2021/08/21 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 王立図書館」にアデラさんが現れました。
■アデラ > 女男爵が欠伸と共に歩いていく進路上。
床に落ちた本の一冊に近づく少女の姿が有った。
「無い、無いと思ったら……こんなところまで転がっていたのね」
浮かれたような弾む口ぶり。ととっ、と小走り気味に近づいたタイミング。
その本は杖の支配下に置かれて、すうっと浮かび上がる。
「あら。……もう、蝶気取りかしらこの本は!」
棚を目指す本を追いかける。片付け作業で些か賑やかな図書館に、ぱたぱたと足音を響かせて。
■ミシェル > 「んー?」
ふと通路の先を見れば、自分が魔法をかけた本を追いかけ、一人の少女が走っている。
無情にもその本は己が元あった本棚に向けてすいすいと飛んでいる。
「おやおや、邪魔してしまったかな」
とはいえ、所定の位置に戻るまでが魔法だ。本はすう、と上に飛び上がると、
少女どころかミシェルも届かぬ上のほうの棚にすっ、と収まる。
「あーらら…惜しいところだったね」
■アデラ > たん、たん、たん。足音を最後の三つ、少し強めに響かせる。
そうして本棚の元へ辿り着くも、肝心の本は随分高みに行ってしまった。
「……こういう屈辱はあんまり気持ちよくないわ」
恨めしげに背表紙を見上げ、吐き出す言葉には独特の怨嗟が込められている。
それはさておき。
少女は首をきょろきょろと動かして周囲を見た。
そして観測範囲内にいた女男爵の方へ、先ほどよりは随分と淑女らしい歩みで近づいて、
「あらご機嫌よう、エタンダル家のご当主様。
ちょうど良かった。私の背では届かない本があるの。手伝ってくださらないかしら?」
ワンピースの裾を摘まんでの一礼。それから、問題の一冊を指差す。
つい先ほど本棚に収まった〝それ〟の書名は、『性的快感により誘発される魔力変異、またその効率化についての一考』
……一応は、魔術書の端くれである。
■ミシェル > 少女の様子を横目に眺めながら片付けを続けていると、彼女が話しかけてくる。
こちらも、軽く一礼してその声に応える。
「やぁお嬢さん。お勉強かい?生憎図書館はこんな有様でね…。
あぁ、さっきの本か。生憎だが私の背でも届かないね…」
上を見上げる。あそこの辺りは、正直少女の教育によろしくない類の魔導書ばかり置いてある気がするが…。
「ま、君もここに来てるってことは魔術師の端くれだろうし、別に取れないことは無いだろう?」
遠隔操作で引き抜く、あるいは自身が浮かび上がる。そんな魔法の利用を前提としてこの図書館は作ってある。
勿論、魔法を使えない者のために梯子なども用意してあるが…。
■アデラ > 「それはもちろん、学生だもの。図書館に来るのは勉強か、そうでなければ逢い引きの時か。
……もっとも、逢い引きに図書館を選ぶ人は往々にして生真面目が傷になるのだけれど」
ほう、と溜息。
それから暫しの間、本棚の上段を見上げて待っていた。
誰かに何かをしてもらうことになれた、貴族階級にまま見られる仕草とも言えようか。
……無論、待っていても本は降ってこないまま。
「……それは、ええ、取れるけど。取れますけれど。
か弱い娘を演じてみたい女心も、拾い上げてくださったら嬉しいわ」
片手を掲げる。虚空に指で文字を描くような仕草。本棚に収まっていた該当の書が、引き寄せられてぽとりと落ちる。
それをもう片手で受け止めて、ぱらぱら数頁ばかり捲って、ぱたんと閉じた。
■ミシェル > 「学生だろう君は?学んだ魔法というものは日常で使ってこそだ。
日々是勉学の心が魔術師には大事なんだよ」
笑いながら、またすいすいと床に散らばる本に魔法をかけては元の棚に戻していく。
本を片付けつつ、横目で彼女の持つ魔術書の表紙を眺め。
「しかしまぁ、学生が読むような本じゃないね。君はそれがどんな本なのか分かっているのかい?」
性的な魔術なんてものは子供が気軽に手を出していいものでもない。
当然、学校のテストにも出ないだろう。出てたらとんでもない腐敗っぷりだ。
「まぁ別に読みたいならゆっくり読めばいいが…貸し出してくれるのかな」
■アデラ > 「性と魔術は切っても切り離せないものでしょう?
処女の血を使うまじない、媚薬を服用して乱交に耽るサバト……。
退廃に塗れたこの国ならば尚更ですわ、宮廷魔術師様」
再びの一礼。本を小脇に抱え直す。
それからと、とん、と二歩ばかり下がり、書棚へ品定めの目を向ける。
二冊、三冊、先ほどと同じように引き寄せては手元へ落とし、高く重ねて。
「持ち出し不許可であれば、読んでいけばいいの。……読んですぐ実践というのは難しそうだけど。
でも、出来ないことは無いわよね実践。日々是勉学ですもの」
言われた言葉をそのままに返し、くすくすと、重なった本の向こうに口元を隠して笑って。
ごきげんよう、と言い残し、読書机の方へと歩いていった。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 王立図書館」からアデラさんが去りました。
■ミシェル > 「はは、こりゃ一本取られたな…」
笑みを浮かべ、歩き去る彼女に軽く手を振る。
末恐ろしい子だこと、などと内心思いつつ、ミシェルは掃除を再開した。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 王立図書館」からミシェルさんが去りました。