2017/04/22 のログ
■ルーク > 「………。」
少しでも解決に近づければと、本を頼ってみたところで無駄だったようだ。
抱くものの名前がジレンマだという事が分かったところで、それを解決する術が乗っているはずもなく。
当然といえば当然だ。
人の感情、心理とは単純なようで複雑で、個人個人によって大きく異なる。
すべてを解き明かす事など不可能に近い。
分厚い本を棚へと戻す腕と、やってきた黒いローブ姿の人物の体が軽くぶつかる。
「…こちらこそ、失礼いたしました。私の方は問題ありませんので、お気遣いなく。」
謝る言葉に、ルークも軽く頭を下げて応じる。
王城の図書室であれば、王侯貴族が使用している。相手の身分が知れないが、丁寧に対応する必要はあるだろう。
「………。触れられることは、あまり好きではありませんのでご容赦を。」
視線はつぶさに相手の様子を観察する。
服装から魔術師のように見えるが、ローブの裾から覗く腕は筋肉質だ。
撫でようと伸ばされる手を、すっと後ろに下がることで避けながら言葉を重ねる。
■ディール > 少年は上手に後ろに下がる。手が泳ぐ――事も無く、ぴたりと少年の頭が先ほどまで存在していた位置で停止する。
向けられる視線は友好的ではない。それははっきりと己も自覚できた。少年の瞳は筋肉質な腕と共に、鞄から漂う異質な気配に気がつく事はあるだろうか。――魔導師には。そして王城にはやや不釣合いな血の臭いが僅かに漂う膨らんだ鞄。
肩から下げる其れを少年の瞳から隠すように――背中側の方に鞄本体を配置するように位置をずらす。
「ははは、これは失礼を。――と。」
何気なく伸ばした腕。それが一冊の本を手にしていた。
少年が自己分析のために既に読んでいた事が有るのかも知れないが。
書物には金の箔押しと共に高名とは言い難い一人の学者の名前と。
『精神分析魔術理論/医術との対比論』
もしも少年が本をまだ読んだ事が無く、その題名に興味を見せる事が有れば話の種にはなるか。
たまたまだが己の探していた書籍の1冊はこれである。百科事典とまでは言わないが相応な厚さを見せる書籍を手にして――オッドアイの己の瞳が、少し警戒感を強め。
精々スカートや上着を透けさせ、下着を覗く事に使う事も多い程度の透視魔術をひっそりと発動をさせていた。
刃物や、魔力が『或る』ならばレントゲン写真の様に白く濁って写るその視線――多少不躾ではあるが、身のこなしと存在感の希薄さから警戒感をどうしても拭えないために。
――チョーカーの魔力と己の透視術の勝負になるか。
■ルーク > ローブから覗く筋肉質な腕、手は先程までルークの頭のあった場所でぴたりと止まる。
その手になにやら不穏なものを感じたが、それよりも異質な気配を感じ取り微かに琥珀の瞳が動いてかばんの方へと向けられる。
そこからは、ルークにとって嗅ぎなれた馴染みのある臭いが微かに漂っている。
ずらすように背中の方へと向けられれば、相手の背によって視線から隠されるが、ルークの中で警戒の段階が一つ上がるには十分だった。
「…お探しの本が見つかったのであれば幸いです。」
ふと相手が、書架から一冊の本を取り出すとその表題が見える。
精神分析を魔術的な観点から行ったと思われる題を、琥珀の瞳が追うと本能内容に少し興味を覚える。
オッドアイの視線はルークの体へと向けられる。
透視魔術ごしに見るその体には、全体的に白い靄がかかったように映り、首にあるチョーカー部分と、上着の中に仕込まれた複数のダガー、手首の腕輪の飾り部分に靄が集中するように白く濁って見えることだろう。
■ディール > 相互に警戒心を抱く深夜の図書室。お互いがお互いに最初から危害を加えようとしていたわけでもなく。
偶然に偶然が重なっての状況だった。お互いに気配を探る。お互いに動静を静かに静かに観察する――。
その均衡を破ったかの様に、己の透視の魔術が少年の身体を透けさせる。
――透けさせて、しまった。チョーカー然り、全体的に白い靄に覆われているような肢体。
何よりも、その複数のダガーが己の中で少年を危険人物と位置付けるには十分過ぎる結果になってしまう。
「あぁ、これで怒られずに済むよ。まったく人使いが粗いんだからなぁ。」
その言葉と共に、開かれた本の頁に自分の指が踊る。
本を読む時や資料を探す際に指でなぞる際のように。指は頁をなぞり。
――実に不本意ではあるが少年を図書室の奥――閲覧室へと連れ込み、無力化させる為の仕込みを行う。
本に刻み込まれる刻印は魔族特有の一つの魔術だ。
相手の意思をほんの少しの間縛る――自分の言葉に逆らえなくさせる強い作用を持つ魔術文字を急ぎ記した。
といって、相手の抵抗力が高ければ凡そ無意味な行為なのだが。
「――ん?ボウヤもこの本に興味があるのか?若いのに自己啓発か何かか?」
笑みと共に、自然に開かれていた頁を少年の方に向けた。
そこに記された刻印の文字による干渉は、上手く作用するか。それとも無意味に終わるのか。それは次の問いに対する返答で明確となろう。
「奥の閲覧室で一緒に読むかい?」
■ルーク > 全体的に白い靄に覆われる体は、それでもその魔法具の効果によって透視魔法に本来の体のラインを見せることはなかっただろう。
しかし、服の中に仕込まれたダガーの存在が意図せずに相手に自身を危険人物と認識させる。
「そうですか…。」
相手が開いた本の頁をなぞる仕草が、それほど不自然なものではなく内容が間違いないか確かめているようにも見える。
ぼやくように零す相手の言葉に、表情も変化を見せず相打ちを打ち。
「いえ、恐らく精神干渉の魔術を応用したものでしょうが、精神分析にそういったものが使われているのは珍しいと思いまして。」
投げかけられた言葉に、表題をそう分析しながら感想を零して、自然に開かれて向けられる頁へと視線が誘われる。
「――……っ…。い、え…。結構です。後日改めて来ます。」
その頁を視認した瞬間、ぐらりと視界が揺らめくような感覚に襲われる。
幼い頃より、戦う為の技術を仕込まれる際魔力や魔術に対する耐性もつくように育てられている。
一瞬の間は、刻印からの魔力とルークの耐性がせめぎ合う間で一度の瞬乾の間、刻印を視界から隠すとその効力を押さえ込む。
■ディール > 「そうか、それなら俺が借りていくとしようか。」
パタン、と本を閉じた。少年にはどうやら効果が薄い――全くの無意味ではなかったのは其れまでの口調に比べ、僅かに言葉に詰まった事からはうかがい知れた。
瞬間、正直死は覚悟した。――今のが何であるかを正確に判断されれば恐らく敵性と見做され襲撃をされてもおかしくは無い。
だが、少年からは続くアクションが無かった。
本を閉じると、寧ろゆっくりとした足取り――不信をかう事のないようにあえて背中を見せながら司書の方へと向い手続きを進めるべく――。
「精神干渉や分析について詳しく知りたいなら、城下町の――という医師に相談してみな。色々教えてくれると思うぜ?」
去り際に城下町でも有名な医者の一人を伝える。
それを伝えた理由は、相手が此方に敵意を向けなかったのにこちらが無作法な事をした詫びの意味もあったかもしれない。
――仮にチョーカーによる性別誤認が無ければまた違った夜になっていたのかもしれない。
深夜の図書室の顔合わせはその様な幕が降ろされて行く
■ルーク > 視界の揺れるような感覚、精神に干渉されるようなそんな不快な感覚を感じた。
本によっては、本そのものが魔力を帯びて作用するものもあるという。
もしその本が、そういった類のものであればまず最初に開いた相手に何らかの変化があってもおかしくはないはず。
――といった疑心は、相手が去った後に抱くことになるだろう。
今は、体の中に視覚から入り込んだ魔力を打ち消すのに精一杯の状態だった。
無論、相手から襲いかかる事があれば応戦しただろうがそれ以上手を出されなければ、ルークから動くことはなかった。
本が閉じられれば、刻印から発せられる魔力が途絶える。
「有難うございます。お気をつけて。」
ふ、と掻き消えた魔力による負荷に意識が相手へと向くとゆっくりとした足取りで去っていく背中が見えた。
去り際に、一人の医師の名を告げられるとその背に言葉を向ける。
少しだけ魔力による負荷の影響が残りながら、その背を見送りお互いの正体が知れぬまま、幕が降りる。
ご案内:「王都マグメール 王城」からディールさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」からルークさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」にヴィルフリードさんが現れました。
■ヴィルフリード > 羊皮紙の巻物をいくつか抱えて歩く姿。 室内であっても脱がないフードの騎士。
石床を踏む靴音が、白い壁に反射して響く。 静かだ。
「王族も週末には職務を離れられる方が多いからか、今日は人気が無いな
面倒な貴族に合う事も少ないから、仕事がしやすいが」
呟きながら、突き当りの扉を開けた。 王城の中の資料室である。
じわりとかび臭い湿った空気が鼻をくすぐる。 嫌いじゃない。
「司書殿、おられるか 戦略会議に使った資料を返しに来た」
薄暗い部屋に声を投げる。
■ヴィルフリード > 「…昼飯にでも行ってるのかな まあ、返すだけなら自分でやろう」
小さく息を吐けば、棚に向かう。 寝かされた羊皮紙の積まれた棚を見上げる。
この辺りは古い資料が多く、本では無くこうして人世代前の記録媒体が並んでいるのだ。
「しかし、森の民の戦術についてなんて資料があるとは思わなかったな…
森での戦い方については門外漢なので、参考にはなったが…森の民、長い耳を持つ種族か
…俺のように、獣のような姿をしているのか?」
棚に資料を戻しながら首を傾げる。
少し興味がわいたようで、騎士は少し考え、楽になった両手を軽く払いながら、別の棚に向かう。
「ええと、異種族について…魔族扱いなのか、魔物扱いなのか、人間種扱いなのか分からんな…
森の民の正式名称も分からんが…うーん、」
指を立て、棚に並んだ本の背表紙をさらう。
一つ取って開き、眺めて戻す。 時々別の物に興味がいって読みふける。
■ヴィルフリード > 「ふむ、背が低く、器用な種族…洞窟に住むのを好み、鍛冶に長ける…いや、これじゃないな
…うん?」
分厚い本を棚に戻せば、棚の上に置かれた本に気付く。
それを取り上げれば、何とはなしに開いてみる。
…見た事もない文字で書かれた書物は酷く汚れていた。
「…魔導書? いや、それにしても変な文字だな」
■ヴィルフリード > 「…あとで司書殿に聞いてみるとしよう」
そうして、また本の捜索に移るのだった。
ご案内:「王都マグメール 王城」からヴィルフリードさんが去りました。