2019/09/23 のログ
シュバルト > 今夜も雨は降り止まぬ、と……。

もう何度目か、今度こそ鞄に雨具を常備しようと思いながら、
お店の軒下より飛び出して……

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からシュバルトさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 大通り」にシルフィエッタさんが現れました。
シルフィエッタ > 秋の夕方。赤々とした斜陽の中、少女は街を歩いていた。
左手には最近流行りのもちもちした粒入りのお茶を持ち、右手にはサンドイッチを携えて。
その姿は、移動のついでに遅めの昼食、或いは早めの夕食を済ませてしまおうという雰囲気だ。
少女が向かう先は、中心に大きな噴水のある広場。傍らに据え付けられた休憩用のベンチ。
移動しながらの食事は、お貴族様にぶつかる可能性も鑑みるとよろしくない、と判断してのことで。

「んで、この先が住宅街の区域って訳か……」

ベンチに腰掛け、サンドイッチを齧る。塩漬け肉にチーズにトマト、それからレタスのスタンダードな一品だ。
生野菜の新鮮な味わいを楽しむ少女。その視線の先には、この王都の貴族達が住まう豪邸が立ち並んでいる。
あの中の内の何軒かが、今後忍び込む予定の目標。即ち、怪盗としての仕事の舞台で、今は丁度その下見。
故に、のんびりと休憩するふりをしながら、衛兵の配置や街灯の位置を確認し、頭の中へと叩き込んでいた。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区 大通り」にヴァイスさんが現れました。
ヴァイス > 富裕地区を歩くのは特に多くの意味があるわけではない。
ただ、仕事上富裕地区の仕事が来ることもあるし、地理を頭に入れておくのは必須だ。また、貴族の依頼を受けるときに最低限流行などが分かっていると話が楽に進みやすい。

そのため富裕地区を散歩するというのは冒険者にとって珍しくない行動である。遊びに来るのを除けば、そう言った下調べをするのはクソまじめな冒険者だけだが。

大柄でガサツそうな見た目の割にはそういった基本的なことをするのを人一倍行うヴァイスは、そんな目的でふらふらと富裕地区を歩いていた。その途中、一人の少女が目に入る。恰好からして冒険者か、そんな見た目の少女だ。服装があまり貴族らしくなく、若干浮いている。
まあ浮いているというならば大柄で黒づくめという威圧感たっぷりな格好のヴァイスのほうが圧倒的に周りから浮いているのだが。

ギルドで見たことのある顔だ、程度の顔見知りとも言えない程度の仲だが、こんなところで下調べとはなかなか真面目な冒険者だ。少し先輩風でも吹かせておごってやるか。

「熱心だな、下調べか?」

手には、先ほど屋台で買った流行の飲み物、タピオカ入りのミルクティとマンゴージュースが握られていた。かわいい子と知り合いになりたいという下心もありながら、ベンチに座るシルフィエッタの横に座りながら声をかける。

シルフィエッタ > 街を照らしていた斜陽は紫がかった空を残して、大地の彼方に沈んでいく。
そして、秋の日は釣瓶落とし、というのも確かにと思える速度で、夜の帳が世界を覆った。
いつしか街路のあちこちに松明や魔力式の街灯が灯り、周囲には夜の喧騒が広がり始めて。
繁華街へと遊びに出る者、家族で夕食を食べに行く者、或いはお役目から家路に就く者。
様々な人の営みが、大通りの中にひしめき合い、混ざり合っていた。

「ふぅん、日が暮れてからは、割りと人通りが多くなるんだねぇ」

ぽつり、と呟きつつ、少女の"怪盗としての"観察はなお続く。
サンドイッチは既に平らげてしまったから、太いストローの刺さったお茶を吸いつつ。
ふと、肌寒さを感じれば、外套のフードを持ち上げ、被る。これだけでも随分と違うもの。
ひんやりと静かに冷えていく夜気の中、少女は噴水の水音を背後に伸びを一つして――。

「うおっとっとぉおぅっ!?」

急に掛けられた男の声に、ベンチからズルリと滑り落ちそうになった。
視線を向ければ、そこには体格の良い男の姿。あれは確か、ギルドで見た顔だろうか。
そんな彼が手に持っているのは、先程少女が買ったものと同じミルクティー。
もう片方は、何やら別の飲み物を持っている様だが――ともあれ、いますべきことは一つ。

「あらら、こういう地道な所は格好悪いから、隠しておきたかったのに」

などと返しつつ、しれっと苦笑してみせた。

ヴァイス > 「地味な仕事をする奴が大成するもんさ」

ずずずと、ミルクティを飲み始める。婦女子用の甘い飲み物だが、ヴァイスは甘党でありそういったものは好きだった。すごい勢いで一つを飲み干し、もう一つのジュースの方に口をつけ始める。

「タピオカ、案外うまいな。貴族様に聞かれた時に、経験があると役に立つからな」

知ったかぶりが一番やばい。昔虫の姿焼きが流行っていた時に知ったかぶりした同僚が恥をかいた記憶がある。知らない者は知らないといったほうがましだが、知っていると少し信頼関係を気付くには楽になる。

「それで、何を見ていたんだ?」

なんとなく、見ているのが道や人ではなく、屋敷などの建物の方だったのが気になった。こういう下調べは地理を覚えるためにやるので、屋敷の方を見ている、というのが少しだけ気にかかり聞いてみた。
まあ、もしかしたら屋敷フリーク、とかかもしれないし、なんとなく聞いてみただけである。

シルフィエッタ > 「あはは、褒めると調子に乗っちゃうよ、先輩?」

くすくすと笑いながら、自分のミルクティをまた一口。
目の前では、同じ物を飲む彼。タピオカとミルクティがどちらも瞬く間に消えていく。
もう一方の手に持っているのもジュースの様で、甘党なのかな、とか考えながら。

「ん、もちもちしてて美味しいよね。流行ってるみたいだし、ボクも好きかも。
 貴族の間でもタピオカ流行ってるのかな。もっとお高そうなもの食べてるイメージだけど」

とは言え、彼らは気紛れに下々の生活やら何やらに興味を持つことも少なくない。
ともすればタピオカも、案外所望されるかもしれない。だとすれば、やはり何事も経験か。

「ん?何って、そこいらのお屋敷だよ。依頼の中には護衛や警備なんかも混ざってたし。
 人通りや明るさと違って、建物は時間で形が変わったりしないし、目印にもなるし、ね」

当たり障りのない理由は、こういう状況に備えて事前に考えておいたもの。
故に、スラスラと自然な言葉となって、彼の下に届くはずだ。

ヴァイス > 「本当に努力家なんだなぁ……」

感心した声をあげる。なかなか真面目な子だ。近頃の若い連中はこうした地道な努力をしなくて…… などとおっさん臭い思考に迷い込みそうになり、我に返る。
自分はまだ若い、と内心で自己暗示をかける。

「そんな頑張っている後輩に、何かおごってやろうかと思うのだがどうだ?」

気を取り直してそんな誘いをする。さっきまで飯を食っていた気がするので、断られるかもしれないが……

「ほら、甘いものとかどうだ。俺も好きなんだが、しゃれた店に一人で入るのが厳しくてな」

流行のカフェなどの話は聞くのだが、こんなごつい男が一人で行ったら店中阿鼻叫喚である。
ここはひとつ付き合ってくれないか、と頭を下げる。
甘いものに飢えた狼のような眼が煌めいていた。まるで情けない目だった。

シルフィエッタ > 「それ程でもないよ。後の仕事を楽にする為の手間だし、休憩しながらだもの」

彼の思い違いとは言え、褒められればそれなりにむず痒い気分になる。
それ故、照れ隠しを一つ置きながら、苦笑いを浮かべつつ、頬を掻いた。

「おや、良いのかな?ボクは結構食べちゃうタイプだよ?」

彼からの誘いに言葉を返しつつ、脳裏では集めた情報の整理と精査。
今日の調査を早めに切り上げても問題ないかを考えて、スケジュールを組み直す。
結論としては、多分問題ないだろう、といった具合。細かい所を詰めるのが面倒になったが故の結論で。

「ん、それなら、せっかくのお誘いだし、エスコートしてもらおうかな。
 っとと、ボクはシルフィエッタ。シルフィ、とか適当に呼んでくれて良いよ」

食事を共にする相手の名前を知らない、というのも不便だろう。
名乗らず誰何をするのも行儀が悪いから、とまずは自ら名乗ることにして。
ひょい、と身軽にベンチから立ち上がると、後は彼の案内をに付いて行くにした。

ヴァイス > 「俺はヴァイスだ。よろしくな、シルフィ」

そういいながら、手を差し伸べ握手をする。

「ああ、これでも結構稼いでいるからな。いっぱい食べるといいさ。さて、行きたいところがあれば聞くが…… ないなら俺が決めていいか?」

尋ねながらも、足は富裕地区にある有名な喫茶店へと向かう。値段が張るが、おいしいフルーツパフェがあるといわれている店だ。一度行ってみたくてしょうがなかったヴァイスの顔は、獲物を狙うような不敵な笑みが浮かぶ。

「あー、もしも混んでいたら別の店にするが…… ひとまず向かってみよう」

傍から見ると不敵な笑み、内心はパフェに心を弾ませるおっさんは、スキップしたい気分で進んでいく。もちろん可愛いシルフィと一緒といううれしさもあるが、ほとんどの興味はパフェにとらわれていた。

そうして少し行くと、シックな喫茶店にたどり着く。中は個室に分かれた店であり、かなり高そうである。
特に混んでいることもなかった店に二人して入り、個室に通される。
室内の家具やテーブルも高そうで、もしかしたら若干気後れするかもしれない。

シルフィエッタ > 「ん、それじゃ、よろしくね、ヴァイス」

相手が権威を気にする存在でなければ、基本は誰が相手でも呼び捨てのスタンス。
それは、目の前の先輩を相手にしても変わることはない。
差し伸べられる手には一瞬ちらりと警戒するも、特に仕掛けもない気配。
であれば、素直に応じて、大きくて逞しい掌を握ってみることにする。

「それじゃ、おすすめのお店によろしく。ボクは付いて行くからさ」

彼の表情が変わる。それは少女を誘えたからか、狙った甘味を味わえるからか。
少女にとってはどちらであっても構わない為、ただのんびりと彼の後ろをついていく。
背丈も歩幅も違う相手だが、少女は風の魔力を纏い、置いていかれぬ様に追随。
やがてやってきた店は、なんだかおしゃれな喫茶店だった。

「……おー、こういうお店、高そうだから入ったこと無いや」

流石に少しばかり圧倒された少女だが、品の良い店員に案内されて、個室へ。
二人きりになる、といっても彼の場合は襲われなさそうだ。
そう判断して、少女はしずしずと彼の対面に座った。

ヴァイス > 「さて、俺は決めたが、シルフィは何にする?」

普段ならもう少し配慮できるが、今のヴァイスの頭の中はパフェで埋め尽くされている。若干緊張しているシルフィの様子にも全く気付いていなかった。

「俺はレインボーパフェと、紅茶を頼む予定だ」

そう言ってヴァイスはメニューを渡す。中を見ると、軽食からちゃんとした食事、甘味類が並んでいる。かなりバリエーションが多い。レインボーパフェは様々なフルーツを使った大きなパフェであり、この店の一押しのようだ。

勿論メニューはまれびとの国のもの。普通のメニューの他にも、注意深く見れば裏メニューのような媚薬入りオプションやメニューも見つけられるだろう。

シルフィエッタ > 「んー、ボクは、どうしようかなぁ……」

どうやら彼の頭の中は、ここのスイーツに埋め尽くされている様子。
それが見て分かる程に彼が虎視眈々とメニューを眺めていたのだから。
彼の注文予定を聞きながら、ふむ、と差し出されたメニューに視線を向ける。
お茶を楽しむだけでなく、食事も出来るタイプのお店らしく、選択肢は中々豊富だ。
一見すると『それ大丈夫なのか……?』という雰囲気のものも散見される辺り、この国らしさが有る。
とは言え、自分から態々危うい橋に踏み入れることもあるまい。

「それじゃ、ボクはショートケーキと紅茶にしようかな」

先程サンドイッチを食べてしまったから、大きなパフェをガツッと入れられる程の容量はない。
それに、甘味は素敵で素晴らしいものだが、カロリーは大凡の女性にとって敵なのだ。
ショートケーキも甘いクリームたっぷりでは有るが、そこはいわゆる嗜好というもの。
その分は夜の鍛錬を少し増やそう――などと心に誓ったのだとか。

ヴァイス > そうして注文すると、すぐ出てくるパフェとショートケーキ、そして紅茶が二つ。

かなりの大きなパフェであり、バケツパフェと呼ばれるような大きさのものであった。
ヴァイスの笑顔がさらに深まる。獲物を目の前にした狼のような表情だが、内情はパフェ好きのおっさんである。

「さて、いただくとしよう」

スプーンは二つ付いてきたので、一つをシルフィに渡す。
さすがに独り占めしようとは思わない。シルフィが逆側から食べるといいだろう。
そう思い、スプーンを渡す。

シルフィの前にはショートケーキ。
ふわふわのスポンジと軽い生クリーム、
そして若干見慣れない真っ赤な果実で作られたおいしそうなケーキである。

シルフィエッタ > 「……うわぁ、なんと言うか、凄いね、それ」

注文の後、やってきたパフェは正に巨大の一言に尽きる。
バケツに果物とクリームとその他諸々を打ち込んだかの様な、凶悪な何かが鎮座しているのだ。
彼が差し出すスプーンを受け取ったは良いものの、これはどこから攻略するのかを悩む始末。
更に言えば、自分が注文したショートケーキはお腹に入るのだろうか、と心配になる程だ。
とは言え、勧められた手前、手を付けないのも良くないか、と匙を伸ばしてアイスを掬う。
そのまま口に運ぶと、濃厚なコクとバニラの芳醇な匂いが口一杯に広がって。

「ん、美味しいね、これ――流石に、この量を半分食べるのは、ボクだときっついけど」

普通の娘より良く食べるが、バケツパフェを平らげられる程の健啖家ではない。
恐らく、四分の一、或いは五分の一が少女にとっての限界だろう。
ショートケーキをお腹に収める事が前提ではあるが。

ヴァイス > 「ああ、好きなだけ食べればいいさ」

分けなくても全部食べられる、実は内心分けたくない部分もあるのだが、
さすがにそれは心が狭すぎるというぐらいの気持ちがヴァイスの中にも存在した。
どんぶり飯でも書き込むかのように、もっしゃもっしゃとパフェを食べていく。
色とりどりの果物、濃厚なアイスクリームや生クリーム、アクセントになるフレークなどをどんどんと腹へと収めていく。

「何だったら全部食べても構わないぞ。もう一つ頼むからな」

結構食べちゃうタイプ、といわれていてそれを頭から信じてるヴァイスは、
もしかしたら遠慮しているのでは、と若干ずれたことを思い、そんなことを言いながらどんどんとパフェを崩していく。
すでにパフェは半分はなくなっていた。

シルフィエッタ > 「あ、はは。見てるだけでお腹いっぱいになりそうなんだけど……」

目の前でみるみる内に消えていくパフェ。その速度は丼飯と変わらない。
正しく圧巻とでも言うべき豪快な食べっぷりを眺めつつ、少女は自分のケーキに手を伸ばす。
殆ど食べなくても大丈夫そうだし、むしろ見ているだけでも十二分に満足しそうだからである。

「も、もう一個頼むんだ……あはは、ボクのことは気にせず、パフェ楽しんでいいよ?」

凄いなぁ、と舌を巻きながら、ショートケーキにフォークを通す。
柔らかくてしっとりしたスポンジと甘さ控えめの濃厚クリームが区切られる。
それをひょいと掬い上げて一口。バランスの良い美味しさは、素晴らしいの一言に尽きた。

ヴァイス > そうして間もなく、パフェを食べきるヴァイス。
さすがにかなりの大きさだったが完食して満足げである。

「ふぅ、くったくった」

満足そうにしながら紅茶を片手にシルフィがケーキを食べるのを鑑賞し始める。
色白で小柄なシルフィがケーキを食べる姿はなかなかかわいらしい。
パフェにばかり気をとられ過ぎて、ちょっと後悔しながらも、シルフィを鑑賞し続けた。

「かわいいな、シルフィは」

思わずそんな言葉が漏れる。単純な感想であったが、本当にそう思ったから出た言葉である。
あまり冒険者ギルドで名前は聞かないが…… 男衆にモテそうな儚さがある。
今度ギルドで評判を聞いてみようと思いながら、ゆっくりと紅茶を飲んでいた。

シルフィエッタ > 目の前で空っぽになったパフェを見ながら、少女はちまちまとケーキを食べる。
彼がもう一杯食べると言った以上、先に食べ終わってしまうのも中々気まずいからである。
小さく小さくケーキを食べながら、ちらっと彼を見れば視線が交わって。

「……ん?もう一杯頼まないの?」

見つめられながらの食事、というのも何だか落ち着かないが、仕方ない。
ケーキをゆっくりお腹に収めながら、視線については意識から外す。

「ん?急にどうしたのさ。まぁ、いいけど」

唐突な褒め言葉には、照れ隠しの言葉を返す。
ギルドには最近登録した身故、名を聞かないのも当然のこと。
評判については生憎と耳に入ってくることはないが、さほど悪くはないはず。
――そうであってほしいな、という希望的観測では有るが。

ヴァイス > 「ただ単にかわいいな、と思っただけさ。モテるだろうにこんなおっさんに突き合わせて悪かったなと」

だがパフェは重要事項だったのだ。評判通り美味しかったパフェを食べたヴァイスは大満足である。

「今度一緒に依頼でも行こうじゃないか。普段はどんなのを受けているんだ?」

万屋、の異名は伊達ではなく、本当にどぶ攫いからドラゴン退治までやるヴァイス。
ギルドの依頼ならなんだって対応できる自信がある。
たまにはルーキーと一緒に行くのも悪くない、と思いながらそんな提案をする。

ケーキが少しずつシルフィの口に消えていくのをゆっくりと眺めながら、紅茶を飲み干した。

シルフィエッタ > 「んー、モテるかどうかは、あんまりかな。そもそも、男勝りの負けず嫌いだし」

相手が男であっても、虚仮にされれば食って掛かるし、勝てそうならば勝ちに行く。
それ故に、見た目で惚れても返り討ちに合うなどして、心折れる者も多かったりだ。
或いは少女自身も恋愛なるものに無頓着なのも、その一因なのかもしれない。
閑話休題。パフェを食べて満足そうな彼を見ながら、誘いの言葉には頷いて。

「おや、それだと徹頭徹尾頼っちゃうよ?――んー、普段は採集や討伐中心かな」

普段受ける依頼は、極力依頼主と顔を合わせずに済むものを好んで受けている。
なにせ本来の家業は冒険者ではなく怪盗である。顔を知られずに済むならば、それに越したことはない。
とは言え、彼が付いてくるならば、その際は普段受けない依頼を受けるのもありかな、とは考えていて。
そんなこんなで話す内に、ショートケーキも小さくなって、残り数口程度となる。
上に乗ったいちごにフォークを通し、口へと運びながら。

「ん、もう一杯食べないの?もうすぐごちそうさまになっちゃうけど」

紅茶を飲み干す彼に、首を傾げつつ問い返してみる。

ヴァイス > 「ふむ、見る目がないな。そういうしっかりしたところがまたかわいいのにな」

確かに気は強そうだが、それがまた活発でかわいいと思うのだが……
まあ若い連中は優しいふわふわした女の子が好きなのかもしれない。

「頼ってくれても構わないぜ。シルフィみたいなかわいい子なら大歓迎だ。それに、腕もなかなかよさそうだしな」

完全に寄生するような相手と長期間やるのはつらいが、シルフィはそういう系統ではないだろう。
真面目に下調べをするところや、一緒に歩いていた時の身のこなしなど、シーフとしての能力はかなり高そうである。
戦闘そのものはその線の細さから言ってそこまで、かもしれないが…… 得意不得意の範疇だろう。
そんなことを考えながらシルフィの頭からつま先までをじろじろと若干不躾に見つめていた。

飲み干した紅茶のカップをソーサーに置く

「ああ、シルフィのかわいさでもうお腹いっぱいだ」

なんとなくシルフィが食べている姿を見ていたらもう満足してしまった。また食べたくなったら一緒に来てくれるだろうか、という期待をしながら、食事を終わらせる。

シルフィエッタ > 「まぁ、可愛げがないのは自分でもわかってるし、気にしちゃいないよ」

もっと優しくて可愛くてふわふわした女の子がたくさんいるのは知っている。
そして、そういう子達に魅了される冒険者が多いことも。
同じパーティ内でだったら、神官や魔術師の女の子が人気、というのをよく聞く。
――実際は趣味嗜好など様々なので、そうではないのかもしれないけれど。

「それじゃ、大物狩りに行く必要とかあったら、その時は声掛けるね?
 ちなみにボクは、魔法を少しと鍵開けとかの心得が少し、といった位だよ」

彼の推測通り、少女の本業は盗賊であり、その技量はそれなりである。
しかし、冒険者としての登録は魔術師で、盗賊の技術は齧った程度、という喧伝をしていたりする。
彼の視線には気づいていながらも、それが少女の淫らな姿を夢想するものではなさそうだから放置。
相手が紅茶のカップを置いたなら、くすりと笑みを浮かべつつ。

「そっかそっか、それは良かった――ん、勿論、また機会があれば、ご相伴に預かるとも。
 とは言え、お互い満足って感じだし、そろそろお暇しよっか?」

食べ終わって、ずっとお店の席を占領しているのも何だから、と勧めてみる。

ヴァイス > 「そうだな、きょうはありがとうな」

そう言って立ち上がる。会計をささっと済ますと、店の外に出た。

「まあ俺は大体ギルドにいるし、受付のねーちゃんに言付けしてもらえば伝わるから、困ったらすぐいうんだぞ」

どちらかというと保護者のような発言をしながら、暗くなった街を平民地区の方へと移動していく。

「家まで送るが…… どのあたりだ?」

さすがに少女一人、放置するのは忍びない、家の近くまでは送ると提案をする。

シルフィエッタ > 「いえいえ、こちらこそご馳走様だよ。美味しかった」

彼に笑みを向けながら、その言葉には頷いて。

「ん、名前も知ってるから、指名する感じで行けばどうにかなりそうだしね。
 逆に、ヴァイスもボクになにか用事があったりしたら、同じルートでよろしく」

そうして外に出れば、既に日はとっぷり暮れて、完全に夜の街。
平民地区の方へと向かう道すがら、彼の提案には頷いて。

「それじゃ、宿の近くまで頼むよ」

そう言いながら、平民地区の片隅まで彼と共に向かうこととなる。
そして彼と別れてから、宿には入らず、観察結果をまとめるべく、仕事用の隠れ家へと向かったのだとか――。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区 大通り」からヴァイスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 大通り」からシルフィエッタさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 屋敷のバルコニー」にエレオノールさんが現れました。
エレオノール > 「ふぁぁ~……ぁ……今日のパーティーは酷いですわね……」

本来、貴族でもなんでもないこの魔狼にとって、パーティーとは豪華な料理を楽しんで食欲を満たし、男女の視線を集めて己の美と艶をひけらかすための場。ついでに都合のいいオスの一匹や二匹を見繕って『頂く』ことができれば御の字というところ。なので、政治的な根回しだの、他人の自慢話だの、上っ面だけの会話にはまるで興味がなかった。
今日のパーティーは悪いことにその『上っ面』が主であり、退屈極まりないものだった。

「ま、それにしてはお酒はなかなかですわね。ここの主とはそっちの趣味は合いそうかも……」

と、くすねてきたワインのボトルをバルコニーに置きながら、グラスのワインを大きく傾けて煽る。貴族のマダムとは到底思えない粗野な飲みっぷりだが、月明かりの下で夜風を浴びながら酒を楽しむにはこれがいい、とエレオノールは思っていた。

エレオノール > 「それに、このバルコニーもなかなかですわ。広いし、眺めもいいし、無粋な輩も出てこない。ふふっ」

酒が回ってきて上機嫌になっているのか、自分で酒を注いではまた飲み干す。パーティーを回ったり、買い物をしたりと最近は派手に遊んでいたから、たまにはこうして一人で静かに楽しむのも悪くない、と思えていた。
とはいえ、夜闇の中で、一抹の寂しさのようなものもやはりあって、

「ひとつ遠吠えでもしてみたくなりますわね……」

見事な月を見上げて、そんなことを呟く。ここからなら、我が家で待っている『子供たち』にも聞こえるだろうか、と。もちろん、そんなところを見られでもしたら一発で怪しまれてしまうだろうから流石に自重はする。……今のこの状況も十分不審かもしれないが。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区 屋敷のバルコニー」にエレイさんが現れました。
エレイ > こつ、こつ……と静かなバルコニーに靴音が響く。
屋内側の暗がりから、やがて月明かりの下に姿を表したのは、燕尾服姿の金髪の男。

その緩やかな歩調のまま、先客の女性の方まで近づいてゆくと、少し距離をおいた所で足を止め。

「──やあやあこんばんはマダム。……こんな所で一人酒とは、今宵のパーティーは少々退屈に過ぎましたかな?」

ふ、とその整った顔に柔和な笑みを浮かべながら、そんなふうに声をかけた。

エレオノール > 「あら……」

足音に気づいて、一応ボトルを隠そうかとも思ったが、もう遅いだろうと思って諦める。自分としたことが、酔いが回りすぎて注意を怠っていたらしい。開き直ってまたグラスを煽ってから、

「そうですわね、あまり愉快とは言えませんわ。だから、ここで少し飲んだらこっそりお暇しようと思っていたところですのよ」

でも事情が変わった、と言外に匂わせながら、酔って赤くなった顔で微笑んで見せる。相手の出方を伺う意味も含めて。

エレイ > 「そうか……まああ確かにやってるのは貴族連中のしょうもない『オハナシ』だのなんだのばっかりだしなあ。
俺もいい加減耐えきれなくて抜け出して……オホン」

彼女の返答に笑みのまま眉を下げ、同意するように呟くもうっかり普段の口調が出てしまって、
軽く咳払いして誤魔化そうとする。全然誤魔化せていないが。

「まあなんだ……そういう事なら、もしよければ私めと一緒に抜け出しちゃったりしませんか?
マダムさえ良ければ、ですが。ちなみに私は──エレイと申す者であります」

それから笑みを浮かべ直すと、更に歩み寄って片手を差し出し、そんな提案をしてみせる。
名乗りの際には、偽名の一つでも名乗るべきかと思ったが──少し考えて、どうせ事と次第によっては後で明かすことになるだろうしとやめておくことにした。
さて、突然現れた初対面の男の誘いに、彼女はどう答えるか。

エレオノール > 「うふふっ、あなたとは気が合いそうですわ。仲良くなれそう……」

もともと、相手に品位や口調の丁寧さなど求めてはいない。だから、相手が何かボロを出しかけたらしいことにも『愛らしい』としか思わなかった。だから、

「私はエレオノール。ただのエレオノール……ということにしてくださいな。そうですわね、一緒に抜け出すのも楽しそうですけれど……」

そう言いながらふらふらとした足取りで、エレイと名乗った彼の目の前まで行き、しかし、

「この場で、私に『意思』を示してくださいな。ここならきっと誰も来ませんわ」

陰に隠れるように、柱の側にもたれかかった。酒に酔って高ぶった表情だけで飽きたらず、乳房を寄せてあからさまなまでの『誘惑』のポーズを見せる。

エレイ > 「ンフフ、そう言って貰えれば重畳ですな。──エレオノールさんだな、よろしくお願いするます。──うん……?」

気が合いそう、と言われれば気を良くしつつ、名乗り返された名前を咀嚼するように繰り返す。
と、女性が意味深に途切れさせた言葉に少し眉を持ち上げ。

「──ほう。『意思』ねえ……マダムはどちかというと刺激的なのがお好みであるか。フフ、良いでしょう」

露骨に誘惑するポーズを見せてくる彼女に軽く目を丸めてから、ニンマリと笑みを深め。
寄せられる乳房に視線をやり、ちろりと舌で唇を湿らせ。
彼女の誘いに応じ、柱の陰へと身を寄せていって──。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区 屋敷のバルコニー」からエレオノールさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 屋敷のバルコニー」からエレイさんが去りました。