれば精一杯に微笑んで
「…ありがとう、大事に致します。コウさん」
と御礼の言葉を向けるのだった