2018/08/19 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にユールさんが現れました。
ユール > (なんてことだ。思わずそんな言葉が脳裏を過ぎる。
この時間でも多くの人々が、馬車が行き交う、広い道の片隅で。
そんな往来を眺めては息をつき。)

「 まよった の … 」

(まさか。こんな、元来住んでいる地区内で。それも良い歳をして。迷子になるなんて思わなかった。
…とはいえ。近頃は王城勤めばかりが続き、殆ど此方に帰っていなかった事や。
一応は貴族の娘という立場から、送迎くらいはされていた事も。きっと原因。
こんな事なら。偶々見止めた菓子店で土産を買った後。
近所だから大丈夫、などと見栄を張り、城から送ってくれた馬車を、返してしまわなければよかった。
考えても後の祭。とりあえず…見覚えのある建物でも何でも見付けなければならなさそうだ。)

ユール > (目印になりそうな物を、見付ける事が出来無かったなら。
そういう何かを見出せるまでは、結局、歩くしかない。
とりあえず、何も無い荒野という訳ではないし、寧ろ人の数は多すぎる程。
だだっぴろい大通りの、誰にでも良いから訪ねてみれば。貴族屋敷の並んだ一角が、どちらに有るかくらいは分かる筈。
こくん。頷いて、そんな、行き交う人々の方へ踏み出そうとした、直後。)

「 わっ ゎ 」

(直ぐ脇を、けたたましい蹄と轍の音をさせ、馬車が通り過ぎていく。
何をそんなに急ぐ事が有るのだろう…と。思わず首を傾げたくなるような勢いで。
接触不可避、という程至近ではなかったものの。それでも、巻き起こった風圧に煽られて、思わず蹌踉けてしまう。
石畳を歩くには向かない、踵の高い足元のせいで。バランスを崩すと、本当に転んでしまいかねなかった。)

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にルシアンさんが現れました。
ルシアン > 今日も今日とて、買い出しに行こうと通いなれた道をのんびりと歩く。
相変わらずの小綺麗な家やら街並みやらに軽く羨望のため息をついてみたりすることもあるけれど、
まあ普通に生活圏とする分には治安も悪くないわけで、その点は安心である。

丁度向かいを歩いてくる少女の姿が目に留まる。
この辺りに住む金持ちの娘だろうか。何やら辺りを伺う様子は、この辺りに慣れてないようにも見えるのだけど。
とは言え、最初の印象はまあその程度。すれ違ってしまえば、そこまでだったはずなのだけど。

「………っ?あぶな…っ」

ものすごい勢いで駆け抜けていく馬車。文句の一つも言うべきか、という考えはすぐに消える。
煽られたのか少女がふらりとよろけて転びそうに。反射的に駆け出し、そのまま手を伸ばす。
身体を支えようとする、のだけど…間に合うだろうか。結果的にそんな大ごとにはならないのかもしれないけれど。

ユール > (残念ながらというか。当然というか。ぶつかりかけた馬車は、未遂の事象など知らんぷりで、瞬く間に駆け去っていく。
それを尻目に、蹌踉めいた身体を何とか、立て直せると思った。…思ったのだけど。
ぺきん。華奢なヒールが、石畳の隙間に嵌り、体重を支えきれずに、異音を立てて。
地面との接点を失った足元から、一気に体幹が傾いていく。重力に囚われた事を自覚して、ぎゅっと目を瞑ってしまった、直後。)

「 ?  ぁれ …? 」

(斜めに傾いでいく身体が、その途中で支えられた。
誰かの手で抱き止められたのだと、直ぐに直感出来たのは。抱かれる感触を良く知っているから。
おそるおそる目を開けてみると。思った通り、一人の通行人だろうか、そんな人が。身体を支えてくれていた。
瞬きし、首を傾げて。それから、倒れ込んでいく間に、乱れてしまった髪に。手を宛がいながら。)

「 …ありがとう ございます …? 」

(誰にせよ。相手は異性だったし、それにきっと、この地区に…富裕地区に住むという事は。決して低い身分ではない筈だと。
そう思ったから、そそと前髪を梳き、支えられた腕の中で、そのまま身体の前に手を揃えて。ゆっくりと頭を下げる素振り。)

ルシアン > 一瞬は大丈夫か、とも思ったけれど。少女の足元で不吉な音がして一気に倒れ込んできた。
受け止めた身体は小さく、軽い。普段から子供相手にしている青年なら容易い事。
腕の中にしっかり抱え込みつつ、とりあえずホッと一息。

「…ん…間に合ってよかった。大丈夫か?」

小さく問いかけてみる。とりあえず転んだわけでもなし、怪我なんかは無さそうだけど。
少女の服装やその手触りから、シンプルだけど随分と高級な布を使っているように感じる。
髪を直したりする仕草にも、品の良さのようなものを感じて。やはりこの辺りの住人だろうか。
いつまでも抱き寄せている事も無い。そっと、転ばないよう立たせてやりながら。

「いや、気にしないで。今のはあの馬車が悪い。…どこのお偉方か知らないけど時々居るんだ、ああいうのが」

ふぅ、と困ったようにため息一つ。「えらいひとたち」は自分らのような下賤な者など気にしないのだ。
青年の服装も、一応は整っているがよく見れば擦り切れたり使い込まれて古びて居たり。
あんまり身分が高いとも見えないはず。

「………ああ、これ、靴のヒールか。参ったな…」

辺りを伺えば見慣れぬものを拾い上げて。少女の様子から、転倒の原因を察してどうしたものかと頭を掻いた。

ユール > (受け止められた体勢のままで。大丈夫か、と問われれば。
ぺたぺた。自分の頬を。腰の辺りを。大きく煽られた肩やらを。掌で彼方此方と触ってみてから。こくん。頷く素振り。)

「 だいじょうぶ みたい です。 痛い 所も。ないので… 」

(それはもう、抱き止めて貰えたから、以外の何物でもなく。
だから、立たせて貰ってから。もう一度改めて、頭を下げてみせる。
片方の足元がちぐはぐなので。残念ながら、当人がやりたかったようにはいかずに。
ふらふらとした、どうにも中途半端な一礼しか。ならなかったものの。)

「 おいそぎ でした。 …おしごと なのか…
奥方が 怖い お人。 なのかも しれません…? 」

(大抵の場合、例え貴族であろうとも、男の方ばかりが強い気がするのがこの国であるものの。
場合によっては、恐妻家な貴族というのも在り得るかもしれない。
…というのは。別に、車中にどんな人物が乗っていたのか、心当たりが有る筈もないので。
ちょっぴり冗談めかせただけの台詞なのだけど。
それから。かくん。と首を傾げて。)

「 あれ。 靴の …? ぁ 道理で… 」

(妙に、立ち辛いと思った。青年の…彼の拾い上げた物を見て、ようやく理解。
そういえば、倒れるあの瞬間何かの折れる音を聞いた。気がしたが。なるほど、これでは、転倒も当たり前だった。
取り敢えず。折れた側の踵を上げるようにして。どうにか、真っ直ぐの姿勢を保とうとしながら。)

「 裸足で 帰った方が。 良い でしょうか。 」

(少しだけ眉を寄せて、思案げに。
履き物を脱げば、その脚を包むのは、彼が見て取った通りのシルク地ではあるものの。
それが汚れてしまっても、仕方がない、という結論を出す辺り。一応は、此処の住人だからこその思考の筈で。)

「 でも。 それだけで 済んで 幸いでした。 あなたさまの おかげ です 」

(だからといって。改めて見れば…という青年の様相に気が付いても。
そこで態度を変えるような事はしなかった。
頭を下げてからは、そのまま視線が伏せられ上がる事の無い侭…ではあるものの。
先程助けてくれた手を取って。握って。感謝を伝える事だけは忘れない。)

ルシアン > 大丈夫、と聞けば頷いてあげて。
改めて少女の容姿や仕草を見れば、本来の物より幼い感じにも見えてくる。
若干足取りがおぼつかないあたり、くすっと小さく笑いつつ。

「あー…成程。奥様がおっかないなんてのは下々も上も変わらないか。
 案外、強面の騎士様みたいなのがちっちゃい奥さんに頭上がらなかったりするのかもしれないね?」

少女の言葉は冗談なのか本気なのか。だけど、それに今度は思わず声を立てて笑ってみる。
どんな世界であっても、強い所は強いんだろう。そんな当たり前の事ではあるのだけど。

さて、と手にした靴のヒールを前に暫し悩みつつ。
「素足はやめた方が良いな…君の家が何処かは知らないけど、帰るまでに擦り傷に切り傷だらけになる。
 …これ無しだと、歩くのは大変…なんだよな?ううん…君のお供とかは居ないのか?お付の人、とか」

幾ら素足ではないにしても、道をそのまま歩けばこんな育ちの良さそうな娘さんの足じゃ酷い事になるだろう。
かといって、男物の靴とは勝手が違う。そのまま穿いていくわけにもいかないか。
うーん、と悩んでしまうのだけど。どうにかできないものか…。

「いや、どういたしまして?…さっきも言ったけど、あまり気にしないでいい。
 困ったときはお互い様。今回はたまたま、僕が君を助けられたってだけ」

丁寧に感謝をされ、そっと手を握られれば少しだけ戸惑うような、照れくさそうな顔。
随分と律儀な子だ、なんて印象も持ってみる。

ユール > (きょとん。首を傾げた。軽い冗談ではなく、それ以外の所で。少し笑った青年に。
ひょっとして、何か失敗したのだろうか。それとも、この足元の中途半端のせいだろうか。
などと考えもしたからこそ、壊れたヒールを脱いだ方が良いか、という発想も出て来るようで。)

「 時々 有ります。 そういうのも きっと。 あなたさま も。 心当たり 有る とか? 」

(相手が恐妻家か否かどころか。そもそも、既婚者かどうかも分からないものの。
この発言に笑うという事は。例えば、彼自身の身近にそういう人が居るのだろうか。等と想像してみる。
…と、そういう話題はさて置いて。本題は、足元に有る訳であり。)

「 そう ですか …困り ました。 怪我をするのは 確かに おきゃくさま もご不満でしょう し …
えっと その。 送って下さる 方と もう 其処でお別れ したので… 」

(やっぱり、失敗だったと。改めて反省。
御者も早く仕事を終えて、帰りたいだろうから、等と。遠慮しておくべきではなかった。
ますます俯いてしまう、視線の先で。握り直した際、少し力を入れすぎてしまったのか。焼き菓子の入った紙袋が、くしゃりと擦れる音。)
…その音に。ぱちり。一つ瞬いて。)

「 そぅ です。 …もうしわけ ありません けれど。
…帰るまで。もう少し お力添え いただけます …? 
この お菓子 お出し したり。 改めて お礼 させていただきたい ので 」

(本当は。実家の者達と…それ以上に。城勤めの合間、久々の帰宅に合わせた、自分自身へのご褒美だったものの。
きちんと形になるお礼をするに越した事はないので。
菓子と紅茶でもてなすくらいは、するべきだろうと。袋を小脇に、胸の前で両手を合わせて。
…そうしてその間、支えて貰えでもすれば。怪我もせずに済むだろうと。)