2018/10/30 のログ
影時 > 「あー、……ありゃ、うん。どんな暴れ馬よりもきついわなァ」

そも、暴れ馬だってこんな動きはするまい。だって馬じゃないもの。
思った以上に何か、楽しんでいるような風情もしなくもない。
しかし、限度があるということを見る側も弁えておかねばならないワケであり、そもそも此れは止むを得ないことである。
此れにて理論武装と言う名前の内心への良い訳完了。

何せ、前方を見遣るにこのデカブツを停めるために転用できそうなゴーレムが見当たらない訳である。
否、ゴーレム“だった”ものが散乱している。
詰まりは此れは重大事故でも起こらない限り、止まりようもないことではないか?
酔狂は勢い任せとはいえ、後で面倒なことになるのは避けたいが――、何は兎も角。

「盗ったにしても、持ち帰りてぇモノも売る当ても無ぇなぁ!
 臍か――じゃァ重ねて悪いが、少々手荒にさせて貰うぞ。悪く思うな、よッ!!」

伝手を辿りに辿れば、皆無ではないかもしれない。
しかし、如何せん元々旅空に生きることを善しとしていた身にとっては、こうも金に拘る所以がない。
身に宿る力こそを善しとして、外付けの駆動する何かを得てどうこう、というのも好みではないからだ。
近づけば近づくほど、思ったより太い胴が見えて来る。
処方を聞けば、此れかと腰の太刀を抜き放とう。ずらりと抜き放つ刃金に氣が奔り、陽炎が立ち上る。
ゴーレムの反復横跳びの速度、タイミングを計り、ここだと思えば飛びつく勢いで大地を蹴る。

右手一本で保持した刃は業物だ。此れに充溢させた氣力が乗れば、大概のものは穿てよう。
両足裏をゴーレムの腹に付けて制動をかけつつ、切先を核と思しい箇所に突き立て、氣を流す。――爆ぜろとばかりに。

アデリーナ > 「それだ」

高速機動向けの四足歩行型ゴーレム、なんでその発想に至らなかったんだ。
いい加減血の気が引いてグロッキーになってきた脳に侵入者のつぶやきがすーっと効いて、これはナイスアイデア。
軍馬の育成は金と手間が掛かるがゴーレムなら安価に量産が利くのでは。
メモメモ……紙は持ってなかったのでポケットのペンでゴーレムの肩に書いておく。「うまごーれむ」って。

そうこうしている間に侵入者が近寄ってくる。

「ちくしょう、最先端の魔導機械研究局だぞ、もっと好奇心とか出せよこの!」

助けてほしいのかほしくないのか、そして余裕があるのかないのか。
いちいち侵入者のセリフに反応する少女。
中の技術を盗まれるのは嫌だけど、かといって全然興味ないです、というのも腹が立つ。
ぐぬぬ、僕の研究局は凄いんだぞ、と歯噛みして――


とすん、とゴーレムの腹に片刃剣が突き刺さり、特大ゴーレムコアからの魔力反応が消える。

「おお、やったぜ! よし今すぐ離れろ、爆発するぞ!!」

これだけの巨体を動かす魔力が急激にコアから放出されるということは、つまりそういうことだ。
見物客まで巻き込みはすまいが、僕と侵入者はそうもいくまい。
侵入者に離れるよう叫んで、

「いや待って離れるなその前に僕を助けろ!!」

降りれへんやないか! 置き去りにしないで!! と涙目で絶叫。

影時 > 「……おお。存外余裕あるなァ、お前。
 面白ェものは大好きだがな。今は流石にそれどころじゃ無ェだろうに」

マジか、と。研究者の鑑だ。或いはマッドの鑑かもしれないが。
馬か。馬は良いものだ。過去に仕えた武将たちも優れた馬を常に欲し、珍重していた。
現在の身分で所有するには維持、育成も含めて難があるが、遜色ない代物ができるとなると素晴らしいことだろう。

聞こえる言葉に、思わず呆れた風情の声音を載せつつも身体を動かす。
見学会でもやってくれるならば話は別だが、如何せんこの状況でそうもいくまい。
それにこの種の技術は考えるまでもなく、門外不出となるものばかりではないかと思う位には頭は回る。

「承知、ッ……あ゛?
 っ、たく以て仕方無ェなぁ。助けてやるから、そのままじっとしていろ」

刃が刺さる。刃を抜く。
一連の動きには遅滞なく、ゴーレムの腹部の微かな起伏に手と足先をかけて貼り付きながら離脱しよう。
そう思っていた矢先の事だった。
此れで止まるかと思いきや、どうやらそうもいかぬ様子に眉を顰め、声をかける。
その後の動きは早い。抜いた太刀を口に銜え、そのまま猿顔負けの動きでよじ登る。
速度が肝心だ。もたもたしていれば、巻き込まれることだろう。

「……ッ!!」

駆け上がるようにゴーレムの首元まで登り、その肩口に入る姿をかっさらうように捕まえ、跳び上がろうと試みる。
口元に刀を銜えていれば、肩に担ぐようにするには難がある。必然的に荒く横抱きにして抱えざるを得ない。間に合うか否か。

アデリーナ > 「あっはっはっはっは、器用だなお前!
 リスかなんかかよ!!」

猛烈な速度でゴーレムをよじ登ってきた男に安堵から爆笑し、停止したゴーレムの頭をベシベシ叩く。
高速で動く暴走ゴーレムを一撃で仕留めた上にこの器用さ、ただの冒険者にしては強すぎる。
いや、たまにそういうのが居るあたり生肉の度し難いところではあるが、
手慣れた感じは少なくとも軍隊経験者のそれではなかろうか。
すごい勢いで掻っ攫われて宙を舞う。
飛行型ゴーレムとか作れたら楽しそうだなァ、なんて。
眼下でベルセルク一号(仮)が爆発四散するのを眺めながら、わずかばかりの疑似飛行体験を満喫する。

「いやあ、やるねぇあんた。いや、よくもやってくれたな? まあいいや、よくぞ僕を助けてくれた。
 そんでよくも僕の可愛いゴーレムを破壊してくれた。
 お礼をしよう、何がいい? こう見えて僕ァ小金持ちなんだ、なんでも言ってみろよ、流石になんでもはくれてやれないが」

影時 > 「――、む。栗鼠にしちゃあ……図体がでかすぎると思わんかね、と」

流石に刀の刃を銜えたままとなれば、どうしても放つ言葉は籠って響くだろう。
生憎、腕は二本しかないのだ。
三本目、四本目を用意することは出来なくもないのだが、衆人環視を想定する場では使い惜しむ類の術だ。

ひょうひょうと風が荒ぶ。如何に軽いとはいえ、人一人分を抱えて飛び降りるとなるとどうしても勢いがつく。
背後に件の暴走巨人一号とも云うべきゴーレムが爆発四散する様を熱と風で感じつつ、柔らかく膝を曲げて着地しよう。

「やれやれ、だ。――恙なくコトが済んで善かったなぁ。
 壊したことばかりはすまんとしか云いようが無いな。他に手段があったとも思えんが。

 ……何でも、かぁ。金があるに越したことは無ぇが、別段今すぐ困る程もないンだよなあ」

そうして、ほれ、と抱えた相手を地面に降ろせば、銜えた太刀を腰の鞘に漸く納めて一息をつく。
続く言葉を聞けば、それこそ参ったなとばかりに心底より困ったような声を出そう。
金はあるだけあれば良いが、あり過ぎるとかえって困る。
何かものをせびるとなると、忍者の習いとして余計な重みはこれまた困る。

「そうだなァ。
 さっき言っていた最新の何たらを見せてくれるか、ヤらせてくれるか、といったトコかね。 
 俺のような無頼の徒を使い走りとして雇ってくれたらもっと良いが、生憎ここはニンゲン様はあんまり要らんだろう?」

強い欲はない。向こうが興の乗るものがあれば、それでいいと。

アデリーナ > 「まあなあ。しかしまあ、木登り上手だこと。おかげで助かったよ、ありがとな」

へへっ、と気の抜けた笑み。
ありがとな、に合わせてぱん、と肩を叩く。えらいぞ。

「確かに壊さず止めようと思ったら僕のが先に壊れてたわな。ま、必要経費と思って諦めるよ」

降ろされればよいしょ、と地面を踏みしめ、男の格好をじろじろ。
見たことのない装いは、北の帝国のそれに近い気がする。
堂々とそういう格好でいるということは、間者のたぐいでは……いや逆に間者かもしれんけど。
そのへんは国境守備の軍隊の仕事だろうし、脅威はないだろうと仮定する。
しかし、金を貰うのが困るとは変なやつ。普通すぐ金貨何枚だのの交渉に入るだろうに。

「ぶっちゃけ興味ないくせに。いや、どっちも興味ないだろアンタ。
 魔導機械だいすきーとか兵器大好き敵兵消し飛ばすのたーのしー! ってクチにはみえねーし。
 女の趣味もばいんばいんぼいんなエロねーちゃんが好きそうな顔してっし。
 それに金に困ってないのに雇えってのもなんかキナくせーよ? ぶっちゃけ何を求めてるのさ……?」

影時 > 「どーいたしまして、だ。必要とあらば、城や砦の壁だって昇っちまうぞ」

笑い顔は可愛いが、どうしたものか。
何か動物扱いされている気がしなくも気がして、そこはかとなくこそばゆい感覚がある。
叩かれながら、複雑な面持ちで笑ってひょいと肩の線を竦める。

「そう言ってくれるなら、俺も気が楽になる。
 いくら何でもアレ全部弁償しろ、と言われるとな。――持ち合わせもへったくれも無ェなあ」

装い自体の風情として見れば、北の帝国に近いものはあるだろう。
しかし、細部が異なる。この王国で手に入る素材や仕立て屋、あるいは男自身で加工した結果の産物である。
全体としての意匠として見るとすれば、異邦の地における侍なる戦士が普段着や礼服としている類のそれに近い。
だが、それもあくまで偽装だ。真に自分が如何なる職能のものか、それを隠すための選択だ。
しゃがみ込んだ姿勢のまま、掛かる言葉にご尤もと頷き。

「――ぶっちゃけて言うなら、勢い任せで出しゃばったとなら、何も考えて無ェに決まってるだろう。

 大筒や国崩しの類は嫌いじゃねえが、ありゃ俺が使うモンじゃねえし。
 単に抱くってなら、そりゃ相応の店に行けって話だわな。
 金も喰うに困らん程度の稼ぎはある。この位の事で一々せびるのも、粋じゃないわな。」

率直に答えて、ああ困ったなと。複雑げに笑う。
一連の所作、行動に対して向こうに何か強請る、求める由縁はないと。
寧ろ、中々見られぬものを見たということ、本来咎められておかしくない事柄を不問としてくれるだけで十分とも言える。
欲はそれなりにあっても、この場に対する強い欲の類はない。そう答える。

アデリーナ > 「おいおい、王都のど真ん中でそういうこと言ってるとすぐ官吏に目ぇつけられちまうぜ?
 ただでさえ今はピリピリしてるもんよ、無実の罪でしょっぴかれても僕ァ知らないよ?」

にひひ、といたずらっぽく笑って見物客を指差す。
王都警備の兵士が混じっているのが、途中ちらっと見えたのだ。
守るべき国民のピンチにサンドイッチ片手にゲラゲラ笑ってたあいつ、覚えてろよと内心で舌を出しておく。
さておいても、そういうヤツが居る所でそういう冗談は笑えないぜ、と諌める。

「そりゃそうだ。むしろ報酬目当てで飛び込んでくるような俗なヤツはアレ見た時点で逃げるよなあ。
 ふーん、どうしようか。そうなあ、欲しいものがないってことは無理にお礼を押し付けるもんでもないし。
 僕はアデリーナ・クルシンスカヤ、今の所ここの主任技師をやってる。
 なんか困ったことが――そうだな、金の無心とか、ちょっとした魔導兵器がほしいときとか。
 僕を訪ねてこいよ、一回だけ面倒見てやるからさ。
 今金持ってても明日文無しになるかも知れない。
 あんたに不要でも、あんたの仲間が魔導兵器を欲しがるかも知れない。
 ま、そういう時に来るといい。僕が今日のこと覚えてたら、解決してやるからさ。
 あと溜まったときも手で良ければ抜いてやるぜ、出したもんは貰うけどな!」

指を輪っかにして上下に振るジェスチャー。にしし、と笑って。

影時 > 「おお、怖ェ怖ェ。
 壁に耳あり――窓掛に目ありか。そこはそれよ。うまくやるさ」

障子に、と続けて言わなかったのはその文化がこの地にあるかは知らぬからだ。
あるところにはあるだろう。だが、窓掛(カーテン)と言い換えれば多少はその意も通じるだろう。
ちらと指差される先を肩越しに横目を遣れば、なるほど。あんまり働いていない兵士が見える。
成る程。少々迂闊だったか。ちら、と舌を出して、己もおどけるように笑おう。

「そういうこったな。
 結果としてどうにかなった。で、御咎め無しってなら、俺としちゃあこれ以上願う由縁は無ェ。

 ――ほほう、ここの、か。
 小耳に挟んだコトがあるが、成る程、お前さんがそうか。想像してた以上に愉しい御仁で良かったよ。
 俺は、影時。こっちの流儀で名乗るなら、カゲトキ・カサギと云うものだ。
 良いだろう。若しかしたら、俺が目をかけている弟子が好むかもしれん。その時は正面から尋ねればいいかね?

 手でヌく位なら、寧ろ犯させろってンだ。ったく」

最後の言葉には吹き出すように口元を笑みのカタチに曲げ、向こうのノリに合わせるように応えて立ち上がろう。
膝を伸ばして立てば、おのずと上背の差を認識せずにはいられない。
此の体躯で猿、あるいは栗鼠の如くゴーレムや城の壁を登るという情景を想像できるかどうか。

アデリーナ > 「ああとも、僕が主任だっていうと昔はもっと驚かれたんだけどねえ。
 ここ十年であんなふうにすっかりゴーレム芸人扱いだ。やれやれ、だから外には出たくないんだがね」

肩を竦めて苦笑。しかし、一体どんな気難しい婆さんだと思われてたやら。
想像以上に楽しい、という評価は果たして喜んでいいものか悪いものか。

「はいはい、カゲトキね。そん時は玄関から来ると――
 玄関入る前に警備ゴーレムにしばかれるな。ちゃんと僕の紹介だってめんどくさがらずゴーレムに言えよ?
 それでどうにかなるようにしとく。弟子の好みとか言ってくれりゃオーダーメイドも承るぜ、
 誕生日の贈り物に魔導兵器はどうよ」

けらけら。兵器をプレゼントする師匠という冗談がツボに入って腹を引きつらせて笑う。

「ばーか、お前のナニから出る汁をゴーレムの材料にすンだよ、だーれが好き好んで生肉なんかと交わるもんか」

でかい男の腹にこつ、と拳を押し当てて抗議し、踵を返して石箱の方へ。

「それじゃあまた会おうぜカゲトキ。えーと、ゴーレム馬の基礎設計と、ベルセルク一号の反省、
 あと一緒になって見物してたクソ研究員のリストアップ……やることが山積みでね。
 今日はすげー助かったよ。ありがとな!」

影時 > 「生憎、色々な処で色々なものを見てきたンでな。大概の事は慣れたなぁ。
 この場で色々トチ狂ったコトやってるとか聞いてたが、思ったよりも喋り易くて驚いたぜ」

やれ、偏屈ばあさんやら。やれ、主任もゴーレムに成り代わっているやら。
真面目に周辺地域を聞き込めばまた違った言葉、回答を得ることができたのかもしれない。
故に当該人物が色々言葉を選ぶ必要があるだろうが、己にとって話しやすい類だったのは安堵が出来る。

「成ぁる程。話が文字通りに通じるってなら、困ることはないな。なら、安心だ。
 誕生日、なあ。……それはそれでアリか。
 使える道具というのは選びはしても、幾らあって困るというのは無ェな。

 って、おいおい。そういう作り方か。――ナマ肉の良さ、その時に改めて知って腰抜かすなよ」

玩具扱いになるかもしれないが、或いは自分が使うためのものを頼むのも良いのだろう。
今でこそ一通り使うに足る道具は揃ってはいるが、忍術とは違う道理に基づいた得物が必要になる可能性もある。
腹を抱えるような風情で笑う様とは対照的に、一瞬真面目喰らった顔で考えて続く言葉に眉を顰める。
硬い束を纏めたような腹筋に当たる拳に身を揺らすことなく、脅しともつかぬセリフでおどけ返し。

「ああ、また会えりゃ何よりだ。こっちこそすまんね。それと、無茶は程々にな?」

踵を返す姿に己もまた、着衣の埃を払って踵を返すとしよう。
今度の退路は順路と思しい道筋に向かって歩み、そこから街に戻る。頼むとすれば何を頼むか、ぼんやりと思いを馳せつつ――。

ご案内:「富裕地区・石箱」からアデリーナさんが去りました。
ご案内:「富裕地区・石箱」から影時さんが去りました。
ご案内:「王都富裕地区:服屋」にルイスさんが現れました。
ルイス > 「ふんふ~ん♪」

富裕層御用達の店が立ち並ぶ高級商店街、そのなかのひとつ。
ハイティーンから20代前半を主客層とした、少し大人チックな服を取り扱う衣装屋の中、護衛のメイドを連れて物色する少女がいた。
急激に強さを増していく寒さに慌てて冬服の新物を探しに来た次第だ。

「わぁ、どれにしようか目移りしちゃうわね。ど・れ・に・し・よ・う・か・なー・・・」
『お嬢様もう少し落ち着きをもたれては――しまった・・・』

目を輝かせながらあちこちを回る主を諌めようとした時には既に手遅れだったようで“いつものように”撒かれてしまったと溜息を吐きながらその姿を探すメイド。

――時を同じくして。
意図してかせずか、護衛を兼ねる従者を撒き服に目を奪われる少女はやがて一点の外套に目を付け、手にとって見る。

「うん・・・うん・・・、これいいわ!生地も丈夫で動きやすそう・・・よいしょ・・・うん、ぴったりね!ねぇアルマ、どう?
似合うかしら――あれ?アルマ?・・・・・・しまった」

袖を通し、ご満悦と言わんばかりの表情で振り返り――漸く、従者とはぐれたことに気付く。
振り返った先には――

ご案内:「王都富裕地区:服屋」にコニーさんが現れました。
コニー > 「え? えっとー……」
並べられた外套を物色しているところで、楽しげな声……自分の方に声をかけてるのかな、って振り返ったところでばっちり目があってしまった。
きょと、と長い睫を触れあわせるように瞬きしてから……ぽん、と何かを思いついたように手を打った。

「かわいいし、似合うと思う。でもー……それを脱いで、中に着てるのが今のままだと、ちょっと地味かも?」
見た目も、声音も女の子、といってふしぎはない調子。
思い立ったように笑みを浮かべながら……まるで、声をかけられて嬉しい、と舞い上がっている風に。

「こういうのとか、こっちもいいかも……どうかしら。あわせてみたら? 手伝いますから♪」
勢い任せの早口。彩りのある服をいくつか手に取って……姿見のある試着室、視線で示す。

ルイス > 振り返った先には見知らぬ少女。
気持ち見見上げる形で青い瞳と視線が重なる。
綺麗な金糸を垂らす姿は同性から見ても見事な造形であり、正直なところ少し見蕩れてしまった節すらある。

――時間が一瞬止まったような錯覚すら覚えて首筋を冷たい汗が伝う。

「あ、えーっと・・・」

さて何と言おうかと思案しようとしたところで相手の行動の方が早かった。
手を叩き、コーディネートを判断してくれたようだ。
その姿は近い年代の友と比べあいをする乙女のようで舞い上がっているようにすら見える。
少女は近くにある外套を――種類や値段も雑多に――数点手に取れば視線で、言葉でルイスを試着室へ誘う。

「へ?あ・・・・・・うん、それじゃあお願いね・・・?」

いつもならどこからともなくやってきて傍らにいるはずの影がいないことに一抹の不安を覚えつつ、促されるままに試着室へ向かう。

コニー > 「はぁい、手伝いますね♪」
彼女の背中を押すようにして、試着室へ。
さ、っとカーテンを引いて周りから視界をさえぎって……まんまと、狭い空間で二人きりに。

「髪も長くて素敵です。……お姉さまって呼んでいいですか?」
後ろから、抱きつくようにブラウスに手をかけて。
ゆっくりボタンを外しながら、つ、つ……服ごしに、指をくすぐるように這わせていく。
彼女が止めようともしないかぎり、下着になるまで脱がせていこうとする。
……妙に他人の服を脱がせるのに手慣れた手つきだ、って、思わせるかもしれない。

ルイス > カーテンが閉まる。
狭い密室で少女――妙に好意的な――と触れるほどの距離で二人きり、
という状況は彼女の心をとくんと跳ねさせる。
名前も知らないが見た目は結構な好みであるようで、賞賛の言葉が
耳をくすぐれば頬に朱を差して感情を伝える。

「お姉さまってちょっとくすぐったいわね――きゃ、ん・・・」

ボタンが外される。
疑問を抱く頃にはブラウスは既に袖を抜くところまで来ていて時折薄布越しに肌を滑らかな指が這えば息を詰まらせてぴくりと身もだえする。

「ちょ、それ脱ぐ必要ある!?」

漸く抗議の言葉が出たときには下着――細い帯状の黒布が両胸の頂を隠すように巻きつけられただけのものと、シースルーの黒ショーツという刺激的な格好に剥かれた後だった。
魅せるための下着ではあるが予想外のタイミングであれば心の準備もまだというもの。
両腕で胸を、しゃがみこんで股間をそれぞれ隠しながら睨むように見上げる。
ここに来て漸く悟る。
この少女、妙に人の服を脱がす手際がいい。連れ込む勢いも、手つきも。

コニー > 「わ……っ。すごい、これなら……外套より、目立ちますね……♪」
鏡越しに、露わになる下着姿。脱がせた服は自分側へ……彼女が力尽くで腕を伸ばさないと、奪えないような位置に。
しかし、彼女が恥ずかしそうにかがみ込むのを見ると、あ、っと悲しげに眉を寄せて。

「ご、ごめんなさい。お姉さまがあまりにきれいで、つい……は、はしたない、ですよね」
視線を伏せつつ、亀のように縮み込む相手の背中に、そっと指を触れさせて。
自分も膝を折ると、すがるように背中に頬を触れさせる。

「こんなに美しい方の機嫌を損ねてしまったら、悔いで生きていけません……どうか、お仕置き……してください。お姉さまのお気に召すように……」
こんな状況で、ましてや自分の出自を知れば強く出られないことをわかっていながら。
負い目を感じさせるように、わざと弱々しく……その実、背中と髪の感触と香りを感じていたのだけど。

ルイス > 背中にぴとりと張り付く感触が伝わる。
鏡越しに見えたのは少女が膝を折って頬を寄せたところだった。
戸惑うところへ追い討ちのように浴びせられるのは余りにも殊勝な、罰を望む声。
弱弱しい口調は華奢な姿と相俟って嗜虐心すら起こしそうだが、場所をわきまえればそう強く叱ることも難しい。

「もう、わかったわよ。ちょっとオイタが過ぎたわね・・・・・・じゃあ罰として、キミも下着姿になりなさいな。それでチャラにしてあげるわ」

少女の出自を知って入れば、恐らくは何もできなかったのだろう。
しかし幸か不幸か、彼女の家筋――アンダーソン家は由緒もそう古くない、新興華族。未だ周りの名前を覚えることに忙しい身であれば目の前の少女もまた名を知らぬ娘程度の認識。
故に。同じように下着姿を視られれば口封じになると安直な考えで命じてしまう。

コニー > 「……っ♥」
相手の答えを聞くと、ふる……と、ちいさく体を震わせる。
自分で告げた罰で、この美しい少女がどんな反応を見せるのか、想像するだけで体が熱くなる。

「は、い……。わかりました……♥」
熱っぽく、甘い息を吐きながら。彼女が飛び出したりしないよう、閉じたカーテンとの間に立ちはだかるようにして。
ゆっくり立ち上がると、ドレスの留め具をほどき……する、ん、っと引き下ろして行く。
鏡越しに彼女に見せる体は……胸を隠すモノはなく、薄い胸板には小さなつぼみのような色づき。
そして、腰を包む白いショーツからは……彼女の反応を想像するように、大きく膨らんだ男根が飛び出している。
細い腰に似つかわしくないくらいに反り返ったそれは、しゃがんだ彼女の顔の高さに、堂々と突き出されて……

「これで、許してください……♪」
楽しげな笑み、浮かべながら。彼女の顔に熱を感じさせるくらいに目の前に……