2018/04/26 のログ
ヴェルム > 「そんなことは…あるかも?
ふふっ、問題発言だね…上から何か言われたりしたかな?」

大したものだと言われれば謙遜するのは当然、団員たちのおかげでこうして腐らずに胸を張って騎士をやっていられる。
ミリーディアだって…と言おうとしたものの、部屋の惨状を改めて見てしまうと説得力は確かに無いかも。
彼女の背信発言については全く気にしていない、十三師団にいるということはそういうことだからなのだが。
ただ彼女が最近、上に呼び出されたことは把握している。
何かと彼女を頼りがちな上官たちを考えれば、どんな話があったかはなんとなく想像がついた。
尋ねつつ、注いでもらった紅茶に口をつける。

「ああ、それについては考えたけど、ある日突然機能を停止する恐怖に比べたら全然平気だよ。
それにミリーディアなら、悪いようにはしないって思ってるから」

今まで心臓の魔導機械に不具合があったことはないが、指摘されればさすがに気になってしまう。
ましてや心臓の替わりに動いている機械だ、そんな心配など不要だったかもしれないが、自分の身体だからこそより詳しく知っておく価値はある。
彼女にもそれを知られてしまうことにもなるが、さすがに命には代えられないし、それにミリーディアがそういった駆け引きを好むタイプには思えなかったからこそ、信じることにした。

ミリーディア > 「今の調子で頑張り給え…と、言いたいのだが、そうだったな。
例えば、君の師団であれば魔族を引き入れている点が気に入らないらしい、とかありがちな事さ。
君に対して儂から言えるのは…魔族どころか、魔王を引き入れたのは、何としても隠し通しておいてくれ。
それこそ、王国での君の存亡に関わる事態となるだろうからね」

さっそくと、チョコレートケーキを口にしながら、それを伝える。
情報源は企業秘密としておこう、企業ではないが。

「魔導機械において、魔力の損失以外に機能の停止と言うのは余程無いだろうとは思う、絶対ではないが。
君がそれで良いのなら儂は構わんよ、知る事には興味はあるが、それをどうこうする事に興味はないからね」

そこまで伝え、間を置くように紅茶を一口啜り、こう続けた。

「さて、すぐに行うかね?行うなら移動が必要だが」

ヴェルム > 「これは…またお礼でも持ってきたほうがいいな。
でも、『元』魔王と訂正はさせてもらおうかな、今はメイドに転職してるから」

彼女の情報網は大したものだし、それを上に隠してもらっていたとは。
知らぬ間に助けられていたのだとしたら、また改めて御礼をしなければならないだろう。
それから、彼女の言う人物の名誉のために一応の訂正は入れておく。

「魔力の損失か…だとすればこの魔導機械は普通とは違うということになるかな…まぁ、それを調べてもらうんだけど。
とにかく…ありがとうミリーディア、すぐにできるならもちろん。
時間はあるからね」

心臓の代わりをつとめる魔導機械はそれ自体から魔力を生み出しているように思う。
だからこそありふれた魔導機械とはまた違うのではないだろうか。
まぁ臓器の代わりになる魔導機械というだけで珍しいのだが。
彼女がすぐに行うかと聞けば、当然と頷いて紅茶を啜る。
機械とはいえ心臓だ、早めの今の状態を知っておくに限る。
二人紅茶を飲み干したあと、その作業を行うという場所に向かうのだろう。

ご案内:「王都マグメール 王城内研究施設」からヴェルムさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城内研究施設」からミリーディアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」にリーセロットさんが現れました。
リーセロット > 大広間で未だ繰り広げられる夜宴。
抜け出した少女は中庭へ移動し、花壇の縁に腰を落とす。
時折女の甲高い笑い声がここまで届き、会場の盛り上がりも届くのだが、だからこそ内向的な少女には息苦しい場所であった。
忍耐の糸がぷっつり切れたのは、母から聞いていた王族の次男が急遽不参加になったと聞いたから。
彼をモノにせよとの命令はどう頑張っても無理になった。
―――少なくとも今夜は。

「…………」

はぁ。思わずため息。
すぐ帰っては母も良い顔をしないだろう。
目的の人物とは接触出来なくとも、権力を持つ者と顔見知りになっておくべきだと常々言われている。
積極的で色気たっぷりな母の若い頃と自分は違うと、分からないはずはないのだけれど。

ご案内:「王都マグメール 王城」にセイン=ディバンさんが現れました。
セイン=ディバン > 「……」

王城に侵入し、宴の場に溶け込み情報収集をしていた男。
なかなか面白い情報が手に入ったので、そこは満足ではあるものの。
貴族王族の宴というものの空気に、育ちの悪い男は居心地が悪そうにしていた。

(……なんだかねー、この手の。見得の張り合い、上辺だけのお世辞おべっかの応酬)

誰も彼もが、仮面をかぶっているような振る舞い。
その毒々しい空気に男は舌を出しつつ、そろそろ撤退時か、と考える。
広間を抜け、さてどこから脱出するか。そう考えていれば。
中庭に、人影を見つけ。男は興味本位でそこへと向かった。
王城でよく会う知り合いが中庭にいることが多かったから、気になったのだ。

「……」

だが、そこにいたのは知人ではなかった。とはいえ、夜半に中庭に一人たたずむ少女。
王城の中とはいえ、危険が無いともいえない。現に自分のように侵入者だっているのだから。
男は、一応、念のため、声をかけておくことにした。
侵入者なのに。ある意味とても大胆だ。

「どうも、お美しいお嬢様。
 アナタは、宴に参加しないのですか?」

執事服に似合う、丁寧な物言いで声をかける。
距離は詰めない。警戒されてもことだからだ。

リーセロット > 憂鬱そうな瞳は足下の美しい花を見ていながら、実際は見ていなかった。
とにかく退屈であり、帰りたい。
そんな思考でいっぱいの少女だからこそ不意にかけられた声に振り向く仕草は、ぽやぁと。

「…………私…ですか…?」

そもそも自分にかけられた言葉なのかすら判断つかない様子。
しかし現在花咲き乱れる中庭には自身しかおらず、たぶん、自分のこと…なのだろう。
一瞬正直に「ああいう場所は苦手で」と言いかけ、喉まで出かかった本音をゴクン、飲み込む。

「……、…。 人酔いしてしまったみたいで…。
 それに私がいなくても十分盛り上がっているようですし……あ…いえ、良い宴の証ということで…」

飲み込んだものがまたうっかり出かかったのか、愚痴っぽくなったと慌ててフォロー。
器用な貴族の娘にはほど遠いちぐはぐな反応であった。

セイン=ディバン > しっかりと距離を取りつつ、決して相手を驚かせぬよう。
優しく、しかし相手にも届くような声で問いかければ。
相手は、どこかゆったりと、あるいはのんびりとしたような……。
心ここにあらず、という様子で振り返った。

「はい。アナタ様です。最近暖かいとはいえ、夜は冷える時もあります。
 ここではお体に冷気が障りますよ?」

中庭には、今少女しかいないのに。なんともずれた反応をされてしまった。
だが、男は笑顔を作り、相手へゆっくりと近づくと、その肩に羽織っていたバトラーコートをかける。

「あぁ、そうなのですね。ふふふ、実は私もなのです。
 なんといいますか……ああいう場は……苦手でして。
 なら参加などするな、と言われそうですが」

相手の言葉に、男は苦笑しつつ、相手同様に花壇の縁に腰掛ける。
無論、相手のすぐ横に、なんていう真似はしない。
ちょっと距離離れたところに座りつつ、正直な気持ちを吐き出し。
その最中、相手の様子を窺う。なんとも、宴の場が似合いそうな美貌だが。
まぁ、向き不向きもあるよな、と男は内心だけで納得する。

リーセロット > 「あ――…すみません、ありがとうございます」

ふわ、とバトラーコートがかけられ、冷えた夜風に晒された肩が隠された。
それまでぽやんとしていた顔に自然と笑みが浮かんだが、若干緊張の色も見えよう。
警戒しているわけではなく、人見知りな性格ゆえなのだけれど。
だがそれでも当初退屈のあまり無色であった表情に比べれば生気も戻り。

「そう…そうなんです。息が詰まるんです。
 みなさん本当のことは言いませんし、かといってご機嫌を損ねるようなことを
 口走ったら大変ですから、私も本当に思ったことは言えませんし。
 ―――なん…て…今のは秘密でお願いします」

今度はうっかりでは済まない本音がぽろりぽろりと。
そんな自分の言葉に慌てると分かりやすく人差し指を立て、しぃっとして見せた。
そして内緒話ついでに今頃な自己紹介も。

「私、リーセロット・ファン・ブロンクホルストと申します」

セイン=ディバン > 「いえいえ。可憐な花が寒風に晒されるのは見ていられませんので」

相手の感謝の言葉に、男は実にキザったらしく言い放つ。
笑みが浮かぶのを見れば、うんうん、と満足そうに頷き。
相手の顔色に生気が戻るのを確認し、ふぅ、と息を吐く。

「……ふむ。……ふむふむ。
 あ~、わかるわかる。ど~もこう、貴族ってのはなー。
 立場身分はあるんだろうけど、こう、息苦しいよねー」

相手の言葉を、最初は頷き、黙って聞いていただけだったが。
男もまったく同じことを感じていたため……つい、地が出てしまう。
先ほどまでの丁寧な言葉遣いとはまったく正反対の、フランクというか、なれなれしい言葉。
それに男自身が気づき、しまった、と相手を見るが。
そこで、相手に秘密、と言われれば、男はにこりと笑い。

「秘密、ですか。では、秘密の愚痴を聞かせてくれたお礼に。
 私も秘密を。……セイン=ディバン。冒険者で……。
 王城への侵入者です」

にこにこ笑顔のまま、とんでもないことを暴露する男。
相手同様、人差し指を唇に当てつつ、である。

リーセロット > 丁寧で柔らかな物腰と言葉遣い、それに女の扱いに慣れた様子から
てっきり上流社会に染まった者だろうと思ったところである。
急に砕けた調子になれば少女の金色の目はぱちくりとまばたいた。

「………侵入者?」

そこで追い打ちをかけて秘密を打ち明けられるのでぽかんとしたまま。

「この厳重な警備をすり抜けて…ですか? 何を目的に?」

にわかには信じられずといった様子で至極普通な疑問を。
考えてみれば自身なんて魔族の娘なのだから、ある意味国に対する侵入者であるというのに。
貴族の娘としてぬくぬく育ってきたのは間違いなく、侵入者も冒険者もピンとこない。
少女の問いはどちらかといえば単純な好奇心が強いものだったかもしれない。

セイン=ディバン > ついつい漏らしてしまった地。もともとキザな演技も丁寧な言葉遣いも慣れているわけでもない。
さすがに相手も驚いたようで。ぱち、と瞬きをしていたが。

「はい。侵入者です」

告白を聞き返されたので、男は念を押すように再度言う。
よく考えずとも、リスクしかない行為だ。もしも相手が憲兵でも呼べば、すぐに男はお尋ね者なのだから。
だが、相手はそんなことはせず、質問を更に重ねてきた。

「そうですね。一身上の都合、というヤツです。
 軍の魔族の国侵攻作戦の情報収集と、妨害工作、というのが目的で」

素直に目的を話せば、男は僅かに、相手との距離を近づけるように移動する。
そこで男はにやり、と笑うと。

「今度はリーセちゃんに質問いい? 貴族っぽいのに、パーティ苦手って言ってたけどさ。
 何かあったの? 良ければお悩み相談とか、愚痴とか聞くよ?
 ほら、オレ冒険者だし。キミの悩み解決できるかも」

完全に地をさらしながら、今度は男が質問をする。
目の前の少女。その雰囲気や美貌が、男をひきつけていた。

リーセロット > 温室育ちな少女の勘は外れた。
こんなところに侵入するからには貴族の誰ぞを陥れたいがためだとか、そんなものだと思っていたから。
冒険者がいかなるものか正直分からないところはあるのだけれど、それにしても彼の目的は随分偏っている。

「…――――冒険者の方は誰かに依頼されて動くことが多いんでしょう?」

魔族を退けたいのかその逆か、いずれにしても彼自身の目的ではないのだろうと踏む。
詮索するでもなく、続く好奇心本位であり逸らされればそれまでの、他愛無い疑問であったが。

「冒険者ってお悩み相談まで受けるんですか」

これまた知らなかった。
不敵な笑みを浮かべる相手とは違い、押されて引くような困惑顔で視線を合わせ。

「何かって…何も。何もないんです。
 本当はお会いしたい方がいたのですけど、その方は今夜はいらっしゃらないみたいで…。
 だからあの息苦しい場所に私がいる意味もないんです」

まるで恋でもしているかのような口ぶりになったが、断じてそんなことではない。
恋どころか会いたいその人を誘惑するのが目的だったなんて言えない。
1度は合わせた視線を、すすーっと外したが距離が近いので気まずく。

セイン=ディバン > 相手と自分。その身分の違いが、男にとっては刺激的で楽しかった。
男の常識は相手に通じず。相手の常識も男に通じず。
だが、そんな差があるからこそ、会話が楽しかった。

「え~っと、えぇまぁ。多くはそうですけど。今回の私の目的は本当に私の都合によるものでして。
 ……実は、妻が魔王なんです。なので、人類が魔族の国を攻め込みすぎると都合がよくないんですよ」

これも内緒ですよ、と。人差し指を口に当てて笑う男。
相手の好奇心を刺激するかどうかは分からないが。男にとっては別段隠すことでもないのだ。

「そりゃもちろん。依頼さえあれば何でもやるのが冒険者。
 冒険ばかりが能じゃない、ってね」

相手の言葉に大きく頷きつつ、どん、と胸を叩く男。
そのまま相手と視線を合わせれば、困惑するような顔がまた逆にチャーミングだ、とか思ってしまう。

「……ふむ。なるほど? 何か、事情があるみたいだね。
 ……リーセちゃん。会いたい人がいる、って割には。何か……。
 その人に会いたくないみたいな顔してるぜ? 本当は、会えなくてよかった、みたいな。
 ……パーティに出た意味はなかったかもだけど、こうしてオレと会えて愚痴れたから、それで結果OK、とかならない?」

男は相手の言葉を聞いていたが、一通りを聞き終えると。
失礼にも、ずばり指摘をしてしまう。
会いたい人に会えなかったのならば、落胆の様子が浮かぶべきなのに。
それよりも、ただパーティにいるのが苦痛だった、みたいな様子を感じてしまったからなのだが。

リーセロット > 「魔族と契ったんですか?自ら望んで?それとも魔に毒されて?」

明らかに興味を示したのはソコ。
少女の近しい人で魔族と契ったのは父だが、魔に魅入られた者の定めというのか相手のように健康的に見えたことはない。
だからこそ相手の言葉は少し信じがたく、同時に少し嬉しくもあった。
しかしおそらく人間なのだろう相手に簡単に表情を読み取られ、
真意も探られてしまう自分は魔族と呼ぶのもおこがましい気がしてくる。

「………」

そんなに顔に出ていたのだろうか。
思わず自分の頬を両手で包んでみたものの、どんな顔をしていたかまでは分からない。
これでは、かの人物に会えたとしても誘惑が成功したかどうか。
ここでようやくの落胆の表情。
会えなかったことではなく、自分の不甲斐なさに対する落胆だが。

「――――ふふ。何ですか、それ。
 今日のドレス、コルセットがとってもきついんですよ。
 こんなに着飾って頑張って、愚痴言いにきたなんて…報われませんね」

報われないと言いつつ少女の顔は晴れやかに。
そんな表情がまた少し曇ったのは、まるで最初からそこにいたかのような
1匹の蝙蝠が中庭の夜空を羽ばたきながら、キィと高く鳴いた時だった。

「…ごめんなさい。戻らなくちゃいけません」

まるで母親に叱られたこどものように委縮する少女はすぐさま立ち上がり、
借りていたコートを半ば押し付けるような勢いで返す。
そしてそのまま、お別れの挨拶をする余裕もなく駆け、建物の中へと戻っていく少女は―――
死角に入った途端、母の召喚魔術により強制的に帰宅させられ、宴に『戻る』ことはなかった。

ご案内:「王都マグメール 王城」からリーセロットさんが去りました。