2017/03/29 のログ
シャーロット >  
そのまま足早にシャーロットが向かった先、
フェルザ家に徴税監査を任せた王族の私室

古くから親交のある家柄
代替わりしたといえど親身になってもらえる、筈であった

───数刻後、部屋から出たシャーロットは眉を顰めて歯噛みする

"無論懇意にしてきたフェルザ家のこと、
受け入れたいのは山々であるものの、
正式な申し出を件の王族から受けた場合は話が変わる"

返ってきた返答は至極自然な、当然の答えでしかなかった
あくまで保険をかけるだけのつもりだったシャーロットにとっては手痛い現実

『報いを受ける』

地下室でのあの奴隷の言葉が巡る

カレリア > 「………」

シャーロットが真っすぐ向かったのはやはりあの場所
魔術防壁も堅牢で中の様子は全くの不明
しかし、部屋から出てきたシャーロットの表情を見れば雲行きが更に怪しくなったのは分かる

「どうしたものでしょうね…」

シャーロットの、ひいてはフェルザ家の未来はかなり危うい
沈みかけの船と言っても良い
無事に岸まで辿り着ければいいがもしそうでなければ…
彼女の利用価値だけを考えるのであれば手を引くのが正しいだろう
貴族達はこういった匂いに敏感なもの、シャーロットの今までの行いを考えれば嬉々として離れていきかねない

シャーロット >  
全てが杞憂に終われば良い

あの男がフェルザ家を陥れる危険性などないのかもしれない
が、その"力"を得たものが現れたというのはそれだけで脅威である

貴族達との繋がりもそれなりに深い人物なのだ、
シャーロットを蹴落としたい貴族達が入れ知恵しないとも限らない

そういった可能性を塗りつぶしてきたシャーロットとしては、気が気でないところであった

「手段を選んでいる余裕はないかしら…
 ! ……まだいたの?」

じっとした視線をカレリアへと向ける
いくらか頭は冷えたようだが、それでもどこか焦りの表情が浮かぶ

カレリア > 「奴隷が主人に付き従うのは普通の事ですわ?」

コクリと頷きシャーロットの側へ
自分ではどうする事もできない不安
それに焦り、恐怖する姿は見ていて…

「あまり面白くないですわね。」

自分で思っていたよりも面白いものではなかった
奴隷になると言ったあの日にこんな表情を浮かべていればまた違っていたのだけれど

「あまり早まった事はしない方がいいかと思いますわよ?」

もちろん理解はしているだろう
この状況で付け入るスキを晒す危険を今更彼女に説くまでもない…普段なら
恐怖に晒された経験の少ない彼女がこの状況で何をするかが予測しきれないのも事実

シャーロット >  
「面白くない…?」

何を言ってるの?と怪訝な視線を向ける
その前の言葉は良い、カレリアならばそう言うだろう言葉
しかしこの状況で面白くないとは、よくわからなかった

「ふん、私は自分が蹴落とされる可能性は例え種子や霞に過ぎなくとも撃ち漏らしたことはないのよ。
 構わないわぁ、保険をかけるのには失敗しそうだけどぉ…この王国でお金でどうにかならないことなんかないもの」

表情の中に、自身の財力に対する盲信とも思える揺らがぬ自信を見せる

カレリア > 「えぇ、愛する主人が苦しんでいるのを見るのは胸が苦しいですわ」

全て本心というわけではないけれど嘘は言っていない
もし、仮にフェルザ家の力が弱まればどうなるのか
それを考えるのは今はやめておく事にする

「シャーロット様、流石にその考えは危険と言わざるを得ませんわ
確かに金銭で殆どが解決できるのは事実、ですがそれではどうにもならないことも存在しますわ」

保険に失敗してそこまで自信満々に言い放つ彼女には少し危機感を覚える
事王族が絡んでいる今回に限っては慎重すぎるぐらいでなければ
財力はあくまで手札の一つなのだから

「何か切り札が欲しい所ですわね…」

シャーロット >  
愛する主人
カレリアはいつもこの言葉を使う
愛を理解しようとしないシャーロットにはその言葉はまっすぐには届かないのだが…

「そんなことはないわ。
 金がなければ王国はまわらない、国を守ることすらままならない」

生まれた時から湯水のように溢れる金銭と共に生きたシャーロットにはその言葉もやはり通じない
シャーロットの経験の上でも一度たりとも金銭で解決できないことなどなかったのだから

「どうにもならないことだなんて、
 例えばどんなものか言ってみなさい?」

切り札、と小さく口にするカレリアにそう言葉をかける
切り札…何か切り札になり得ることなどあるのだろうか
あの男を暗殺できれば一番楽だろうが、おそらくこちらの懐刀を用いても容易ではないだろう

カレリア > 「…やはり危険ですわシャーロット様」

シャーロットは金銭に対して並々ならぬ信頼を置いている
お金で解決できない事があるなんて思っても居ない
これだけは正しておかないと…

「では、お金の力で私の気持ちを変えてみてくださいませ?
貴女に自分でも抑えられない殺意を抱かせる、もしくは心身全てを捧げさせても構いませんわよ♪」

もっとも非合理的で御しがたいものを挙げる
お金ではどうにもできず彼女を殺す一番の武器に成り得るもの
他者の感情、これを彼女が理解できていればどれほど良かったか

「そう切り札…最悪の事態でも最後の助けになるものですわ」

ご案内:「王都マグメール 王城」にアーヴァインさんが現れました。
シャーロット >  
「残念ねカレリア、金銭は巡り巡るもの。
 貴女の気持ちを変えるのもそうやって巡り巡らせて最終的に変えていくのよ?
 今ここで、というものではないのよねぇ」

金に飛びつく下賎な者なら話は別だが
シャーロットは他人の感情を理解していないのではなく、
理解した上で金を使い惑わし、揺さぶり、操っている
──例え理解していたとしてもそれに価値を見出さないのだから、同じことなのだろうか

「最悪の事態、だなんて。
 そうならないようにするのが最低条件よ」

考えたくもない、とその目を逸らす

アーヴァイン > 念の為だと背中に弓筒を背負わされ、刀を手に冷えた廊下をあるき続ける。
最初の挨拶のときと違い、動きやすい何時もの格好故に、最初は何処の馬鹿だと言わんばかりな視線を向けられるのだが…彼と分かるや、青ざめて視線をそらす。
すれ違う貴族達に同じ態度を取られ続けると、空気より先に雰囲気に興ざめして、酔いはさっさと抜け落ちていってしまう。

(「それにしても、貴族が多いな」)

妙に人が多い気がすると思いつつ、廊下の角を曲がると、見覚えのよくある姿と、もうひとりは見知らぬ女性。
正に義父と話題に上がった相手が前に現れたわけだが…とりあえず、表情はいつもと変わらない。
王族の一人として振る舞おうとするのもあるので、以前よりは冷たさを感じるかもしれない視線で二人を一瞥する。

「……取り込み中だったか?」

と、何やら言い合う様子に問いかければ、余裕のある苦笑いを溢した。

カレリア > 「こういう所で頭が良いのが厄介ですわね…」

はぁ、とため息
もう少しこう…お馬鹿で居てくれれば楽なのに
どうすれば金の力は絶対ではないと彼女に教えられかと頭を悩ませる

「最低条件だとしても、最悪の想定はしておくべきです
そうなってから考えたのでは遅いのですわよ?」

直視したくない問題でもある最悪の場合
確かに最低条件がそれの回避と言うシャーロットの言葉は理解できる
自分だってできる事ならそうしたいが…

「……」

現れた黒髪の男を見れば黙してシャーロットの後ろに
余裕の笑みを浮かべるこの男…噂をすれば悩みの元凶が現れた

シャーロット >  
「そうなったら私は潔くこの身を投げるわ」

そんな状況に耐えられるわけがない
それは自分自身がよく知っている

そして視線を外した先に件の男の顔を見つけ、小さく溜息をついた

「御機嫌ようカルネテル卿。
 ご壮健のようで何より、ですが王城でその召し物は些かそぐわないと思いますわ」

口調は王族に対するそれ
苦笑いを浮かべる男に

「城内は貴方の噂で持ち切り、一躍時の人ね」

アーヴァイン > 此方の姿を見るや、シャーロットの後ろへと下がる少女。
格好や佇まいから、彼女の女中といったところかと思いつつも、ため息をこぼす彼女へと視線を戻す。

「……お前から丁寧に言われると妙な気分だ。そちらと違って、国のために殺しもしに行くような立場だ。気取る必要なければ気取ったりはしない」

角が立つだろうと思いながらも、祟り神らしい無遠慮な口調で答えれば、側にある部屋の掛け札を一瞥する。
確か彼女とつながりのある王族がいる私室だったかと思い出すと、続く言葉に頷きながらもカレリアの方を一度見やり、彼女へと視線を戻す。

「新たな祟り神だからな、嫌でも騒ぎになるだろうな。そっちは部下を連れてご機嫌伺いか、今までの御礼返しがこわいのか? お嬢様」

薄っすらとした笑みを浮かべつつ、何時もの怜悧な瞳に蔑んだ色が交じる。
それからすっと、鞘に収まったままの刀でカレリアを指し示す。
お前はどう思う?と、冗談じみた口調で問いかけながら。

カレリア > 「っ……」

身を投げる、そう聞けば思わずシャーロットを見る目が鋭くなる
地を這い死すら生温い地獄も見てきた
それでも自分は生きた、死は全ての終わりだと信じているから
なのに…彼女はそんな簡単に自分の命を諦めると言うのか

「王族に名を連ねる方とは思えないお言葉ですわね
それに、随分と捻くれた考えを口にするんですのね?」

クスリと笑みをこぼす
まるで道化でも眺めるような、少し可哀そうな者を見る目で男を見つめる
彼の人柄はよく知らないが男の目に蔑みを感じればもう十分
男と言うだけで気に入らないカレリアにとってこの男と親しくする理由がない

シャーロット >  
シャーロットはこの国がこの先繁栄するとは思っていない
根腐れした大樹は手遅れなのだと理解し、納得している
底辺で生き長らえることなど意味のないことだと

「慎みなさぁいカレリア。
 …非礼をお詫びいたしますわカルネテル卿。
 お礼返しが怖いだなんて…怖くないわけがありませんわね?
 もっとも聡明な貴方のこと、単なる私怨に身を窶して気品を損なうとは思いませんわ」

目を細め、アーヴァインへと改めて向き直る

「私も王族とのおつきあいの仕方くらいは此処得ておりますしね。
 貴方の家の名に惹かれた人間がよからぬ事を吹き込まないか、くらいのものですわ」

アーヴァイン > 「度胸のあるやつだな? お前には何もしないが、お前の飼い主に罰が飛ばねばいいがな」

だろうな、そうだろうとも内心は、カレリアに言われた言葉に納得するところがあった。
初対面にしては酷い挨拶であり、第一印象は最悪だろう。
義父はよくコレで生活できたものだと思いつつも、そんな内心は微塵たりとも出さず、祟り神らしい笑みを浮かべる。
ただ、無礼をそのままにするのは示しがつかない。
すっと視線をシャーロットの方へと向けてから、脅しじみた言葉を紡ぐ。

「部下の躾ぐらい確りやれ。素直なことだ、そうだな…私怨でどうにかするつもりはないがな」

目を細める彼女へ、意味深な言葉で答えつつも、保身のためと答える彼女に成る程なと呟きながら、手遊びでもするかのように脇差しを胸の高さほどまで持ち上げて、鯉口を切る。
磨かれた刀身が僅かに晒され、廊下のランプの明かりが踊っていた。

「だが、示しがつかないとは義父が言っていてな。俺もそう思う、お前はマシかもしれないが、バレなければ何をしてもいいと考える間抜けが増えても困るわけだ」

何もしないという訳にはいかない、それこそ刃を気まぐれに晒したのが、今から首でも跳ねようと考えていると言っているかのようなもの。
こんな時でも表情は変えないのではなく、変えることが出来ない。
昔の仕事をする時のように、無機物でも見るような冷たい視線で二人を見やると、カチリと鯉口と鍔がぶつかっていく。

カレリア > 「お褒めにいただき光栄ですわ♪」

やはり男相手は辛い
もっと落ち着いて言葉を選ばなければ

飼い主…その言葉にふと考えがよぎる

「………」

この男は何を考えているのだろう?
たとえ王族に名を連ねたとは言え王城、それも王族の部屋の前で剣を抜くなんて

ここでいきなり斬りかかってくる
本当にやりかねない…男の瞳を見るとそう思わずにはいられない
いつでもシャーロットを庇える様構える

シャーロット >  
「…思わせぶりな言葉ですわね。
 今すぐに『代わり』のいない私をこの場で…なんて考えにくいのですけど」

くすりと口元に笑みを浮かべる
それでも白刃の輝きを見れば、その頬に小さな汗が伝う

此処で一歩下がるわけにはいかない
相手が王族、それもとびっきりのビッグネームだろうと
古くから王国の財政と金融を支える家柄の一、プライドがある

控えるカレリアが早まることはないだろうが、
万が一があっても困ると僅かにその手を制するように下げる

「なので…はっきりと言って下さって構いませんわよ」

アーヴァイン > 真面目に褒めたつもりはないが、それにも無遠慮に乗っかる胆力は、内心で賞賛しつつも口にはしない。
刃を僅かに晒したところで、少女の察しの良さに僅かに口角が上がるのに気付くだろうか?
カレリアが身構えたのは正解だろう、それは引き下がらなかったシャーロットへの返答ですぐに分かることだ。

「必要ならば殺す、別にお前は必要ない。お前のしている仕事を出来るやつがいればいい」

彼女の家が掛かる仕事、それ自体はとても重要であり、国の財務に係る柱ともいえよう。
ただ、答えたのはその仕事こそ大切だが、彼女が必要ではないと言い切ったのだ。
金や家柄より、それを与えるに必要で優秀で従順な存在か。
それを語る声は、今までの彼の声の中でもとても冷ややかだっただろう。

「お咎めなしは無理だ、金を払って済む問題でもない。死にたいなら殺してやる。金と名誉、有能さに従順さを抱えて生きたいなら……見せしめぐらいにはなってもらおうか。女としてな」

直接な言いようはしないが意味はわかるだろう。
首を切られるか、罰の屈辱に沈むか。
その二択を問いつつ、刀を腰のあたりへと落としていく。
どうする? と先程変わらぬ冷たい目が問いかけ続けた。
人の運命を道具のように使い潰す、義父と同じように。

カレリア > 手で制されるまでもなくこちらから仕掛けるような真似は間違ってもしない
あくまで先に手を出すとすればそれは向こう

「ふん……」

シャーロットが必要ない
そう言い切った彼に対して会話は無意味らしい
元からこちらの言う事など気にもしない
フェルザ家その物を潰してしまっても構わない、彼はそう言ったのだ

「ここは王城、それも王族の方の部屋の前です
その様な下世話な話をするには不釣り合いだと思いますが?」

許す気もない
金も通用しない
そんな事をシャーロットに面と向かって言えばどうなるのか
今は一刻も早くこの男とシャーロットを引き離さなければ危ない

ここでやり合うのなら貴様を…
口にはしない。だがシャーロットのすぐ後ろで赤い瞳が鈍く光る

シャーロット >  
笑みを繕っていた表情が変わる
王国貴族の中でも頂点近くへと座するシャーロットにはとてもではないが受け入れがたい
否、何をされるのかが想像もつかない一言だった

狼狽と、どこか侮辱されたような怒りの色がその表情へと映り込む

「咎めるも何も、本来私は王国の不利益になるようなことはしていませんわ」

僅かに震える声、
ドレスの裾の奥ではきっと足も僅かに震えているだろう

カレリアの言葉も耳に入っていないのか、その制止を忘れる

「……第一、見せしめだなんて、何をしようというんですの」

アーヴァイン > 場に釣り合わない、そして何かしようものなら反撃すると言わんばかりの視線。
彼女は随分と従順な手下を手に入れたようだと思いながらも、本心は怒らせて申し訳ないと思ってもいる。
表の自分は演じきる別物だが、そこに向けられる感情は、本心には突き刺さり、痛みを生じさせていく。
顔に出さないためにも、狂気は濃くなる一方だ。

「色々と勘違いしているようだから教えてやろう」

今まで見てきた表情にはない、破顔した様子に彼女の心にヒビの一つでも入っただろうかと思う。
しかし、冷ややかな瞳のまま口角を上げて笑みを作り出すと、勘違いの理由を語り始める。

「仮にここで…お前らを犯した上で殺したとしよう。だが、誰も何も言わない。義父は国が残ればいい、他の王族も国があれば、血族の証は失われない。義父の意は、他の王族にも…有意義ということだ」

国を保つこと、その為に様々な力を振るうのだ。
だから、シャーロットを王族は庇いきれないといったのだろう。
庇うことそのものが、不利益を齎すのだから。
尤も、義父が王位継承より国の維持に熱意を向けているからこそ、成り立つ方程式だろう。
現に、そこの私室からは誰も出てこない。
そして、すっとシャーロットを指差す。

「貴様、こういったな? 国の存続など考えていないと…俺は来るべく王の為に国を保つ。それに背く貴様は本来逆賊だ」

ここでの邂逅の前、去り際に聞いた言葉は誰も国の維持など考えていないという言葉だ。
決定的な反旗の言葉を突きつければどうなるだろうか?
勿論、張り合え声は私室にも届き、退路を絶ちかねない。

「馬鹿にもわかりやすく言ってやる。貴様が従順になるまで、馬鹿共の前で犯して見せしめにするということだ。駒の躾だ」

何も伏せることのない、やる内容を端的に纏めた言葉を紡ぐと、視線は変わらない。
言葉通り、手持ちのモノを操作するための作業に過ぎぬと言わんばかりに。

カレリア > 「…シャーロット様、お気分が優れない様ですわ」

お願いだから今はこれ以上喋らないでとシャーロットの背に触れる
自分と同じ、怒りは失敗の原因になる
その上シャーロットは今怯えている
今は何よりも時間が必要…はっきりと止められない自分に歯噛みする

「……ほう、なるほど」

彼の本心など知る由もないカレリアにとっては随分な事を言ってくれる彼
ここで犯し、殺す?自分達を?
怒りも一周回れば不気味なほど冷静にさせてくれる

「お戯れが過ぎますわアーヴァイン様
こんな誰が通るとも分からない場所で犯す、殺す、思わず品性を疑ってしまいましたわ?」

ニコリと笑顔を浮かべ前に出る
現状、シャーロットでは彼に対抗しきれない
万全の状態であればまた違うかもしれないが、今は難しい
だから奴隷らしくたまには肉壁にでもなってみせる

「国を思い、支え、守る殿方であればある品性と教養をお持ちでしょう?
王族であってもこの国を支えてきたフェルザ家のご令嬢に対しては最低限の品位と敬意を持つべきだと思いますが?」

千の毒を吐き出したい欲求はある
でも今は飲み込み自分の腹の中に押し留める

シャーロット >  
自分を大衆の前で犯す

生まれた初めてかけられたようなその言葉は強くその心を揺らす

「───…」

絶句したようによろりと後ろへ下がり
自然とカレリアの後ろに隠れるような形をなって……

アーヴァイン > 「戯れ? 例えとしていったが、すると言えばする。それと…手段も何も問わず力を振るうから、祟り神と言われるのだ。祟られる程度で国が保つなら安いものだ」

だが、とカレリアの後ろへと隠れたシャーロットへ改めて指し指をする。
笑みを浮かべて前に出ようとも、敢えてカレリアには目もくれない。
お前は眼中外だと、態度で示すことで彼女の動作を無意味と無音に嘲る。

「品性を盾に私益を増やす屑がいる、教養という括りで無能が私的に力を振るう。貴様のことだ、家屋を取り壊す事ぐらい、馬鹿でもできる。貴様がもっと下の輩に金を作らせれば、マシだったがな? 無能と逆賊に何の敬意がいる?」

ひたすらにシャーロットにだけ視線を向けて言葉を重ねる。
事実、立場が逆の頃には下のものに仕事を、生活をと立場の維持も含めながら持ちかけたのは此方だった。
カレリアも腹に据えかねるものが溜まってきているだろう、それでも知らぬと、その感情を無視するのは彼女に庇わせるつもりはないからだ。

カレリア > 「……」

シャーロットが後ろに下がったのに秘かに安堵する
言葉を失い、その光景を想像し不安と絶望が増したシャーロットは
普段の傲慢さや余裕を全く感じられない

「またお戯れを…手段も問わず力を振るうのは神ではなく暴れん坊ですわよ♪」

やはり狙いはシャーロットのみ
特に揺れ動いている今の彼女は狙いやすすぎる的
あわよくばここで潰したいらしい

「教養もなくただ悪戯に威張り散らす方と何が違うのでしょうね?」

ならばやる事は変わらない
シャーロットと彼の間には自分が居る
無視されようが壁はそこに確かに存在している

「彼女が無能?笑わせてくれますわね♪
徴税という重要極まりない仕事を任せたのは王族の方々ですが、貴方は王族の方々が無能に大役を任せたと言いますの?
国を想い支えるどころか王への侮辱ともとれる言い様ですわね?」

貴方こそ逆族なのでは?
カレリアは笑う、嘲笑う

ただひたすらにアーヴァインに語る
シャーロットへの視線に割って入る
今、ここにシャーロットの味方が1人確かに居る
だから…そんな弱々しい姿の貴女を見せないで

シャーロット >  
カレリアの後ろに下がったまま、どこか落ち着かない様子で二人を見る

それも仕方ないことだろう
奴隷、つまるところ従者が王族に真っ向から立ち向かっているのだから

アーヴァインの手で二人まとめて…などという可能性が頭を過る
ただそれだけで、シャーロットは動けなくなっていた

ほとんど危険というものに晒されたことのなかった、未だ短い人生のなかで、
ただただ混乱だけが今の少女の頭の中を支配する

アーヴァイン > シャーロットへ一斉に浴びせていく言葉だが、本人は特に動く様子がない。
ある意味で力押し一辺倒だった結果というところか。
そんな中、中々に食らいついてくる部下の方はそろそろ黙らせないと面倒だろう。
浴びせられる言葉に言葉を返すより先に、かちりと鯉口を切った。

「次喋ったら、そこの無能の首をはねるから覚悟しておけ」

脅しではないと言わんばかりに淡々と紡ぎ、彼女の問いの全てを叩き伏せる。
自身が殺されるより、彼女に危害が及ぶほうが堪えるだろうと、今の反論で確信を得てのことだ。
そして、シャーロットの方へ一歩踏み出せば、その瞳を覗き込もうと冷えた茶色の瞳が視線を向ける。

「先程の問いに答えてもらおうか、シャーロット・アン・エル・フェルザ。死ぬか、恥か」

そこで健気に忠義を尽くすカレリアではなく、尽くされているシャーロットを名指し、改めて問いかけた。

カレリア > 続けて言葉を発そうとするが…首をはねるという言葉に一度止まる

「……」

どうにもこの男は堪え性がないらしいと小さなため息
では、シャーロットを覗き込もうとする茶色の瞳に自身の瞳を合わせる
明らかにアーヴァインの邪魔をしている
カレリアは喋ってはいないでしょう?と微笑んで

後2、3度突けばこの男は爆発する
そう確信しての挑発

碌に恐怖を感じた事のない相手にこのやり口
そして淡々として作業的な態度
後は犯す殺す等を平気で口にして実行するであろう言動
いっそ清々しいほどにカレリアはこの男を嫌う、彼にどんな思惑があろうがどうでもいい

シャーロット >  
死ぬか恥か?

───そんなもの

「…そんなもの、どちらも受け入れられるわけないわ」

小声ながらも、はっきりとそう答える
妥協などというものも今までしたことがない、知らないことは、出来ないのだ

「私はフェルザ家の現当主シャーロット、
 王族の声と言えど好き放題に通せるとは思わないことですわね」

従者の影に隠れて、というのはやや情けなくもある
それでもしっかりと口に出し、それを否定した

アーヴァイン > 堪え性というよりは、立ち位置の問題である。
貴族の部下と永遠と言い争う方が、相手の口車に乗っていくだけになるのだから。
力を押し付けられる時に使ったに過ぎず、カレリアの想定よりも頭の中は冷えている…というよりは、こうなったかと何処か他人事のように考えることで自身を維持していた。
そして、彼女の返答は拒絶である。
一番選ばれたくない答えだが、ここで引き下がれば義父のこれまでに泥を塗ることとなるだろう。
それは出来ない、ほんの一瞬の思考の後に、小さく呟く。

「俺が選んでやる、死ね」

せめて痛み無く一瞬で殺すと考えれば、胸元の紋章から力を引き出し、雷を両手に宿し、刀身にまで浸透させていく。
切断力を熱で強化した刀身で、首を狙おうと引き抜きかけたところで、ピタリと動きを止めた。
ちょうど先程彼がやってきた方角から、義父がやってきたのが見えたからだろう。
傷だらけの身体、王族のわりに飾り気の少ない格好と、瞳に宿す冷たさは養子のそれよりも冷え切っており、深海のように暗い。
3人のもとにきた義父は、殺すか犯ってこいといったが、今回に限り、これで手打ちにしてやると呟く。
何処からか見ていたのだろうか、そんな素振りだ。

「…示しがつかなくなるのでは?」

刃を収め、雷を収めながら淡々と問えば、それよりも事務処理のごとく静かに語り続ける。
馬鹿じゃなけりゃ、潰す以外に仕事するだろうと、しなければ次に殺せと延命しただけの事をつぶやき、飲み直そうと肩を叩き、義父が来た道を戻っていく。

「運がいいな、次…妙なことをすればどうなるか、言わなくとも分かるな」

潰す以外に金を巡らせろ、第零師団の範囲にはちょっかいを出すな、妙な真似はするな。
そんなところだろうか、皆までは言わないが二人を一瞥しながらつぶやいた。

カレリア > 「………ふふっ」

微かに声が漏れる
恐怖をおぼえ不安の最中でも彼女は変わらない
それが嬉しい…そして、返答を聞いた男の返答に心が躍る

「お戯れが好きな様ですわね♪」

死ねと言って魔術…いや、魔術ではない?
しかし仕掛けてくるなら好都合
両手に魔力を籠めいざ開戦

その瞬間に相手の動きが止まり自身も合わせる様に動きを止める
一体何かと思えばアーヴァインの奥から異様な男が現れた
アーヴァインよりも冷めた瞳、ある意味目の前の男よりも警戒しなければならない
しかしその口からは事態の収拾を示す言葉が

「見逃された、ですわね……」

去っていく2人の背を睨みながら呟く
少々どころではなく消化不良だがあそこから無血で事態が収まったのだから万々歳だろうか
まるで見計らったかの様なタイミング
あの男がアーヴァインをけしかけたのはほぼ確定だろう

「シャーロット様、大丈夫ですか?」

と、背後のシャーロットに声をかけた

シャーロット >  
自分が見逃された
ある意味屈辱でもあるそれを……

受け入れざるを得なかった

緊張の糸が切れたようにその場にぺたりと座り込んでしまう

「──……」

大丈夫かというカレリアの言葉にも、呆然としたような顔で応えない


………が、

少女を最後まで変えなかったのは、プライドだった
彼らの言動はそのプライドに小さな小さな火を灯す
やがてそれは僅かに湧いた怒りという名の燃料を得て、燃え広がる

「……許さない…この私に、あんな態度…許さない、許さない──!」

玉虫色の瞳に闇が渦巻き、シャーロットはゆっくりと立ち上がる

「今日のところは引き上げるわぁ、馬車を用意しておいて、カレリア」

冷たい声色──まるでいつも通りにそう言葉をかけ、ドレスを翻す

アーヴァイン > (「これで手を出さねばいいがな…」)

二人に背を向けて歩きだしつつ思ったのは、これで争いの終止符になることだ。
彼女が次に何か仕掛けようものなら、義父は間違いなく殺すなり潰せと命じるだろう。
しなくていいのならしたくはない、これで終わるのなら恨まれようが何だろうがそれでいい。
願わくば、また争いの渦中へ引き込まれないことを祈りつつ、義父の後を追い、立ち去るのだった。

ご案内:「王都マグメール 王城」からアーヴァインさんが去りました。
カレリア > 「…承りましたわ」

これはよろしくない
シャーロットの怒りにかつてないほど燃料が注がれている
玉虫色の瞳が闇色に蠢く錯覚を覚える程
彼女がここまで怒る姿を自分は初めて見る
この状態では本当に何を言っても無駄
むしろ何も言わないのが自分の為だろう
カレリアは大人しく馬車を手配しシャーロットと共に帰路に就くのであった

かくして、王城での小さな一件は幕を閉じる
終わってみればただの口論
しかしそれは大きすぎる憎しみを彼女に抱かせる事となった

ご案内:「王都マグメール 王城」からシャーロットさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」からカレリアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城 」にアーヴァインさんが現れました。
アーヴァイン > 争いの翌日、すっかり酔いの抜けた義父に言われたのは宴を開いてこいというものだった。
その理由は、昨晩の争いにあるという。
王族と上流貴族が激しい口論の末、命が飛びかねないところまで差し迫った。
ただの口論であり、小さな出来事は、他の貴族には朗報の他にならない。
事実、こうして宴会が開かれ、それらしい格好で椅子に座っているだけで貴族が何人も挨拶に来る。
全く同じ内容を携えて。

「……分かった、考えてやる」

この言葉すらゲシュタルト崩壊しそうなほど、使いまわしていた。
肘掛けに頬杖をつき、退屈そうに貴族達の様子やら、催し物と扇情的な衣装で舞う女達をみやるも、元々宴なんぞに興味のない彼としては、暇以外の何者でもない。

(「まさか生かす事を罰にするとは思いもしなかったな」)

見逃したこと、それにより仕事しての一定の距離感は保つも、互いの人間としての距離は絶望的に離れたことになる。
己の利権を欲して止まない貴族達からすれば、上り詰めた貴族を蹴落とすチャンスだ。
そして、嫡子は武勲と組織の運営、多額の納税で国に忠を尽くした平民出身の養子。
磨き上げた娘を押し付ければ、繋がりを得られる可能性ぐらいはあるだろう…そう考える貴族達は、こぞって彼へ挨拶に来たのだ。
良ければ、ぜひ我が娘を。
何処かのご令嬢とは違い、我が娘は素直で気立てがいい。
夜遊びで時間のない令嬢とは違う。
伏せてはいるが、誰のことやら察しはつく棘のある言い回しに、呆れて鼻で笑う事もあった。
目の肥えていないだろう男だが…王の帰還後、国を保った功績である程度の地位が予測される。
故に彼は、嫁がせ先として垂涎の的、ということだろう。

(「馴れ馴れしい貴族が増えたらいい兆候だと言われたが、そういうことか」)

ここまでの彼らの行動で一人納得しながらも、仕事を熟した彼らの祝宴として開かれたここは、退屈なのは変わりない。
何かお持ちしましょうか? と給仕の女に声を掛けられれば、適当に酒をと頼み、舞を披露する女達の方へと視線を向けた。