2017/04/21 のログ
■ルーク > 不要なもの、人らしくあることが、人でいることが主を危険にさらず可能性を生み出す。
それはとてもとても愚かしいこと…。
生まれたときから、否。生まれる前から駒として在ったルークの人生。駒として在った期間のほうが長く、芽生えた自我は卵から孵ったばかりの雛のように脆弱だ。
聞こえる声に、人としての感情が揺らぐ。
『あの人』を危険にさらすなら、人らしさは必要ないのではないか。
人の感情、自我を獲得したが故に駒である必要性を実感させられるという矛盾。
嗚呼…少し前までの感覚が蘇ってくる。
胸の中に溢れる暖かなものが消えていく。
泉が徐々に枯れ果てていくように乾いていく。
「………。」
なのに、胸がひどく痛む。
擽ったさとも、締め付けるように感じるのとも違う、これは『痛い』だ。
『何がこの国にとって利となるか思考する事だ。』
そう声が告げると、しんと辺は静けさに包まれる。
最初からそこにはルークしかいなかったかのように。
■ルーク > (「今夜は寝所を別にしていただこう…。」)
それでも、胸の中で湧き出る泉は完全に枯れることはなく、冷たい虚ろに戻れることはない。
人にもなれず、駒にも戻れない。
なんて、なんて…出来損ない。
今の自分に、彼に安らぎや癒しなど感じてもらえるはずもない。
矛盾の先に答えなど見えずにルークは瞳を閉ざした。
ご案内:「王都マグメール 王城」からルークさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」にルークさんが現れました。
■ルーク > 王城内にある図書室。
この国の歴史から、王侯貴族の家系図など大量の蔵書が眠る室内は広く、貴重な本の保全のため、昼間でも厚手のカーテンが引かれ薄暗い。
厚い絨毯が敷かれ、普通に歩いても足の衝撃を吸収して足音を響かせることはない。
薄暗い室内で、その暗闇に溶け込むように気配をさせずにルークは書架の間を移動していた。
歴史関連の書架を通り過ぎ、図書室の奥へと進み辿りついたのはコクマー・ラジエル学園の研究者たちが残した研究報告が収められた書架だった。
魔法学、薬学、魔導機械と様々な分野の分厚い研究についての本が収められている書架。
本の背に指を這わせるようにしながら、視線はその文字を辿り一冊の本へと行き着く。
「………。」
非常に分厚いその本を引き出せば、ずっしりと重みが手に乗る。
その本を片手で抱えるようにして、ルークは立ったままページを捲っていく。
精神分析学。自我とEsと超自我、自己同一性…専門用語がびっしりと書き連ねられていくそれを琥珀の瞳が追っていく。
ご案内:「王都マグメール 王城」にディールさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 王城」からディールさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」にディールさんが現れました。
■ディール > 王都に、そして王城に入る為に必要だった変装。
前もって準備していたとはいえ、衛兵の前を通過する際には鼓動が高鳴った物だ。
幸い貴族としての立場もあるが、己が王城にみだりに出入りしていると言う風評は余り立てたくなかった。
「えぇ、幾つかの史書を元にした研究で……。」
図書室の入り口、衛兵ではないとは言えども司書はいる。
屈託の無い、柔らかい笑みは医者としてよくつかう表情だ。――紹介状ともいえる、家紋の刻み込まれた封蝋が刻印された巻物を見せて図書室へと入場を果たしていた。
目的は幾つかの本の情報。その位置と内容を取引相手の魔族に伝える為に――彼女の居る書架の方へ近付いていく。
周囲を気にするように、みだりに視線を書架に向け、視線が上下しているあたりは――本を探すようであり、この図書室に慣れていない。
そんな雰囲気をかもし出していた。
そうして、一歩、一歩彼女の方に近付いていく。……彼女と言うか、少年に見えなくも無いのだが。
■ルーク > パラパラと適当にページを捲っているようでありながら、琥珀の瞳は小刻みに動き一つ一つの文字を頭の中に取り込んでいく。
人の心といったものに焦点をあてた研究書に、あるいは自身の抱えている問題の解決策が眠っているやもと手にしてみたが、そんなものはあろうはずがなかった。
そもそも、心を持たぬ駒という存在というものは対象外ともいえる。
人の心を獲得したことで、自己が人であると認識したことで生じた揺らぎ。
その揺らぎによって、主が危険にさらされる可能性が生まれ揺らぎを取り除かなくてはいけないと、ルークはそう思った。
では、何故そう思ったのか…その部分を自身に問いかければ、行き着く先は感情から生まれた答えにたどり着く。
『大切な人』を守りたいと。
感情から生じる揺らぎを消したいと思う心も、また感情から生じるものであってパラパラとページを捲る手が止まる。
一つ図書室の中に人の気配が増える。
その気配は、入口から書架の間を通り、やがて姿が視認できるまでにルークの方へと近づいてきた。
視界の端にうつるその人物は、なにか目的の書物がある様子で視線を書架に向けながら歩いてくる。
「………。」
今のルークは、チョーカーを着用し女性的な特徴は魔法によって覆い隠されている。
一見すれば少年のように見えるだろう。例え触れられたとしても、感触もまた女性のそれではなく。
普段から気配というものを隠しているルークの気配は希薄で、視線を外していればそこにいることも気づかないかもしれない。
■ディール > 「術史……占術史……あぁ、違うこれでもない。おっ、と……。」
トン、と。僅かな衝撃が自分の脇から伝わって来る事で隣の少年に、僅かにぶつかったのだろう事に気がついた。
目的の書籍探しで視線を上に向け、蟹歩きの様に横に歩いていた為――でもあり、少年の存在感か希薄だった事もある。
もっとも、この様な場所にただの少年が居る事も珍しいのだが――それにしても、存在感の希薄さはまるで暗殺者が突如目の前に現れた時のような不穏な気配を感じ取ってしまっていた。
必然的に、穏やかな笑みと言うよりは探りを入れる様な含みを帯びた笑みで少年に向き直る。
「あぁ、すまないな――少し探し物をしていたものでな。怪我は無かったか、ボウヤ?」
そう謝るかのような声音で腕をそっと伸ばす。ローブに包まれている腕は、魔導師にしては珍しい筋肉質なもの。
伸ばされていく腕、掌は少年の頭をあやす様に撫で様と――するついでに。
本来の目付きの悪さを覆い隠すように目尻を意図して垂れ下げながら、掌で首尾よく少年の頭に触れたなら、頭を撫でる素振りと共に掌から直接魔力を流す心算ではあった。
自白剤の様な効果を持つ魔術刻印を刻み込ませるために。