2017/02/07 のログ
■リシェラ > 軍の施設が並ぶ一角に在る兵舎の付近、其処に一匹の蝙蝠が留まっていた。
暫くはじっとしていた蝙蝠だが、不意に其の場から飛び去り屋上へと舞い上がっていく。
屋上の床に舞い降り其の翼を一度包む様に身を覆い…大きく翻された翼はマントと成り、蝙蝠から人へと姿を変える。
「良い話を聞かぬから試しに確認に来てみれば…如何して、なかなか大きな話に成っているな」
此の王都の軍の一部がある魔族を狙って動いている。
そうした話自体は珍しい物でも無いのだが、聞き覚えのある単語を耳にしたのだ。
キルフリート城、確か以前に会った吸血鬼の者から聞いた単語だ。
目立たぬ様にすれば問題も無いだろうと、今こうして居る。
ご案内:「王都マグメール 王城」にゲーデゼックさんが現れました。
■リシェラ > (簡単な話、吸血鬼と此処の将軍のいがみ合いか?
そうにしても隊が動くのは大掛かりだな。
行った事は無いが攻め込むには相当辛い場所なのだろう)
其れに関係する人間達の話を簡単に纏めただけだが、複雑な事迄を知るには至らなかった。
只、状況はかなり大きく動いているのが分かるだけに自分為りにだが結論を出す。
関わるには今の自分は小さ過ぎるだろう。
其れを理解しているだけに、今は静観を決め込もうと考える。
■ゲーデゼック > 軍の管理する施設とはいえ、軍人以外が足を踏み入れることもある。
宮廷魔術団の一人であるこの男も、施設の一部へと足を踏み入れることが可能な身だ。
清廉な軍人や貴族の一派に嫌われていようとも、仮にも一流の魔術師であれば、軍の装備周りへの仕事などもある。それらの仕事を片付けた後の、帰り路でのことだ。
「……?
何ぞ、妙な気配がするな。」
淀んだ瞳を歪ませながら、意識を周辺の魔力の揺らぎに集中させる。
きのせいならばそれでよい。だが、魔族の類の侵入も考えられる。
探りながらに向かう先は、兵舎方面。さて、面妖な物事があれば、王国を守るものとして動く必要があるだろう……王国は、己の欲望を満たすには必要な場であるのだ。
■リシェラ > (一つ、変わった気配がするな)
日常において、人間の精神は流れに依って揺らいでいる。
其の流れに変わった揺らぎが在る為らば、何らかの異常を察知したものを大体は指す。
そう離れてもいない場所の違和感為らば…
(微かな魔力にも敏感な輩に勘付かれた、か?)
思い違い為らば、其れに越した事は無い。
取り敢えずは変化の在った其の方向へと注意を向けてみる。
■ゲーデゼック > 「…埒があかんな。」
ぼそりと小さく声をこぼす。気のせいかと思うような微かな感覚が、張り付いたように離れない。
恐らくは何かがいる。 確立としては6割程度だろうと踏まえながら、ゆっくりとした足取りで、わずかな感覚の導く方へと足を向けて…しかし、この遅さでは隠れたまま逃げられる可能性もある。
であれば、と。
手にしていた黒い杖を掲げるように構え、
「響け、心刻黒鐘。」
一つの魔術を行使する。その魔術は、一定範囲へと広がる、精神を揺さぶる精神系魔術の波であり、同時にそれに反応したものの場所を探るアクティブソナーだ。
相手に気づかれる可能性も高まるが、こちらが捕捉することを優先として、魔術を行使したのだ。
さて、事実いたとすれば、拘束か、殺害か。拘束ができればよいのだが…。
■リシェラ > 流石に距離が在っては相手の呟きは耳には届かない。
考えを読む事も出来る訳でも無いのだから、何をしようとしているかは分からず仕舞い。
只、何者かが此方に気付いて近付いて来ている程度の認識だ。
(さて困った、如何やら予に気付いたか…?)
さっさと逃げの手を打つか、様子見か。
二択を浮かべているも、相手の魔力の大きさの程を考えてみれば話が通じるか如何かの余裕も在るだろう。そう判断する。
此方は屋上に居るのだが、其の身を隠している訳ではないので見様に依っては見えるだろう。
判断を見誤ったのは、無駄に高い己の抵抗力。
其れに依って向けられた精神魔法にかなり強力な抵抗が在ったのを相手は知る事が出来るかもしれない。
其れ次第では己の場所を明確に示す事になるか。
■ゲーデゼック > 「!」
思わず、淀んでいる瞳が一瞬澄み渡るほどに目を見開いた。
兵舎にいる兵たちの反応に交じって、大きすぎるほどの反応…波を返すほどの反響が来たのだ。
恐らくは、相当な抗魔力の持ち主。反応のあった地点へと目を向ける。
兵舎の中ではない、それよりも高い場所……月上りが照らす、恐らくは屋上。
「……この距離からの行使では、抵抗は抜けんだろうな。」
であれば、と手を伸ばすのはアミュレットの一つ。本来ならば防御用のアミュレットと同時に起動して効力を高めるものだが、今回はそれのみの機能を活用する。
すなわち、魔術の効力向上。得手ではない飛行の魔術だが、魔術アイテムの効力を用いれば、短期間であれば飛行できる。
「飛来せよスワロウバード。風に乗り舞え。わが身、羽を帯びよ。」
詠唱、祈願、発動。3つの手順を踏んだのち、男の体が宙へと浮かぶ。
手にした杖に魔力をゆっくりと送り込みながら、飛翔した男は屋上へと舞い上がり……
「さて、不審者がこのような幼子であったとはな。」
魔術ではなく、肉眼で確認した侵入者の姿に、そう言葉を口にした。
■リシェラ > 「ほう…?」
強過ぎる抵抗故に向けられた力を反響した事さえ気付いていない。
だが、此方へと意識を向けているだろう相手から発せられた幾重かの魔力に目を細めた。
重ねられた魔力で在る為らば己の魔力に何らかの別の力を上乗せして使うタイプだろう。
相手は其の場から一気に此方へと飛来すれば、フードの隙間から其方へと視線だけ向ける。
「害意は無い、とは言ってもこの様な状況では信じられるものでも無いか。
予は争うつもりで来たのでは無く、少々知りたい事が在っただけだ」
確かに相手からすれば十分に自分は不審者だろう。
戦う意思は向けぬ侭、一先ず理由を告げてみる。
相手がどんなタイプかもまだ分かっていない状況だ、其れを知る為にも言葉を交わそうとはするが…
■ゲーデゼック > 「ふむ。知りたいことか。それがこの国に害とならぬことであれば、応えるのもやぶさかではないが。」
見目が美しい少女であれど、そのような存在が人の子を指を折るよりも簡単に屠るのがこの世界。
自らの魔術を、あれほどまでに強く弾き返すのであれば……油断などしようもない。
一定の譲歩を見せる言葉を口にすることで、相手の興味を引こうとしながら、魔力の増幅と制御に用いる杖へと魔力を回し、
「それは捕らえたのちに聞かせてもらうとしよう。
暗黒より来たれ、触魔招来呪!」
相手に杖を突きつけ、杖の効果を持って魔力を制御・増幅。さらにより物質要素に偏った形で発動する、性魔術による召喚魔法。
少女の足元に魔法陣が輝いたかと思えば、魔法要素ではなく、肉と粘液、そして快楽神経を刺激する微弱な電流によって構築される触手の群れが、少女の手足を拘束するために絡みつこうとするのだ。
しかし、触手そのものは、物質要素の濃いもの。抗魔力の強い少女であれば、魔法陣へ干渉することも可能だろう。 魔法陣が破壊されれば、触手もまた消え去る。
抵抗を抜くことがかなわないとの判断から繰り出した触手戦術だったが、果たして通じるか…。男の細い身体を冷や汗が流れ落ちていた。
■リシェラ > 「そうか、ならば話は早いだろう」
相手から掛かる言葉に話が通じるとの認識。
其れが甘い考えで在るのだと、自身でも十分に理解はしている。
だが、理解はしていようとも信じてしまう。
争いに為らずに済むと思えば、当然油断はしてしまうもので…
「な…っ…!争うつもりは無い、そう言った筈だ。なのに何故…」
完全な不意打ちに依って手足は伸びる触手に捕らえられた。
足だけ為らば爪で切り払えはしたのだろうが、これでは爪も使えない。
触手を生み出す魔法陣を壊す力も今の自分には無い。
触手に絡め取られた侭、目の前の相手を見上げ声を上げる。
只、付与されている神経への刺激を与えようとする電流だけは効いている様子が無いのは相手には分かるだろう。
捕らえた不審者を如何するのか。
其れは今分かる事ではない。
ご案内:「王都マグメール 王城」からリシェラさんが去りました。
■ゲーデゼック > 「争いではない。王の居城に忍び込んだものを捕縛した。それだけよ。
聞きたいこととやらを問うのは構わんが……先に、尋問を行わせてもらうとしよう。」
そう告げるうちに、召喚を行っている魔法陣から、完全に触手生物が姿を現す。
「拘束しろ。けして逃すなよ。」
どろりとした眼の薄暗い雰囲気を持つ男の命令を受けて、触手がスレンダーな肢体の手足にぬるりと巻き付いてゆく。
……触手の帯びる電撃が無効化されているのは、触手の使役者たる自身からすれば明確にわかるものだ。
しかし、この状況に置いて、物理的な拘束を行えば動きを封じられるということは大きい……。そしてそのような拘束には、自分のような魔術師が監督するのがふさわしいだろう。
触手に捕らえた少女の姿を改めて見る。まだ幼くも、見目麗しい少女。その赤い瞳が、涙をこぼすか、欲情に濡れるか。どちらも己を高ぶらせることは間違いなく…れろ、と唇を舐めた。
「私の邸宅で、拘束するとしよう。……私の命令があるまで、消して離すな。
……ついでだ、少しばかり嬲る程度は許す。」
触手生物にそう告げれば、召喚陣を通して、触手生物ごと、そいつの住処である自らの邸宅の一室へと、少女を送り込み。
「さて……騒ぎの始末を付ければな。」
そうつぶやきを漏らせば、踵を返して屋上を立ち去る。城内での魔術行使について、説明をしなければ…。
ご案内:「王都マグメール 王城」からゲーデゼックさんが去りました。