2018/05/02 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城 第七師団執務室」にサロメさんが現れました。
■サロメ >
「入るぞ、オーギュスト」
急ぎ足に声をかけつつ、ドアを無遠慮に開け放つ
部屋の中は蛻の空だった
「出ているのか…、やれやれ」
身体が治ったと思えばさっさとあちこちに出歩いているようだ
まるで落ち着きというものがない
小脇にかかえた書物の山を執務机へとどかっと置いて、椅子にかける
「予想通り、ではあるが……」
そのうちの一つ、古ぼけた羊皮紙の束を手に取った
■サロメ >
「(ミレーの伝承を辿ってみたが、すぐに行き詰まる。
城に抱えられたミレー達も、伝承のことを知っているものはいなかった)」
ナルラート朝以前の歴史に連なるものはやはり出てこない
余程徹底した何かが200年前にあったということだろう
「──どれだけ手を伸ばしてみても、すぐに手詰まりだな…」
椅子に背をもたれ、天井を仰ぐ
ご案内:「王都マグメール 王城 第七師団執務室」にアーヴァインさんが現れました。
■アーヴァイン > 第零師団の執務室を立つ時に紡がれた言葉は、人にも魔族にも聞き慣れぬ音。
それと共に自身の姿を、世界から認識しづらくなるように一時的に書き換えると、手土産を手に歩き出す。
すれ違う誰もがそこに祟り神が居るとは思いもしない状況のまま、廊下を進み、辿り着いたのは第七師団の執務室だ。
パチンと指を鳴らしてコードを解除するが、それも急に現れて脅かさないためのもの。
いきなり後ろに現れるより、音共に現れたほうがまだマシというレベルものだが。
「彼は不在か、病み上がりなのに仕事熱心なことだ」
開かれたドアの向こう、廊下に立つこの男は音と共に現れる。
祟り神の厳かな態度をしなくても済むように、お忍びといったところだ。
部屋の中へ入れば、彼に渡してくれと酒のボトルを差し出す。
輸入品の上質な酒だが、彼が好みそうなものと選び、度が強く、味わい深い一品。
■サロメ >
オーギュストの言い分は理解る
魔を退ける力がこの地に在るのだとすれば、
退魔の一団としてそれを紐解き手にしようというのは必然的なもの
しかし……
「(……私には、それが手に余るものに思えてならない)」
どれだけ国内の書物を漁っても、ナルラート朝以前のものは出てこない
やはり、触れてはいけないものなのでは……
視線を机に戻す
自分のもってきたものとは別に、まとめられている書類があった
──王国領内で起こっているテロに関する書類のようだった
「…確か、これにもミレーが噛んでいたな。
件の伝承などとは無縁の、狂信者達なのだろうが……」
小さく溜息をつく
ここにきて更に国内に問題が増えてくるとは
書類に手を伸ばそうとして、その来客に気づく
「アーヴァイン殿、いや、我らが将軍閣下の為にわざわざ、痛みいる」
椅子から立ち、一礼すれば、ボトルを受け取る
彼が好みそうな酒だ、執務室の棚に置いておくとしよう
■アーヴァイン > 「そんなに畏まらないでくれ、こちらも暫くタナールに構っていられなくなる。今までどおり、砦周辺を任せたいと伝えるついでだ」
ボトルが棚へと収められるのを見送りながら、視線の片隅に映る書類が目にとまる。
丁度この件だと呟きながら、頻発化したミレー族のテロの報告書を視線で指し示す。
「こちらの戦力は知っているだろう? いらぬ疑いを晴らすには、こちらから動くしかない。それに……俺達が動けば、殺さずにも済む」
殆どがミレー族であり、少女の多い特殊な集団。
特に首輪を付けてないことも多く、代わりに所属を示す衣類を纏っているのも、隷従を否定するもの。
そして星の聖猫派、彼等が叫ぶ神の名はこちらが知る神の名前とは異なった。
ミレー達の神は、どこでも同一だったというのにだ。
しかし、その名前に聞き覚えもあり……久しく肉親へ手紙を送ったばかり。
思案顔で呟く合間、そんな考えが脳裏を巡っていく。
■サロメ >
「堅苦しい物言いは半分は性分だ、我慢してくれ。
──そうだな、貴殿の抱える部隊は特殊だ。……王国に反する者は殺せと糾弾する者も多いかもしれないが」
嘆息し、再び椅子へと腰を落ち着かせる
……そう、彼の隊もまた特殊なものだ
基本的にミレーに隷従を敷くことが当たり前のこの国の中で、ある意味では半目する
ふと口をついて例の話が出そうになるが、そこは留まる
件の話は可能な限り広めるものではない。…特に、ただでさえ国の大幹から外れた枝であるこの男には
「…副将である私個人にそれを決定づける権限はないが、我々の領分でないことは確かだ」
ポン、と書類を軽く手で叩く
あくまでも第七師団は対魔族特化師団である
国内の問題とはいえど、師団として動くには優先度は高くない
■アーヴァイン > 性分だと言われれば、苦笑いを浮かべながらわかったと頷く。
続く言葉にも反論のしようもない、特殊な分、それを通し切るだけの環境と力を得たのだから。
「殺す、か。彼等をそこまで追いやったのは国のせいでもある。異質だと、反逆だと殺し続ければ……何時か一人になるだろう」
そもそもの引き金はこの奴隷制度であり、そこまで虐げなければ、こんな面倒な事は起きなかったのだ。
それを棚に上げる輩の言葉など、自分にとっては愚の骨頂と思え、軽く肩を竦めながら呆れた嘆息が溢れる。
「それに彼等のいう伝承は、他のミレーの伝承とも異なる。紐解かねば、こちらにも弊害の可能性がある」
名前だけでは、現状詳細は分からない。
生け捕りにして彼等の情報を聞き出す必要があった。
正しいのか、間違っているのか、仮に正しいにしてもどうしてそうなったのか。
悪意がこちらに広がる前に、潰さずに正さねばならないと変わらぬ表情で語る。
「だろうな、そちらに直接対処の話は来ないと思うが……巻き込まれないように、警戒はしてくれ」
彼も彼女も平民ではない地位に立つ存在。
狂気の矛先を向けられる可能性も考えられた。
■サロメ >
異なる伝承を嘯く、星の聖猫派
しかし元よりあった伝承も、今は語る者がいない
どちらが正しい、あるいはどちらともが間違っている可能性だってある
「──国を守る人間が、疑問を持ってはいけないのかもしれないが…」
その言葉は重く、深い感情を秘めている
生まれ育ち、学び、自らの一部としてきたこの国の歴史そのものに、溝が生じている
「ミレーは、人間に隷従するものだ。それはナルラート朝において邪神を崇拝したミレー達への深い温情でもある。
ミレーは隷従することで王国の人間への恩義に報いているはずだ。
少なくとも、私はそう教えられている。そこに疑問を持ったことはなく、それがこの国を成り立たせている」
サロメが口にするのは、この国の今在る姿
そしてそれを成り立たせた歴史と、在るべき立場の話である
「力でそれを捻じ曲げることは騎士道に反する。
──卿には色々なことで感謝しているが、そのやり方に同意はできない。
しかし……」
目を伏せ、僅かに視線を逸らす
「そう信じているものが揺らいだ時、何を信じて剣を振って良いのかわからなくなってしまう。
自分自身を信ずるにも、この身はこの国で培われたものだ。この国と共にあり共に育った」
疑念を向ければ、自分自身の持つ常識すらも信用に値しなくなるということ
迷うなと何度言われようと、一度湧いた疑念は抜けない棘となって、熱を持ってしまっている
■アーヴァイン > 人の中に語るものは途絶え、奥底へ逃げ込んだ一部のものだけが知る真実。
それも時と共に薄れたが、それに触れたからこそ、自身のすべてがあった。
だからこそ、彼女の言う国の建前は何時耳にしても苦手なもの。
「疑問を持たないことを正常と思うなら、常に停滞するのと変わりない。平常を、普通を疑うことが、人の進化だ。……まぁ、学者の母の受け売りだが」
既に定まったことは、それ以前の人々が勝手に定めた事柄だ。
正しいこともあれば、誤りも有る。
それが正しいかどうかを疑わねば、物理的ではない人の目を失うと母から習った言葉が自然と口に出た。
苦笑いで茶化すように締めたものの、恐らく疑わぬ人間が多いのだろうと、国の闇深さに苦笑いを零す。
「別に国を書き換えるつもりはない、というよりは……するなら数百年掛けて行わないとならない。無駄な争いがないから、あの集落を作り、自分を偽ったんだ。妙な心配はしなくて大丈夫だ」
彼等の歴史を解いたからと言って、それを御旗に反旗を翻すつもりは毛頭ない。
それこそ、安寧の地を作るという考えに反する行動だ。
ただ、認識が間違っているなら直さねば、無駄な争いを産む。
殺せば角が立ち、憎しみの連鎖が始まって、どちらかが死ぬまで殺し合うことになるだろう。
衝突回避の為の術だと語りながら、緩く頭を振った。
「……将軍を信じればいいだろう? 国や思想ではなく、君が信じられる人は裏切らないはずだ」
何を信じればよいか、その言葉に薄っすらと笑いながら答える。
彼とて彼女を大切に思っているだろう、その想いに報いるなり、尽くすなり、応え方はそれぞれだ。
それこそが信じるべきものと笑みのまま答えれば、じっと彼女の金色を見つめる。
■サロメ >
「立場というものがあるだろう?」
そう言葉を返し、笑う
騎士とは誓いを立てるもの、今はこの師団に身を置けど、最初に剣を捧げたのはこの国に他ならない
忠誠とは、疑うべくもないものなのだ
「…では、貴殿はなぜ自らの周りのミレーを奴隷としての扱いから解き放つ?
隷従の生まれや貧困が不幸ではない。……魂の抜けたような顔の王族を見ていると、常々そう思う」
彼の作った集落とは、それらの垣根をなくしたもの
どちらが幸福なのかは…正直わからなかった
「──…貴殿らしい優しい言葉だな。
同じようなことをオーギュストに言ったら、怒鳴り声が帰ってきたというのに」
やれやれ、と肩を小さくあげて笑う
「そういえば以前ヤツに問うてみろと言われた言葉を向けてみた、
あわや貴殿のところに大剣一本で乗り込み暴れるところだった、さすがに肝を冷やしたぞ」
■アーヴァイン > 「難儀なものだな……」
疑わないのではなく、疑えないという事かと苦笑いで答える。
とはいえ、その言葉を裏返すなら彼女も何か疑うべきものがみえたからこそ、立場を立てたのだろうかとも思う。
「奴隷制度が嫌だからだ。だが、変えるには時間は掛かる。それなら、奴隷にしないメリットを示せばいい。王族や貴族は嫌がるが、俺や集落が提供するモノは欲しいから黙るだろう? 利害の一致をさせるだけでも、立場は得られる」
きっぱりと制度自体は嫌いだと言い放つが、理想だけで片付けきらない。
元々は宿を通じた傭兵集団だった自分たちが、居を構えて流通の中央に食い込み、サービスの提供を行う。
結果、自分たちという存在を否定して失うものは大きくなり、手のかけようがなくなる。
法を変えずとも、利害関係で立場を築くだけで心を救えるなら、十分だと笑うのだ。
「立場に胡座をかいて研鑽を怠れば、立場を使うのではなくて縋ることになるからな」
一間開け、考え込むように俯いてから語りだす。
王族の己ではなく、己自身の価値を問われた時に、腐敗した王族たちの中でどれだけ高らかに価値を叫べるだろうか。
奴隷でありながらも、立場を得るために研鑽する少女達のほうが不幸に見えないとすれば、目標こそが価値なのかも知れない。
「……怒鳴り声?」
優しい言葉だと言われれば、ありがとうと御礼の言葉と共に微笑んだが、続く言葉には怪訝そうに眉をひそめた。
そして、試しにと告げた言葉の結果が語られていくと、何度か瞳を瞬かせる。
思っていた以上に愛されていた答えに、クツクツと可笑しそうに笑う。
「そうだったか……殴られるかとは思っていたが、決闘になるとは、思いもしなかったな」
流石に刃を交えるレベルには発展しないだろうと思っていたが、それだけ想われているのだという証拠。
楽しげに微笑んでいたが、眉をひそめると小さな声で語りかけていく。
「それなら、船での一件は互いに忘れておいたほうがいいな。間違っても口にしないほうがいい」
状況として仕方ないとは言え、肌を重ねた記憶。
それを知れば、今度こそ斬りかかられそうだと思えば、危なっかしい話をしている割には何故か楽しそうに笑っていた。
■サロメ >
「奴隷制度と言えば聞こえは悪いが、結局は身分制度だ。
そもそもの身分…カーストそのものが嫌い、ということなのだろうか」
実に彼らしい返答であると、表情が綻ぶ
「ああ、迷いに迷っていたら怒鳴られ酒を飲まされた。
内に湧いた、この国の根幹への疑問をどうしようかと本気で参っていたのだが」
おかげであの日はあの後仕事にならなかった
──まぁ、収穫自体は得られたのだ、よしとする他なかったが
「さて、気にしないかもしれんがな。
たった一日の夜を気にするにはこの身は汚れすぎた。
それでも良いと言っているような、奇特な男だ」
女など選り取り見取りの立場だというのに、と再び笑って
■アーヴァイン > 「あぁ、それに……誰もやりたい仕事や事柄はあるだろう?」
たった一人だけ、その願いを叶えられず死なせてしまった娘の記憶が過る。
今でも冷えていく血の熱を掌は覚えており、笑みを浮かべながらも自然と掌がぎゅっと閉ざされていく。
「迷ったら導くではなく叱咤と酒とは……彼らしいというべきかな。それがさっきの疑問というところか?」
彼の力強さを感じるような引っ張り方と、その光景は想像するに容易い。
苦笑いを浮かべつつも納得したものの、相変わらず男女というか、情のもつれに何処か疎い返答に軽く頬をかいた。
「剣を取るほど怒ったんだ、女として俺に触られるのが心底嫌……というより、嫉妬するんだろう。愛するというのは、穢れとはまた別だ。どれだけ穢されても、彼の君が好きだという想いは変わらない」
自分だけのものにしたいという独占欲、それが男が持つ愛する人への強い思いの一つだ。
切り捨てるつもりでいたほどならば、一晩であっても許せないだろうと思う。
身体の美しさや、身体の甘美さではなく、心の問題だと言うように、握りこぶしを自身の心臓の上へ重ねて軽く叩いた。
■サロメ > 「……そういうことだ。
ナルラート朝の発足以降に起こったことが多すぎる。
魔族の出現もそう、ミレーの奴隷化もそうだ。
そしてそれ以前の歴史を細やかに記した書物はどこにも現存しない。
それの示すところは改竄、つまりは触れることへの禁忌だ」
机の上に積まれた古びた書類を睨めつける
これらも全て、ある一時を堺に書き記されたもの
「どうだかな。私が他の人間のものになるのが気に入らんという言葉ばかりを吐いていたが。
あれが果たして愛なのかどうか、正直疑わしいぞ?まぁ、私も随分鈍感なほうだと自覚はあるが」
苦笑を浮かべる
妙に不器用が揃ってしまった師団のトップである
■アーヴァイン > 「そうだな、俺が幼い頃、母も同じことを言って九頭竜山脈へ向かうようになった。禁忌か……しかし、何で君達がそんな事を調べるんだ?」
全ては200年前に始まったとも言えるが、そのもっと前の記憶は見つけることは適わない。
ただ、僅かに残ったミレーの話を継ぎ合わせれば、朧気ではあるが国に大きな変化が起きたことだけは知っていた。
それがなにか、どうして起きたのか。
そこまで詳しいことは知る由もなく……だが、彼等を知る必要がある自分と違い、彼等は魔族と向かい合う存在だ。
何故それを気にかけるのか、接点を感じない資料にその理由を問いかける。
「……男心をいうとだが、男は女という戦利品を得たら、自慢はしたいが譲りたくはないものだ。男は愛する人の初めてになりたがり、女は最後の人になりたがるという。君の心を初めて得た男となるなら、余計触れられるのも手放すのも嫌がるものだ」
凛とした彼女の心を、それだけ揺さぶる男はそう居ないだろう。
ましては初めて奪ったなら、男としての興奮は一入強くなるはず。
そんな男心を語りながら微笑むも、彼女の不器用さに少しだけ嫁の面影を感じさせられる。
■サロメ >
「…魔族が現れるようになったのが200年前だ。
しかし魔族の国には数百年を生きた魔王などザラにいる。
なぜそれまで現れなかった?───それを阻害する力があったからだ、この国に。
200年前を皮切りに、それが弱まったから、魔族が現れるようになったのだと私は推測する。
第七師団が宛をつけ紐解こうとしているのはその力の正体についてだ」
それは恐らく、扱えるものならば対魔族用の切り札に成り得る
そして、扱えるかどうかも現物を見てみなければ判別はできない──そういうことなのだろう
「…別に心を許したわけではないぞ、…たぶん」
そんな話にそう答えつつ視線を逸らす様子はどこか子供じみていて
思えば自分の初めてを奪った男もアレなのだが、それは飲み込んでおく
■アーヴァイン > 「そういう事か……」
200年前に、魔族たちを抑えつけられる大きな力があったとしたら。
その仮説だけでも、その断片に触れた自身は大凡の想像がついた。
しかし、瞳を伏せながらしばし考え、そして緩く頭を振る。
「辞めておいたほうがいい、これは……最悪の場合、君や将軍が死傷する可能性があるからだ」
先日の義妹のこともある、それと同系列の力とし、さらにその上ともなれば非情に危険なのは分かる。
しかしその答えは、招待を知っていると暗に答える事もなるが。
「……嘘が下手なところも、似ているな。君と話していると嫁と話しているのとあまり変わりなく感じる」
不器用で嘘の下手なところ、子供っぽく視線をそらす仕草にクスッと微笑みながら囁いた。
■サロメ >
「承知の上だ。だからこそ迷いもした。
──私はもう、あの男についてゆく。全てオーギュストが決める。
それに触れるも振れまいも、命を捨てるも捨てまいも。
…まぁ、覚悟が決まっていつつも弱音が漏れるあたりは、私もまだまだ未熟ということだな」
そう答えながら、ゆっくりと席を立つ
トントン、と自身持ってきた書類をまとめ、皮紐で丁寧にまとめてゆく
「……口外はしないで欲しい。
単なる好奇心でも、触れればおそらくは……」
おおよその見当はついているのだろう
触れればただでは済まない
文字通りこの王国の根幹、ひいては王国を揺るがす問題だ
本来は、疑問をもつことすら危険であることに否定する要素がない
──嘘が下手、と言われればはぁー、と大きな溜息をついた
「上手に嘘をつけること、がこの国で長生きできる必須技能なのだがな。
生憎、それも性分ではないらしい」
言い終わると椅子にかけたマントを羽織る
「さて…私は将軍邸に向かう。
元より調べた資料を見せに来たのだが、いなかったからな…」
■アーヴァイン > 「未熟というわけではない、彼と君の考えが異なるのは正常なことだ。そして、信じるなら、理解した上で引き止めることも大切だ。引っ張られるだけでは、あまり健全ではなくなる」
失うかも知れないという恐れは、とても正常なことだ。
それを無視して突き進むのも、蛮勇というもの。
彼女が信じるのは勇気であっても、蛮勇であってはならない。
疑問に思うことを正しいと肯定しながら頷き、続く言葉には穏やかに笑みを零す。
「言わないさ、テロの刺激にもなりかねない」
解き明かすには今は最適な時ではない。
いずれその時が来る日まで、真実を繋げながら時を待つべきだと苦笑いを浮かべる。
「その分彼に庇ってもらえばいいだろう? その分、彼を癒やせばいい。それも支え合う男女というものだ」
恐らく庇い方というのが分からなくて、突き放すような言葉が出るかも知れないが……そこは二人でゆっくりと縮め合う世界だろう。
悪いことではないと微笑みながら彼女の様子を見やり、小さく頷くとドアの方へと向かう。
「お邪魔したな……嗚呼それと、嘘がつけない分、直球で全部言ってあげるといい。君が思う気持ちをそのまま伝えるほうが、彼も楽だと思う」
嫌なら嫌だと、止まって欲しいなら待てと。
いい子に副官らしく寄り添いすぎると、無茶を超えてしまうかも知れない。
甘い止め方をひっそりと教えると、ではまたと軽く手を振り、廊下へと歩いていった。
やって来た時は異なり、自然と遠ざかる足音と気配を晒しながら。
■サロメ >
「数々の助言、痛みいる」
その去っていく背なへと、騎士の礼を送る
引き止める、止まらせる…
確かに、必要であり、それは重要なところだ
「しかしまぁ、困ったことにだが」
一人になった部屋の中で、天井を見上げ呟く
「無茶をやっている彼が、一番ついていこうという気にさせる」
罪な男だ
最後にそう呟いて、自身もまた執務室を後にした
ご案内:「王都マグメール 王城 第七師団執務室」からサロメさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城 第七師団執務室」からアーヴァインさんが去りました。