2016/01/08 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/クラブ」にヴァイルさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/クラブ」にファルケさんが現れました。
ヴァイル > 照明の控えめなこの施設では、お互いの顔を満足に確かめるのが難しい。
それがここに集う賓客にとっては都合が良いのだろう。
テーブルのひとつに着く《夜歩く者》にとっても、落ち着く暗さだった。
このような富裕層の集まりに本来入れる身分ではないが、
ヴァイルにとって身分を誤魔化すことは児戯にも等しい。

ステージでは奴隷の女性による趣味の悪いショーが繰り広げられていた。
それの鑑賞もそこそこに、誰かを探すようにぼんやりと周囲を見渡しながら
酔えもしないのに酒に満たされたゴブレットを口元で傾ける。
女給の扮装をして働いていたときもそうだが、
なにも道楽のみで訪れているわけではない。一応の目的があった。
とは言っても、明確なアテがあるわけでもなかった。

「今夜も無駄足かな……」

気落ちした様子もなく呟く。

ファルケ > ショーの真っ最中に、音もなく開かれる扉。
黒い羽根帽子にジュストコールを纏った男が、給仕に迎えられた。

足を支えるためでなく、アクセサリーとしてのステッキを携えて、悠然とした足取りでホールの中へ歩む。
受け取ったゴブレットを片手に、知らずヴァイルと呼応するように視線を巡らせる。
平坦な眼差しが、ひとときヴァイルの姿を認め、通り過ぎてゆく。

ジュストコールを翻して歩く足取りから、ささやかに流れ出す魔の気配。
まるで川をゆく舟が波紋を残すかのように、静かな不可視の波紋を揺らめかせた。
手抜かりとも罠ともつかず――ただ、無防備に。

ヴァイル > 隠す気もなく放たれる尋常とは異なる気配に、入り口に目を向ける。

(あれは)

それはヴァイルの探し求めている人物かもしれなかった。
魔術師。それも長い修練を経た者。それとの繋がりを求めていた。
彼の持っていた数少ないコネは、先のティルヒア動乱によって多くが没してしまったのだ。

「そこな紳士」

通り過ぎゆく男を呼び止めんとする。

「……失礼。探し人に似ていたもので、つい声をかけてしまった。
 初めて見る顔だ。何処から来た?
 名を伺いたい」

泰然と席に座ったまま、紅い視線を向ける。
良家の子弟のように外見を取り繕っているが、彼もまた――
透明で微量な、毒の香りを丹念に封じてはいなかった。

ファルケ > 目的もなさそうに見えて、惑いのない歩み。
ヴァイルに呼び止められたときにも、ぴたりと足を止めて振り返る。

席に着いたヴァイルと改めて顔を合わせ、ふっと目を細める。
帽子の広い鍔の下、翳った瞳が穏やかに弧を描く。

「ご機嫌よう」

ステッキを肘に掛け、帽子を脱ぐ。
白髪交じりの褪せた茶髪が、鳥の羽毛のようにぴょこんと跳ねた。
指先で手早く整えて、言葉を返す。

「探し人?ほう。
 わたしはファルケ……ここへ来る前は西の都に。
 あちこち戦火を逃れて、気侭な放浪暮らしという訳だ」

失敬、と言い添えて、ヴァイルと同じテーブルに着く。

「わたしも退屈していたところだ。
 斯様な場所にひとりでやって来て、はぐれた従者を探しているということでもなかろう?
 気晴らしに話でも」

椅子の背凭れに、帽子を引っ掛ける。
貴族のような様相で居て、粗野な身じろぎを小さくひとつ。

ヴァイル > 「ごきげんよう。
 ……ふうん、こっちはいくらか昔に北方で面倒事に巻き込まれてね。
 今はマグメールで自由にやらせてもらっている。似た者同士だな」

北方から訪れた、という言葉の意味するところはマグメールにおいては一つしか無い。
それを理解しているのかいないのか、平然と口にする。
微笑を浮かべながら、値踏みするようにファルケと名乗った壮年の男を眺めた。

「こう見えて、あいにくと従者を持てる暮らしではなくてね。
 求めていたのはそう、話の合う仲間だな。
 どうにも敵の多い身の上で、それを探すのも一苦労なのさ」

芝居がかった所作で肩をすくめる。

「……おっと、名乗りそこねていた。失敬。
 おれはヴァイル・グロット。グリム・グロットの子である」

ファルケ > 「は。『北』の出か」

短く笑う。

「街は暮らしづらかろう……わたしなどよりずっと。
 だがわたしとて、君の敵でないとは限るまい?
 話の合う敵というのも、それはそれで乙なものだが」

く、と低く笑って、ゴブレットの酒を口へ運ぶ。
テーブルへゴブレットを戻す指は節くれ立って太く、ファルケと名乗ったこの男が
ただ紙を繰って暮らすだけの身の上ではないことが窺える。

ヴァイルの名乗りに、ふむ、と相槌を打つ。

「……グリムの子ヴァイル。良しなに頼むよ。
 『グロット』と言えば……そのような名の、呪物商を聞いたことがある。
 君の父君が、商いをしておられるのかね?」

ヴァイル > 「なるほど道理だ。
 ま、敵でも構いやしないが……そうならないことを願うね。
 魔道を修めた人間を敵に回したくないというのが率直なところだ。
 ……それはそれで、退屈はなさそうだが」

呪物商という言葉を聞けば苦笑を浮かべる。

「父……グリムは件のいざこざで亡くしたよ。
 呪物の商いはおれがやっているが、才能がなくて閑古鳥だ。
 本業は……そうだな、」

顎に手を添えて言葉を選ぶように視線を彷徨わせる。

「このマグメールの『掃除』だよ。
 ――なんて、北の出身が言っても、説得力はないか?」

皮肉げに笑う。

「きさまこそ何を生業とする?
 見るに日がな遊興に耽っているわけでもあるまい」

中身の残ったゴブレットを指先の動きで揺らして弄びながら、尋ね返す。
魔族の指はファルケとは対照的に細く白く、力仕事をまるで知らないように見える。

ファルケ > 「わたしも面倒ごとは御免でね。
 そろそろ落ち着いた暮らしをしたいのが正直なところさ」

荒事は疲れるだけだ、と大げさに自らの肩を揉んでみせた。

「ほう……きみが店主その人であったか。
 なに、元より繁盛する類の売り物ではなかろうよ。
 『北』の者が作る呪物には、わたしも興味がある」

『掃除』が本業と聞いて、ふっと笑む。
目尻も口の端も柔らかく笑顔を描きながら、それでいて不敵な。

「外からやって来て、『掃除』か。
 この街はそんなに埃っぽいかね、グロットよ。

 …………、きみが厭うネズミは何だ。
 人間か?――それとも、『そうでないもの』のほうか?」

椅子に深く腰掛け、両の肘掛けに腕を寛げる。

「わたしの生業は……何だろうな。
 荒事には飽いたが、その日暮らしに過ぎないことは今も昔も変わらんよ」

自分でも答えあぐねて、ひどく緩慢に首を傾げる。

「晴耕雨読。
 かつて貯めた金で人を使い、わたしは気侭な文人気取りだ。
 『気に入ったものだけを身の回りに置く生活』。
 大義などありはしない」

ヴァイル > どこか枯れたようなファルケの言葉に、相槌を打ちながら大人しく耳を傾ける。

「気ままな暮らしを維持するのだって手間がかかるのだよ。
 特にこの混沌の世においてはな。
 食い扶持がなくなってから騒ぐような鈍間にはなりたくないね。
 ――光の信徒を気取るつもりもないが、この街にはおれと食い合う不純が多すぎる」

柔和に見える魔術師の表情に対し、ヴァイルの笑い方は好戦的だ。

「戦争というのは往々にして終わってからのほうが過酷なものだ。
 この国がすべて腐り落ち崩れるには早過ぎる。
 ――小康状態となってくれれば、おれには都合がよい」

ゴブレットをことり、と卓に置いて、無作法に肘を付く。

「まあ、大義は置いておいて、卑近な話にするとだな。
 曇りない輝きを放つと見えた宝石が、知らぬ者の垢にまみれていた。
 あるいは――手にしたと思われた宝石が、知らぬうちに疵を作っていた。
 ――なんて話、きさまだって何度も経験したろう。そして、これからも」

姿勢がわずかに前のめる。
ファルケの灰色の瞳の向こうにあるものを覗こうとするような、射る視線。
声には煽り立てるようなものが含まれている。

ファルケ > 「……面倒ごとに父を喪い、未だ敵を多く持つグロット。
 どうやら『北』から追い出されたか。
 やって来た先がマグメールでは、気苦労も多かろう。
 今や人の世は、雑多な血が交じり過ぎている。

 きみのような者でも、『食い扶持』は必要とするものなのか。
 血と精ばかりで生きる魔物でもないらしい」

ヴァイルの形の整った顔立ちを、心ない人形を眺めるような眼差しで見返す。

「戦後こそ、われわれ余所者にとっては書き入れどきであるからな。
 人びとのあいだに地位を得、財を成すまたとない機会だ。

 ……そうしてマグメールが小康を取り戻したのち、きみは何を望む?
 単に花を愛で書に耽る暮らしを欲する性質でもなかろう?」

相手の眼差しが鋭さを増して、背凭れから上体を離した。
テーブルに組んだ腕を乗せる――ヴァイルの針のような視線を真っ向から受け止める、真綿のような笑み。

「……そうだな。
 そのためにわたしは『宝石商』の真似事まで嗜む羽目になった。
 真贋を見定め、価値を測る目を養い、研磨の腕さえ身に着けた。
 そういうときには――

 何しろ鉱山を奪うが手っ取り早い」

にやりとして、笑んだ顔のパーツの均衡を崩す。
片頬を吊り上げる笑み。
それは正道に背くものの、そしてその同類を見るものの顔だ。

ヴァイル > 望みを訊かれて、さもおかしそうに肩を揺らして笑う。

「訊かずと知れていよう」

置いたゴブレットの縁を、つうと指が円を描くようにしてなぞる。
それが一点で止まり、二本の指が挟む。
――次の瞬間、小さな音を立てて、金属のゴブレットは粉々に砕け散った。
その破片がきらきらと――まさしく宝石のように――輝いて、卓上に散らばる。

相対する笑みに、満足気に口元を歪めた。

「――しかしどんな玉樹の探索も、全ては些末事からはじめなければならない。
 掃除夫を担うことを厭いはしないが――それだけでは不足だ。
 強さとは多様なものでなければならない。

 おれと誰も手に入れることのかなわない至宝を探すつもりはないか。
 人の身にて、魔に連なりし者よ」

ファルケと同じ笑いをするヴァイルの両の眼は、野心にらんらんと燃えていた。
鷹揚に、指輪をした右手を差し伸べる。握手でもしようと言うように。

ファルケ > 砕け散るゴブレットの破片へ一瞥さえくれず、ヴァイルの白い指先から舐め上げるようにその顔を見遣る。

「宝探しの誘いか。
 ――は。少なくとも、退屈のないことだけは約束されているらしい」

目を伏せ、肩を揺らして笑う。

「わたしはきみの思うよりずっと卑俗で、即物的な人間だよ、グロット。
 夢に描かれた至宝を探すのもいいが、それより目に見える小銭を拾い集める習性が強くてな。

 そうさ、わたしは宝石の手垢がほとほと気になってしまう性質で――」

伸べられた右手に、こちらもまた右手を差し出す。
ヴァイルの手を掴もうとして――空を切る。
手のひらを、相手へ差し向ける。

「だからひとつだけ訊こう。

 ――『ツァラトゥストラ・ルヴァン』という名に覚えは?
 ヴァイル・グロット」

胡乱な眼光が、穏やかに閉ざされた笑い皺の中に紛れて見えなくなる。

ヴァイル > 「おや……」

宙ぶらりんになってしまった右手を引っ込めて、
顔の前で両手の指を組み合わせる。
双眸に宿っていた篝火のような眼光こそ強さを失ったものの――
楽しむような表情は変わることはない。

「さすがに魔法使いどのは事情に通じているな。
 まあ――知らぬことはないよ」

とぼけるような口調。

「あれは良いものだ。
 仕込まれたわけでもないのに、女のように具合がいい。
 おれの願うものとは遠いが、あれもまた玉樹と呼んで差し支えない。
 なにより、血筋に使い途がありすぎる。

 ――なんだ、きさまはあれが欲しいのか? ファルケよ」

首を傾ぐ。
端麗な顔に浮かべていた気取った表情が、目を背けたくなるような
露悪的な下卑た笑いと化した。

ファルケ > 「きみの申し出に泥を塗る真似をして申し訳ないが」

言い添えて、探るような半眼がヴァイルを見る。

「なに、あれほどの器量は金でも買えよう。
 あれの『血』を知る“ヴァイル”がきみであったのならば、わたしも歓迎するところだが――

 ――よもやあれに魅入られて切れ味を落とすような鈍らは要らぬと、そういう話だ。

 言ったろう、わたしは『気に入ったもの』だけを身近に置きたいと」

握手を無碍にした右手が引かれ、肘を突いて十指を組み合わせる。

「きみの魂に厳然たる矜持が備わっていることは認めよう。
 だが自ら敵が多いと名乗るきみと、わたしは手を組むつもりはないな。

 ――『今は、まだ』。
 きみが、そしてきみの求める『玉樹』が、わたしを魅了して貰わんうちはな」

笑みを深める。

「われわれはこの夜、未だ出会ったばかりではないか、グロット。
 わたしがきみを鈍らかどうか見定めるのと同じように、
 きみがわたしを単なる老い耄れでないと判じるほどの時間と、間柄が必要だと思わんかね?」

ヴァイル > 「言うに事欠いて――
 おれがあれのせいで鈍る、だと?
 色に道を踏み外すとでも言うのか。笑わせてくれる!」

若き魔族は本当に腹を抱えてアハ、ハ、と笑い始める。
暫しそれを続けていたが、少し経てばぴたりと止め、姿勢を正す。
表情も、先程までが嘘のようにもとの落ち着いたものへと戻る。

「この闇の王太子たるおれに向かってその台詞、無礼千万と言いたいところだが――
 なるほどきさまの言葉にも一理ある。賢く――慎重だ」

三つ編みを揺らして席を立つ。針のようなヒールが床を鳴らした。
口説きが実を結ばなかったのにもかかわらず、唇は上機嫌な形をしている。

「なに、魔性の者同士が相見えて蝕み合うこととならなかっただけでも僥倖だ。
 きさまがそう言うのであれば――いずれまた言葉を交わそうではないか、魔術師」

悠然と手を振って別れを告げると、軽やかな調子でホールの薄暗がりへと
姿を紛れさせ――そして、気配はなくなる。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区/クラブ」からヴァイルさんが去りました。
ファルケ > ヴァイルの高らかな笑い声にも、動揺さえ見せない。
人形がからくりを止めたかのような落ち着きに、こちらもテーブルに置いていた腕を離す。

「そうさ。色は生きとし生けるものをいつどこで陥れるとも知れん罠だ。
 身の回りの平穏を保つためには、おいそれと儲け話に乗らぬのも手のうちだからな」

こちらもまた、その表情にはどことなく満足げなものがあった。
席を立つヴァイルを目で追い、背凭れに身を預ける。

「われわれの持つ毒が――互いに呑ませるためのものとならねばいいが」

それだけ言って、ヴァイルが姿を消すのを見送る。
自分のゴブレットの酒を空にしてテーブルに戻し、ヴァイルが砕いた破片をひとつずつ眺める。

「勿体ない」

帽子を取って、席を立つ。

椅子の足がいささか無作法な音をぎ、と短く立てた次の瞬間には――
瑕ひとつない、空っぽのゴブレットが卓の上に、二つ。

魔法使いの姿は、既になく。
二人分の椅子は、元から誰も座る者のなかったかのように冷えていた。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区/クラブ」からファルケさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にセリアさんが現れました。
セリア > 人も疎らな酒場。バーのような趣を有する。
その隅の席に腰掛け寛いでいた。目の前には既に空いたグラスが数個。

「……少し、呑みすぎたかしらね」

小さく呟いて、天井に向けほぅ、と息を吐き出す。
グラス自体は少ないものの中身は強かった。ほのかに頬が染まる。

ざっと店内を見渡してみれば、甲斐甲斐しく動く女性店員と店主。酔っ払って眠る男が一人。
会話に華咲かせる若い男が二人ばかり。それくらいだった。

セリア > 「誰かとご一緒したいものだけれど……」

目ぼしい者はいない。残念そうにため息を零せば、酒気帯びた吐息が零れ落ちた。
グラスの中に微かに残っていた酒を飲み干し、背もたれに身体を預ける。

部下を連れてくれば良かった、とはいつも思うことなのだが。
それは今言っても仕方ないことで。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にロトさんが現れました。
ロト > キィと扉が軋んだ音。その戸を開けて外から入って来た女が一人。
空いている席に適当に腰を下すと同時に頼むのは エールジョッキ大。

「取りあえずですね ジョッキ大のエールをキンキンにして。」

見た目角が生えている時点で人ではないのが見え見えだが、
気にして居ないし もしも咎められたら 酒の瓶位差し出す積り。

セリア > 扉が開く音に顔を上げれば、角の生えた女が席に腰を下ろすのが見えた。
エールジョッキを注文している様子に興味が湧く。
先ほどまで呑んでいた酒と同じものをもう一杯注文してから、彼女の元へと。

「……こんばんわ。仕事帰り?」

人間かそうでないかはこの際気にしない。そう問いかけながら隣に腰を下ろす。
良ければご一緒しても?とやや赤い顔で首傾ぎ窺い。

ロト > ここ 魔族というか人じゃないのがいても問題ないですよね?と今更妙な心配を抱きつつ、
エールジョッキを注文し どんと置かれたなみなみのジョッキ大を片手で持ち上げると さぁ 呑むぞ!と一杯呑みー
ゴッゴッゴッを勢いよく半分ほどペロリとして ぷはー と美味いとか言っていたら隣に座る気配と言うか人が。

「…ん、ごきげんよう。え、ええ、仕事帰りですが?…大分お飲みになられたご様子ですわね?
極上の女性に声をかけられるのは久方振りの事ですが、こんな私で宜しければ お付き合いしましょうか。」

聊かお顔が赤い気がするが、まぁ もし酔い潰れたとしても介抱くらいはするつもりだ。
ジョッキは残り半分くらいだ、まだまだ飲める勢いはある。メニュー表を手にすると 「ご馳走いたしますよ?」とか言ってみようか。

セリア > 店員も店主も一切気にしていない。割合寛大な店である。
勢いよく半分程が空になるジョッキを感心するような目で見つめながら。

「ふふ、ありがとう。仕事、疲れたからね」

酔ったとはいえ、理性が無いわけではない。
褒められれば嬉しそうな表情を隠さずに、手にされたメニュー表を見る。

「あら、そう言われると悪い気はしないわね。折角だし一緒に飲みがてら、どこか宿を取ってみる?」

やや冗談めかす風にして、しかし相手が乗ってきたなら考える心算。
注文は既に片手にグラスがあるから、大丈夫、と首を振った。

ロト > まぁ、王都の富裕地区とかいうと騎士とか衛兵とか警備が厳しいとは聞くが、普通に此処まで来れてしまっている。
この辺にも酒を卸しているから咎められていない、今の所。今日はたまたま目についた酒屋がここだったという具合。
水を飲む様にぺろりと半分呑んでしまったが、まだまだ肌色は白い。

「無理を為さっては宜しくありませんわ、疲れたなと思えば休めば宜しいのです」

とはいえ、この辺は分って居そうな気がする。
少しばかり心配そうな視線と顔色で持って 彼女を見つめてみたが
メニュー表は開いたままそのままにして ジョッキをテーブルに置くと
肘をつき手を組んで顎を載せ ちらりと彼女を改めて見返し

「宿ですか…前なら 喜んで、と答えたでしょうけど、旦那が居りますので、お気持ちだけ受け取りますわ。
ただ 酒のお付き合いは 致しますよ?ゆっくり飲む事から 浴びる様に飲む事まで幅広く。」

私には 旦那が居りまして、と手袋の上からしている指輪をちらりと見せて。
半分ほど呑んでいるジョッキをまた持ち上げると 乾杯でしょうか?と聞いたりして

セリア > かくいうこの女も兵士の一人である。人間以外にも寛容ではあるが。
こうした酒場に来るのは珍しいことではないが、今まですれ違っていたことはあったのかもしれない。

「無理はしないさ。疲れは酒で取るのが良いからね」

これも一応休みの一つと見ている。
此方を見返してくる彼女と視線を絡めた。頬を赤くする顔立ちは、彼女の目からしても十分整っているといえるだろうか。

「そう……まぁ、無理強いはしないから、安心してね」
「ならお酒の席、付き合ってもらうわ」

聞かれれば微笑み、カツン、とグラスとジョッキを合わせる。乾杯、と口にして一口。

ロト > 兵士…王城とか貴族などにも酒は卸している。酒好きが酒を造って何が悪いと言い続けて酒造を立ち上げて今に至る。
酒場で酒を飲む事は余り無い、強いて言えば酒場に酒を届け終わった後に
仕事終わりの一杯として引掛ける程度はあったかもしれない。

「そうですか、酒は呑み過ぎは体に毒ですわ、程々が良いのです」

酒は血液だとか妙な事を言ってしまう節のある女は、結婚さえしていなかったら恐らくだが一夜の春と称して
先程の誘い受けていたと思う。それほどまでに凄絶な美しさをもつ女性からの誘いだったからだ。
…同性と思っても危ない 顔立ちもだがスタイルも整っている気がする。

「ええ、呑みますわ。」

乾杯を、して半分ほどだったエールを飲みきった。ペロリ造作もない。

セリア > 彼女が酒造を立ち上げていることは知らぬ身だが、話を聞くならば興味を持つかもしれない。
酒は好きだ。今日でこそ飲みすぎている感はあるが、そこそこ強い方といえる。

「程々、ね。もちろんそれは重々承知してる…」

結婚しているのならば無理に誘いはしない。それくらいの節度は持っている。――酒に潰れてしまったならわからないが。
顔立ち、スタイル。整ってはいるが、本人に自覚はあまり無いという所。

「………へぇ。いい飲みっぷりね。どんどん頼むと良いわ」

そう勧めながら此方もグラスを傾ける。