2017/02/21 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にエアルナさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にマティアスさんが現れました。
エアルナ > 富裕地区は広く、そして、今の時世は。政変に負けて一家離散したとか、奴隷に売られたとか、…はては処刑されたとかの理由で住人がいなくなった屋敷も珍しくない。
この通りの先にある廃屋もその一つで、昨年その憂き目にあったのだが、…不思議なことに。最近、明かりがともっていたり、中でなにか物音がしたり、妙な笑い声がしたりする…らしい。

「…あとは、ぱたぱたと子供のような足音がしたり…だそうです。私が効いた噂では。」

その屋敷のほうを指さして、小さなため息。

「離散で行方不明になった中には…幼馴染の女の子もいたのですが。いまはどこで、どうしているやら…です」

マティアス > ――実際、良くある話だった。

非常にくだらない理由で取り潰しに遭った貴族やら、夜逃げしたやら、如何に尊き身分とやらでも気楽に眠れない夜は多い。
自分の家は、どうだったか? 近くまで行けば、実家はある。しかし、立ち寄る意味があると言えば皆無だ。
仮にこの国が亡ぼうとも、命題を成すために手段を択ばないだろう。
目的こそが全てなのか。為すべき手段を究めつくすことが全てなのか。

「まぁ、それは兎も角――……ええと、なんだって? 子供の足音が聞こえる、だっけ?」

ふと、脳裏に過った仕様もない思考を押し流して、眼前の廃屋を見遣ろう。
右手を持ち上げ、中指に嵌めた指輪を親指で軽く弾いて鳴らせば、その動作を鍵として魔力が動く。
生じるのは日光と同じ色合いの淡い光の玉。拳大の光源を生じさせる初級魔術。

「……なら、確かめないといけないね」

眼鏡を空いた左手で押し上げ、腰に帯びた剣の鞘とローブの裾を揺らして前に進もう。
並行して、感覚を研ぎ澄ます。敷設された魔術的な罠の有無から始める。
このご時世、つくづく何かあるか分かったものではない。
ひとつの案件自体が、一冒険者をオモチャにするための壮大なお遊びであった、というオチもあればなおのこと。

エアルナ > 王都にも貴族の端くれとして、実家の屋敷はある。幸いにして平穏を保っているのは、当主である兄の出世欲のなさと如才ない人付き合いの成果…だろうか。
まぁ、その如才なさには…先立つものがいるのも世知辛い現実で。
自分が商人のようなことをしているのもそのためなのだけど…

「ええ。何人かが、まるで追いかけっこでもしているような…と」

幽霊が出るにはまだ、早すぎる気がするがと。
娘は真顔で言い、傍らにいる忠実な白狼はアフ、とあくびをする。

「近所の子供が遊んでいた、というならいいのですが…盗賊とかが潜んでいても困りますし」

お願いします、と青年の行動をまずは見守る

マティアス > 「……ふむ」

さぁて。この状況で、どのような実態が考えられるか。
恐れも知らない子供の遊び場となっているのか。
それならまだいい。だが、人が住まない場所には往々として、澱みが溜まる。
まして、このご時世だ。溜まった澱みの気配が、善くないものを招くこともある。

「見る限りだと、魔法仕掛けはなさそうだね。
 ……まずは軽めの結界式を敷いて、その上で白黒はっきりさせようじゃないか」

ごそごそ、と。ローブのポケットを漁って取り出すのは、一枚の紙で作った符。
それをぴんと伸ばした人差し指と中指の間に挟み持ち、口の中で幾つかの言葉を連ね唱える。

「我――四方を封じ、天地を定め、威を以て束ね統べる。

 速やかに我が意を成せ。……疾ッ!」

唱える言葉の最後を締めくくり、投じる符が遠く廃屋の玄関に張り付いて青白い炎と共に燃え尽きる。
そうすれば、魔力の気配に聡いものならばわかるだろう。
この屋敷の敷地というべき範囲が見えざる何かで区切られたことが。
悪しき気配の流出入を留め、僅かながら一種の聖域の如く清める。

そうすれば、より顕著になるだろう。人ならざるものの気配が。
うむ、と己の為す結果を認めれば、前に進もう。其の侭邪魔されないなら無造作に屋敷の玄関を開け放ちに。

エアルナ > 「昼間なら子供の悪戯かもと思いますが…もう夜ですから。普通の子供なら、夕ご飯です」

つまり、いるとしたら。子供でも、ちょっとわけありのタイプだ。
ましてこの頃、王都であろうと魔族の目撃談は…ないどころか、珍しくない部類にまで増えている。
嘆かわしいことに、と肩をすくめる娘は静かに意識を集中して、己の五感を高める詠唱を口の中で行う。

「…あら?」
符により、結界が張られた中に。どこかからこちらをうかがう視線を感じる。
窓か、とみれば玄関の横のほう。窓にかかるカーテンが、ゆら、と風もないだろうに動いていて。

「マティアスさん、…あちらの窓を」
わざと視線はむけず、声だけで注意を促そう

マティアス > 「その実、浮浪者が何処からか入り込んで住み着いた、というのもあるねぇ。
 この辺りについては、足跡の有無や匂いから探ればいい。

 時間をかければ、あるいはプロスペロ氏のお力を借りるか、かな。けど――あまり手間はかけたくないのも事実だ」

人の出入りや生活があれば、其処に何らかの痕跡が生じる。
飲み食いした後や排泄物、等々。人間も含む全ての生命は摂取と排出の行為から逃れられない。
人間の五感を引き上げる術もいいが、それ以上の五感の持ち主が居るなら、素直に頼るのもいい。
しかし、話を思うに普通の子供が関わるようなことではないだろう。

「……なるほど。では、僕らは素直に玄関から行こうか」

眼鏡のレンズの端、微かに揺れる布地の動きを己も捉える。
ひょいと肩を竦め、其の侭前に進んでは気負わぬ動作で玄関の扉を押し開こう。
室内外の空気が行き交うことで生じる風に、髪が揺れる。
左手は腰に帯びた剣の鞘に添え、鍔を親指で押し上げよう。
一寸、白々と輝く刃金の色を覗かせながら、先ほど生じされた明かりの光球を中空に浮かべて進む。
周囲の間取りを確かめつつ、先ほど見えたカーテンがあろう部屋を目指して。

エアルナ > 足跡、という言葉を聞いて狼が鼻を鳴らす。
ふんふんと周囲をかぐようなしぐさをして、その鼻先をむけるのは、やはり…先ほどのカーテンが揺れた部屋の方角。

そして。玄関の中へ入った途端、タタタ、と小走りになにかが奥の暗がりへかけていく足音ーー小さな、人影のようなもの。
いた、と指さすより早く…近くのドアが開いて、バタン、と閉じる。

廊下の両側に並ぶ扉の、内側、手前から二番目。
カーテンが揺れていたのは外側、3番目といったあたりか。

「いました、ね。…どうします?」

マティアス > 「……居たね。――誘われている、のかな? どうだろう」

今度は、良く聞こえた。見えた。
少し考え込んで、生じさせた光球を前進させる。自分たちの進路を照らせるように。
そうしながら、脳裏に大雑把にこの廃屋の間取りを思い描く。
廊下の左右に並ぶ扉から考えるなら、同時にカーテンが見えていたあたりから、と。

「……一先ず追ってみようとしようか。カーテンが揺れていた部屋は、必要なら後で見ればいいよ」

だが、警戒はいずれにしても必要だ。
剣に添えた左手はそのままに、ぱたむと閉じる音がした方をまずは目指してみよう。

エアルナ > 「大きさは子供くらいでしたけど…それにしては」
正確には、棒?をもった。でも、耳が大きくて、…尻尾付きの後ろ姿だったような気がする。
カカカ、とどこからか聞こえたのは笑い声だ。妙に楽しそうに、すぐ近くの…バタン、と閉じたドアの向こうから。

「…誘ってますね、あれは。」

どうやら、間違いなさそうだ。
こいこい、と手招きをしているのまで見える気がするほど。
まったく、と目を細めて。

「プチデーモン、かもです」
ぽつり。呟く。

人の子供ほどの大きさの、カラフルな小さな魔物。簡単ながら火の球の魔法を使い、人々に悪さを仕掛け、荷物を獲ったりする。