2017/04/24 のログ
アーヴァイン > 基本的に義父と自分の間は良好とも言える。
利害一致というところが特に大きく、義父の不利益に為らなければ文句は言われない。
ただ、彼女の扱いは義父としては不満があるのは所々で聞いてはいるも、常にこう告げても居た。
貴方がよこした駒をどう扱うかは自分次第だと。
好きに使えと言った以上、向こうも文句も言わないし、仕事は熟しているから着けようもない。
ただ、互いの価値観は少し違うだろう。
だが、それを通り越してでも……国の存命に注力する人物は、腐りきった国では希少であり、義父の求める器など更に少ない。
それと自己の好き嫌いを天秤にかけるなど、愚の骨頂であることぐらい、理解しているのだから。

返事の声も、表情も何時もと変わらないはず。
なのに、どこか気落ちしたような、薄っすらとした影を感じてしまう。
ずっと彼女に触れ続けた結果、些細な変化でも感じ取ってしまうのかもしれない。
彼女の異変が、体調以外の何かといえないのが、その証拠だろう。

「いや、ルークの様子が気になっただけだ。 いや、やっぱり何かあっただろう?」

何事もなければ、表情を出すのも苦手な彼女が、瞳を泳がせるはずもない。
僅かな動きに察知すれば、そっと手を伸ばして頬に触れようとする。

「昔から一人であれこれ走り回ることが多かったからな、ルークを引きずり回してしまったかもしれない。何かあれば遠慮なく言って欲しい、こういう加減はどうも下手だと妹に思い知らされた」

困ったように笑いながら語りかけると、その瞳を見つめる。
昔から人を使うのが結構荒いところがあると、注意されたばかりだ。
彼女にも無理を強いていないかと思えば、気になって仕方ない。

ルーク > 嗚呼…触れられると、再び蓋をしようとした泉が溢れてくる。
否、触れられなくても姿を見るだけで声を聞くだけでどれだけ以前の状態に戻そうとしても押さえ込もうとしても、胸の中の泉に暖かなものが溢れてしまう。

「問題ありません。…いえ、アーヴァイン様の公務へ付き添う事やお世話をすることに苦痛を感じたことはありません。……確かに、微かな不調を感じている部分はありますが、ご公務やお世話に支障を来すほどではありません、ので…。」

彼の前では、ほんのわずかな不調も、動揺も見抜かれてしまう。
心配されているとき、どのように振舞えばいいのだろうか。
些細な出来事で、わざわざ彼の手を煩わせていいものか、と考えながら告げる。
陰は、どちらかといえば駒と人の狭間で揺れ動くのが影響しているのが大きいのだろう。
『声』の主は、ルークには誰かわかっていた。
生まれたその瞬間から、ルークをルーアッハの意に沿うように教育してきたいわば、教育係の声だった。
その声に、今のルークの在り方の弱さを指摘され、感情と自我を獲得したが故に駒である必要性を理解し、悩んでいた。

アーヴァイン > いつもの様に紡がれる言葉、表情。
けれど、最後に残る語尾に微笑みを見せれば、彼女の唇に人差し指を押し当てようとする。

「口癖だ、その言葉が出る時は…何か抱えている」

戸惑い、動揺すると出て来る語尾の言葉。
おそらく、誰も気にしないであろう一言だが、ずっと彼女の言葉を聞きながら、人にしようと足掻いた合間に気づいた、些細な変化。
彼女を育てた存在が、彼女を苦しめているとは気付かぬまま…ただ変化だけを言い当てると、今度はあやすように黒髪に指を通すようにしながら撫でようとする。

「その不調は微かではないんじゃないか?」

おそらく…本当に僅かなら、言わなかったかもしれない。
そう思えば、些細なサインを逃さぬようにしつつ、苦笑いで問いかけた。

ルーク > 「――………。」

微笑み、唇に人差し指を押し当てながら口癖を指摘されると琥珀の瞳が少しだけ大きくなる。
表情があまり動かないルークの瞳は、驚きや戸惑いにほんの微かに変化を見せる。
それこそ、本人ですらあまり自覚していないほどの変化で、それでも彼には驚いているとわかってしまうのだろう。
口癖にしてもそう。誰も、ルークですら気づかぬままに出てしまっている癖は、彼がルークをよく見ていたから気づいた些細なもの。

「…………。」

あやすかのように黒髪を梳くように撫でる手に、胸の内が締め付けられる。
どれだけ蓋をして、鍵をかけようとしてもあとからあとから湧き出すものは、すぐに溢れてしまう。

「不調は、本当に微かなものです。図書室に寄った際、たまたま居合わせた者に精神干渉と思われる魔術のようなものをかけられまして、咄嗟に受け流すというよりも強引に魔術を引き剥がすようにして防いだため、その反動と思われます。…ですので、本当に微かなもので、お仕えするのに支障はありません…ので…。」

問いかけの言葉に、不調の原因と思われる出来事を告げる。
それを告げるだけでも、自身の不甲斐なさと人になったことで生じた弱さを彼にさらけ出しているようで、情けない。
もし、魔術をかけられたのが自分ではなく彼であったら、それが取り返しのつかないことになったら、と考えると視線は言葉が進むにつれアーヴァインの顔から下へと落ちていってしまう。

アーヴァイン > 唇に指を押し当てつつ指摘すれば、やはり本人には自覚がないのか、とても驚いた様子が見える。
そんな些細な変化ながらも、子供のように瞳の動きで表情を返る彼女がとても可愛く感じるのだ。
こうして微笑んでいるのも、その幼く感じる変化によってもある。

「……そうか、そんな術を…。それだと精神的に疲労するのも無理はない」

彼女の告白に、心配そうに声の音が沈んだ。
そして視線が落ちていく中、その体へと手を伸ばし、背中に腕を回そうとする。
届くならそのまま抱きしめてしまおうと、身体を引き寄せるはずで。

「俺はその手の魔法に掛けられたことはないが、後でかなり疲れると聞いている。そんな不調の中、仕事に連れ回して悪かった。それと……ルークに大事がなくて良かった」

やっと人らしさを手に入れたのに、精神を弄くられて人形にされでもしたら…怒り狂っていたかもしれない。
他社の勝手で人らしさを奪われた彼女が、やっと取り戻せた大切なものだ。
それに干渉した輩に、酷く嫌悪を覚えながらも…壊れずに居てくれた彼女へ嬉しそうに、安堵の言葉を紡ぐ。
彼女がこちらを大切に思ってくれているのと同じように、彼女のみを案じていれば、さも当たり前のように溢れる言葉だ。

ルーク > 「いえ、全ては私の油断が招いた落ち度ですので…。未然に防げば問題なかったものを」

魔術、魔力に対して耐性があるとはいえかけられそうになったものを防ぐのではなく、掛けられた術を引き剥がしたからこその微かに残る不調。
自身の人と、駒としての在り方に対する思考にとらわれすぎて警戒しているつもりでも、隙があった証拠。
そう自己評価をして、最悪の状況を想像して視線が下がる中背中に彼の手が回り包み込むように抱きしめられる。

「あ、あの…。いえ、その…不調といっても、微かな違和感がある程度ですので、何度も申し上げている通りお仕え、するのに、支障、ありませんので…。――っ……」

抱きしめられるのは、同じ寝所で夜を過ごし肌を重ねていても慣れないのか、言葉がしどろもどろになってしまう。
詫びる言葉に、仕事が辛かったわけではないと告げるが、続く嬉しそうな安堵の声にきゅぅっと胸が締め付けられて言葉を失う。
ルークの身を案じ、無事でいたことに安堵する彼の言葉に、切なく甘く苦しいほどに胸が締め付けられる。

「…このような、事では…アーヴァイン様の身をお守りすることが出来ません。…人らしく、感情や動かされる心を獲得したことで、隙が生まれいずれ、アーヴァイン様に危険が及ぶかもしれません…。私は、駒に戻った方がいいのではないかと、そう思います。……なのに、貴方様に触れられると、以前の私に戻る事ができません…。」

ここ数日、彼と寝所を共にする事を辞していた。
女性の月の巡りの為を理由を説明していたが、本当は違う。

アーヴァイン > 「誰にでもスキはある、状況によっては仕方ないこともある。過ぎたことをそう気に病まないほうがいい」

全てにおいて絶対は存在しない、特に争いごとなら尚更だ。
彼女とて油断して起こしたことではないだろうと思えば、気に病むことで悪化するほうがよくないと思える。
深く受け止めすぎるなと囁きながら、腕の中へと包み込む。

「それでもだ、そんな不調の中、いつもどおり連れ回して悪かった」

動揺の様子が言葉からよく分かる。
可愛い娘だと思いながら微笑みつつ、続けて紡いだのは囁く安堵の言葉。
そして明かされる本当の理由に、耳を傾けていけば…言葉が進むに連れて、その背中を何度も撫でていく。

「それでも…いまのルークが好きだ。俺の事を案じてくれるのは嬉しい、だが…それでルークが壊れていい理由にはならない。それに…早々死んでたまるか、ここでの生活でやっと居場所を作れたんだ」

身の安全よりも、彼女の自我のほうが大事だと語りかけつつも、それだけ思い悩んでいたのに気づけなかった自身を恥じる。
ぎゅっとその体を抱きしめながらも、悪戯っぽく笑いながら言葉を重ねていく。

「それに、ルークが人らしさを手にして、従者に向かなくなったなら…妾にして傍に置く。……嫁にするといったら、義父が待ったをかけそうだからな」

跡継ぎを作らせるのはいいが娶るのは待てと、義父が遮るのが目に浮かび、困ったように笑う。
従者でなければならない、その考えを崩すように違う道を示しながらも、背中をなでていた掌は、少しだけ下がり、軽く臀部を撫でていく。

「気づかなかった俺も悪いが、黙っていたルークも悪いな。今夜は覚悟してもらおうか?」

女性の日と言われ、神経が張り詰めやすいと聞いている期間故に遠ざかるのを許可したが、そうでないなら話は別だ。
気付かぬうちに覚えただろう寂しさや、ぬくもりの心地を良さを堪能させようと囁やけば、逃さないというように腰を抱き寄せる。

「じゃあ……今夜は俺の部屋に来てもらうとしよう」

そう告げると、ひょいっとその体を横抱きに抱えて扉の方へと向かえば、器用に足で押し開いて廊下へと抜ける。
ここから自分の部屋まではそう遠くない、深夜になり、静まり返って薄暗い廊下を、二つの影が通り過ぎていく。
久しぶりに密着して眠りが、彼女にどんな影響を与えたかは、翌朝に分かるだろう。

ルーク > 「…はい…。」

気に病みすぎて悪い方へ循環するのはよくないと、そう言われルークは素直に頷いた。
それでも、やはり自身の隙や弱さで包み込むこの腕が傷つくことがあったらと、どうしても考えてしまう。
ここ数日、教育係の声を聞いてからずっと悩んでいた事を告げると。優しく暖かな手が背を撫でていく。

「……っ……。アーヴァイン様が、戦場でも問題なく戦えるほどの能力を有していらっしゃるのは存じております。…それでも、私は、貴方様を守りたいと、そう思います。」

自身の安全よりもルークの芽生えた自我を尊重し、そして今のルークが好きだと言葉で告げられるのにまた胸が強く締め付けられて頬に熱がこもる。
守りたいと、生まれた感情が彼を守りたいとそう告げる。

「妾ですか。しかし、その…アーヴァイン様のお側に置いていただきたく思います、ので…あの…従者失格と言われてしまわぬよう努力いたします。」

指し示された従者や護衛以外の立場として彼の傍にあれる可能性。
けれど、遠慮がちに紡がれたのは彼の仕事を助け、彼を守り公務などの合間も傍にいたいというルークの願いがにじみ出た言葉だったか。

「……申し訳ありません。…あ、あの…その…」

嘘をついていた事を詫びるが、腰を引き寄せられての言葉に頬に熱が集中していくのが分かる。
決して嫌ではないが、どういう受け答えをしていいのか分からないようで、頬を染めながら少し慌て。

「――っ……歩けます、歩けますので…っ」

ひょいと膝裏に腕をいれて抱え上げられるのに、息を呑み小さく身を縮こまらせながら抗議する声は、彼の寝所へと消えていく。
肌の温もり、息遣い、触れていなかったことで触れる喜びを実感し、ルークの中を彼で満たされて夜は更けていく。

ご案内:「王都マグメール 王城」からアーヴァインさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」からルークさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城/騎士団訓練所」にティエンファさんが現れました。
ティエンファ > 「せい、…っや!」

気合一閃。 踏み込む脚音高く、腰溜めから真っ直ぐ放った掌底が、金属の盾をしたたかに打ち付ける。
こぉん、とまるで木と木を打った様な通る音。 そして、構えていた騎士が、盾を取り落とした。
しっかりと防いだはずの一撃の衝撃が、騎士の腕を痺れさせたのだ。

「鎧通し…まあ、鎧も武器も持たないで、武具を備えた相手とどう戦うかって考えた奇特な先達が練った技さ
 どうだい、防いだはずなのに、殴られるよりも効くだろう?」

ひひ、と笑いながら、膝をついた騎士の手を取って立たせるのは、異国の少年だ。

ティエンファ > 金属の盾を打った掌をにぎにぎと握りなおしてから、立ち上がった騎士の肩を軽く叩く。
気安いが、既に騎士達もこの少年の様子には慣れている。 週に何度もこうして訓練に参加しているのだ。

とは言え、戦線訓練ではなく、このような対人戦にのみ付き合うのだけれど。
騎士達は素早く掴み処の無い相手をどう制すか、少年は対人に長けて守りの硬い騎士をどう制すか。
作法は知らないが無礼ではなく、明るい真っ直ぐな少年は、意外とこの騎士団には受け入れられていた。
…中年以上の騎士達からは、紛れ込んで来た子犬のような扱いを受けるのだけれど。

「よっしゃ、腕もマシになったろ もっかい行こう、もっかい」

軽鎧の騎士が立ち上がり、盾を捨てて長剣を構える。
それに相対する少年は上着を捨てて諸肌脱ぎ。 鮮やかな異国の刺青を晒す。

ティエンファ > 最初に騎士が踏み込む。 鋭い突きが少年の胸に伸びる。 木剣だが、当たればただでは済まない。
しかし、少年は半歩横に足を滑らせて身をかわす。 そのままするりと前に出れば、剣の腹を押しやって受け流す。

まるで蛇が枝を伝う様に滑らかな動きで騎士の腕を取ろうとする少年。
それに対して騎士も油断せずに、流されそうになった剣を両手で握り、剣を横薙ぎに振るう。
単純な膂力では騎士に分があるのか、少年は攻めきれずに振るわれる方向に飛んで間合いを空ける。

「ちぇ、こないだはここで勝ってたのに! へへ、行くぜぇ!」

不満そうな声だが、表情は楽しそうで。
飛びのいた脚のが地面を掴めば、その反動で鋭く前に跳ぶ。
騎士の眼前で不意に後ろにトンボを切れば、フェイントに誘われた騎士の剣が宙を薙ぐ。

ご案内:「王都マグメール 王城/騎士団訓練所」にエナーシアさんが現れました。
ティエンファ > 騎士が飛燕の切り返しで少年に剣を振り下ろす。
少年はそれを、くるりと回した腕で受け止め、逆に上から抑えるように腕を取る。
そのまま騎士の腕を引きながら、軽く騎士の脚の間に脚をさしはさむ。
すると、それだけで、騎士は少年の脚に絡まり、転倒する。
滑らかなその動きは、投げ。 そのまま騎士の腕を捻り、関節を極めた。
この辺りではあまり見られない、武術の動きであった。

「殴る蹴るだけが技じゃあないってね 鎧が固いなら、弱い所を攻めるのが肝要さ」

エナーシア > 魔術の訓練というのは、それを専門としている身でないと思った以上に面倒なものだ。
基本的な術の練習ぐらいなら適当な場所でやってもよさそうなものだが、私の場合炎系統しか使えないのが問題だ。
制御に失敗して街中でうっかり家でも燃やしてしまったらどうなるか、想像したくもない。
だからこうして、ある程度の耐火性が保証された施設を借りる必要があるという訳だ。
場所さえ借りられれば一人で勝手に訓練するだけなので、耐火性さえあればいいから特別な工房や魔術の備えは必要ない。
とりあえず、今日のところは訓練所の隅で適当に基礎の復習でもしよう。
そう思っていたのだが……。

「……あいつは、この前の」

最近一緒に仕事をして立ち回る事になった、確かティエンファといったか。
あの時は仕事中だから少々厳しくなってしまった。
一応訓練中のようだが、せっかくの機会だし話しかけるか。
こういうのは早めにケリを付けておいたほうがいいだろう。

「久しぶり、という程でもないな。えーと、ティエンファ」

一通りの立ち会いが終わるのを待ってから声をかけた。
しかしこいつの技、部分的に私の体術と似ている気がするな……。
つい真剣に見入ってしまったぞ。
あ、また睨んでるとか思われないだろうか。

ティエンファ > 「うん? あ、こないだの えーっと…エナさんか!
 なにしてんのこんな所で …あれ、もしかして騎士だったとか?」

目を瞬かせてエナーシアに返す少年。 騎士の腕を離して起こして、またよろしく、と声をかけてからエナの方に。
この間の様なきちんとした格好ではなく、腹を固めるさらしにズボン。
筋肉の付いた精悍な身体、左胸から腕にかけて彩る刺青…一見すればならず者のようで。

「名前覚えてくれてたんだな、こないだの事があったし、怒らせたのかと思ってたよ」

しかし、笑えば子供っぽく、明るい。

エナーシア > 「ちょっと訓練に必要だったので、場所を借りるだけだよ」

さすがに私が騎士というのはありえないだろう。
とりあえず、案の定誤解を与えていたようなのでこれを何とかしなくてはな。

「いや、別に怒ってなどいない。まああれだ、一応仕事中だったからな、厳しくもなる。それだけだ。
それから私の事はエナでいい」

これで誤解は、解けるのだろうか。
こういう時にもう少し自然に笑えればいいのだが、相変わらずの仏頂面だろうな……。

ティエンファ > 「ふぅん…んじゃあ、俺と同じだな 俺も時々こうやって、騎士さん達と訓練してんだ
 でも、あれ、こないだ持ってた短剣とかは持ってないな エナさんも俺と同じ感じ?」

そう言って軽く拳を握って構えて見せる。
そして、怒っていないと説明されれば、なんだ、と安心したように息を吐いた。

「いやー、巻き込まれて迷惑したって言われたらどうしようかって思ってたぜ
 あいよ、じゃあエナって呼ばせてもらうよ 同業者に嫌われるのは避けたいんで安心した」

改めてよろしくな、と歯を見せて笑った。
先に訓練を上がる騎士が通り過ぎざま少年の背を叩いていく。
何しやがんだ、と笑いながらその背に声を投げつつ見送る少年は、騎士団に慣れている様子。

エナーシア > 「一応これでもちょっとした魔術が使えてね。この訓練に武器は必要ないからな」

証拠とばかりに指先に軽く炎を灯し、数秒でかき消す。
まあ、軽くといっても私の場合暴発しないようにそれなりの集中が必要なのだが。

「迷惑など、そんな逆恨みみたいな真似はしないさ。
しかし、随分ここの団員と親しいようだな」

ティエンファの人柄だろうか、騎士たちとは顔なじみのように見える。
私はたまに来ても一人で邪魔にならないようこそこそしている感じだからなあ……。