2018/07/02 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にツァナさんが現れました。
■ツァナ > どんな時でも腹は減る。
食べなければ生きていけない。
例えそれが…飲み食い出来るだけの金銭も無く。
店によっては入っただけで通報されかねない、ミレー族の少女の場合でも。
「誰か。居ない、かな…」
そんな時手っ取り早いのは…持っている者から奪う事だ。
多分、生命まで奪う必要はない。路地裏に引っ張り込んでちょっぴり刃物で脅し。
日銭程度で良いから、差し出させてしまえれば、それで良い。
或いは食べ物その物を持っていたら、もっと都合が良いだろうか。
…とはいえ。金の有りそうな人々の行き交う富裕地区は、同時に、警邏や護衛の目も厳しい。
お陰で、なかなか。こうして路地から、大通りの様子を窺いつつも。
良い獲物とタイミングとを見出せずにいた。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にルシアンさんが現れました。
■ルシアン > ――――カモがネギ背負ってやってくる。
そんな異国の言い回しなど、知る由もないのだろうけれど。
大きな紙の袋の中に、一杯のパンや果物や…覗いているガラスの瓶はワインだろうか。
そんなものを腕の中に抱えながら、えっちらおっちらと歩いてくる青年の姿が街の中に。
腕の中に抱えるだけの分量には割と限界に近いらしく、足取りは何とも危なっかしく。
それでも上手い事バランスを取りつつ、路地近くの歩道をゆっくり歩を進め。
「…まったく、人使い荒いったらないよなー…はぁ」
ぶつくさ文句を言いながらも、それでもきちんと買うものは買ってきた。
巷ではやれ戦だのなんだの、きな臭い話題ばかりであっても…それでも生きていれば腹は減る。
青年も、生き物の範疇である以上、そんな摂理からは逃げられないわけであり。
――さて、そんな青年が気を払うのは、袋がひっくり返らないようにするようなバランスが大半。
周りに気を向ける事は難しいのだけども――。
■ツァナ > すんすんと鼻を鳴らした。
間違いなく、食べ物の匂い。それがどうやら近付いて来るようだ。
フードに包まれた頭を、路地の角から覗かすようにして、窺ってみれば。
食べ物満載の袋に、足が生えて、歩いて来る。
…勿論、実際にそんな奇妙奇天烈な生物が居るハズはなく。
正確には、その人物の抱えた袋が大きすぎて、前方からは顔やら上体やらが隠されている。
…これはチャンスかもしれない。)
「もうちょい、もうちょー…い……」
(近付く距離。そっと低い姿勢を取り、間合いを計り、息を潜め。
…その人物が、路地の前を通り過ぎようとした、刹那。
足元を引っかけるべく、爪先を差し出した。)
■ルシアン > ゆらゆら、ふらふらと歩いてくる紙袋もとい青年。
買い物の帰り道がちょうどこの道だったこと、それが運の尽きだったんだろう。
この場所が割と裕福な人が多い…つまり、そこそこ治安は悪くないという事も油断に繋がっていたはず。
「…帰ったら晩御飯は大盛にしてもらわないと割に…っ!?」
そんな、とっても些細な願い事もむなしく、不意に繰り出された爪先に足を取られかけ。
――ここでようやく、並みより少し鋭い反応速度が目を覚ます。躓かされて、転ぶ。これはもう避けられない。
ならば、と。
「………っ!!」
眼の端に映った人影。其方へ手元の荷物を向けて。
重さで無理やりに体重を移動させて…崩れた姿勢は、重い側へと倒れていく。
つまり、足を引っかけた相手へと。袋ごと、勢いをつけて体当たりするような格好に無理やり持っていく。
その「相手」を巻き込んで、路地の方へ転がり込んでいくはず。
上手く行けば、荷物ごと相手を壁に押し付けてしまえるだろうけど…さてどうなるだろうか。
■ツァナ > よし、当たった。
後はバランスを崩した所で、荷物を掻っ攫うか。
それとも、すっかり丸毎転倒してくれたなら、転げ落ちた品物を拾って逃げるか。
いずれにせよこれで上手く行っただろうと。
足先に躓く、相手の重みを感じた所で。一気に飛び起きようとすれば…
「て。ぇ、わ、ッわ…!?」
予想外。慣性の法則に従い、その侭進行方向へと倒れ込むと思っていた相手が。
よもや、荷物の重みに負けて。恐らく、持った品物の方向その侭へ、倒れ込んでこようとは。
大急ぎで飛び退こうと、跳ね起きる速度を速め…
これが、失敗だった。素直に横っ飛びするか、転がるかしておけば良かったのだ。
相手と真逆に逃げようとした背中が、壁にぶつかり止められた。
更にその侭、相手の、そして荷物の重みが、斜め上から覆い被さってきて……
結果。大惨事。荷の大きさに胸を押され、肺が圧され、声が出ない。
じたばたと両手が藻掻き、相手の身体の、何処でも良いから触れる事が出来たなら。
てしてし、叩く素振りは。丁度降参を訴えるような。
■ルシアン > とっさの判断が出来たのは幸いだったのか何なのか。
不幸中の幸い、人気のない路地で相手を壁に押し付け捕まえたような、そんな体制。
ぺちぺち、となんだか体を叩くような感覚。どうも相手は身動きが取れない、そんな状況なのだろう。
無体をされた側として少々眉根を怒らせつつ、その相手を顔を見据えて。
「………コソ泥か追剥か知らないけど、こういうのはあまり感心しないな」
紙の袋やら食べ物やらが、いくらか散らかってしまった状態だけど。
壁際に押し付け…言い換えるなら、押し倒したような状況。顔の位置も割と近い。
蒼い色の目をじぃっと見据えつつ、精いっぱい凄んだ調子の声。
それだって、足を引っかけられてずっこけたという状況を見れば、大した威圧にはならないだろうけど。
「………一応、こういう事をした言い訳なり理由なりは聞いてあげるけど。それとも、このままブタ箱に直行するかい?」
ぎゅうぎゅうに体を押し付けてしまっていて、何だか苦しそうだと悟れば少し体を離してあげる。
よくよく見ればどうやら女の子のようでもある…それでも状況が状況。油断したりはしないのだけど。
じっと相手の様子を伺いつつ、警戒気味の視線を向けながら周りに散った食べ物なんかを集め出して。
■ツァナ > 流石に。予想外すぎた。
あれだけの大荷物だったのだから、それなりの重さは有ったのだろう、と解るものの。
相手の歩みは、前方不注意という一点を除けば、安定して見えていた為に。
ともあれ。犯してしまった失敗は、どれだけ悔いても変わらない。
挟み込まれ圧し潰される、有る意味、完全な拘束下。
「けほッ、けふ、く――ふ…!」
(なかなか息が出来なかった。少しだけ重みが減らされれば。
やっと呼吸が喉を通ったのか。しかし空気に勢いが付きすぎて、噎せ返る。
喉の苦しさに涙を浮かべ、それでも、相手を…ようやく荷物の向こうに確認した、男の顔を睨み返し。
「何で、って、そりゃァ――」
(その先の言葉を遮って。そして、言葉を幾つも並べるより、非常に解り易い形で。
腹の虫が声を上げ、空腹を主張した。
…言葉に詰まり。フードの下から見返す瞳が、思いっきり横へと逸らされる。
何だか凄く情けない。男が荷物を拾っている間。
逃げる事を後回しに、羞恥で紅く染まる顔をどうにかしようと、ぶんぶん頭を振っていた。
■ルシアン > 「…子供、か」
此方から見据え、相手から睨み返されれば、互いの顔も良く分かるというもの。
元々小柄な相手だとは分かっていたものの、思いのほか顔立ちなんかはあどけなく見える。
くすんだ銀色、とでも言えばいいのか。そんな髪の色も印象的だ。
「まあ、それもそうか。こんなことする人なんて相場が決まってるよね……
……ん?………………っ」
質問をして、落ち着いて考えれば愚問だったと一人納得。
理由なんて一つだけだろう。
そんな結論に思い至った丁度そのタイミングで響いた、可愛らしい音。
流石に、それが何なのか察してしまい…毒気が抜かれたようにぽかんとした表情。ついで、くすりと小さく噴き出しかけて。
「…………ほら。こんなのしかないけど…食べるかい?」
地面に落ちたリンゴやら瓶やらの誇りを軽く落としつつ。
差し出したのは、小さなパンの塊。丸パン、というには少々不格好だけども。
それを少女へと差し出してみる。
―――よくよく見れば、紙の袋の中。量は多いのだけど、高価な品物は一つもない。
少し形が崩れたパンや、ちょっと虫食いのあるような果物。そんな、安価に買えるようなものばかりだと分かるだろうか。
■ツァナ > 「相場?…小さいとか、弱いとか、そういう…?」
少し不満げだった。有る意味負けた事は確実なのだし、どう見ても相手の方が大きく、また年上だろうから。
その通りだと言われても、否定しようがないのだが。
更にこのタイミングで、空腹が更なる限界を、誰彼構わず訴えてしまうから。
色々と、誤魔化しようもなくなった。
もう今更何をどう言っても、格好も付かないだろうし、取り返しもつかないだろう。
拗ねた風情で、路地の片隅に、座り込んでしまいつつ。
「…それ……?………食べる。」
其処に差し出されたパン一つ。
恰好だとか、大きさだとか、そんな事。気にしないし、出来るハズもない。
食べ物であるというだけで、これ以上なく幸いだった。
一気に齧り付き――をすると、また噎せるだろうし、急な働きを強いられる消化器にも悪い。
その位は解っているのか、少しずつ少しずつ。囓っては咀嚼する。
口の中でゆっくりと噛み締めながら。他の食べ物も見下ろして。
…何となく考えたのか、口を突いたのは。
「何してる、人?…それ、そういう色々、配ったりとか?………子供に。」