2017/03/30 のログ
■アーヴァイン > 祟り神と恐れられもするが、一部恐れを見せぬ貴族もいる。
だいたいそれらは勤勉で確りと国に尽くす、力と名誉に似合う存在だ。
腐っていないからこそ、咎められず、恐れさせる必要がない。
しかし、僅かにでも腐った一面を持つ貴族からすれば、恐怖にかわりない。
だが、恐怖は転じて力だ。
更には、王族、貴族といった階級制度の世界は血筋は大きなカードとなる。
王族の血筋が僅かでも混じれば、他の貴族達とは比べ物にならない、決定的な差が生まれるのだ。
だから貴族達は挙って娘をより位の高い貴族や王族へ差し出し、嫡子は、位の高いものから嫁をいただくことで力を蓄える。
ある意味、あの夜の死か恥かという問いは、着くか着かぬかの二択でもある。
着かぬとなれば、空席を求めて集中していた。
娘がどれだけ弄ばれようとも、力がほしいのだから。
給仕が運んできた酒を受け取ると、また別の貴族が挨拶にやってくる。
またかと溜息を零すものの、一緒に連れていた女を見るや、僅かに心の中が凍りつく。
まだ二桁に達したか、達してないか程度の幼い少女を連れて現れたのだから。
「……何のようだ?」
まずはいつも通りの挨拶代わりの言葉をかけ、貴族が畏まりながら口を開く。
賛辞の言葉とともに、隣に立つ幼子の方に触れ、すっと一歩前へと進ませた。
まだ幼いですが、いずれ絶世の美女となる。
ぜひ、今のうちに集中に収めていただければと…と。
青田買いという言葉はあるが、これでは貧民地区の奴隷たちの扱いと代わりはしない。
覚束ない手つきで、淑女らしいご挨拶をしようとした少女だったが…スカートの裾を踏み、身体がぐらりと前へ倒れた。
座ったままの彼の足元にぶつかると、手にしようとしていたグラスが傾き、服に僅かな飛沫となって散っていく。
「……」
凍りつく貴族、今にも泣き出しそうな顔で身体を起こした少女。
こういう時は祟り神と言われる事が面倒だ。
優しい顔をするわけにも行かず、妙に力を振るうわけにも行かない。
すれすれの対応を求められれば、グラスを給仕にわたし、椅子から腰を上げた。
見上げる視線へ冷たい視線を重ねながらしゃがみ込むと、ぽすっと頭に手のひらを乗せる。
「服と酒が台無しだ、ツケにしておいてやる。物事が分かるようになったら…国のために働いてツケを払え」
分かったなと、厳しさと僅かな慈悲で答えると、側に立つ貴族の気が緩むのが見える。
謝罪の言葉とともに少女を連れて足早に去る貴族に、何処も変わらないものだと思いながら、再び椅子へ腰を下ろした。
■アーヴァイン > そうして今宵の宴は退屈な一時なって終わるのだろう…。
ご案内:「王都マグメール 王城 」からアーヴァインさんが去りました。