2018/04/08 のログ
オフェリア >  静寂に浸る、水の音。止め処なく流れ落ちる透明な飛沫が、其の輪郭を照らす光に浮かび上がらせる。
 噴水の縁石へと浅く腰掛ける女が、時折瞬く紅い眸で其れらのどれとも無く無数に舞う光の粒らを眺めていた。

 月夜の晩。間も無く夜は更け、身を委ねた静寂はより一層色濃くなろうかと言う時分。

 「―――…綺麗 」

 ツイ、と顎先を僅か持ち上げて、下から仰ぐ光源に陰を孕んだ女神像を見上げる。女の紅く彩られた口唇が、淡く弧を描いた。

オフェリア >  春にしては幾らか冷たい風が吹き抜ける。
 底から汲み上げ、女神の持つ水瓶から流れ出でる水の飛沫、其の一粒が、風に運ばれ女の頬を濡らした。
 緩やかな曲線を伝う一筋の雫。何処か、涙を流す感触に似て―――

 「泣け、と――…云うのね。
 こんなに素敵な、…素敵な夜なのに」

 拭われぬ水滴はそのまま頬へとか細い軌跡を創り、顎まで下って玉となり、落ちた。
 今度は女の手の甲を濡らし、湿った筋を再び風が撫でていく。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にザールさんが現れました。
ザール > 夜の散歩。流れる風はまだどこか冷たい。
富裕地区の広場。
明かりで飾られる噴水が見ものだと聞けば物見がてらに訪れた。

時間も時間であり、誰一人いないであろうと思ったが、実際には噴水の縁石に腰掛ける女がいた。
見ているが浅く動く胸以外動いていない様で、どこか人形のようにも感じる。

「こんな時間に一人か?」

男は佇む女に静かに問いかける。
相手がこちらに顔を向ければ立つのは巨躯の男、鋭い目で相手をまっすぐに見つめていた。

オフェリア >  水音に上塗りされる穏やかな息遣い。其れ以外の存在を証明する気配はなく、只静寂が包むのみ――
 不意に響き渡る、低い声が耳へと届く迄は。

 「…いいえ、独り等では御座いません」

 声が掛かる方を見遣れば、大きな人影がひとつ、其処にあった。
 佇む長身が黒く暗澹と見えるのは、髪が宵に溶け暗く見える所為か。外灯もあり、貌は僅かにも視認が出来る。
 人影を見付けるなり双眸を笑みの形に細め、女は静かに首を横へ振る。そして一度、長身の男から女神像へと顔を振り向かせて、

 「彼女、と、語らって居りました。
 つい時間を忘れて、他愛の無い戯れを」

ザール > もし女を照らす明かりが揺らぐ蝋燭の明かりで会ったら呼吸を必要しないようにも見えたであろう。
夜風によって撫でられる髪。

返ってきた言葉は意外な言葉。
待ち合わせかとも思ったが、続く言葉に否定された。

「女神と時を忘れて戯れていたか。
邪魔をしてしまったかな?
綺麗ないい女が女神と語らっている所は初めてでな。
俺とも話してくれるかな?」

男はその言葉に楽しそうに小さく笑う。
自分から女神へと再び視線を戻す相手を男は静かに見つめる。

「だが、いくら春になったとはいえ…その薄着では
風邪を引くし、何よりも危ないぞ…」

男は自分の顎のあたりに手をやりながら低い声で話かける。
そして、相手と女神との邪魔にならぬように相手の背後に回るとゆっくりと腰を下ろした。

オフェリア >  巨躯の男が放つ軽やかな言葉に、女は「まあ、」と感嘆の後、穏やかに笑い声を転がした。
 口許に手を当てクスクスと笑んだ後、視線は直ぐに相手へと戻される。
 ――独りでは無い、と、言い放った傍から、温和な丸みを帯びた紅い眸は最早、戯れる相手であった筈の女神像を仰ぐ素振りを見せず。

 此方へ歩み寄る男の行方を追い、落ち着く先まで見届けると、再び笑みに双眸を細めて。

 「お優しいのですね。確かに貴方様のような逞しい殿方が近くに居て下されば、女二人よりずっと安心出来ます。
 ――けれど、彼女の方が無口で慎ましく、私などよりもずっと魅力的やも知れませんよ?

 それでも、私とお喋りして頂けますか 」
 
 背側へと腰掛ける男の様子は覗けず、斜めに据えていた身体の向きを正面へ正し、長身に並べた。
 すっかり”彼女”に背を向けて、頭を傾け隣を覗き見る。
 はらり、肩から零れて流れる髪を耳へ掛けて視界が狭まるのを払うと、口唇を緩やかに浅く湾曲させ、問うた。

ザール > 穏やかな笑い声が響く。
女神からこちらへと視線を向ける相手。

赤い眸が自身へと向けられる。
落ち着く先は相手の背後で会ったが、ほどなくして此方を向く様に座りなおす相手。

「ふ。まぁそうだな、貴女を守るぐらいは容易いことだし。
美女を守って戦うのも楽しそうだ。 
無口でつつましい聖女も良いが、感情に支配されて失敗する人の方が好きでな。
だから俺はあなたとのおしゃべりを選ぶさ。」

衛というわりには何処か物騒なことをつぶやき、楽しそうに笑みを浮かべるが本人は意識していないがどこか荒事を望む獣じみた笑みにも見えてしまうか。

女神に背を向けこちらを覗き見る相手の方に体を向け、のぞき込む相手の髪の毛を、女の細い指が払わう様子を楽しみ。
二人を風がさらりと相手の肌と髪を撫でる。

「そういう貴女こそ俺の様な武骨な男が傍にいて怖くないか?」
相手が目にするのは古い傷跡だらけの男。

オフェリア >  「フフ、 御上手ですこと。
 光栄ですわ、女神像よりも私を選んで下さるだなんて」

 並んだ位置から、掛ける腰の角度を僅かにずらして横向きへ。
 向き合う事は叶わないから、半身だけ僅かでも相手に面する様に。
 享楽に笑う貌を細めた眸に映し、髪を払った手を自らの膝の上へと下ろす。

 気紛れに息吹く風が肩へと掛けたショールの端を棚引かせぬよう、一方の片手は胸元へ宛て、薄布を押えて。

 「怖い? いいえ、ちっとも。
 ――そう申し上げるのは殿方に失礼かしら。けれど、怖くはありません。
 傷跡も勲章、…と、そんな風に仰る方も居りますが、貴方様もそうした御仕事を?」

ザール > 「貴女のような美しい人に上手と言われるのは嬉しいものだな。」

向き合う事は出来ないが。
互いに体を半身向け合う形に。
相手の小さな手は膝の上へ。そして、もう片方の手でショールを抑える相手に男は笑みを向け。

怖くはないという言葉に小さく笑い。

「そうだな。勲章…もあるが、戦った相手の名刺代わりでそいつらの生きた証だな。
あぁ、仕事は傭兵やら護衛に荒事専門だな。
そういうあなたは? 貴族のような感じでもないし、町娘というには綺麗すぎる。
もっと貴女の事を教えてもらいたいものだ。」

ふわりと相手を撫でた風が再び相手の髪の毛を乱せば、男の大きな掌を伸ばし軽く梳く様に撫でながら、闇を思わせるような黒い瞳で相手の瞳を見つめ、囁きかける。

オフェリア >  近くへと寄れば、成程確かに、相手の体付きは平均の其れよりもずっと大柄で、女の身体の幾回りも広い肩幅。
 衣服から覗く肌でさえ傷跡を大小問わず数える事が出来るのだから、其の痕跡は体中にも及ぶのだろう。
 告げられた生業を訊き、納得する。同時に、静かな湖面の様な心根に、微かな興が芽生え波紋を生んだ。
 背にした女神像を眺めて過ごすのでは到底感じ得ぬ、自己以外への興味。

 「―――…只の女、 と、御答えしたら、興が醒めてしまうでしょうか。
 …フフ、けれど私なぞ、危険に身を置く貴方様のような方からすればきっと詰まらない女ですわ」

 骨張った男の手に、女の髪が柔く絡み、解されていく。
 髪を滑る手へ伏せた視線を送り、眸を閉じた様に見える程緩慢に瞬いた。
 女の顔が、微かに傾く。撫ぜる手の近くへ自ら寄せて、僅かに顎を上げ、相手の掌傍へと頬を差し出した。
 けれど、決して温もりが触れぬ距離。手と頬が重なる間際を保ち、たおやかな笑みを添えた。

ザール > 女の腰ほどのもある太腿。
鍛え抜かれた体は窮屈そうにスーツの中に押し込まれている。
男の興味は女神から既に相手へ。

「いろいろなものを取っ払えば、只の女と只の男だろう。
だが、どんなことでも知ってみないことにはな…。」

男はどこか楽しむ様に囁き相手の緩やかに流れる髪を指先で撫で、相手が目を閉じ顔を寄せるも触れてこない相手。
その距離を楽しみながら、相手の髪越しに頬を撫で。

「あぁ 俺はザール。
その可愛らしい唇を動かして、貴女の名前を囁いてくれるかな…?」

男は問いかける。相手の名前を聞く前に己の名前を告げ。
たおやかな笑みを作る相手の唇に指を振れさせ撫でようとする。

オフェリア >  傍らでは休む事なく水面を打つ噴水の音。其れでも巨躯を持った男の囁きは低く、明瞭に耳へと届く。
 実戦に生き、躯へ恐らくは幾重にも傷を重ねた男の節が立った手が、髪を一房隔てて頬を掠めていく。
 随分と柔らかい仕草だった。相貌とは異なる其の反面性が、口角を引き上げ微笑を僅かに濃くさせる。

 「――…オフェリア、 と、申します。
 ですが、 ねぇ、ザール様」

 紅い口唇をなぞる指の腹、感触ごと飲み込むように、薄く開いた口で冷えた外気を吸い込んだ。
 男が触れる侭、求められる様唇を動かし吐息に乗せて名を告げると、今し方聞いた男の呼び名を口にして。
 
 薄布を押えていた指先を、そ、っと伸ばした。行方は口許にある骨張った手へと。
 分厚い皮膚に覆われた広い掌の縁を整えられた紅い爪先でなぞり、代わりに貌を静かに男の手元から、静かに退かせ、

 「―私を飽くまで御知りになったら、もう訊いてはくださらないでしょう?
 …だから今夜は私の名だけ、 それだけお心に留めておいてくださいませ」

ザール > 噴水の音に混じる相手の柔らかい声を楽しむ男。
男の節だった手で撫でる髪。そして髪越しに感じる相手の柔らかい頬。
楽しそうに引き上げられる口角。

「あぁ オフェリアだな。」
吐息に乗せ甘く囁いた唇。
男は相手の名前を受け取れば、甘く相手の名前を囁く。
自分の掌に触れる相手の小さな手、紅く彩られた爪先。
そして指が相手の唇から離れれば囁かれる言葉に男は笑みを浮かべ。
「あぁ だが、オフェリアを知る次回予告として、君のぬくもりは少し味合わせてもらおう。」

男はそう囁くと自身の手のひらを撫でたその手を包みこむ様に握り。自身の口元へ引き寄せていく。

「そして先程の貴女の唇を楽しませてもらったお礼だオフェリア。
これで俺の事をオフェリアの心に留め置いておけるか?」
相手の赤く彩られた爪先に男はキスを落とし楽しそうに笑いかけた。

オフェリア >  「あら…まあ、素敵。キスがお礼ですの?ロマンチックな方」

 戯れに掌を辿った指先が男の大きな手に捕らわれると、食指の先へと柔らかい温もりを受けた。
 其れを見届けクスクスと弾ませた笑い声を乗せて、愉しげに眸へ弧を描かせて微笑む。

 女の手がするり、と、風に弄ばれる薄布の様に男の手から滑り抜けていく。

 「―…フフ、 でしたら、今夜のように冷える夜が良いですわね。
 誰かの温もりとは手放し難いものですから。

 …私の体温をもう少し深く御知りになったら、それでは足りないと思うくらい冷え込む夜が良いわ」

 次は、と、続けて打たれた宣告に近しい予告。
 本気か冗談か図り兼ねる穏やかな調子でそう答えると、女はその場から腰を上げ、夜更けの大通りを向く。
 何れか過ぎ行けば、微かに交わした今宵の温もりは時折撫でる冷えた風が上塗り、消し去るだろう。

 立ち上がり静かに裾の乱れを正すと、女は通りへ歩み始めた。

 最後に一度。肩越しに男へ振り返り、長い金糸へと風を孕ませ、細く笑い掛けて、

 「また何れ、何処かでお逢い出来ましたら。
 ――夜の広場でそこの彼女を見かけたら、同時に私のことも想ってくださいますよう…」

 柔い声音でそう告げて。女の姿はヒールの足音と共に、夜更けの通りへと消えて行く―――

ザール > 「ある意味で、キスを頂いたからな。」
男は愉し気に言葉を返し。
食指の先へと落すキス。
そしてするりと抜ける相手の手。
無理に追いかける事も無く。

「ん。確かに。 夜が冷えるうちに会えることを楽しみにしよう。
その時にはたっぷりと。」

温もりを初めて知るには寒い夜が良いという言葉を受ければ男はそんな言葉を返し。
笑みを浮かべる。
取りようによってはそうともとれるであろう。

立ち上がる相手。歩く度に揺れる腰を楽しみ。一度振り返ればひらりと手を振り答える。

「またいずれ、近いうちに会えることを期待しているよ オフェリア。」

夜更けの通りに吹く風に言葉を乗せ届けると。
相手の姿を見送り、男も立ち上がり相手とは逆の方の通りへ姿を消えていった。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からオフェリアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からザールさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にルシアンさんが現れました。
ルシアン > 富裕地区の一角。大きな通りから一本入った所にある、小さなカフェ。
夜はバーにもなり軽食も酒も楽しめる、落ち着いた雰囲気の店の中。
店内には客は一人だけ。水を貰いつつ、人待ちの様子でのんびりと菓子なんかをつまんでいる青年の姿。

相手には此処の地図を手紙を通して渡してはある。あとは、来てくれるかであるのだけれど…。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にセレナさんが現れました。
セレナ > 教えられた場所へと、地図を参照しながらてくてくと徒歩で街中を歩いて辿り着き。
ここでいいのかと、店頭で最後の確認をしてから静かに扉を開け、ざっと視線を走らせて店内の様子を確認して見知った顔を見つけて、ほっとした様子で表情を緩め。

「こんばんは、お久しぶりです」

人気の無さに、まさか貸し切りなのだろうかと店内の静けさに戸惑った様子できょろきょろとしながら歩み寄り、成年へと声をかけ。

ルシアン > ドアの開いた音に振り返ると、待ち人である以前に会った少女の姿。
安堵したように息を付くとひらりと手を振って。

「こんばんは、来てくれてありがとう。ええと…こっちへ?」

店内はガラガラで、来客の気配を察してか奥から白髪も目立つ壮年の男性が。どうやら店主なんだろう。
グラスに入った水を青年の席の隣に置けば、不愛想な様子でまた奥へと戻っていく。

「ここの店、地味だけど料理もお茶もお酒も良くてね。まあマスターがあれだからあんまり賑やかにはならないんだけど…
 ……こういう所より、もっと良い店とかの方が良かったかな」

顔見知りである店主の様子に苦笑いしつつ、少女に隣の席を勧めて。
メニューなんかも渡してみる。一通りの軽食や酒なんかも楽しめそうで。
ただ、少女の姿を改めて見て…先に会った時には分からなかった、気品のような物に少し驚き気味。
こんな大衆の店に、呼びつけてしまったのは失礼だったか、なんてことまで考えてしまう

「改めて…呼び出してしまってごめん。また会えたこと、感謝する。…あんな場じゃなくて、ちゃんとお話ししたいと思ったんだ」

穏やかに笑ってみた。何だろう、ナンパそのものだな、なんてことも考えてしまったりするのだけど。