2017/04/25 のログ
ティエンファ > 「へえ、魔術! 俺はそう言うのは全く分かんないからなあ…凄いなぁ、憧れるぜ」

少しの時間だけど、虚空から現れた炎に目を輝かせる。
いでよ炎、なんてそれっぽい事言いながら手を広げて見るけど、まあ、煙も出ない。

「どこで恨みを買うか分かんない渡世だからなあ
 ん? ああ、良く来るし、大体全員と手合わせしたしな!
 副団長と団長に、どうにも勝てないんだけど…」

ぐぬぬ、と悔しそうな顔をして、訓練所で指導に当たっている老年の騎士を遠めに睨む。
目ざとく見つかり、団長に睨み返されれば、両手を挙げて降参のポーズ。
そんな様子は歳に見合ったふざけ方。 エナーシアに顔を向ければ、

「今度一緒に訓練しようぜ、エナ 退屈はさせないからさ」

そう言ってぐっと拳を握って見せた。
そこに、騎士が数人声をかけて来る。 呑みにいかないか、と。

「おう、行く行く! エナもどうさ、安くてうまい店があるんだ」

エナーシア > 「今のところ火打ち石代わりというのが専らの用途だがな……。
師が健在ならもっと上達したんだろうが、半ば独学になってしまったので基礎の反復練習ぐらいしかできないんだが」

ないものねだりをしても仕方がない。
基礎を十分教えてくれたからこうして一人でも何とかなる事を感謝しなくてはな。
しかしこのティエンファ、さっき軽く見てただけでも体術は私より強そうだな。
ああそうだ、この技も気になるんだった。

「素手で騎士とやり合うような奴の相手が務まるかは分からないが……。
その技のコツを教えてくれるのなら考慮しよう」

正直素手同士で戦っても勝てる気がしない。
魔術アリの自爆覚悟で炎を暴発させてもいいのならどうなるか分からないが、そんなの試したくもないぞ。
しかしこの様子だともう引き上げるところか。
すげなく断るのも悪いとは思うのだが、いくらなんでも何もせずこのまま帰るのはなあ……。

「悪いが私はこれから訓練開始というところでね。
またいつか頼む」

今日のところはこんなところか。
しかしこの屈託の無さは見習おうにも私の性分では難しいな。

ティエンファ > 「それだけでも凄い便利だろうけどなあ、道具が要らないんだろ?
 それに、基礎は大事だぜ? 基礎を積み重ねて、後は自分で掴んでいくもんだって親父殿が言ってたよ」

そんな事を言いながら、まじまじと観察するようなエナーシアの視線に、どうした?と首を傾げた。

「その技、ってのがどれか分かんないけど、俺もまだ修行の身さ
 役に立てるなら喜んで、だ 人に教えてやっと気付けることもあるもんだしな」

あっさりと頷く。 秘するものとは思っていないらしい。
エナーシアが内心でどんな物騒な事を考えてるとも知らないで…。
誘いを断られれば残念そうにする。 エナーシアと比較すると、素直過ぎるほど表情がコロコロ変わる。
少年はもう少し、エナーシアのクールな所を学ぶべきなのだろう。

「あいよ、んじゃあまあ、また誘わせてもらうよ 訓練、気張ってな!」

そう言って手を振れば、上着を羽織って出ていった。

ご案内:「王都マグメール 王城/騎士団訓練所」からティエンファさんが去りました。
エナーシア > 行ってしまったか。
言おうと思っていた事が半分も伝えられなかった気がするが、この口下手なところはどこで訓練すればいいのだろうか……。
とりあえず、次の機会があったらこちらから飲みに誘ってみるか。
いやこの調子だと向こうが先に切り出してきそうだな。
そもそもこうやって考えすぎているのも口下手の原因な気がするぞ。
しかし勢いで行動出来るような性分でもないし、ううむ……。

「まあいい、予定通り鍛えるか」

ここで無駄に悩んでも仕方がない。
そもそもの目的を思い出し、軽く頭を振って気分を切り替える。
まずは場所を訓練場の隅に移し、うっかり誤射しても人に当たらないよう壁を向いて炎の調整の練習。
やはりある程度の大きさを超えると途端に制御がおぼつかなくなるな。
これが今の私の限界だが、訓練を繰り返して制御可能な領域を徐々に広げていくのだ。
あとは小さな炎を素早く発生させる訓練と、折角場所を借りたのだから射程の延長も試してみるか。
それなりに整った施設じゃないと炎の投射は危険なせいで、中々訓練ができずにいるからな。

ご案内:「王都マグメール 王城/騎士団訓練所」からエナーシアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」にランティさんが現れました。
ランティ > 「うーん、うーん…この魔術式は一体どこに繋がってるんだ…?」

1人で唸る青年が居た。 王城の蔵書室に書物を積んだその中に胡坐をかいて頭を掻く。
伸び放題の髪をひっつめた姿、着ているローブはよれよれ、顎には薄い不精髭。
あまり王城には似合わない姿だが、しかし、見る物が見れば、そのローブの上質さが分かる。
それを着古せるほどに普段使いできるこの男は、王国でも有数の貴族の跡取り息子だった。

「面白いな、これを考えた魔術師はさぞ聡明だったろう
 成程成程、どこにも繋げない事で、此処に魔力だまりを作って…うん? 暴発しないのか? しないのか」

ぶつぶつと一人呟きながら、目の前に広げた巻物に書かれた魔方陣を指でなぞる。

ランティ > 「あー、あーあーあーあ、これか、この紋章を発現の鍵とすれば、
 魔力溜まりに指針を付けて放つことができるのか!
 面白いな、これは魔法使いが使う魔力の投石器、矢を用いない大弓…
 …いや、しかし、普通の魔術師では放てるほどに魔力が貯められない
 成程、量産されない訳だ…」

言いながら、巻物に手を翳す。 菫色の目を細める。
ゆっくりと息を吸えば、吐き出しながら魔力を練る。
体内の魔力を種火として、大気中に漂うマナを薪として、
そして巻物に描かれた魔方陣を竈として、魔術をくべる。

風の無い部屋の中、しかし不意に風が巻き起こる。
青年を中心に紙片が舞う。 そして、青年が掲げた手が輝き始める。

ランティ > ぶつぶつと詠唱を口にする。 その言葉はさしずめふいごの風。
一小節を終える度に明暗を繰り返す魔力の輝き。
青年の手から滴る魔力の色は、青年の瞳の色と同じ、菫色。

一滴、一滴、青年の指先から滴った魔力を孕み、巻物の魔方陣が輝きを増す。
僅かに浮かんだ汗を片手で拭ってから、掲げた手を握りしめる。
まるで手の中に水を含んだスポンジでもあるかのように、魔力が弾ける。

瞬間、蔵書室を真っ白に染め上げるような輝きが満ちる。

ランティ > … … …

… … …

風が止む。 光が収まる。
そこに居る青年の目の前に広がっていた巻物だけが、燃え上がりもせずに真っ白な灰になっていた。
握りしめていた手をそっと開く。 すると、掌の上の中空に、巻物に描かれていた魔方陣が浮かんだ。

『これでお前は、僕の物だ』

古代魔法語を囁き、すう、と息を吸い込む。
薄い唇にその魔方陣が吸い込まれ、青年はそれを飲み込んだ。
ふわ、と青年の周りが光を孕み、そして消えた。
残ったのは灰が一山。

ランティ > 理解し、解き明かし、そしてそれを己が物とする。
それが、アウグシュテン伯爵家に伝わる魔術であった。
直接魔術を血とし肉とすることで、力を高めていく。

「…うん、悪くない味だ 使い方は選ぶことになるけれど、この魔術は戦に向く
 帝国との戦も近い事であるし、一つ、ぶっ放してみるのもありだね」

物騒な事を言いながら、傍らに寝かせた杖を取り、よっこいせ、と立ち上がる。
蔵書室の外に待つ従者に声を投げれば、蔵書室の整理を命じる。
その従者の頭には獣の耳が立って居る。

「灰はまとめて、いつも通り袋にとっておいておくれ 魔力の消えた魔道具の滓は使い道が多い」

そうして、今日も魔術を探求する青年であった。

ご案内:「王都マグメール 王城」からランティさんが去りました。