2020/06/07 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にヴァレリー=D=ツインテイルさんが現れました。
ヴァレリー=D=ツインテイル > 「ふふふふふ……」

富裕地区、とある貴族の屋敷にて。
一人の少女が含み笑いをしていた。
手には赤ワインの入ったグラス。そして……。
何か、小さな白い包みも手に持っていた。

「本当に。貴族のパーティというのはやりやすいですわ。
 どいつもこいつも警戒心の欠片も無いですし」

少女はワインを飲みながら、ニヤニヤと笑っている。
そう。今宵も少女は、悪事に力を注いでいる。
本日参加しているパーティは、物好きな貴族が開いている宴。
いあゆる『仮装パーティ』のようなものなのだが。
平民も貧民も自由に参加していい、などというパーティらしい。
なお、少女は別段仮装していたりはしない。
そういう趣味はないのだ。

「さぁて。誰に薬を提供しましょうかしら。
 あるいは、手当たりしだい飲み物に混ぜても……。
 いえ、優雅さに欠けるかしら」

手に持った薬の包みをもてあそびながら。
少女は悪巧みをする。それこそが、少女の仕事だからこそ。
少女は、なんの躊躇もせずに、悪事に身を投じる。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にメレクさんが現れました。
メレク > とある貴族の邸宅で行なわれるパーティ。
それ自体は年がら年中、行なわれているものではあるが、
今宵は普段とは些か趣が異なっている。
貴族だけではなく貧民も参加可能という好事家主催の宴。

その宴の会場を、でっぷりと肥った貴族がワインを片手に歩いている。
貌には蝶を模した仮面を身に着け、仮装の条件を辛うじて満たしているものの、
貴族の一員であれば、その醜く歪んだ腹を見れば、
彼が何者なのかを一目で看破できてしまう。
尤も、変装ではなく仮装なのであるから、許容範囲内であろう。

「おっと、これは失礼。マドモアゼル?」

腹肉をたぷたぷと揺らしながら練り歩く男は会場内にて、
悪巧みを企てる少女とすれ違う様、軽く肩を触れさせてしまい、
恭しい貴族らしさを有した動きで頭を下げると謝罪の言葉を投げ掛けた。

ヴァレリー=D=ツインテイル > 「まずは知り合いの貴族あたりがいれば。
 多少はやりやすいんですけれども」

自身の仕事、どう進めるか。
そう考えつつ、パーティ会場を歩いていた少女だが。
その時、かすかにすれ違う人物と肩が触れた。
ぶつかった、というほどでもない。
本当に、かすった、という程度なのに。
相手が頭を下げる。それを見て、少女も一礼を返す。

「いえ、こちらこそ失礼いたしました。
 少し、考え事をしていて。気が漫ろでしたわ」

そつのない言葉を吐き出しつつ。
少女は、頭を上げ、相手を見る。
顔はよくわからないものの。
体型は……なんというか。

(……栄養行き届いてるお体ですわねぇ……。
 ど~せ、出自のしっかりした名家なんでしょうけど)

その体型を見て、少女は内心毒を吐く。
なにせ少女は成り上がりの成金貴族。
家柄、という話なら、てんでお話にならないのだ。

「……あぁ、失礼といえば。
 私、ツインテイル家の、ヴァレリー=D=ツインテイルと申します。
 イヤですわ、私ったら。まず名乗らなくてはいけないのに」

少女、普段の様子を見事に隠した貴族的振る舞い。
しかして内心は。言葉を交わした相手。
毒になるか薬になるか、見極めようと考えている。

メレク > 「御召し物は大丈夫ですかな?
 飲み物の雫が飛んだりしていては大変ですが」

下げていた頭を上げて肩が触れた女を眺める。
渦巻く金色の髪と、豊満な肢体を持つ、未だ少女と呼んで差し支えない齢の女。
ドレスの汚れを等と弁明しながら、仮面で隠された赤みがかった茶色の瞳は、
検分するように女の肢体を眺め、満足そうに軽く舌なめずりすると
手にしたワインに口を付けて咽喉を潤した。

「これはこれはご丁寧に。
 私はメレク。王国の辺境に封土を持つ貴族で御座います。
 以後、お見知りおきを、ヴァレリー嬢」

貴族的な振る舞いを見せる少女に対して、
彼が返すのも礼儀に即した優雅な一礼。
爵位の違い云々を別としてレディに対する紳士的な振る舞いを見せる。
尤も、しきたり通りの優雅な動きも、
彼の体型で見せられたら、何処か滑稽に思えてしまうのだけれども。

ヴァレリー=D=ツインテイル > 「えぇ、大丈夫ですわ。
 もとより、黒なので。汚れも目立たないでしょうから。
 お気になさらないでくださいませ」

相手の言葉に、少女は微笑んだままそう言う。
少なくとも、冷たい感触はなかったので。
恐らくは大丈夫だろう、と考える少女。
相手の視線には気づかぬまま。少女も、ワインを味わい。

「……驚きましたわ。
 まさか、こんな仮装パーティで、メレク卿にお会いできるなんて。
 お名前はかねてより。こちらこそ、お見知りおきを……」

少女は、相手の名乗りに息を呑む。
少女とて、成り上がりとはいえ貴族。
ある程度以上の有力者、有名人の名前は覚えている。
相手は、辺境伯とは言われているものの。
相当な権力を持っているという噂の人物だ。
少女は、笑みを強くし、相手に向かってワイングラスを掲げる。

「こうして出会えたのも何かの縁。
 よろしければ、メレク卿とお話をさせていただきたいですわ」

本当に。振る舞いだけなら貴族の令嬢。
しかして、内心は。この出会った相手を利用してやろう、と。
そういう考えだけがグラグラと煮えたぎっている。

メレク > 「それはいけません。もしも、汚れがありましたら、遠慮なくお申し付け下さい。
 当家のお抱えの仕立て屋に、代わりに最上級のドレスを仕立てさせますので」

その程度の出費は痛くも痒くもないと剛毅な態度。
事実、彼の家柄を考えれば、ドレスの一着や二着は、
ポケットマネーでも十分に払える程度の代物で。
名乗りに己の正体に感付いた彼女の反応に口許を弛める。

「このパーティの主催をしている貴族と懇意にしていますので。
 好事家繋がり、と申しましょうか。」

趣味が悪い貴族同士、繋がりがあるという事らしい。
掲げられたワイングラスに己も軽くグラスを掲げると、
そっと軽く縁同士を触れ合わせて涼やかな音色を響かせる。

「えぇ、勿論ですとも。今宵の私は蝶ですので、
 貴女のような可憐な華に留まりたくなるものです。
 ところで、ヴァレリー嬢の仮装は……?」

女の内心を知ってか知らずか、表面は貴族の振る舞いを保ちつつ、
特に仮装らしき仮装もしていない彼女の出で立ちに軽く首を傾げて見せた。

ヴァレリー=D=ツインテイル > 「いえいえ、そんな……。
 さ、最上級……っっっ!」

大丈夫ですので、と言おうとした瞬間。
相手の一言に、思わず反応してしまう少女。
所詮は成り上がり。もともとは貧乏商人の家系。
金の匂いには弱かった。

「そういうことですのね。
 縁は大事、ですから。うらやましいですわ」

グラス同士をぶつけながら、少女も相槌を打つ。
そう。縁。あるいは関係。
それは、ある意味武器になる、と。少女も知っているのだ。

「お上手ですわね。ただ……。
 華が可憐であるからといって。毒が無いとは限りませんわよ?
 私は、そういった趣味はありませんので。
 少なくとも、つまみ出されていないのですから。容認されている、ということではないでしょうか?」

仮装は参加する為の必須条件、ではなく。
宴を盛り上げるための演出装置のようなものなのだろう。
事実、少女以外にも、仮装していない人間もちらほら見えるが。
やはり、仮装している参加者のほうが、楽しんでいるようには見える。

「……ところでメレクさま。
 最近、私が仕入れて配布しております。
 健康の為の薬にご興味などお有りではございませんか?」

そして、少女が動いた。
言葉巧みに。まるで、『商人系貴族だから、いい商品を仕入れたんですよ』などという意味のように。
少女は、相手に『売り込み』を開始する。

メレク > 「勿論、お詫びの品に失礼なものを贈る訳にはいきませぬので。
 当方の不作法にヴァレリー嬢が気分を害されなければ何よりです」

金銭絡みの言葉に対する反応に軽く仮面の奥の眉を顰める。
ツインテイル家という成り上がり貴族の経緯を思い返しながら、
表情には、その事を知らぬとばかりに微笑みを携えて見せて。

「今宵、こうして貴女とも縁が結べる事を幸いに思いますよ。
 成る程、成る程。しかし、私目には貴女には毒ではなく甘い蜜がありそうに見えますがな。
 ああ、結構だと思いますよ。此処の主催者も細かい事に口を挟む野暮ではありません」

自分が知らぬ何かの仮想かとも疑ったのだが、そうではなかったらしい。
その事に疑問が解消されれば、特にそれ以上の言及はせずに、ワインを口に運び。

「ほう、健康のための薬ですか。……お恥ずかしながら、見ての通りのこの腹でしてね。
 典医にも常々節制を心掛けるように口酸っぱく言われておりまして、
 そう仰られると興味が湧きますな」

不意に持ち出された話題に、眉尻を下げると苦笑を滲ませながらでっぷりとした腹を摩って見せた。

ヴァレリー=D=ツインテイル > 「そ、そういう、ことでしたら、えぇ。
 あ、あまり固辞するのも、失礼にあたっちゃいますですからね」

内心の動揺を悟られないようにするものの。
興奮しすぎて、言葉が変になる少女。
見るものが見れば、少女の両目が金にくらんでいるのがハッキリとわかることだろう。

「本当に、メレク様はお上手ですわね。
 あら、そうですか? ふふっ、どうでしょうね……。
 その様ですわね。だからこそ、平民や、貧民も宴を楽しめるのでしょうから」

少女は、思わせぶりなことを言いながら、相手との距離を量る。
少なくとも、辺境伯まで上り詰める男。
油断はできぬ、と思いつつ。

「ふふっ。逆に、健康的だと思いますわ。
 ……実は、これなのですが。
 実に優れた栄養剤でございまして。
 痩身、傷病後の栄養補給にもオススメ。そして……」

相手が食いついたのを見て、少女は相手に近づき。
手にしていた包みを見せる。
そのまま、相手の耳元に口元を寄せ……。

「副次的効果として、精力増大。
 性行為時の感度、快感の上昇などの効果もあるんですのよ」

そう囁き、艶かしく微笑んでみせる。
……少女の見せる薬。それこそ、少女の所属する悪の組織の開発した薬品。
高い常習性を持つ、危険な薬品なのだが……。
あくまでそれは、作られた薬。
相手のように、『人間でない存在』に効くかどうかは未知数なのだが。
当然、相手の正体を知らない少女としては、いつもどおりオススメしているだけであり。

メレク > 動揺を前に只々遠慮は不要と笑みを携えて肯く。
彼女にして見れば、その太っ腹振りは、良い金蔓の候補であると、
そのように捉えられたかも知れず。

「さて、私は世辞ではなくて真実をありのままに告げているだけですので。
 この会場にて貴女程の華もありますまい。」

彼女の言葉に視線を会場内へと廻せば、貴族以外にも平民や貧民の姿が散見する。
否、それらの者達がいるために逆に貴族の参加者は少ないのかも知れない。

「いやはや、お嬢さんにそのように言って頂けるとは嬉しいですがな。
 ほう、それはそれは随分と優れた薬、なのですな?」

近付いてくる少女の手の中にある紙の梱包。
一見すれば、何の変哲もない薬だが、彼女の言い分では随分と高性能らしい。
双眸を細めながら眺めていれば、近付いてきた彼女が耳元で囁くように告げた、
副次的な効果に、口端を吊り上げて歪んだ嗤いを滲ませる。

「……成る程、それは、素晴らしいですな。
 ところでヴァレリー嬢、それは“お試し”させて頂けるという事で宜しいので?」

艶めいた微笑みを浮かべる少女に対して、笑みを浮かべながらそう持ち掛ける。
誰が、何を、試すのかは口にせずに、そんな切り返しをして見せた。

ヴァレリー=D=ツインテイル > 自身の動揺と興奮を見抜かれている気もするが。
それすらも少女には気にならない。
なにせ、最高級のドレスである。どれほどの品質のものか、想像すらできないのだ。
ちなみに、少女が今着ている黒のドレスは、正直『それなり~……』なレベルだったりする。

「その様な物言いばかりしていては、いつか女性に刺されますわよ?
 ……もぅ。メレク卿ともあろうお方が、私のような未熟者をからかわないでくださいませ」

どこまでも舌の良く回る相手に、少女は苦笑しつつ切り返す。
この口の上手さ、そして人当たりのよさ。
相当な人たらしではないか、と。少女は警戒しつつ。

「痩せすぎているよりは、ふくよかな方が健康的、でしょう?
 えぇ、私が自信を持って、今貴族の皆様にオススメしている薬ですわ」

包みを見せながら、胸を張る少女。相手の目の前で、豊かなそれがぶるんっ、と大きく震えた。
そのまま、まるで密着するような体勢になれば。
無意識に、胸を相手の腕に押し付けることになるが。

「……」

相手の一言に、少女の動きが止まる。

(……ややややや、やっべぇぇぇぇぇ!
 それは、想定してなかったですわああぁぁぁぁっ!)

そう。オススメしておきながら。お試し、などということを求められるとは考えていなかったのである。
なにせこの少女……正真正銘、処女なのだ。
性的知識は、書物で仕入れたのみ。やや耳年間の処女貴族令嬢であった。
なので、切り返しにまごつくものの。

「……よ、よろしいですわよ?
 ただし……もしも効果を実感できましたらば。
 この薬を、多少、買い付けていただくか。
 私に対して、資金援助などしていただける、というのでしたら」

しかし、相手が相手。このチャンス、逃すわけにはいかない、と。
少女は、条件を提示し、相手を見る。
顔は緊張と羞恥により、赤く染まっているが。
一応、余裕がある風な演技をしている。

メレク > 「いえいえ、国王陛下に誓いまして、私は嘘偽りを申しておりませぬ故。
 未熟者とはご謙遜を。ヴァレリー嬢は美しく可憐に咲き誇られておりますよ」

葡萄酒にて湿らせた舌は水車の如くよく回る。
女に警戒心を抱かせている結果になっているとは露知らず、
彼女との会話を愉しんでいるかのように笑みを絶やさず。

「ふむ、……確かに。
 痩せ過ぎよりも、ふくよかな方が健康的ですな」

自信があるとばかりに張られる胸。揺れる膨らみ。
そのふくよかな身体の一部分を見ながら、彼女の言葉に肯定を示して首を縦に振るう。
耳元で囁きを洩らして、身体を密着させる少女。
薬品を売り込みたいという下心があるにしても、
彼女の所作を傍から見れば、彼女の方から誘っているかのように見えた事だろう。
故に真意を尋ねる問い掛けに暫し空いた間に小首を傾げ見せて。

「勿論、健康のために薬を購入するのは吝かではありません。
 その際は薬を購入して、お試しの具合次第ではヴァレリー嬢にも個人的に資金援助致しましょう」

顔を赤らめる少女を見遣りながら口端を弛めるとワイングラスを軽く傾ける。
グラスの縁から一滴、葡萄酒が滴れば、その雫が彼女のドレスの裾に落ちた。

「おっと、これは失礼。……御召し物を汚してしまいましたな。
 我がお抱えの仕立て屋に至急、代わりを用意させますので、
 我が家迄、御足労頂けますかな、ヴァレリー嬢。」

河岸を変える為の理由を取り繕い、頬肉を歪ませて笑みを滲ませる。
そうして、彼女の腰へと片手を伸ばせば、パーティ会場を後にして――――。

ヴァレリー=D=ツインテイル > 「その手のお言葉、よくよく聞くが故に信用できませんわね。
 いえ、自分などまだまだ……しょせん、貴族の三女ですから」

冗談めかして返答しつつ、少女は内心を冷やす。
もしも、貴族社会に慣れていない人間なら。
相手の言葉にすっかり舞い上がっていることだろう、と。

「えぇ、そうでしょうとも。
 ふくよかさは、すなわち豊かさの象徴、でしょう?」

相手の視線にまったく気づかぬまま。
少女は、ニコニコと笑い、そう言う。
すべては相手を利用するための同意なのだが。
あまりにも踏み込みすぎ、少女自身、ガードがおろそかになっていた。

「そ、そうですか。それは……。
 今の言葉。二言はございませんね?
 ……きゃっ!」

意図を理解している少女だからこそ、返答が途切れ途切れになるものの。
間違いない大チャンスだ、と。気合を入れなおす。
だが、瞬間、ドレスをワインが汚せば、短い悲鳴を上げ。

「……わ、わかりましたわ。
 ぜひとも。よろしくお願いいたします」

相手の懐に飛び込んだか。あるいは、相手に取り込まれたのか。
わからぬまま、少女は、意を決し、相手のエスコートにしたがう。
パーティ会場を後にすれば、少女がたどり着くのは。
まさしく、相手の領域なのだろうが……。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からメレクさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からヴァレリー=D=ツインテイルさんが去りました。
ご案内:「聖バルバロ騎士団 屋敷」にチェイサー【林檎】さんが現れました。
ご案内:「聖バルバロ騎士団 屋敷」にツァナさんが現れました。
チェイサー【林檎】 > 富裕地区にある聖バルバロ騎士団の邸宅。

いま、その広い庭にて二人がシェンヤンドレスで対峙する。

一人は副団長のネメs…ではなく、チェイサー【林檎】。

ドレス姿ながら、格闘が出来るように生地もデザインも工夫されており。
金色の蝶仮面の力により、魔力をバリアのようにして両手両足に纏うことができる。

今、その状態で格闘ポーズを取っている。
片足を掲げ、両手を広げて構える姿は一端の格闘家のように見えるかもしれない。

実態は見様見真似でポーズも適当なのだが。

「さあ、来なさい!」

ツァナ > (新進気鋭の貴族が住まうお屋敷。
富裕地区ではそういう事になっているのだろうが…今日、その中庭にあるのは。変わった光景。
騎士団の者達が、歓声を上げて見守る中。異国のドレスに身を包んだ少女達が対峙する。

一方は副団長、屋敷の主…なのだが。
何やらまた新しい問題が発生しており、それに対処する為に。
顔と名前を隠しているらしい。

もう一方は、屋敷の主人に飼われる、妾だか奴隷だか。
どちらとも言えない扱いが続いており…今日も。
少なくとも、奴隷なら絶対に無いような。訓練に付き合う事になっていた。

両者の対峙は、それこそ、初遭遇以来であり。
同時に、その際苦汁を飲まされた団員達も居るので。つい、見物人も出て来るらしく。)

「 ん、そ…それじゃ……行くよ! 」

(久しぶりの、身体の動き。確認するように屈伸していた少女が。
「来なさい」、その言葉が終わりきるよりも前。一気に、懐へと飛び込んでいく。)

チェイサー【林檎】 > 「どうぞ…って、早!」

拳と脛から下を覆うようにバリアを展開させた林檎。
極上のガントレットと脚絆と言った具合。

二人の対峙する姿は珍しいからと、団員達も一部仕事をさぼって見に来る始末。
余程楽しいのか、記録用の水晶迄持ち込んでいる。

懐に飛び込んできたツァナをいわやるヤクザキックで吹き飛ばし、距離を取ることを図る。
普段は剣や槍を使い、戦場では投射武器を使っての戦術勝ちが多かっただけに。
一気に懐迄飛び込まれる経験は珍しく。

「やるわね、こんなに素早かったなんて。」

日頃はネメシスの子を産み育てるために奴隷のような立場に置いているが。
いざ戦闘となったならば並みの団員達よりも強いことが改めて証明された。
団員の中には久しぶりに見るツァナの戦闘姿に驚く者や。
スリットが捲れて、下着が見えることで喜ぶものも居た。

ツァナ > (両腕を、防御に回してくるのだ。必然反撃は足による物になる…
その読みが当たって、下から迫る蹴り上げ。
がん、と鈍い音。足裏を足裏で迎え撃ち、蹴りの勢いに乗る形で、後方へ。
くるりと宙で一回転する辺りが。実に、猫。)

「 まぁ、ね、久々だけど…な、鈍ってなくて、安心だ…! 」

(寧ろ、調子が良い気がする。
多分、母胎として、より適切な状態にする為の…彼女達のカミサマによる、加護のお陰。

さて、次。また試そう。
着地と同時。沈んだ身体が、また前に跳ねる。
先と同様の、一直線の直進と思わせて…とんっ!二歩程手前で。回り込むように、横へ。
動きの大きさに、逐一、団員達の歓声が上がっているが。
何に興奮しているのかは…多分。気付かない方が良さそうだ。)

チェイサー【林檎】 > 「えぇぇぇ!?」

格闘の世界を知らないネメシスは信じられないものを見た。
伸びた足を足場にしてまさか飛び上がるのである。

格闘技ってこんなに早い世界なのかと、日頃鎧を着こんでいるネメシスには脅威であった。
とは言え、このスタイルでやっていくなら慣れないといけない。
暫くはツァナを支障にするか、何なら相棒にするだろうか。

「いやあ、貴女がこんなに凄いとは思わなかったわ。」

ひょっとしたら、日々つぎ込んできた魔力が影響しているかも知れないが。
この時はそこに気づくまでの余裕がなかった。

「そこ!」

ツァナの動きは速いのだが、その気になれば目で追うことが出来る。
ネメシスは片足を腹の位置まで上げ、横なぎにするように回し蹴りをお見舞いする。

ちなみに、ネメシスは団員達が何で興奮しているのかよくよく知っていた。
後で二人で記録映像を見る予定も立てていたりする。

ツァナ > (勿論、少女も。格闘に特化している訳ではない。
どちらかと言うと。体裁きの一環として、学んでいる…というべきだろうか。
それでも、常々自分が用いる戦い方と、別の物に触れるというのは。
新鮮な驚きを持つものであるらしいと。
彼女の声やら表情やらを観察していると。良く分かる。
そういえば自分も、彼女の魔法や儀式法具には、驚いたなと。どこかしんみり思い出していれば。)

「 いや、ぉ、お前…も、対応、早い…! 」

(目で追える事と。適切な対処を見出せる事とは、別問題だろう。
うまい事高さを合わせ、横合いに蹴りつけてくる一撃に。
ぎし、と歯を剥くようにして笑いつつ。

…彼女の蹴り足に感じさせるのは。硬い感触。
こちらも片膝を同じ高さへ持ち上げて。硬い所で受け止める、いわゆるフットブロック。

もう一度距離が離れると。今度は直ぐには突っ込まず。
軽く手首を、足首を回して、身体の状態を確認しつつ。)

「 じゃ、ぁ次…ぉ、お前も。…どう、仕掛けてくるか。やってみる…? 」

(片脚を引いて。待つ、素振り。
そうなると、今度は、副団長である彼女の方も。大きく動く事になる…あの格好で。
それもそれで、団員達には、眼福になる…のだろうか。
もしかすると、慣れているかもしれないが。)

チェイサー【林檎】 > 「そうかしら?」

この辺はネメシスも体裁きの範囲として学んでいた。
鎧を着こんでもある程度動き回れるだけに、多少は習ったり練習して居たり。

しかし、上手く薙ぎ払えたつもりが膝で防がれてしまう。
こっちの分野ではツァナの方が一日の長があるのだろう。

「う~ん、それじゃあ行くわよ。」

足を下したところで構えなおす。
実際に戦闘となると、この格好でも魔法などを使うことが出来るネメシス。
対銀十字戦では例の電撃魔法も使うだろうが、今日は純粋に格闘技で戦ってみたい。

スっと間合いを詰めると、両手でワンツーパンチをしつつ、左足で足払いを狙う。
ネメシスのデザインは長いために下着はあまり見えない。
仮に見えた所で今更かもしれないが。