2018/05/17 のログ
ゼロ > 暫くぼうっとしていれば、汗が引いてくる、この時期は昼間はクソ暑いけれど、夜はまだまだ寒いといっていいだろう。
 鉄の鎧は……正確には鉄ではないが、金属の鎧は冷えると体温を思う存分持っていく。
 ふるり、と身を震わせて少年は立ち上がることにした。キリもいいし、腹も減ったので食堂に移動しよう。
 食堂で腹を満たしてから、帰ることにしよう。

 うむ、と軽くうなづいてからその前に、と、自分のカバンに近づいて、タオルを取り出して汗をぬぐっておく。
 鎧とかは後で洗わないといけないが、今はこれぐらいはしておかねばなるまい。
 ふう、と軽く息を吐き出して、仮面を被り直し、少年は食堂へと移動する。

ゼロ > 食堂に到着して、何時ものように大量の食事を注文する。
 隅っこに移動して、仮面をずらして、急いで掻き込むに食事をする。
 外している方が長いほど危険が増えるし、そもそも、付けっぱなしの人生だから、外すとなんとなく気恥ずかしい。
 人に見せぬように見られぬように気を払って食事を終えて。
 それから少年は、立ち上がりもどることにする。

 汗が乾いてベタついてきたのが、すごく気分が悪いので。
 鎧とかも蒸れると臭いがひどいし。
 そういうことで、少年は訓練を終えてさるのだった。

ご案内:「王都マグメール 王城 第七師団訓練所」からゼロさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」にゼロさんが現れました。
ゼロ > ――カツン、――カツン。夜の王城の廊下に金属鎧のグリーヴの音が響く。
 警備をするのは全身鎧を身にまとい、仮面を被っている少年であり、第七師団の兵士である。
 魔族が入り込んでいるのであれば、それを即座に駆逐するために、少年は歩いている。人間でも不審者であれば当然お帰り願いますよ。
 とはいえ、この城は、そこかしこで甘い声が聞こえてくる、どれが不審人物でどれがそうでないのかの見極めが難しい。
 慣れては来たけれど、なんかちょっと物悲しい気分にもなるが、仕事は仕事なのである。
 少年は仮面の下から周囲を確認する、魔力でモノを見るタイプの仮面は昼間と同じように周囲を見せてくれる、魔族が変装していようとも、しっかりと認識できる。
 警戒を厳に、右を、左を、確認しながら夜の通路を歩いていく。

ご案内:「王都マグメール 王城」にステラさんが現れました。
ステラ >  
(王城内の王族からある品物を手に入れてきて欲しい、と言う仕事を受けた。
 数日ダンジョンへ潜り――その間様々な目に遭いながら――、目当てのものを手に入れ、依頼人の王族へ連絡を取ったら今すぐ持って来い、とのこと。
 とりあえず王城に入って失礼のない程度に身だしなみを整え、王城へ入ったは良いものの。)

――うぅ……。

(なんかあちらこちらから艶めかしい声が聞こえてくる。
 しかもそれらに気を取られていたら、道に迷った。
 あたりをキョロキョロ見回しながら、おっかなびっくり夜の王城を歩く。)

ゼロ > 異常は―――無し。今の所はという枕詞が付くのだけれども、それはそれで問題はない。
 何か異常があれば、即座に急行して対処をすればいいのだ、対症療法的にも思えるが、警邏することにより、未然に防げるものだと、少年は思うのだ。

 十字路に、差し掛かる、今回の少年の順路は右だったか、左と前はタイミングが重ならないように別の班の人間が巡回しているはずだ。
 視線を前に向けてみると少し先に巡回の人間がいるのが見える、左には見えない。
 自分が移動したあと、前から来て、前のが去った後に左のが来るのだろう。
 そして、視界の中には特に何か問題はなく、なにか悲鳴のようなものや、何かが暴れている音が聞こえるわけでもなくて。

 ――――?

 今、なにか聞こえた。
 誰かが呻くような声で、少年の意識が引き締まる。
 声のした先は、自分の行くべき右の道からか。いろいろな予測を立てながら、少年は静かに右に曲がり、歩き始める。
 カツン、カツンとグリーヴの音が廊下に響きわたり、迷子の女の子の方に近づいていくのが聞こえるだろう。

ステラ >  
(右から左から、と言うわけではないが、明らかにそういう声がどこからか聞こえたり聞こえなかったり。
 そんな声が聞こえていれば、当然こちらも変な気分になってしまう。
 荷物と共に自分の身体をぎゅうと抱いて、ぶるり、と震えて。
 同時に聞こえてくる背後からの足音。)

……っ!

(振り切るように走り出す。
 何かやましいことをしているわけではなく、ちゃんと許可をもらってはいるのだけれど。
 小さく聞こえてくる「声」が、なんだか怖くなってきていたから。
 彼には自分から離れていく足音が届くだろう。)

ゼロ > 逃げた。少年には、はっきりと黒づくめの姿が自分の足音に反応し、方向を変えて逃げるが見えた。
 警備の人間を避けるという事は、色々な事情があるのかもしれないが。
 大半は、侵入者である――――。

 そう、結論づけた少年は早かった、逃げ出す少女に向かい、走り出すのだ。
 彼女の足の速さ、あれが全力なのかどうかはわからないのだが、少年も、並ではない。
 全身鎧を着たまま走り始める。

「そこの黒づくめ、止まれ!!」

 廊下に響き渡る少年の声、そして薬物と魔術で強化された身体能力を持って、ものすごい勢いで走る少年。
 並みの兵士ではまず無理な速度の走りで、追いかけっこが始まる!

ステラ >  
(背後からの足音が早くなった。
 より恐怖が強くなり、更に足を速めようとした瞬間、)

――っ、は、い!

(大声で止まれと叫ばれ、急停止。
 革の靴の底が床を擦る音を立てながらしばらく滑って、ゆっくりと振り返る。)

ゼロ > 「――――!?」

 待てと言われて待つバカがいるか――よく、盗賊とかが言うセリフがあるけれど。
 待てと言われて待つバカがいた―――!?余りにも意外にすんなり停止する黒づくめ、トップスピードに入った少年は、思わず彼女の脇を走り抜けてしまう。
 そして、ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!と、耳障りな音を響かせて急ブレーキ、金属のグリーヴですので、音がすごい。改造の余地アリ、改造できればの話。

 閑話休題。
 とりあえず何とか停止し、彼女の方にもどるように近づいていく。

「第七師団で警備兵だけど、夜の王宮になんの用なのかな?」

 近づいていくと、判ることが増えていく。
 黒づくめの相手は女の子で―――人間ではない、魔族かというと魔族でもなさそうだ。
 なんか色々なものが混じっているのが判る、仮面が分析し、表示している。
 人の形をした人造生物[キメラ]が、彼女なのだろう、意思疎通ができるくらいに知能は高そうだ。

 そして、彼女にも見えるだろう、全身鎧の兵士は、無謀の仮面をつけていること、目の部分すら空いてないので、のっぺらぼうに見えるかもしれないけど。

ステラ >  
(背後から自分を追い抜いていく誰か――どうやら警備兵だったらしい――を目で追って、ものすごい音に思わず肩をすくめる。
 彼がこちらに近付いてくる内に、仮面をかぶっていると言うことが分かった。
 何故仮面、と首を傾げる。)

仕事で、これを、届けるようにと……。

(何の用か、と問われ、胸に抱いた荷物を見せながら。
 そしてふと、意外と普通に話せている事に気が付いた。
 相手の目が見えないからだろうか。
 なんとなしに、仮面の目のある辺りをぼんやりと見つめてみる。)

ゼロ > 彼女の主張、荷物の配送である模様、確かにこういう冒険者を使うこともあるのだろう。
 しかし、だ。ここは王宮であるからこそ、警戒しなければならない。
 荷物に危険が有るのかどうか、彼女自身の身の証明も必要である。
 人間ではない存在だからこそ、一層と言うのもあるのだ、なんかすごくおどおどしているような気もするけれど。

「成程、冒険者さんね。まず、いくつか質問させてね。
 申し訳ないけど、誰に届けるのかな?
 それの中身は?確認しても?
 あともう一つ、許可はあるかな?」

 一般の人間に開放されてるとは言えども、高貴な人間が集まる場所である。
 こんな夜遅くに届ける品物、改めて置く必要があるだろう。
 と、話をしているところで視線が自分の顔に来ていることに気がつく。

「ああ?仮面?これは気にしなくてもいいよ、僕だけだから。」

 普通の兵士は付けてないから、と彼女の思考と外れた反応だろう。
 まあ、やはりというかなんで仮面と聞かれることは多い模様。

ステラ > (質問攻め。
 まぁ仕方ないだろう。
 一時的とはいえ警備から逃げてしまったのだから。)
 
え、と。
グランバーグさんに。
中身は、たぶん、はい。
――あ、ちゃんと入り口で手続きは。

(うん、やっぱりいつもよりスムーズに言葉が出てくる。
 やはり視線の有無だろうか。
 ちなみに荷物は黄金の籠手である。)

――あ、ご、ごめん、なさい。

(慌てて視線を逸らす。
 流石に失礼だっただろう。
 とは言え横を向いたり下を向いたりしながら話すのも失礼で、結局元のところに視線は戻ってきてしまうわけだけれど。)

ゼロ > 「ああ、あの方ね。
 たしか引き継ぎにあったな……。
 念の為に、許可証もいいかな?」

 警備に入る前に、彼に客人が来るという話は聞いていた、たしか彼の部屋はこの近くだったことも思い出す。
 それならばそうなのだろう、手続きをしてるのであれば、許可証も所持しているはずだ。
 大丈夫な気もするが、念には念を入れなければなるまいし、と求める。

「ああ、気にすることはないよ。
 皆気にするところだしさ。異質なのはわかってるけど、外すわけには行かないんだ。
 体質的なものだから。」

 彼女の罪悪感を減らすために、軽く言ってみせる、彼女が悪いわけではないし、好奇心は誰にでもある。
 失礼というわけではないよ、と、笑ってみせる。
 まあ、仮面で全て隠れているので声の調子だけという形になるけど。

ステラ >  
あ、はい、ちょっとまって……。

(腰のポシェットを漁り、許可証を取り出して見せる。
 ちゃんと王城の入り口で貰った許可証だ。)

あ、の。
私、人見知り、で、でも、警備さんは、なんか平気で。
仮面で、目が、見えないからかなぁ、と。
警備さんで、よかった、です。

(初対面の人物にこんなことを話すのも初めてだ。
 これが普通の警備だったらおどおどし過ぎてしょっ引かれていたかもしれない。
 彼の体質に感謝だ。)

ゼロ > 差し出される許可証、本物であることが確認できた。

「ん、確かに、ごめんね、手間とらせてしまって。
 状況と時間の関係上ちょっと、敏感になっちゃってさ。」

 貴族というのは色々とうるさい、時間の指定とかもあるはずだろう。
 それなのに足止めしてしまったことに謝罪をしよう。
 職務的にはせざるを得ないのだ、と解ってもらえると嬉しいけれどまあ、そこまでの理解は求められないか。

「それは僥倖ってやつかもね。
 警備は僕だけじゃないし、仮面つけてるのなんて殆ど居ないだろうから。
 良かったと言われて、嬉しいかな。
 じつは、暗がりからこの仮面が出てくると悲鳴挙げられたりするんだよ。」

 まあ、ホラーに思えるぐらいに怖いんだろうね、と軽く笑ってみせて。
 そして、彼女の荷物を再度見る。

「と、グランバーグ氏もそのお荷物をお待ちだろうし、どうぞ行ってあげてくださいな?」

 と、少年は道を開けてどうぞ、と彼女に目的の達成を奨める

ステラ >  
いえ、こちらこそ、逃げて、ごめんなさい。

(場所が場所だ。
 このぐらいは当然だろう。
 むしろ自分が逃げた事で余計な手間をかけさせてしまったことを謝罪。)

それは、確かに、ちょっと。
でも、私は、怖くない、です。

(想像する。
 暗がりからにょっきり出てくる白い仮面。
 確かに何も知らなければ驚くだろう。
 しかし自分にとってはコンプレックスである人見知りを軽減してくれる魔法の仮面だ。
 にへら、と笑う。)

あ、……。
え、っと。
――場所、わからな、くて。

(どうぞ、と促されるも、困ったような表情。
 そもそも迷子になっていたのだ。
 どうぞと言われても目的地も現在地もまるでわからない。)

ゼロ > 「そうだね、警備兵は怖いのは多いけど、逃げたらダメだよ。
 逃げたら即投獄というのもあるんだから。」

 場所や状況にもよるけれど、警備兵は職務上怪しいのは捕まえないとなるまい。
 逃げるのは最悪、せめて怖くても許可証を出せば大丈夫なはずである。
 なので、彼女に言ってみせる、まあ、逃げたくなるのもわからなくはないが。

「………ありがとう。」

 怖くないと言ってくれると少し嬉しくなる。
 にへらと笑う彼女に感謝の言葉を。しかし、仮面フェチなのだろうか、とかちょっとばかり失礼な思考。
 彼女の人見知り具合を知らないゆえに。

「あ。
 なら、案内してあげるよ、近いしね。」

 困った表情になる彼女、道に迷っていたのかと頷く。
 すぐ近くにあるし、と付いておいで、と歩き始める。
 彼女は通り過ぎていたのだろう、自分の巡回路の中にある部屋だ。
 

ステラ >  
(顔が青くなる。
 そんな厳しいところじゃなくてよかった。)

ありがとう、ございます。

(案内してくれる。
 なんて優しい。
 彼の後ろをてくてく歩く。
 正直、もう少し話したいと言うのもあったのだ。
 コミュ障の自分がここまで話せる相手と言うのはそういないし、と言うか彼が初めてだし何か話しかけなきゃでも話題がないだって普段はビビり過ぎて単語で話すような感じだしそれがなぜか冒険者界隈ではクールな女性ソロプレイヤーと言うことになってしまっているしソロプレイヤーは間違ってないけどクールじゃなくて根暗なだけなんです見ないでくださいスゴイコワイ。
 などと頭の中で変な思考がぐるぐる回る。
 彼の後ろで話しかけようとして手を伸ばしかけ、しかし言葉にならずに引っ込めてまた伸ばして、みたいなことを繰り返している不審者状態。)

ゼロ > 「……うん。まあ、ほら、ここは王城だし、王家の方もいる。
 疑わしきは罰せよと言うのもあるんだから。」

 顔を青くして、お礼を言う彼女、怯えているのがわかるけれど、ちゃんと言っておかないとまずいだろう。
 そして、てくてく、と付いてくる彼女、少年は案内しながら思う。
 周囲の声がすごく気まずくもある、甘い声とかが響き渡っていて、何をしているのかがわかるから、である。
 黙っていると可也気まずい。

「そういえば、一人で冒険しているのかい?」

 冒険者はチームを組むのが基本だが実力のある人は一人で動くのも多い。
 彼女もそういう実力者だと思って少年は声をかける。
 何かしら話題を提供して、周りの声の気まずさをなくそうか、と。

ステラ >  
――きをつけ、ます。

(逃げただけ、なんてバカらしい理由で投獄されては溜まったものじゃない。
 そういうところに行く用事があったら、逃げないように努力することにした。)

――えっ、あ、は、い。
知り合い、いなくて。

(時折聞こえてくる艶めかしい声が気になる。
 なんかもう聞いているだけでなんというかこう、ムラムラする。
 こちとら経験――不服なことに――豊富なのだ。
 声だけで、何となく何をされているかわかってしまう。
 そこに突然話しかけられ、飛び上がりながらも答えを返す。
 チームを組む固定メンバーもいないし、よそのチームに入れてもらえるほどのコミュ力もない。)

ゼロ > 「うん、そのほうが良いと思うよ。」

 逃げただけでと動くなんてアホらしい、けれど、逃げるからやましいことをしてるということも強ち間違いではないのだ。
 それに、先程も言ったが貴族や王家、それらの身の安全を考えれば厳しすぎるぐらいでいいのかもしれないのだと。

「……え?実力あるのに?
 そんなに可愛いのに?」

 挙動不審なところはあるけれど、彼女の実力は見て分かる。
 それに控え目に言っても、可愛いといっていいだろう顔、自信なさげなところも守ってあげたい小動物系という感じであろう。
 言い寄ってくる男は掃いて捨てる程いるようにも思える。
 知り合いがいないという言葉がぎゃくに不思議に思えて問いかけてしまう。

 仮面は振り向いて、彼女を見る。
 うん、可愛いな、と再確認しながら進んでいき、目的の扉へ。

「ここが、グランバーク様の部屋だよ。

 帰りの道も案内してあげるから行ってきなよ。」

 と、彼女に案内をする。
 迷子になっていたということは、帰りの道もわからないだろう。
 待っててあげるから、と用事だけ済ませてきなよと、軽く言う。

ステラ >  

――んな、こと。

(可愛いと言われた。
 一蹴固まり、ぼん、と爆発するように顔が赤くなる。
 そのまま顔を伏せ、もごもごと否定。
 こんな根暗でコミュ障な女をカワイイなんてどうせお世辞に決まっているこういう言葉に騙されると痛い目に合うんだ怪しい壷を売り付けられたりとか結婚詐欺にあったりとかいやでもこの人は警備の人だし優しいし信用できるとは思うけれどそれはそれでまた別の話と言うかこの人がそういうことをしてくると言うことではなく普段からの心構えの話で云々。
 すっかり自分の世界に閉じこもっていたら、部屋に付いた。)

あ、りがとう、ございます。
――その、時間、かかるかも、しれません、けど。

(待てなければ仕事に戻っても大丈夫、と。
 そういったニュアンスの言葉を残し、部屋へ。
 しばらく待っても扉は開かず、代わりに艶めかしい声が一つ増えた。
 それがしばらく続き、出てきたのは入ってから一時間をちょっと過ぎたあたり。
 もう彼は仕事に戻っているだろう。
 やや乱れた髪で、疲れた顔をしながら扉を開ける。)

ゼロ > 「無いとは思えないけれどね?」

 あまり女のいない職場ではあるから、フィルターなるものがかかっているのかもしれないけれど。
 可愛らしい顔立ちだと思う、お世辞と取られてもまあ良いだろうけれど、素直にそう思ったからそういっただけで。
 というか、急に黙り込んでしまったので、怒らせてしまったかな、とちょっとだけ後悔。
 どうしたものだろうか、と後頭部を掻く、すごく気まずくなったかもと。

「ああ、良いよ。気にしないでも。」

 時間がかかるのは、此処の人の性格を考えれば判ることである。
 警備の人間は城の貴族の顔と名前は隠されてない人なら覚えなくてはならない。
 性格もまた、把握しておかないといけないので。
 時間がかかることは分かっているので、巡回路を確認し、引き継ぎをして戻ってくる。

 そして、50分ほどしたところで戻ってきて、部屋の扉、向かいの壁の前で待つ。

「お疲れ様。」

 疲れて出てきた様子に軽く苦笑をこぼしながら、声を掛けよう。

ステラ >  
――あ。

(扉を開けたら、正面に先ほどの彼。
 思わず目を逸らしてしまった。
 恥ずかしい。)

――り、がとう、ございます。

(それでも待っていてくれたことにはお礼を言おう。
 ずっと待っていたのか、それとも仕事を終わらせてきたのかは、わからないけれど。
 とにかく言葉通り、帰りも送ってくれることには間違いないのだから。)

ゼロ > 「――――。」

 何も言わないことにする、まあ、気まずいのだろうことが分かる。
 もう少し後にしたほうが良いのだろうか……とも考えてしまう。
 今更な、話ではあるけれど。

「喉、乾いたろ、厨房で水をもらってきてる。飲みながら付いてくるといいよ。」

 腰につけていた水筒を彼女に差し出し、受け取るのを確認してから、移動しよう。
 帰り道がわからずウロウロしてて逮捕されたら目も当てられないだろうし。
 先程も、案内するといったんだから、案内はしないと。
 とりあえず、少し歩いてちゃんと付いてきているか確認するように視線を向ける。

ステラ >  
――あ、はは。
慣れて、るので。

(無理に笑って見せた。
 断り切れなくて、なんてことは慣れている。)

ど、うも。

(水筒を受け取り、ちびちび飲む。
 火照った体に冷たい水が気持ちいい。
 後について歩いていたら、振り返った彼と目が合う。
 首を傾げてみる。)

ゼロ > 「あー……その、可愛いと、大変だな。」

 あの貴族は自分の好みの冒険者を理由つけて呼び出しては手を出したりするので有名なことを思い出す。
 図らずとも、先程の言葉が証明されてしまったというところだろうか。

「まあ、あれは泣いたり、怒ったりしてもいいんだぞ。」

 最悪、警備兵が来るし、あの状況なら、自分が行くだろう。
 そうなれば、少なくとも彼女は助かるはずである。
 そんな事を考えると、水を飲んでいる彼女と目が合い、彼女が首をかしいだのが見えた。

「ああ、歩けないとかだったら、手を貸そうか、と思って。」

 大丈夫か?と彼女の様子を眺めながら問いかける。

ステラ >  

――わいく、ないです。

(こんな卑屈根暗ウーマンをかわいいなんて言ったら、本当にかわいい人に失礼だ。
 顔を赤くして俯く。)

昔から、断れなくて。
――慣れてるから、いいんです。

(声を出せば助かるだろう。
 が、そうしたらあの男はどうなるか。
 もしかしたら口頭注意だけで済むのかもしれない。
 でも、もしかしたら投獄とかされるのかもしれない。
 自分の行動一つで他人の人生を変えてしまうと言うのは、怖い。)

あ、だ、大丈夫、です。
あるけ、ます。

(彼の手を煩わせるわけにはいかない。
 慌てたように両手をブンブン振って、その拍子に取り落としそうになった水筒を慌てて掴み直す。)

ゼロ > 「――そんなことはないと思うけどな?
 少なくとも、僕は可愛いと思ってるよ。」

 顔を赤くしている彼女、照れているのだろう。
 だから、可愛くないという言葉を否定する。
 もう少し自信を持ったほうがいいと、少し話しただけだけど思うから。

「うん、それはよくない、本当に嫌なことは、嫌だという方がいいよ。
 慣れてるから、と自分を使い潰すようなことは。
 もっと自分を大切にしないと。

 例えば、今ここで君とセックスしたいと言ったら、君ははいというの?」

 どの口が言うのだろう、戦であれば自分の命を捨てて戦う兵士。
 でも、彼女は違うのだから、もっと自分を大事にして欲しい。

「そう、辛かったら言うんだよ?
 辛いと言って手を借りるのは悪いことじゃないしね。」

 慌ててるようす。
 大丈夫ならいいけど、と少年は彼女のペースに合わせつつ先に歩く。

ステラ >  
――。

(またかわいいと言われた。
 もはや否定もできず、ただただ顔を赤くして俯くのみ。)

わか、っては、いるんです、けど。
――、し、たい、なら、
――は、い。

(嫌なことは嫌と言えばいい。
 今まで助けられた時にそう言われたりもした。
 けれど、どうしても言えなくて。
 だから、彼からの問いかけにも顔を赤くしながら頷く。)

――はい。

(辛くはない。
 大丈夫。
 歩ける。)

ゼロ > 「筋金入りなんだなぁ……。」

 そういえば最初、待てと言ったら待ったなぁと、少年はあちゃぁ、と仮面の額部分に手を当てて考え込む。
 そういう性格なのだろう、忠告して治るというものではなさそうだ、痛い目を見ていても、それが変えられないのは一種の強迫観念に囚われてるのかもしれない。
 はふ、うと、ため息をこぼしてみせる。

「ダメだよ、僕の体は色々弄られててね?
 生殖機能も強くされてるから、受身の相手を抱くことは出来ないよ。
 好きあったり、もしくは、何らかの事情で子供が欲しいとか、そんな特別な理由がないと。」

 彼女が望んでも、自分の体のせいで迷惑をかけてはいけない。
 これは、すっきりしたいとかそういう問題じゃないのだから。
 彼女に非があるわけではないことをちゃんと示しながら、抱かないよ、と。

「――――。」

 そして、話題を振ったことに後悔する。
 周りの声を今頃思い出して、気まずいなぁ、と。

ステラ >  
――ごめ、んなさい。

(謝る。
 ちょっとだけ謝ることじゃないかもしれない、と思ったけれど、でも原因は自分の性格なのでやっぱり謝ってもいいと思う。
 怒られた子供のように小さくなりながら。)

私、人じゃない、から。
頑丈だし、――子供も、出来ない。
――たぶん、きっと。

(今まで散々な目に遭い続けてきたけれど、それでも身ごもったことは一度もない。
 きっと色々なものが混ざり過ぎているからなのだろう。
 ――卵を産み付けられたとか、そういう例外はいくつかあるけれど。)

だから、あの、そういう、えっと。
――はっ、さん、したい、ってなら、付き合える、よ……?

(俯き気味に、白い仮面をじいと見つめる。)

ゼロ > 「そこは謝らなくていいから。
 確かに、呆れているけど、そこは君が付き合っていくところ、僕が何かを言うところでもないし。
 怒ったりしてるわけでもない。」

 だから、謝らなくてもいいんだよと、小さくなる相手に優しく言おう。
 勘違いさせてしまったのだろう、と自分の語彙の少なさに苦笑をこぼして見せて。

「人じゃないから、出来ないと言うのは多分違うと思うよ。
 それに、たぶん、きっと。だと確証もないしね。」

 彼女は勘違いをしているのだろう、だからこその彼女の言葉。
 彼女にこういうことを言わせているのも、心苦しいし。

「発散したくないといえば嘘になる、ステラは可愛いし、その体も情欲をそそる。
 それに、僕は面倒くさい男だ。
 孕ませたくないんじゃなくて、孕ませたいんだ。
 だからこそ、その覚悟がないままの相手を抱きたくはないのさ。」

 相手の事を考えてもいる、でも、自分本位でもある。

「―――仮面を外した僕と、抱き合えるの?」

 彼女は、仮面があるから、話ができると言ってくれた。
 仮面を外したら、彼女は話せるのだろうか。
 それもまた、不安だった

ステラ > ごめ――じゃなくて……う、ん。

(謝りかけて、やめる。
 完全に癖になってしまっている。
 俯いてもじもじ。)

――、あので、でも。
わたし、その、こういう、ことも、

(両腕をそれぞれ触手とスライムに変化させる。
 右手は粘液にまみれた柔らかそうな数本の触手。
 左手は右手の触手とは違う柔らかさの持ったりとしたゲル状のスライム。
 それらをうねうねと動かすが、)

っ――、ぁ、……。

(仮面を外す、つまり、「彼」の目に見られると言うこと。
 抱き合えるかどうかと言うだけなら問題ない。
 先ほどまでも依頼主――もう「元」だが――に見られながら抱かれていたのだし。
 だけど、きっと彼が言っているのはそういうことではない。
 彼の視線をまっすぐ受け止めながら抱かれることを想像するだけで心がぎゅうと縮こまる。
 何より、彼をだますようで、出来るとは言えなかった。
 陸に上がった魚のように、何度か口をパクパク開いたり閉じたりして、俯いた。)

ゼロ > 「それで、いい。
 うん、とか、そういう同意の言葉でいいんだ。」

 謝らずに、返答してくれたことに嬉しそうに言葉を放った。
 実際、分かってくれたのだろう、今だけの反応でも、嬉しいことであった。

「そういうこと、じゃないんだ。
 抱くのならば、君の中に入って、その中にタップリと僕の子種を注ぎ込んで孕ませたい。」

 気持ちよくなりたい。確かに彼女のそのスライムの手とか、触手とか快楽を得られるのだろう。
 でも、それよりも、やはり、彼女と交わり、その中に吐き出したいのだろう。
 獣の本能というべきなのだろう。

「だろう?その覚悟も、必要だね。
 いいよ、無理に大丈夫だと言わなくて。」

 彼女が珍しく狼狽し、言葉を失う。
 本当に、目はダメなのだろう少年は軽くうなづいて笑う。
 かつん。かつん、と廊下を歩く音が響く。
 ふたりが一時的に黙ったから、だろう、そして周囲の甘い声が聞こえてくる。

「まあ、変なこと言うだろうけれど。
 僕が欲情するくらいには、君は魅力的な女の子だよ。」

 変態でごめんねと、場の空気を壊すように冗談を交えて笑って見せた。