2019/04/20 のログ
イズナ > これまで様々な貴人や王侯のお姿を見てまいりましたが、そのどれとも違う優雅さを纏う所作に目を見張ります
…しかし、何と言うか。身につけた薄衣のような羽織は情を煽るような風合いがあり、
そのアンバランスさになんとも言えぬ表情を浮かべて

「これはご丁寧に、ミヤビ様
 私のことはどうか、イズナとお呼びくださいね」

礼には礼を持って返す、と教えられておりますから、こちらも丁寧に言葉を返します
ただ、彼女のような優雅さはなく、どこか取って付けたようでもあったかもしれません
差し出された竹の水筒を見れば、漂う香りに懐かしさを感じてつい、手を伸ばしそうになるが、すっ、と手を下ろし

「いえ、香りから察するに毒では無いと判ります
 これでも公主様に仕える身の上ですからね…ただ、生憎と先程、お茶を頂きまして…
 ご厚意は大変ありがたいのですが、頂いてしまえば、私めのお腹はちゃぷちゃぷと水を入れた革袋のような有様に
 なってしまいますから…お気持ちだけ、頂いておきます」

冗談を交えて丁寧に断りを入れるものの、その実、良い香りであったから味わってみたくもあった
しかし、何度も御手洗いを行き来しては主人の面子にも関わるので泣く泣く諦めて…

「…失礼ですが、ミヤビ様はシェンヤンのお生まれで?」

きっぱりと薬草茶を諦めるためにも話題を変える
不思議な気配と言うか雰囲気の彼女に少し興味を持った、というのもありますが

ミヤビ > 「いえいえ、私は海の向こうの、二度と行けないような遠い田舎の出身でして。イズナ様のような、身元の確かなものではありませんわ」

ころころと鈴を転がすように笑うミヤビ。その笑いは、また、幼さすら感じられる小柄な肢体とはひどく不釣り合いな妖艶さがあり、不気味なような、惹かれるような、そんな雰囲気を醸し出していた。

「この薬草茶は差し上げますわ。一月ほどは持ちますし、のどが渇いたときにでもお召し上がりください」

そういって、するっ、と竹の水筒を名刺とともに、イズナの手に滑り込ませる。名刺には住所や狐の拙いイラストとともに『ミヤビ薬局』と書かれていた。

「私の住処です。よろしければいらしてくださいな」

何とも言えないアンバランスさで、イズナの心をひどく乱しながらも、ミヤビはまた、妖艶に薄く微笑んだ。

イズナ > 海の向こう、二度と行けないような遠い場所
思い当たる節はなく、たいへん遠い場所から王都にやってきたのだ、という事くらいしか判らない
羽織る薄絹は何処か自分の生まれたシェンヤンや遥か東方の国のようにも思えるが、衣服などは言ってしまえば
どこでも手に入れることができる

幼くも妖艶であり、頭の上の狐耳と豊かな尻尾はシェンヤンの言い伝えに残る大妖に通ずるものがあり
近縁種であるイタチにはなんとも言えぬ不気味さと言うか、狐の亜人というのは皆こういうものなのだろうか、
という疑問が思い浮かぶのでありました

「それでは遠慮なく…と言っても、私にお返しできるようなものは…」

名刺を拝見すれば、ほう、と声を上げる
若い年頃で遠い異国の地で店を構える器量に感心しつつ、丁寧に懐に名刺をしまい、水筒も確りと受け取る
何かお返しできるものは、と懐を探せば、財布などが見つかりますが、金銭を渡す、というのも無粋に思え
ちょうどよく手にとった絹のハンカチを手にしますと差し出して

「金貨銀貨をお返しするのも無粋かと思いますので、どうかこれを受け取ってくださいな
 まだ使っておりませんし、公主様が無理くり………こほん、手配なさったものですから、
 そこそこの価値はあるかと思います」

そう言って手触りの良い絹のハンカチを彼女がしたのと同じようにそっと彼女の手を取るようにして滑りこませます
彼女の微笑みを見てしまえば、きょとん、と眼を丸くしてから口元に笑みを浮かべまして

「なるほど、その笑顔が王国での成功の秘訣のようですね」

と彼女にハンカチを手渡した手をそっと引っ込めます

ミヤビ > 「ありがとうございます。こんな高価なものを」

絹のハンカチといえば高価なもの。そのようなものを異性から受け取れば、平民ならば誰でも喜ぶだろう。
しかし、ミヤビはまた、薄く微笑む。影がある、だからこそ妖艶で、何を考えているかわからない、だからこそ強く魅かれる、そんな不思議な微笑である。

「次はもっといいものをご用意しておきます」

それでは、といい残すと少女は振り返ることもなく立ち去る。甘い甘い、毒のような香りをその場に残して。その足取りはひどく緩慢ながらも、姿はすぐに見えなくなる。

すべてがアンバランス。すべてがおかしく感じる。まるで、それこそ狐につままれたような、そんな時間は、少女の姿が見えなくなると同時に終わった。

イズナ > 「いえ、こうして出会えましたのも何かの縁ですから」

修行を積んでいなければ、くらり、とヤられてしまいそうな彼女の笑顔がそこにはありました
負けじと此方も精一杯の笑顔を浮かべて彼女を見つめ返し、心の均衡を保ちます
恐ろしい方ですね…なんて、心のうちではかんがえていたやもしれません

「それはとても興味深いですが、どうかそのような事をなさらず…
 私も王都へ来たばかりで知己も少ないですから…気軽にお声がけして頂ければ大変、嬉しく思います」

深々と頭を下げて去っていく彼女に、おやすみなさいませ、と別れの挨拶をして
鼻先を掠める甘い香りにびくり、と見えぬはずの尻尾が逆巻くような感覚が残ります
それでも努めて平静を装い、姿が見えなくなるまで深々と頭を下げて

彼女の姿が見えなくなればようやく、頭を上げて

「はぁ…恐ろしくもお美しいお方でした…
 私もまだまだ、修行が足りませんね…あの色香にあてられてしまいそうです」

ぽすん、と先程まで座っていた椅子に腰を下ろせば脱力して額に滲んだ汗を服の袖でそっと拭うのです

ミヤビ > イズナがぬぐった袖から、何か固いものがポロリと落ちる。

「わが恋ひわたるこの月のころ」

そう書かれた厚紙……小さな短冊である。
いつの間に仕込まれたのか、今までの幻のような時間が、幻ではなく本当であったことを、この短冊が示していた。

『影があるゆえに妖艶で、悪女であるゆえに恋に溺れ、銭がかかるゆえに絢爛で、男が一夜を争うからこそ美しい』

シェンヤンで聞いたことのある、既に亡き狐の大妖、神すら堕としたと謳われたそんな存在の昔話をイズナは何故か思い出すのであった。

イズナ > 袖からひらり、と落ちますのは小さな短冊
覚えのないことにギョッとするが注意深くそれを拾い上げては、書き上げられた文言に目を通す

「…ずいぶんと古い言い回し、ですね、これ…
 ミヤビ様が残したのでしょうか…公主さまにこのような学はございませんし…」

ううーん、と首を傾げながら、ジッとその文言の意味を考えます
また、お逢いしましょう、という事であろう、と言うことだろう、と納得しケロリとした顔で懐へ短冊をしまい込む

「いやあ…王都も中々、色々な方がいらっしゃいますね…
 私にはあまり関わりのないことかと思っておりましたが…」

公主の従者であればその伴をせずにはいられませんから、当然、様々な人々と出会う機会がこれからもあるはずです
そう思えば、楽しみ三分、気苦労七分、と言った所で、はあ、と溜息を零す

狐姿の彼女の面影に古いシェンヤン伝承に残る大妖を重ねながら人目もありませんから、
くったりと少々気怠げに椅子に腰掛けますと、主人の『お楽しみ』が終わるまで、
従者は長い夜を明け方まで辛抱強く、男女の睦み合う声を嫌でも聞きながら待つ他ないのでした……――

ご案内:「王都マグメール 富裕地区【イベント開催中】」からミヤビさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区【イベント開催中】」からイズナさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にヴェルファールさんが現れました。
ヴェルファール > 富裕地区、宴やら祭やらで賑わう大通りから少しだけ外れた路地。
闇夜に紛れ、小さな影が一つ、しゅたんっ、と舞い降りた。
それは、大きな蝙蝠を模した羽根を持つ幼女の姿。
まず、何かを確かめるように、きょろきょろと周囲を見回す。

「うん、だぁれもいない、よね?」

そう呟けば、広げていた翼は折り畳まれ、消えてしまう。
ひょい、ひょい、とちゃんと消えているか確認するように左右から見て、うん、と頷いた。
とててっ、と小走りに駆け出せば、大通りへと移動をする。

ヴェルファール > 小難しい話はよく分からないけど、今、王都でお祭があるらしい。
それを小耳に挟み、自分の街からこうしてやってきたのだ。
宿に残した、お供と言うかお守りと言うか、付いてきた街の人間にはちゃんと伝えてある。
見送られる時に向けられていた目は、なんとも心配そうなものではあったが。

「えーっとぉ…」

大通りの道端で足を止め、肩から掛けた可愛らしいポーチを手に取る。
ぱかっ、と開き、中身の確認。
ハンカチとか髪留めとかの小物と、お財布。
それを確認すれば、ぱちん、と閉じた。

「うん…うん…よしっ」

準備万端、お祭巡りの開始である。
まずは、この通りにずらーっと並んだ露店でも見て回ろう。

ヴェルファール > 普段は人前で気張っている幼女。
なのだが、さすがにお祭の時くらいは気楽にゆくのだ。

好奇の瞳を右に左に向けながら、とてとてと露店を一つ一つを見て回る。
いい匂いに釣られ、色んな食べ物の露店に寄ったり。
きらきらと輝く、綺麗なアクセサリーを眺めたり。
変わった形をした、よく分からない小物を小首を傾げて見ていたり。
ちょこちょこと忙しなく動き回る、そんな幼女であった。

時々、親はどうしたのか、とか聞かれる事もある。
その時は、適当に少し離れたところを歩いている大人を指差したりして誤魔化すのだ。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にマヌエラさんが現れました。
マヌエラ > ほんの、偶然。守衛に保護者について問われ、幼い少女が指差した先にいた女は、たまたま振り向いたところで、ばっちりと目が合った。何だろうと首を傾げる。

――女は、少女同様、露店巡りに来ていただけの客である。
規模の大きな祭りでは、海千山千の香具師たちが齎す胡散臭い外来品もあふれる。
その多くはただの贋物であるが、稀に意外な品にめぐり合うこともある。
見た目通り、魔術を能くする女は、特に魔術具や呪物の掘り出し物に会う楽しみのためにここにきていたのだった。

つまり、女は好奇心旺盛であった。
よく分からないが指差されれば、気になってそちらに向かう性分である。

「はいは~い、私ですか~? 何でしょう~?」

間延びした声とおっとりした笑顔。
軽い足取りで、少女の方へ向かう。

ヴェルファール > 「あ…」

しまった、と言った感じの表情を浮かべる幼女。
誤魔化すには、相手がこちらに気付かず歩いてくれなければ困るからだ。
だって、反応してしまったら、嘘がばれてしまう。

そんな心知らず、指差した女はこちらへと向かって来てしまっている。
差している指が、ゆらゆらと揺れて。

「あ…うあー…」

ちらっ、と守衛の人間を見上げ、ちらっ、と近付いて来る女に視線を向ける。

(まずいまずいまずい、これどうしよう?)

何とか言い誤魔化しとか、出来ないだろうか、とか。
いっそ、逃げてしまおうか、とか考えたり。
ぐるんぐるんと、頭の中で色んな選択肢が回りに回っていた。
傍から見れば、質問に答えているところに、母親がやってきているような感じ。
だがしかし、女から見たらどうだろう。

マヌエラ > 急に様子がおかしくなった少女に守衛が怪訝な顔をしている内に、女は近づいて来てしまう。
少女の指先は揺らぎ、目は泳いでいる。

その様子を見て、能天気な女は“困っている”ことだけは感じ取った。
こちらも少し首を傾げた時、守衛が口を開いた。

『どうしたんだね。この人がお母さんで間違いないのかね』

その言葉で、何となくだが事態を察して、少女に視線を向けて。
にこっ、と笑いかけながらアイコンタクト。“話を合わせようか?”という意図だが通じるかどうか。

ヴェルファール > そして、ついに指差していた女がすぐ傍まで来てしまった。
目の前で首を傾げる女に対し、再度質問を投げ掛ける守衛の人間。
びくーっと肩が跳ねてしまうも、まだ口を開かぬ女が笑顔を浮かべた。

この状況での笑顔、気のいい人か、状況を理解出来てない人か。

「う…うんっ、このひとがおかーさんっ」

上手く事が運ぶのを祈って、ひしっ、と傍に来た女に抱き付いて、そう答えた。

(これでよしっ、ダメだったらにげちゃおう!)

そんな事を頭に浮かべながら。

マヌエラ > 少し驚いた顔をしてから、優しく少女の背を抱いた。

「はい、私が母ですが――この子が何か、ご迷惑をおかけしてしまいましたか?」

心配そうに尋ねると、守衛はかすかな違和感に一度首を傾げたが、両者の言うことが一致しているのならまあそうなのだろうと思い直して笑顔を見せた。

『いえ、少し離れているように見えたもので。なにぶんこの人出ですから、離れ離れになってしまわぬよう、お気をつけて。』

一礼して去っていく。
意思疎通――とまではいかないが、どうにか思惑が摺り合った。
視線を下ろしてにこっと笑いかけた。

「うふふ、貴女のような可愛いお子さんに、お母さんと呼んでもらえると、嬉しいですね~」

頭を撫でて。

「何があったかお聞きしても良いですか? あちらの屋台で、フルーツ・ジュースごちそうしますから~」

と提案した。
そもそもの動機は好奇心。
彼女は何者で、どうして私を母親と呼んだのだろう?

ヴェルファール > 抱き付けば、同じように背を抱く感触。
そして、上から聞こえる守衛の人間の言葉に対する返答。
僅かな違和感を感じていたかもしれないが、守衛の人間は納得はしてくれたようだ。

はーっ…去って行く後姿をちら見し、深く安堵の吐息を吐く。
どうやら、このまま逃げ帰る事無く済みそうだから。

「あ、あは…あはは…はぁ…えーっと、ごめんね?」

撫でられながら、軽く笑った後に、もう一度だけ溜息。
そして、誤魔化すのに付き合ってくれた事に、申し訳なさそうにして。
見上げる表情は、どことなく居心地が悪そうな苦笑い。
なのだけど、次の提案の言葉に、ぱっと表情を輝かせた。

「じゅーすっ!うんっ、いいよーっ」

お小遣いを使わずに、ジュースが飲める。
そんな現金な考えと、助けてくれたのだからちゃんと答えないと、と言うのもあったから。
抱き付いていた手を離すと、ちょこんと女の横に付いた。

マヌエラ > くすっと笑う。

「私、“おかあさん”、でしょう?」

ちょこんと手を繋いで、近場の露店へ。
異国の果実のジュースを売って繁盛している店だ。
席を取って。

「何がいいですか~? 私は、マンゴーというこの薬くさい感じのものをお願いします!」

店主は苦笑しながら応じてくれた。

「さて、“おかあさん”は、マヌエラと言います。
 私の可愛い娘さんは、どんなお名前なのでしょう~?」

ふわふわした言葉遣いで尋ねる。