2018/05/09 のログ
レナーテ > 鎧のような硬さはないが、代わりに高い靭性と耐久性を兼ね備えたドレスは刃を通すことはない。
とはいえ、衝撃は貫通してしまうので、あくまで裂傷や刺傷、魔法による怪我を抑える事が目的。
彼の思うところは当たっているともいえるところだろう。
錆びた鉄のような鈍い色合いの髪と黒い瞳を見上げながら、兜の下の顔を見つめていた。

「そうですね……そう言ってしまえばそうなのですけど、もう少し粘って欲しいところです」

愉快そうに笑う彼に苦笑いで答え、肩を竦めながら溜息を零す。
こちらが伸した一人へと近づいていくのを見やると、なんだろうかとその様子を眺める。
周りが少女だらけであり、一応年の違う男性と手合わせする機会もあるのだが、ああして急所を落ち着かせる動作は見たことがなかった。
何かの手当方法だろうかと、きょとんとした顔で眺め続ける。

「肩は……大丈夫そうです、どっちかといえば手の方が痛くて……多分、突きを受けた時に深く当たったんだと思います」

肩紐が滑り落ちる様子は、そちらにダメージが有るように見えたのだろう。
緩く被りを振ると、苦笑いのまま痛む箇所を答える。
肩紐に触れられると、どうしようかと考えたものの……先程からの様子に、悪い人ではないのだろうと思っていた。
それなら任せても平気だろうと思えば、彼の好意に甘えて肩紐から腕を抜いていく。
水晶片を利用した照準装置の着いたそれは、少しだけ重たく、彼の腕に負荷を掛ける。

「そうしましょうか……」

人もいないし、怪我の理由を咎められることもない筈。
こくりと頷けば、練兵場に面した救護室へと向かっていく。
ガラス戸を開き、しんとした室内には簡素なベッドが二つと薬品棚が幾つか。
治療台も置かれた室内に踏み込めば、痛む手の甲を掌で多いつつ、棚の中身を確かめていく。
目でなぞるようにしてお目当ての物を探せば、棚の戸を開いたのだが……。

「……ごめんなさい、取ってもらえますか?」

一番高い位置に収められた、消毒薬とガーゼと包帯のセットを指差す。
丁度手元の高さにある方は中身が切れていたらしく、上のを取るしかない。
小さな背で頑張って背伸びしても、棚板にすら指先は届かず、困ったように笑いながらお願いの言葉と共に見つめていた。

グライド > はっは! まぁ、こうやって一度痛い目見た方が為にはなるだろうよ。

(急所打ちをされると、睾丸が思い切り引っ込んでしまうのだ。
とは言え、其れを説明するのはアレだろうし、まぁ、気休めでも在る。
相手が不思議そうな顔で見ているなら、少しばかり考えた後で。)

ま、こうやって落としてやるのさ。 別に痛みが無くなる訳じゃないが、ちったぁ短くて澄む。

(致命的な一撃を受けたとは言えないだろうから、まぁ、大丈夫だろうが。
こればかりは手当てをして、如何こうなるものでもないから
とりあえずは寝かせてやろう、ベッドよりも、冷たい地面の方が寧ろ良い。
肩ではなく、手の方を傷めたと説明されれば、嗚呼、と頷いて。
代わりに手にする銃の、少々普通とは異なる其のつくりを、物珍しげに一瞥してから
彼女が歩くにあわせ、救護室へと移動して行こう。)

―――……銃は、こっちのベッドに置いておくぜ。
あー…どれだ、アレか? ちょいと待ってな、後、そら、良いから座ってな。

(少女が、とって欲しいと示す先には、確かに其の背では届かない位置の救護道具。
其れを、ひょいと手を伸ばして掴み取っては、相手に、ベッドへ座るよう促すだろうか。
掌では、片手で巻くのも厄介だろうし、中途半端に巻いた所で痛みは出る)。

レナーテ > これで文句だけでなく、ちゃんと腕前を磨く様になればいいが。
彼の言葉に苦笑いを見せると、視線に答える言葉に嗚呼と言った様子で納得していく。
しかし、何処が落ちるのか、それが分かると多少なりは恥じらいは浮かぶもので納得した顔が徐々に俯いていく。
焦げ茶色の髪に隠れた顔、切れ目から覗ける頬はほんのりと朱色に染まっていた。

「ありがとうございます……」

銃は普通のと比べると明らかに異なるのは、火薬の匂いがしないこと。
先程の手合わせの合間も、青白い光の弾丸を放っていたのも見えていただろう。
魔法を放つ銃というだけあってか、硝煙の代わりに魔力の残滓が淡く溢れていた。
アンティーク調の蔦模様が描かれた赤いラインと、黒いフレームは武器の物々しい雰囲気を和らげる少女らしい品物。

「えぇ、あれです。ありがとうございます……」

こくりと頷きながら手を伸ばす彼を見上げる。
彼の促す手に導かれるままベッドに座れば、おずおずと掌を差し出す。
彼に比べれば細い指に華奢な掌、手首。
白い肌の手の甲に薄っすらと赤い跡が刻まれ、そこは他とは違い少しだけ熱を帯びる。

グライド > (其処で逆恨みするような性根の曲がり様なら、兵士としてやっていけない筈だ。
やって行けなければ、恐らく戦場ではどの道生きてはいけまい。
一度は納得を先に見せてから、次第に頬を染めていく少女の様子に
けらけらと意地悪く笑って見せた事だろう。)

容赦無くぶち抜いておいた割には、案外初心だったりするかい?
ま、今回は向こうが何かしたんだろうが…男にゃ大切なんだ、加減してやんな。
若いうちから、ガキも仕込めなくなっちまったら可哀想だしなぁ。

(多分、そこは若干意図してセクハラめいた言葉を使っているんだろう
あくまで言葉だけでは在るけれど、からかうように。
寝台の上に下ろした銃、先刻も弾丸が放たれてはいたが
其れにしては火薬の気配がしないのには、恐らく魔法銃
兎も角、普通とは機構が異なるのだろうとは察する。
生憎ながら魔法に関する感知能力が殆ど無い己には、具体的な事までは判らない、が。)

最初は染みるだろうが、ま、我慢しな。

(座った彼女の、其の目前へと一度屈み込んでは、取り出す消毒とガーゼ。
ガーゼへと薬液を染み込ませ、赤くなった相手の肌へ、浸透させるようにして一度貼り付ければ
後は、表面の汚れを除くように、少しだけ拭いて清めて行く。
放っておけば、蚯蚓腫れの様になってしまうだろう箇所を、とんとんと消毒済ませれば
後は、新しいガーゼを取り出して、傷の表面に乗せ、其の上からグルグルと包帯を巻きつけて。)

手首は動かせるようにした方が良いか? まぁ、出来れば暫く動かさん方が良いだろうが。
都合が悪いんなら、多少緩めにしとくがよ。

レナーテ > 「っ、そ、そういうわけではないです……けど。今度からは……そうします」

男との関係というのは、嫌になるほどの記憶が残っている。
それでも恥じらったのは、睾丸が動くさまを何となく脳裏に浮かべて恥ずかしくなっただけのこと。
意地悪な笑みに、金色の瞳を反らしながら、少しだけ頬を膨らませて答え、子供っぽい一面を自然と晒していた。

「はい……」

ベッドに座ると、傷を負った白い手が導かれる。
消毒液を染み込ませたガーゼで傷口を丁寧に拭い、消毒していく度に傷口の神経が痛みに焼ける。
ぴくっと腕が痛みに震え、眉間に少しばかりシワを寄せるものの、大人しく彼の治療を受けていく。
血の汚れが落ちていくと、すこしだけ皮が擦りむけたところから出血している程度であり、傷は深くないが浅く広い。
手慣れた彼の手当と、その顔を交互に見やる合間に手の甲は白いガーゼと包帯に包まれていく。

「いえ……暫くは戦うことはないと思うので、これで…」

手首の打撲や捻挫を気にしてか、あまり傷まないように交差して編まれた包帯の可動域を確かめる。
普段よりは動かせないが、事務仕事には差し支えなく、いざとなれば解けるちょうどいい塩梅。
大丈夫と微笑みながら手を引っ込めていくと、ゆっくりと頭を下げていった。

「ありがとうございました……自分だと、上手く出来なかったと思うので。お名前、まだでしたね……レナーテといいます」

顔を上げ、柔らかに微笑みながらお礼を告げる。
遅くなった自己紹介を紡ぎながら、自身の胸元に包帯の手を重ねていくと、外から呼び声が響く。
年頃の少女達の弾んだ声で、今しがた名乗った名前を叫ぶ響き。
そう遠くないところからの声に何度か瞳を瞬かせると、クスッと苦笑いを零す。

「手当してもらって早々でごめんなさい、戻らないとです」

ベッドから立ち上がると、傍らに立てかけられていたライフルを手に取る。
僅かに痛みは感じるが、先程のように苦でもない。
肩紐を通すと、ぺこりともう一度頭を下げてから、足早に声の方へと走っていく。
揺れる三つ編みから、淡いシトラスの香りを部屋に残しながら小さな影は遠ざかっていった。

グライド > おう、そうしてやんな。
……っと…取り合えず此れで大丈夫だろうよ。 もし何かの拍子に緩んだら、医者にでもちゃんと見てもらえば良い。

(どちらかと言えば子供っぽい、歳相応の表情を浮かべる姿に。
笑い飛ばしてそう答えては、包帯を巻き終わった手首の固定を
軽く指で触れて確かめた後に、漸く解放してやるだろう。
骨や筋にまで響いている傷でも無い筈だ、無理さえしなければ直ぐに治るだろう。
戦闘には出ないと聞けば、頷き返してゆっくりと立ち上がり、残った治療用具を纏めて。)

おう、銃使いが手首傷めちまったら大事だからなぁ。
んじゃ、俺様も、もう一度あいつ等の様子を見に行って来るぜ。
まだくたばったままなら、流石に引き摺ってやらにゃ。

(再び、兜を被る。
それから、名乗ってきた少女へと向けて、兜の中で小さく笑えば。)

……グライドだ、さっきも言ったが、傭兵をやってる。
また合う事がありゃ、其の時は宜しく頼むぜ、同業者さんよ。

(――さて、其の時も。 味方同士であったならば幸いだ、が。
何にしても、足早に去ってゆく其の姿を見送れば、手にした治療用具を棚へと戻し
己もまた遅れて、転がっている兵士二人を、救護室までぶち込みに戻るんだろう――)

ご案内:「王都マグメール 王城 練兵場」からレナーテさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城 練兵場」からグライドさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」にルーシェさんが現れました。
ルーシェ > 久しぶりに訪れた王城の中を何かを求めて歩き回る。
何処かなとあたりを見渡しつつ、人差し指の先を顎に当てるようにしながら考え込む。
迷子の様な心地になりながらも探し求めていたのは、ここにある師団の執務室という場所。
以前ひっそりと閲覧した書類の中にあった内容をたどれば、各々の執務室がここに収まっているのだとか。
第七師団、そこの師団長に悪戯にお願いしておいた言葉が叶うかどうか、あの言葉を受けてなにか変わったのか。
それを確かめるべく、コツコツとサンダルの踵の音を響かせた。

「どこだろ~……広いんだから、案内板ぐらい出してほしいよねぇ」

適当にほつき歩くも、それらしい案内表示も見当たらず、見事に迷った。
何故かドヤ顔のような自信に満ちた顔で両手を腰に当て、迷ったと胸を張って呟くほどに。
その後、ぐったりと溜息を零しながら肩を落とすと、雨に濡れた中庭へと視線を落とす。
相変わらずあそこは綺麗だと心の中でつぶやきながら手すりに寄りかかると、一休みといったところだろう。

ご案内:「王都マグメール 王城」からルーシェさんが去りました。