2017/03/18 のログ
■レナーテ > 射手用の練習施設は、的への射撃練習も出来るが、その他にも、鳩を使った動体の射撃練習も出来るようになっている。
ただ、最近は毎度血生臭い匂いを広げるなと王族や貴族に文句をつけられ、鳩がわりに砂の詰まった小さな麻袋を投擲台で放つものに変えられた。
動体練習のところまで移動すれば、彼らに振り返り、少々不機嫌気味な顔で一瞥すると、すっと的が飛び出すであろう辺りの空を指差す。
「お互いに交互に飛び出す的を撃ち合っていきます、先に外した方の負けです。負けた方は私の指導を受けてもらうということでよろしいですね?」
ルールを説明すれば、どっと笑い声が広がる。
かまわないという声があがれば、ではそれでと小さく呟きつつ、背中に書けたままだった魔法銃を傍らに置き、準備をすすめる。
ちゃんと弦が引けるのか? 狙いの付け方は分かるのか? と、からかう言葉にムスッとしながらも、弩の弦を本体と一体化させた巻き上げ式のレバーを回転させて引いていく。
ガチリと音を立て、金具で弦を保持すると、練習用の矢を装填し、一番手の男へと振り返る。
「では始めましょうか」
丁度そこらで暇をしていた士官らしい者をとっ捕まえて、投擲台の操作をお願いすると、力を示す決闘が始まった。
結構な勢いで飛び出す麻袋を、同時に狙ってレバーを引き絞る。
ボシュッ!と矢が風切る音を響かせ、一本は突き刺さり、一本は明後日の方向へと飛んでいった。
「私の勝ちです、次の方がいればどうぞ?」
当たった一本には、自分のだとわかりやすいように赤い線を引いてある。
墜落した麻袋にささった矢を指差し、少し満足げな笑みを拵えていた。
口調やら態度は少し大人びているも、中身はまだ子供な部分もあり、してやったりと言いたげな子供っぽい笑みを見せる。
舌打ちする男はすごすごと引っ込んでいき、まだ抗う気概のある男達は、次は俺だと的撃ちの勝負に名乗りを上げた。
■レナーテ > 自分に魔法銃を手解きしてくれた人から、弩についても学んでいる。
構え方と、使い方の根っこは同じだから、勝手の違いだけ覚えれば大丈夫だよと一つ一つ丁寧に教えてくれた。
その甲斐あって、コンパクトに身体を丸めるように締めた構えは、息を止めるとブレが綺麗に消えていく。
それを的が飛び出し、通り過ぎるであろう先に置いておくように狙いを合わせ、レバーを引くだけ。
二人目、三人目と挑まれようと、丸レンズの奥にある瞳と精密な射撃から放たれる矢は、一度として麻袋を外さない。
「そろそろ…認めていただきたいところですが」
もう十分に力は示したはずと、男達に振り返るものの、まだ手番の回ってきていない男達は、納得がいかぬと文句を漏らす。
何度目になるか分からない溜息をこぼすと、げんなりとした様子で、わかりましたと何度か繰り返しつつ勝負を再開していく。
(「こんな無駄なプライドばかりの人が多いから…あの人は、ここを見限ったんです。お仕事じゃなきゃ、とっくに帰りたいです」)
不機嫌そうに眉の間にシワを寄せ、それでも集中は途切れさせず、的確に狙撃を決めていく。
師匠であり、大切な友人である娘との久しぶりの邂逅の記憶が、脳裏をよぎる。
不自然に森のなかにきれいに広がった花畑、蔦や藻に包まれた古びた山小屋。
少し疲れた顔をしていたけれど、暖かに微笑む様子は何時も物事を真面目に考えすぎる自分を解してくれる。
この戦闘衣も、彼女の制服から色々採寸して模して作ったもの。
傍らの魔法銃すらもそうだ、あの人のように喜怒哀楽簡単に出せたなら、敵は作らなかっただろう。
自分は組合長ほどではないが不器用で…などと考えながら、狙撃をすると、少々辺り具合がギリギリで肝を冷やす。
外したかもと不安に高鳴った心臓だが、端っこを貫いたのが見えれば、安堵の吐息をこぼす。
(「考えごと、しちゃダメですね。冷静に丁寧に…」)
少しだけぶれた狙撃に、彼らにまだまだチャンスが有ると、淡い期待を煽ってしまった。
活気づく声に、数えるすら面倒になる溜息を溢れさせ、カリカリと音を響かせながらレバーを回し、歯車が噛み合いつつ弦を引き絞る。
■レナーテ > 再び気を取り直し、実力で従わせる作業を続けること30分ほど。
集まっていた兵士達全員を降せば、小馬鹿にした言葉は全て消えていた。
やっと終わったと言うように溜息をこぼすと、改めて彼らに振り返りつつ、台の上へ弩を置く。
「私の勝ちです、では練習にはいっていただけますね?」
完膚なきまでに優劣をつけ、勝負で決着した。
もう実力を疑うものは居ないだろうと思ったのだが…返事はない。
思っていた流れと違う流れに、少しばかり訝しげに首を傾けるものの、ベレー帽の下に隠れた折れた耳が、彼らのつぶやきを拾っていく。
不貞腐れたような文句ばかり、勝負で実力を示そうとも小娘に従うのは嫌だと言いたげな言葉ばかり。
呆れるだけで済んでいた感情は、あっという間に怒りへと変わっていくと、だんっと地面を踏みつけて、それを露わにする。
妙齢の女性ならば、もう少し迫力のある睨み顔もできただろうが、童顔故にあまり迫力のない怒り顔を晒す。
「何なんですかっ! 文句ばっかり! いい加減にしろというのはこっちが言いたい言葉です! 大体…文句があるなら、顔を隠してこっそりぼやくのではなくて、正々堂々言ったらどうなんですか!? 情けない、女々しいという言葉が男のためにあるなんて言いますけど、あなた達は正にその言葉通りです」
無遠慮な剥き出しの言葉は男達のプライドを一気に逆撫でし、憤怒に満ちた瞳が幾つも此方を睨みつける。
お前に言われたくない、勝手なことを言うなと言いたげだが、やはり言葉はない。
だから意気地なしで力も伴わない雑兵と鍛えてほしいなんて仕事が回ってくるのだと、周囲が下した彼らの認識を改めて理解しつつ、びしっと彼らを指差す。
「文句があるなら、私が納得するぐらいの腕を見せたらどうですか?」
なら身体に教えてやると、射撃練習どころではなくなる。
腰に下げていた剣を引き抜く輩すらいる中、こちらも頭に血が上っている。
傍らに置いた魔法銃を手に取れば、銃剣部分には皮の鞘を被せたまま、槍のようにそれを構えていく。
「銃剣術と体術も確りと会得済みです、こちらこそそちらの曲がった根性叩き直して差し上げます!」
――こうして乱闘が始まった。
蹴りやステップを踏む度に揺れるスカートに少しだけ気を取られ、気が緩んだところも無遠慮に蹴り飛ばし、叩きつけながら1対多数の大乱闘が繰り広げられた。
四方八方囲まれて殴られては、勝ち目がないので、途中逃げ回りながらひとりずつ倒したりと、姑息な手段も交えつつ、鈍い音がそこらで響き渡る。
最後は青あざを残して伸びる兵士達と、その傍で息を切らしてぐったりとする少女の姿があったのだとか。
こうして精密射撃の訓練は、基礎体力訓練となり、幕を下ろすだろう。
ご案内:「王都マグメール 王城 練兵場」からレナーテさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城/中庭」にティエンファさんが現れました。
■ティエンファ > 運が悪かった、としか言いようがない。
平民街の酒場で用心棒の依頼を受けていて、そろそろ上がりかと思った所に起こった騒動。
看板娘を無理やり連れていこうとした身なりの良い男を護衛ごとぶちのめし、店の外に蹴りだした。
…そこまでは良かったのだが…
「まさか末席の末席とは言え、一応継承権を持ってる王子様だったとはなあ…」
その後、意趣返しにと子飼いの騎士の集団を連れて戻って来た男は、
店ごと壊されるか、ついて来るかの選択肢を出してきた。
見せに迷惑をかける訳にもいかず、こうして王城まで一緒に来たわけなのだけど。
■ティエンファ > 「なんともまあ、ただの風来坊一人に随分な舞台じゃないさ
王城に入らせてもらえて、栄光の騎士様と乱捕り稽古まで催して下さるなんてさ
…王子様のご厚意に涙が出て来るな けっ」
無駄に豪華な装飾を纏った、派手好みな騎士達を侍らせる王子を呆れたように眺める。
自分に恥をかかせた異邦の風来坊を騎士で囲み、一人一人と戦わせる『催し』。
言ってしまえば、なぶり殺しで溜飲を下そうとしているのが見え見えだ。
「良い趣味だよ、本当に」
鎧を纏った真剣の騎士に対し、いつものボロい長衣に木の棒と言った装備の少年だ。
周りを囲む騎士達も、侮りの笑みを浮かべて、哀れな兎を狩る狐の気分を堪能していた。
ご案内:「王都マグメール 王城/中庭」にルイトさんが現れました。
■ティエンファ > 頭の中で、どうしたものかなあ…とか考えてるうちに、馬鹿王子が騎士に指示を出す。
騎士が長剣を握りなおし、少年に襲い掛かる。
「おっと、マジでやる感じか! 謝ったら許してくれー…ないよね、ないか、だな」
身を引き、騎士の剣を避ける。 剣尖が少年の髪を掠る。
返す刀で切り上げる腕はそれなりの鋭さだが、まだ余裕があった。
棒をするりと騎士の脚の間に滑り込ませ、払えば、騎士があっさり転げる。
「おいおい、大人げないんじゃあないか王子様よ。 王様ってのは寛容が美徳だろ?」
追い打ちもせず一歩飛びのいて間合いを取り、王子に声をかける。
王子が舌打ちをして、転んだ騎士を罵倒する。 騎士が慌てて立ち上がり、また剣を構えるのを何とも言えない目で眺める。